Side:京


ハッ!仕掛けて来るとは思ってたが、結構な大所帯じゃねぇかオイ?
敵さんも本気って事なんだろうが、こう言うのは、日本じゃ『藪をつついて蛇を出す』って言うんだぜ?――余計な事しなけりゃ、もう少しだけ
生き永らえる事が出来たのかも知れねぇが、此処で仕掛けてきた以上、今日がテメェ等の終焉の日だぜ!!

「おぉぉぉぉ……喰らいやがれぇ!!!


――ゴォォォォォォォォォォォ!!



「うお、大蛇薙一発で、10体のガジェットが火達磨かよ……相変わらず兄貴は半端ねぇな……」

「流石は京兄!」

「お見事です兄さん♪」

「凄まじい腕前だな京……」



ま、妹達と彼女の前でカッコ悪い姿は曝せねぇからな。
其れよりも、次に消し炭にされたい奴はどいつだ?外に現れた奴は、略確実になのはにぶっ壊されてるだろうが、中に出てきた奴は、俺達
がぶっ壊して燃やしてやるからな。



「来るが良いくず鉄共。
 貴様等程度では腹も膨れんが、精々糊口となるが良い。――すぐ、楽にしてやる。」

「精々そこで灰になってな!!」

教えてやるぜスカリエッティ……テメェが、誰に喧嘩売ったのかって言う事をな!!











リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round29
『Rhythmic Hallucination』











オラァ!ボディが、お留守だぜ!!――へっ、アンタじゃ燃えねぇな?
俺のクローンや、ギースにルガールは如何した?量産型のガジェットじゃ、幾らAMFを搭載してると言っても俺達の敵じゃない――此の程度
で俺達を制圧できると思ってんなら、舐め過ぎだぜオイ?



「舐めてねぇよ……此れも作戦だぜオイィィィ!!!」

「テメェは……現れやがったな、KUSANAGI!!」

見た目は俺だが、声も性格もまるで違うが、最も完成度の高い俺のクローン……だが、テメェ1人か?不完全な1号と、2号は如何した?



「今回は別行動だが、その代わりにコイツ等を連れて来たぜぇ?――その目に焼き付けやがれ、この光景って言うモノをなぁ!!」

「「「「「「「「「「「「「「「……………」」」」」」」」」」」」」」」



んな、此れは俺のクローンの集団だと!?……幾らなんでも増えすぎだろ此れは!!
量産型のクローンって事を考えると、俺には遠く及ばないんだろうが、一般人と比べたら強過ぎる――質を落としても量で攻める心算か。

何とも胸糞悪い話だが――テメェ、此れはある意味で地雷踏んだぜ?



「あ゛?」

「アレ見てみ。」



「クククク……六課に所属している内は京を殺す事は出来んが、敵として出て来た偽物ならば幾ら殺しても問題はあるまいな?
 所詮姿形を写し取っただけの偽物では満足出来んが、少しは俺の渇きをいやしてくれるかもしれん……纏めて殺してやるぞ偽物がぁ!」



――ドッゴォォォォォォォォォォォォォン!!!



「ククククク……ハハハハハ……ハァ~ッハッハッハッハッハ!!!消えろ、腰抜けども!!」




「……闇削ぎで、クローンが結構吹っ飛んだなオイ……あの赤毛、戦闘力増してねぇか?」



……クローンとは言え、俺を殺せるからテンション上がってんだろ。
幾ら俺のクローンとは言え、劣化コピーじゃ八神にゃ勝てねぇよ……自分と同じ姿をした奴が、次から次へと滅殺されてく様は、ちょっと複雑
だけどな……



「心中察するぜ、オリジナルよぉ?」

「ま、こんだけ同じ顔が並ぶと、テメェの顔とは言え気持ち悪かったから、其れが解消されると思えば悪い事でもねぇんだがな。」

ま、俺のクローン量産型は八神に任せるとして、テメェは俺が相手してやるぜKUSANAGI。
テメェは、俺のクローンの中でも最も俺に近い力をもってやがる……荒咬みと毒咬みの連携こそないが、その他の技は完璧にクローニング
されてるみたいだからな。

だからこそ、テメェは俺がぶっ倒す!
コピーじゃ本物を越える事は出来ねぇって事を、その身に刻み込んでやる――かかって来な。



「言うじゃねぇか?だが、俺はスカリエッティの手で前より強くなってるんだぜ?
 コピーじゃ本物を越える事は出来ねぇなんてのは、前時代的な発想だって知れや!灯蛾の如く、燃え尽きろぉ!!」

「本気で行くぜ!!」

教えてやるよ、テメェと俺の絶対的な違いってやつを――本物と贋作の差ってやつをな!!
精々その目に焼き付けやがれ!見せてやる、草薙の拳を!!








――――――








Side:シグナム


まさか、これ程の部隊が現れるとは、流石に予想外だったな。
ガジェットだけならば兎も角、京の複製品があれ程の数現れるとは思っても居なかったぞ――尤も、その大多数が庵の手によって、物言わ
ぬ骸と化しているのだがな。
恐らくは、建物の外にも現れてるだろうが、そっちは高町が殲滅しているのだろうな。

だが、そうであっても此れだけの戦力を相手にするのは簡単ではない――まして、貴方ほどの騎士が現れたのであれば尚更だ。



「私に気付いていたか……流石は『烈火の将』と言った所か?――夜天の魔導書の守護騎士が将、シグナム殿。」

「……私の正体を知っているとは光栄だが、なればこそ貴殿の名を教えて貰えぬか?
 ベルカの騎士は礼節を重んじるのは知っているだろう?――此れから戦う相手の名を知らぬと言うのは、ベルカの騎士にとっては騎士道
 に反したモノであるのだ。」

「そうだったな……ならば、名乗ろうシグナム殿。
 我が名はゼスト・グランガイツ。――お前とは違うが、私もまたベルカの騎士だ。」



ゼスト・グランガイツ……コイツは真にベルカの騎士である様だ――故に解せん……貴様はなぜ、スカリエッティに手を貸している?
言い方は悪いかも知れんが、奴はこの世界にとって害悪でしかない……ベルカの騎士を名乗るのならば、奴は討つべき相手の筈だろう!



「否定はしないが、この身は一度死に、そしてスカリエッティの手によって再生された物だ。
 それ故に、スカリエッティへの攻撃不可と、命令への絶対服従を植え付けられていてな……俺の意思で如何にかする事は出来ぬのだ。」

「何だと……!?」

其れはつまり、お前は望まぬ行いを、強制的にさせられていると言うのか!!
だとしたら、余りにも酷い…・・酷過ぎる!!騎士の誇りと稔侍を踏み躙る行為は、断じて許す事は出来ん!!――絶対に許さんぞ、ジェイ
ル・スカリエッティ!!



「ふふふ……素晴らしい闘気だ――此れならば大丈夫だろう。
 シグナム殿よ、俺と手合わせ願おう。――貴殿ならば、俺の最後の相手として相応しい。――最強の騎士との戦いで逝ければ本望だ。」

「グランガイツ……お前にはスカリエッティの命令以外に目的があったのではないのか?
 だからこそ、即戦線に加わらずに物陰から様子を窺っていた――当たらずとも遠からずだろう?」

「……鋭いな。
 確かに俺には目的があった――嘗ての友、レジアスにどうしても問い質したい事が有ってな……」


レジアス中将に?



「……レジアスは最強評議会と、そしてスカリエッティと内通しているのだ。其れも相当に昔から――俺が死ぬ前からな。」

「何だと!?――まさか!!」

「俺を殺したのはスカリエッティの戦闘機人だ……ナカジマ1人だけでも逃がせたのは僥倖だったがな。
 故に、レジアスがスカリエッティに情報を流していたのではないか?アイツの理想は、実は嘘だったのではないかと思ってしまっていたの
 だが……如何やらそれは俺の杞憂だったらしい。
 もしもレジアスが嘘の理想を掲げ、己の私欲の為に生きていたのならば、今回の意見陳述会で機動六課の成果を評価する事もなく、高町
 なのはと言う魔導師の事ももっと痛烈に批判して、六課を解散に追い込もうとしただろうからな。
 其れに、レジアスは俺が蘇った事を知らん……死者が再び生者の前に現れてはならぬだろう――其れに、俺自身、こうして生き恥を曝し
 ている事に些か疲れてな。
 ――死に場所を、求めていたのかも知れん。」

「……成程、良く分かった。」

ならば私も、ベルカの騎士として、お前の魂に応えよう。だから本気で来い!!
本気で来なければ私を倒す事など出来はしない――夜天の魔導書の守護騎士『ヴォルケンリッター』が将、シグナム……押して参る!!

我が轟炎の剣技を持ってして、お前を恥辱の生から解放してやる!








――――――








No Side


意見陳述会の会場内では、彼方此方で激しい戦闘が繰り広げられていた。
クローン京を次々滅殺する庵に、京とKUSANAGIの全力バトル――そして、シグナムとゼストによるベルカの騎士勝負だ。
シグナムはリミッターを解除し、ゼストも己の従者である融合騎『アギト』と融合してその力を高めている。


――故に……



「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「でぇぇぇぇぇぇい!!」



シグナムとゼストの戦いは、互いに決定打のない戦いとなっていたのである。
加えてシグナムのレヴァンティンと、ゼストの青龍刀は総合力ではほぼ拮抗しているのも大きい。
一見すれば、片手でも両手でも扱いやすい片刃剣のシグナムの方が有利に見えるが、柄の長い青龍刀ならば槍術のような動きで刃と柄
による連撃が出来るので、至近距離の打ち合いでも後れは取らないのである。

更にゼストがアギトとユニゾンして居る事も影響しているだろう。
ゼストが素の状態であったのならば、炎熱を扱えるシグナムに分があったのだが、ユニゾンして居る事でゼストもまた炎熱の力を使う事が
出来ているので、本当に完全に拮抗しているのだ。
此のままでは千日手の如き戦いになるのは明らかだが……


「せい!!」

「!?」


此処でシグナムが仕掛けた。
ゼストの一撃を捌き、至近距離で2連続の蹴り上げを繰り出したのだ。
其れは見様見真似の『七拾五式・改』……京の技を、シグナムが使ったのである。
この蹴り上げには虚を突かれたゼストだが、流石に嘗ては一部隊を率いていた隊長だけに、ギリギリのスウェーバックで其れを躱す……だ
が、シグナムは其れを見越していたかのように踏み込み、レヴァンティンの柄の部分でゼストの腹部に一撃を入れると――


燃え尽きろ!!


――ドガァァァァァアン!!!!


其のまま胸倉をつかみ、炎を炸裂!
七拾五式・改に続いて、今度は『琴月 陽』……京と模擬戦を何度も行っている内に、シグナムは自然と草薙流の技を身に付けていたので
ある。


そして、この一撃が決定打だった。
強烈な一撃を喰らったゼストは吹っ飛び、其れと同時にアギトとの融合が解除されてしまった……此れではもう、シグナムと戦い続けるのは
無理だろう。


「……見事。流石は烈火の将だ。」

「いや、貴方も大したものだ。
 もしも私が京の技を知らなかったら、もっと戦いは長引いていたかも知れないな……」

「……成程、今のはホテルアグスタで俺と戦った青年の技だったか。
 だが、其れはなくとも俺は勝つ事は出来なかっただろうな……既に死んでしまった者と、今を生きる者ではどちらが上か等と言う事は、考
 えるまでもない。
 ――だが、此れで俺は漸く逝ける。
 だからアギトよ、お前は此れから俺を倒した、この騎士に仕えろ……彼女もまた炎熱系だから、お前との相性は俺とは比べ物にならない
 位に良い筈だ。」

「旦那……」


其れでも、ゼストの顔は穏やかだ。
シグナムの攻撃を真面に喰らい、己の身体は限界だと知って尚、『此れで終わりに出来る』と言う安堵の思いが強かったのかも知れない。
其れでも、此れまで自分について来てくれたアギトに、此れからの道を示すと言うのは大した物であると言えるだろう。


「分かった……何処の馬の骨とも分からない奴ならお断りだけど、コイツは私と同じベルカの騎士だからな!
 ――そう言う訳だから、此れから宜しく頼むぜシグナム!!」

「期せずして、頼もしい仲間が増えたか……此方こそ宜しく頼むぞアギト。」


そして、此処に新たなコンビが誕生した――のだが。


『『『ゴォォォォォォォン!!!』』』

「「「!!!」」」


突如、ゼストの背後から3体のガジェットが強襲!
恐らくはシグナムに敗北したゼストを葬らんとして現れたのだろう――ゼストは動く事が出来ないし、シグナムとアギトも突然の強襲に虚を
突かれ対応が一瞬遅れてしまった。
此のままではゼストはガジェットにやられてしまうと思った、その時だった。


「ナカジマ流シューティングアーツ奥義……ガンマバーストフレア!!!


――ドガァァァァァン!!


突如放たれた直射砲が3体のガジェットを一瞬でスクラップにしたのだ。
AMFが搭載されたガジェットを一撃で葬る程の砲撃……其れを放ったのは、バリアジャケットに身を包んだクイント――一線から退いたとは
いえ、その腕は未だ健在であったようだ。


「ナカジマ……あんな機械にやられてはと思ったが、まさかお前に救われるとは……感謝するぞ。」

「……あの時の恩を返しただけです隊長。
 あの時、貴方が『家族が居るのならば生きて帰れ!此れは命令だ!!』と言ってくれなかったら、私はあそこで隊長と共に戦って命を散ら
 していたでしょう。
 貴方が命令してくれたから、私は生き延びて家族と過ごす事が出来ました……感謝してもし切れません。
 だからせめて、隊長が心残りなく逝けるよう、手を出させていただきました。」


クイントとゼストは、嘗ては上司と部下の間柄だったのだ。
嘗てゼストのお陰で生き延びたクイントが、今度はゼストがガジェットにやられるのを阻止した――ゼストの死は、もう止める事は不可能だ
が、クイントはゼストが騎士として死する状況を守ったのだ。


「そうか……俺は最高の部下を持っていたのだな。
 最強の騎士と戦い、最高の部下と再会できた……思い残す事は何もない――スカリエッティの下で屈辱の生を続けてきたが、其れも此処
 までだ……礼を言うぞ、シグナム殿、ナカジマ。」

「いいえ、此れまでお疲れ様でした隊長。もう、ゆっくり休んでください。」

「お前の事は忘れない。
 我が魂に刻み込んでおこう。ゼスト・グランガイツと言う、誇り高き騎士の名をな。」

「ふふ、如何やら俺は、騎士として最高の終わり方が出来た様だ……」


そして、此れがゼストの最後の言葉だった。
此れを言った直後ゼストは目を閉じ、其のまま二度と目を開く事はなかった――ゼスト・グランガイツは、漸く永久の眠りに就いたのだった。


「隊長……」

「……ナカジマ一尉、彼の霊を慰めるのはまた後でだ――」

「……そうね――今は、このテロリストを片付けるのが先……でも、ナカジマ一尉なんて堅いわよ?私の事、『お義母さん』て呼んでもくれて
 も良いのよ、シグナムちゃん?」

「は!?何故そうなるのですか!?」

「え?だって、京君と付き合ってるんでしょ?
 京君は家の子だし、其の京君と付き合ってるなら将来的には京君のお嫁さんになる訳だし、そうなったら私の娘になるんだから、ねぇ?」

「色々話が飛躍し過ぎです!!」


本来ならしんみりする所なのだろうが、クイントの持ち前の性格のせいで、何ともアレな状態になってしまった。
とは言え、戦線にクイントが加わった事で、防衛線の戦力が底上げされたのは間違いないだろう――因みに、此処までの時点で、庵が葬っ
た京のクローンの数は3桁に達しようとしていた。








――――――








Side:はやて


ディバイィィィィィィィィィン……バスターァァァァァァァァァァァァァァァ!!!

『Kill You.(死ねやオラ。)』


――ドッガァァァァァァァァァァァァァァン!!




「弱い、弱い、弱すぎるの!!
 AMFを搭載してても此の程度なの?この程度の戦力で六課を如何にかしようなんて、烏滸がましいにも程があるの!!
 いっそ、大人しく砕け散りやがれなのぉ!!!消し飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」



――バッガァァァァァァァァァン!!!



……今日も今日とてバッチリとなのはちゃん無双状態やなぁ……ぶっちゃけ、なのはちゃんのスコアが余裕の三桁やないか此れ。
もしもなのはちゃんを六課に引き込む事が出来なかったらって考えると、冷や汗が流れ出て来るわホンマに……尤も、なのはちゃんにこん
だけやられても、矢継ぎ早にガジェットを送り込んでくるスカリエッティの戦力はやっぱり侮れへんな。
加えて、なのはちゃんがドンだけ頑張っても、撃破数を上回る数を送り込めば、何れは私等の方がジリ貧になるのは明白やからね。

せやけど、総思い通りにはさせへんでスカリエッティ!――って、アレ?


『『『『『ゴォォォォォォォォォン!!』』』』』


何時の間にか5体のガジェットに取り囲まれとる!?
クソ、魔力を持ってない相手やったから全く気付く事が出来へんかった――既に攻撃準備も出来てるみたいやし……此れは、万事休す!



「刃持って血に染めよ……穿て、ブラッディダガー!!



――ドドドドドド!!!



そう思った瞬間に、ガジェットに真紅の魔力刃が突き刺さって、ガジェットが爆破炎上!!
其れだけでも驚く事やったけど、それ以上に驚いたんは……



「ご無事ですか、我が主?」



私の前に現れた人。
眩い銀髪に、黒い衣を纏い、その背には漆黒の3対の翼――10年前のあの日に、アノ雪の日に空に帰った、あの子が目の前にいた。
泣き虫で、でも誰よりも優しい心を持っていた、夜天の魔導書の管制人格であった、リインフォース・アインスが。










 To Be Continued…