Side:京


そんな訳で意見陳述会の会場に来た訳だが、はやての奴は確りと戦力の分散をしたみたいだな?
隊長陣と俺と俺の妹達と八神を意見陳述会の会場に配備して、残るメンバーは六課本部の防衛及びヴィヴィオの護衛に当てた訳だからな。

八神と一緒ってのが、少しばかり不安だが、俺も八神も共通の敵がいる訳だから、寝首を掻かれる心配だけはねぇな。

にしても、凄い人数だな此れは?
意見陳述会の会場はキャパシティー5000って聞いてたが、此れは絶対それじゃ済まねぇだろ?
カタログスペックは5000でも、実際は6000位は有るんじゃねぇかな?



「席数だけでなく、立ち見も考えれば其れ位はあるのだろうな。尤も、其れ位でなければマスコミが入るスペースなどなくなるのだが。
 この公開意見陳述会と言うのは、自分の部隊の有効さをアピールする場であると同時に、他の部隊の失敗をやり玉にあげる舞台でもある
 のだ――そして、スキャンダルが表に出れば食付くマスコミも多く、憶測を交えた噂が飛び交うものでもあってな。
 ある意味で、この場は意見陳述会の名を借りた権力争いの場とも言えるんだ。」

「発展してるように見えて、政治方面は俺が元いた世界と大差ねぇって事か……」

となると、六課はなのはがやり玉に上げられるんじゃねぇか?
俺達がこっちに来てからだけで、既になのは関係ではやては二桁の始末書上げてたと思うし…まぁ、やり玉に上げられたら上げられたで、
はやてが得意の話術で何とかするだろうが。


ま、陳述会の内容は適当に聞きながら、俺達は俺達でお仕事を真面目にやるとするか――爆破テロでも起きて犠牲者多数なんて事態に
成ったら笑えねぇからな。

来るなら来てみやがれテロリスト共――俺の焔と、シグナムの炎。其れを喰らう覚悟があるならの話だけどよ。
まぁ、来たら来たで、外の警備に当たってるなのはが撃墜する可能性も可成り高い気はするけどな……











リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round28
『意見陳述会~嵐のサキソフォン2~』











しかしまぁ、シグナムの言った通り、コイツは『公開意見陳述会』っていう名前の批判合戦だな此れは?
今起きてる事態に言及する奴は居なくて、どいつもこいつも自分の利益の事しか考えてねえ――テメェの部隊が上げた戦果は誇大報告しな
がら、他の部隊の失態を声高に言いまくってるからな。

真面な事言ってんははやてと、それからやたらと厳つい顔の髭のオッサン――後は、親父とクイントさんくらいのモンじゃねぇのか?市民を守
る機関がこんなモンで良いのかよ……少し頭痛くなって来たぜ。



「私や主が局員となった頃はそうでもなかったのだが、女傑として知られていたレティ・ロウラン提督と、リンディ・ハラオウン提督が一線を退
 いた途端に一気に腐敗が進んでな。
 リンディ提督の御子息であるクロノ・ハラオウン提督が何とか頑張っている物の、クロノ提督はあまりに若い故に反発する年上の者達も多く
 てな……局内の『膿』を出す事が中々出来んのだ。
 だからこそ、クロノ提督も管理局の健全化の切り札として機動六課の設立を承認し後ろ盾となってくれたのだろうな。」

「トップが若い奴に変わった途端に不穏分子が動き出すとは……その2人の女傑が現役だった頃は、さぞ巧い具合に隠れてやがったんだろ
 うな。」

「お母さんとお父さんも、『今の管理局は変わってしまった』って言ってるからね。」



だろうな。
親父やクイントさんみたいに、昔から管理局に務めてる人間からしたら、テメェの利益しか考えてねぇ奴等が蔓延ってる管理局の現状は嘆か
わしいモンだろうからな。



「ふん、己の欲望を此処まで曝け出せるとはある意味で感心する。
 だが、聞くに堪えんモノである事も事実だ……敵が攻めてくる前に、ゴミを焼却するか?――腐敗したゴミは存在しているだけで害悪だ。」

「其れだけはやるなよ八神?
 テメェが暴れたら止めるのが大変なんだからな?つーか、この場で暴れたら、速攻で豚箱行き間違いねぇからな?」

「貴様等が止めるならいざ知らず、六課の連中以外の有象無象に俺を止める事が出来ると思っているのか京?
 六課の連中は、今は同じチームだから手を出さんが、そうでない者など俺にとっては如何でも良い連中だ――故に、手加減などせんぞ。」



いや、テメェがそんじょそこらの奴にやられるとは思ってねぇよ俺だって。てか、その程度にやられる位なら、俺の敵じゃねぇからな。
俺が言いたいのは、起きなくてもいい事を態々起こすなって事だ!つーか、テメェは先ず言葉より先に手が出る癖を何とかしろよ!学校に襲
撃かけて来たテメェを止めようとした体育教師を病院送りにしたとか、流石に笑えねぇぞオイ!!



「下らん……俺の邪魔をする者は誰であろうと排除する、其れだけだ。」

「其れが高町であってもか?」

「……時には相手を選ぶ事もあるだろう。」



だが、そんな八神もなのはにだけは逆らえねぇんだよな――会場の中と外って言う違いはあるが、なのはも会場には来てるから、八神が暴
走する事だけはなさそうだぜ。



「ミッドチルダの治安を考えた場合、我が部隊は元より、矢張り機動六課が治安維持に大きく貢献している事は間違いないだろう。」



と、厳ついオッサンがなんか言ってるな?
六課の事を評価してくれてるみたいだが……其れだけじゃ終わらねぇよな絶対。



「だがしかし、六課に所属する『高町なのは一尉』の行動は目に余る部分があるのも事実。
 実力は折り紙付きだが、模擬戦をすれば訓練場を更地にし、事件現場に出張ればビル一つを吹き飛ばして犯人にトラウマを植え付けると
 言うのは容認できん――彼女をあまつさえ隊長格においているのは、如何なる思惑があるのか八神はやて二佐。」

「お言葉ですがレジアス中将、高町一尉は我が隊に所属させているからこそ、此れで済んでるのです。
 彼女の入局を薦めたのも私ですが、其れは高町一尉が、犯罪組織に勧誘されるのを防ぐためのモノ――高町一尉の実力は、1人で六課
 以外の部隊を半日で全て壊滅させる事が出来る程故に、其れは誰かが管理せな危険ですので。」

「ふむ……つまり、管理局と言う柱につなぐ事で、彼女の手綱を握っていると言う訳か?」

「おっしゃる通りですレジアス中将。
 高町一尉の力は凄まじいの一言に尽きる故、野放しにしておくよりも、管理局に取り込んだ方が万倍有効なのは間違いない――彼女程の
 力が、数枚の始末書増加で済むなら、安いモンやないかと思います。」

「うむ、確かに筋は通っているな。」



やっぱりなのはが上げられたな――アイツが戦うと、まず間違いなく何か壊れるからなぁ……その度に始末書上げてるはやての苦労が容易
に想像できるぜ。
ま、此処は旨く切り抜けた感じだがな。



「だが、六課の部隊長は、最強最悪のロストロギアである『闇の書』の持ち主だ!
 此れから先、其の力を使って何をするか分からないぞ!!――10年間の事は詳細は伏せられてるが、そいつが闇の書の力を全て得よう
 としてやったに決まってる!」



と、今度は別方向からの横槍が入りやがったか。
10年前の事件てのは何なのか知らねぇが、はやての奴が私利私欲で何かをするとは思えねぇ……だとすると、コイツは六課を追い落とそう
とするクソったれって事か。



「どんな手を使ったかは知らないが、二佐にまで上り詰め、自分の部隊を持つなど……余程後ろ暗い事をして来たに違いない!
 管理局をより良くするならば、機動六課を真っ先に解体してしまうべきだ!!」



ったく好き放題ってやがるなオイ?
発言権がないから黙ってるが、シグナムも相当にお怒りみたいだぜ……血が出ん位に固められた拳が小刻みに震えてるからな。



「……妄言もその辺にしておけ、クズが。」



って、八神?



「あの戦いの真実を知らぬ雑魚が憶測でモノを言うな、反吐が出る。
 10年前の『闇の書事件』には俺も関わっていたが、はやては決して私利私欲で書の主になった訳ではない――其れ以前に、あの大事件
 を起こす切っ掛けになったのは管理局の提督の使い魔が要らん事をしてくれたからだろう?奴等が余計な事をしなければ、闇の書の暴走
 もなかったのだからな。
 既にそいつは隠居した身と聞くが、はやてをやり玉に上げるよりもまず、その隠居した提督とやらをブタ箱にぶち込んでおけ――結果的に
 は何とかなったが、最悪の場合は地球人口約100億人が犠牲になっていたのだ。その罪を自覚させておけ、能無しが。
 其れに先刻……レジアスとか言う奴が言ったように、今のミッドチルダの治安維持に最も貢献しているのは機動六課だ……大した成果も
 上げていない部隊の人間が、有能な部隊を蹴落とそうとして下らん事を言うな。つまらん謀をする位なら、まず成果を上げろ恥知らずが。」



「……庵の奴は、こんなに饒舌だっただろうか?」

「普段はあんまり喋らねぇんだが、一度火が付くと饒舌になんだよなぁ八神は。
 序に言っとくと、普段はボキャブラリーが少ないって思われがちなんだが、相手を罵倒、蔑ませさせたら八神の右に出る奴は居ねぇんじゃね
 ぇかって感じだからな。」

つっても、アイツが六課ってか、はやてを擁護するとは意外だったぜ。
やっぱガキの頃に一緒に暮らしてただけあって、アイツなりに情が湧いてんのかもな――聞いた話だが、実家の妹には普段からは考えられ
ない位に甘くなるらしいしな。

しかしまぁ、八神も八神で言いたい放題だなオイ?
10年前に地球で何があったかは知らねぇが、その頃に地球で起きた事件に関しての管理局の対応の遅さまで持ち出して攻撃もとい口撃し
始めたぜ……最初に六課を貶めようとした奴も、まさかはやてじゃなくて八神から反撃されるとは思って無かったろうな。



「所詮貴様は、権力と言う名の椅子にしがみ付いて居たいだけのクズに過ぎん、意見陳述会が終わったら早急に辞表を出して局から去れ。
 何、安心しろ。貴様が局から居なくなった所で何の痛手にもならん――貴様の部隊で有能な奴が居れば六課で引き取ってやる。」

「ふ、ふざけるな!
 六課はそもそも違法部隊だろう!局が定めた、部隊の保有ランクを明らかにオーバーしてるじゃないか!!」

「……いや、馬鹿かよお前。
 六課の保有ランクはギリギリだけど規定内だぜ?隊員の魔力ランクと魔導師ランクは届け出てある筈だ。其れを見てみろよ。」

「こんな物はリミッターをかけての物だろう!
 実際のランクは軽々とオーバーしている!こんな物が認められるはずがないだろう!!」



……シグナム、リミッターかけて魔力ランク制限しちゃいけないって言う規定って、局の規定にあったっけ?少なくとも、俺が嘱託になる前に
読んだ規定には、そんなモンはなかったけどな。



「うむ、存在していないな。
 そして規定に無いのであれば、別分やっても問題はないのではないか?やって良いとも書いてないが、駄目だとも書いてないのだから。
 解釈次第と言う奴だな此れは。」

「ぐぬぬぬ……!
 そ、そうだ!其処のお前!お前は、ホテルアグスタの一件や、この間の市街地戦で敵方に同じ姿が目撃されている!どういう事だ?」



はぁ?……あぁ、そう言う事か。
同じ姿に決まってんだろ、アレは俺のクローンなんだからな。何処の誰かは知らねぇが、勝手に俺のクローンを作って、勝手にテメェの兵隊と
して使ってやがんだから、迷惑な話だぜ。



「何故クローンを作れる!機動六課が、お前の遺伝子サンプルを渡したのではないか!!」

「アホか。
 遺伝子サンプルなんざ、戦いの現場から幾らでも採取できんだろ。幾ら俺だって、無傷で勝つ事は難しいから多少は血を流すし、髪の毛だ
 って戦いの中で毛先が散る事は少なくねぇ。
 現場から撤退したガジェットやら何やらが、俺のDNAサンプルを持ち帰ってても不思議はねぇんだ――俺は、六課に所属する前にガジェット
 と一戦交えてるしな。」

「ふん、高校14年生にアホと言われてはお終いだな。」



そんなに留年してねぇ!って、言いたい所だが、何故か否定できねぇんだよな。
何故かKOFに毎年……既に14回も出場してるからな――なんか、怖くなって来たから考えんの止めとくか。

ま、兎に角、テメェの下らねぇ憶測なんざ全部間違いなんだぜ?
そもそもにして、はやては真にミッドチルダと管理局の事を思って機動六課を設立してんだ。只、権力にしがみ付いていたいだけのお前とは
訳が違うんだよ!分かってんのか?
分かる訳ねぇよな?局から去るのはテメェの方なんだよ、私腹を肥やす事しか頭にない豚野郎!!



「京、其れは豚に失礼だぞ。
 豚は賢く愛玩動物になる上に、食肉としては美味であるし栄養価も高い――奴は煮ても焼いても食えそうにない上に、更に賢くない。」

「其れに、ペット用のミニブタは当然として、普通に飼育されているブタにも独特の愛嬌と言う物があるからな……あの眼鏡、ハゲ、出っ歯の
 トリプルデンジャーフェイスと比べては申し訳ないぞ?」

「豚さん、如何もすいませんでした!」


「……3人とも、何即興のコント披露してんねん。てか、ノリ良いなぁ~~……」



いっそお笑いデビューしてみるか?親父も大笑いしてるし、隣のクイントさん――お袋も笑いをかみ殺してるしな。
だがまぁ、こんだけ言えば、能無しの馬鹿だって押し黙るだろ――大体にして、六課を解体させるに値するだけの、六課を上回る成果を上げ
てる訳じゃねぇんだからな。
そう言う訳だから黙ってろ。此処からは六課の意見陳述が始まるんだからよ。



――ザ……ザザザ……ザーーーーーー……



ん?何だ?
行き成り会場内に備え付けられてた、大型のモニターが砂嵐に……機械の故障か?――いや、違う!故障なんかじゃねぇ、此れは!!



――ヴォン



『いやぁ、実にいい天気だね時空管理局の諸君。
 意見陳述会、素晴らしい茶番だった。其れこそ、此れから始まる大舞台の前座としては申し分ない位の物だったよ。
 っと、失礼、名を名乗って居なかったね。
 私は『ジェイル・スカリエッティ』。『無限の欲望』と呼ばれている科学者であり、最近起きていたガジェットによる犯罪を起こした黒幕だ。
 本日、我々は目的を果たす為に行動を開始する――精々抵抗してくれたまえ、呆気なく終わってしまっては流石につまらないのでね。』




コイツが、ジェイル・スカリエッティ……でもって此れは、宣戦布告のメッセージって事か!!
となると……



――バガァァァァァァァァァァァァン!!!



出やがったな、ガジェット!!
其れも此れまでとは比べ物にならない数が……如何少なく見積もっても、30は下らねぇか。――何かが起きるとは思ってたが、まさか本格
的に仕掛けて来るとは思ってなかったぜ流石に。

だが、逆に言うならコイツを如何にかしちまえば、敵は総崩れって事だよな?
此処に出てきた数は30強って所だが、外にだって来てるだろうから、総数は100は下らねぇ……だが、その程度で俺達を止めようだなんて
烏滸がましいにも程があるってんだ!!
外はなのは達に任せるが、中の方は俺達で片付ける――行くぜシグナム、スバル、ギンガ、ノーヴェ、八神!!



「是非もない、斬り捨てる!」

「任せてよ京兄!!」

「シューティングアーツ+我流草薙流、味わってもらいましょう。」

「覚悟しろよロボット……纏めてスクラップにして、くず鉄屋に売りつけてやる!!」

「取るに足らん雑魚が群れおって……良いだろう、直ぐ楽にしてやる。」



大層な仕掛けだが、喧嘩売った相手が悪かったな、ジェイル・スカリエッティさんよぉ?
悪いが、ガジェット如きは俺達の敵じゃねぇし、俺のクローンや、ルガールとギースを連れてきた所で、テメェ等が勝つ事だけは絶対にないっ
て言いきれるぜ!!

降りかかる火の粉は祓う――行くぜ!!








――――――








Side:ロック


ま、大体予想してたが、やっぱりこうなったか――六課本部の周りには、ガジェットとか言うのがわんさか出現してくれたからな。
京に任された手前、何が有ってもヴィヴィオは守らないとだぜ……何よりも、こんな小さな女の子に危険が迫るってのは有ってならないモノ
だからな。

だから守り抜くぜテリー。



「OK!いっちょ派手に暴れるか!!」

「任務、遂行します。」

「僕達が六課を守る!!」

「力を貸して、フリード!ヴォルテール!!」

「守護の拳の真髄、見せよう!!」

「此処から先には通さないわ、絶対に!!」



絶対に此処は落とさせない!!――限界まで、飛ばすぜ!!









 To Be Continued…