Side:はやて
成程な……奴さんは、今度の公開意見陳述会の時に大規模な攻勢を仕掛けてくる可能性があると、そう言う事なんやね?
「確実とは言い難いけど、その可能性は可成り高いと思うわ。
二重スパイの身だから、スカリエッティの方にもある程度は此方のデータを渡してるけど、そのデータを基にしてスカリエッティが計画したの
だから、何かが起こるのは間違いないわよ。」
「まぁ、公開意見陳述会は管理局のお偉いさんも多数出席するから、其処を狙うんは悪くないやろ?
巧く行けば、管理局の重要ポストを全部ぶっ殺して、管理局を総崩れにする事が出来る訳やからな――マッタク、聞きしに勝る腹黒さやな
件のドクターは。」
「無限の欲望の名の通り、欲望に手足が生えて服着てるような奴だからねアイツは。」
まぁ、だからこそスカリエッティのズベ公は何が何でもお縄にせんとアカンのやけどね。
子供のイタズラ程度の悪い事なら笑って許す事も出来るけど、スカリエッティのしとる事はその範囲を超えとるわ――ガジェットドローンの作
成だけでも重罪なのに、更には京さんのクローン作って、挙げ句の果てには死者蘇生って舐めとんのかおんどりゃぁぁ!!!
なんぼマッドサイエンティスト言うても、最低限のルールすら逸脱しとるやろ此れ!!
「マッドサイエンティストに、常識を求めるのが間違ってるわよはやて。」
「其れもそやな。」
やけど、引き続きスカリエッティの監視は頼むで?――其れから『例の件』もな、ドゥーエちゃん。
「任せなさい――スパイ活動と暗殺は、私の本領だからね。」
「頼りにしとるよ♪」
そして信じとるで?――ドゥーエちゃんなら、どんな仕事であっても、確実にこなしてくれる筈やって!
リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round27
『Tranquilizer』
Side:京
「「「「「「「「「「公開意見陳述会?」」」」」」」」」」
なんだよ其れ?定期的な部隊報告みたいなもんかはやて?――大凡、其れだけじゃ済まねぇと思うんだが……絶対に何かあるよな?
取り敢えず、管理局のお偉いさんが集まりそうな感じはするが……意見陳述会とやらに参加する目的は、其れだけじゃねぇんだろはやて?
「流石に鋭いなぁ京さん?
せや、私はこの公開意見陳述会で、管理局に潜んでいる害虫を全てあぶり出して撃滅する心算なんよ?
ぶっちゃけこれだけの過剰戦力とも言える部隊でもない限りは、ちょお難しい事なんやけどな。」
「其れで実力のある魔導師と、有望な新人を集めた部隊を作ったのね。」
「まぁ、そう言う事やなレオナちゃん。
私となのはちゃんとフェイトちゃんにランクリミッターかけて、保有ランク制限を誤魔化してまで、こんだけの部隊を作ったんは害虫の炙り出
しと、老害に引導渡す為、そんでもって聖王教会の騎士様が占って出た不穏な予言を喰い止める為やで!
……まさか、なのはちゃんにはSSの私用の4ランクリミッターよりも強力なリミッターが必要とは予想外やったけどね。」
「……アイツは、神楽の『裏面八拾伍活・零技の礎(一定時間必殺技封じる技)』喰らっても、普通に砲撃ぶっ放しそうだしな。
しかし何だ、害虫をあぶり出して駆除の他に、老害に引導渡すだけでも相当なモンなのに、眉唾な占いで出た予言を喰い止めるって本気
かよ?てか、その予言てのは信頼できんのか?」
「ふん……予言など下らん。」
「予言と言えば、ノストラダムスだな?」
「いや、アレって実は予言じゃなかったらしいぜテリー?」
「なはは……まぁ、予想通りの反応やな。てか、普通は確かに予言なんて眉唾モンや。
せやけどこの予言は、聖王教会の騎士、カリム・グラシアの『予言者の著書』言う、古代ベルカ式のレアスキルによって成されたもんで、そ
の辺のインチキ予言者が書いた、如何とでも取れるモンとは訳がちゃうで。
予言やから詩的な書き方やけど、其処には可成り明確な事が書かれてるんや。
六課設立前に出た予言にも拘らず、『今起きている事と符合する部分』が多いからな。」
レアスキル……なのはの集束や、はやての蒐集&行使みたいなモンか。
要するにインチキ予言じゃなくて、魔法の一種でなされた『本物』の予言て事か?一体何が書かれてるってんだよ……てかよ、上質紙とま
では言わないが、普通のコピー用紙に書いたらどうなんだ?態々、中世の時代に使われてたような紙使わなくても良いだろ?
「古代ベルカ時代に使われてたのと同じ紙の方が、より正確な予言を記しやすいんやて。」
「意味が分かんねぇ……まぁ、いいや。ドレドレ……」
――旧い結晶と無限の欲望が交わる地
死せる王の下、聖地より彼の翼が蘇る
生ける死者と複製された命は踊り、中つ大地の法の塔は虚しく焼け落ち
それを先駆けに数多の海を守る法の船は砕け落ちる
此れは…マジかオイ?
「意味が分からんぞ?
此れが予言だと――魔法を使って出したにしては、お粗末な詩に見えるが……」
「テメェは馬鹿か八神。」
「なに?聞き捨てならんな京。」
「この予言を見て、何も感じねぇのは馬鹿かつってんだよ。」
この予言は、今正にこの世界で起きてる事件其の物だろ!
『古き結晶』はレリックで、『無限の欲望』はガジェットを作り出した黒幕、生ける死者は生き返ったギースにルガール……ホテルアグスタで
戦ったオッサンもそうかもな。
複製された命は俺のクローンで、法の塔と法の船は管理局の事――この予言は、連中によって管理局が滅ぼされるって言ってんだ。
当たらずとも遠からずだろはやて?死せる王と、蘇る翼ってのは分からねぇがな。
「……此処から其処まで的確に読み取るとは、なんぼ事件に係わっとるとは言え大したモンやな?
失礼承知で聞くけど、京さんてホンマに高校ダブリまくっとるん?そんだけ頭キレるんやったら、高校の授業とか楽勝やないの?」
「俺がダブってのは、成績悪いからじゃなくてサボりまくってた+KOF出場で出席日数が圧倒的に足りなかったからだからな。
其れに加えて、ダブリ回避の為の補習や試験の時を狙ったかのように、此の赤毛――じゃなくて今日は紫毛が学校にまで喧嘩売りに来
るモンだからな……ダブった理由の3割はコイツのせいだ。」
ったく、喧嘩売る場所位選べってんだ腐れ胸筋が。――って、ん?
如何したシグナム、何やら難しい顔して……この予言に何かあったのか?
「死せる王と、聖地より蘇る翼……此れがもし、私の考えているモノだとしたら、相当に危険なモノだ。
死せる王が、古代ベルカの王族――ゼーゲブレヒトの血筋を指し、聖地より蘇る翼が戦乱期のベルカに於いて最強最悪の兵器とされた決
戦兵器『ゆりかご』だとしたら、この予言を防ぐ事は不可能に近い。」
「何だって!?」
お前がそう言うって事は、ゼーゲブレヒトってのとゆりかごってのは相当にヤバいモンなのか?
だが、そうだとしても古代ベルカってのは1000年も前の世界なんだろ?その頃の王族の血筋が絶えてないとは言い切れないが、其の血
は相当に薄くなってる筈だし、ゆりかごってのだって存在してるかどうかも分からねぇんじゃねぇか?
「確かにお前の言う通りだ京。
だが、その可能性を否定する事は出来ん――あの子は、ヴィヴィオはゼーゲブレヒトの血筋の証である紅と翠のオッドアイを持っているの
だからな。
無論、虹彩異常には様々なモノが有るが、少なくともこの世界い於いて紅と翠の組み合わせはゼーゲブレヒトの血筋でしか現れる事は無
いのだ……故に、ヴィヴィオはかの『聖王』の血を引いているのは間違いないだろう。
そしてゆりかごに付いても、現存はしてなくとも、ガジェットやお前の複製品を作り出し、死者の蘇生まで成し得た『無限の欲望』ならば、あ
の最悪の決戦兵器を複製する事が出来るやも知れん。」
「ヴィヴィオが?……マジかよ。」
アレ?でも逆に考えると、ヴィヴィオが敵に攫われたりしない限りは、この予言が成就する事はねぇって言えねぇか?
『死せる王の元、聖地より彼の翼が蘇る』って事は、ヴィヴィオがトリガーになって初めてゆりかごは起動するって事だろうからな――ぶっち
ゃけて言うなら、この面子が揃ってる状態で、ヴィヴィオが敵に攫われるとはどうしても思えねぇんだが如何よ?
俺はルガールに過去2回勝ってるし、テリーはギースを倒してる。俺のクローンはスバル達で抑える事が十分可能で、そもそもなのはが本
気を出したら敵は速攻デッドエンド間違いねぇ訳だしな。
「その意見には賛成するが、万が一と言う事もあるだろう?」
「兄さんとシグナムさんが力を合わせれば、大丈夫だと思いますが……」
「ギン姉の言う通り!京兄とシグナムさんが力を合わせればどんな敵が来てもきっと大丈夫だって!!」
「兄貴達が力を合わせれば敵はねぇって――まぁ、なのはさんがバグかって位にあり得ない強さだから、出張れば如何にかなる筈だしな。」
「京さん達は、私を何だと思ってるのかな?」
何って……一人最終兵器?
「歩く固定砲台。」
「管理局の白い魔王。」
「最終兵器魔導師。」
「この人の砲撃、Sランクの障壁貫くんですけどマジで。てか、もうこの人がラスボスで良くね?」
「へ~~……取り敢えず、皆頭冷やそうか?」
「なのはちゃん、此処で暴れたら、給料とボーナス50%カットするからな?」
「……はやてちゃん、其れは職権乱用。」
「何とでも言えや!てか、こうでも言わんとなのはちゃん止まらんやろうが!
六課設立してから私が書いた始末書がナンボあると思ってんねん!これまでに累計600枚やで!?しかもその9割8分はなのはちゃん
関連やからな!!
こっちとしては、これ以上始末書増やされて堪るかなんや!!そろそろ二十歳なんやから、少しは自制を覚えんかい!そんなんやから一
部から『生きるロストロギア』言われるんやなのはちゃんは!!」
生きるロストロギア……妙に納得しちまうな。
まぁ、予言に付いては了解したし、管理局の害虫駆除ってのもまぁ分かる。――で、老害ってのは誰の事だ?管理局員全員を知ってる訳じ
ゃないが、狡猾そうな爺さんや婆さんは居なかったと思うんだが……てか、この世界の人って爺さんとか婆さんの容姿になんのか?
「いや、ミゼット提督とか普通にお婆ちゃんやからね?
確かに、リンディ提督とか師匠の奥さんとか桃子さんとか、老化現象ってモンに喧嘩売ってる人が居るんは否定できへんけどな――でも、
老害言う表現は、ちょっと語弊があったかも知れへんね。
私の10倍くらいの年齢であるのは間違い無いけど、あの状態を果たして『生きてる』と表現して良いか、メッチャ悩むからな。」
「……サイボーグ手術でもして、生き永らえてるって言うのか?」
「ん~~~……それやったら、そっちの方が万倍マシやでロック君。
まぁ、百聞は一見に如かずって言うから、これ見て貰った方が早いかなぁ?ポチっとな。」
スクリーンに映像が……って、オイ、此れは一体何の冗談だ?
此れは、此処に映ってる物が本当だとしたら、幾ら何でも趣味が悪い所の騒ぎじゃねぇ――一体何なんだ、此の三流猟奇映画みたいな光
景は!!
「培養ポットに入った人の脳髄……ですよね、此れって?」
「八神指令、此れは一体……」
「此れこそが老害って言った者の正体である、時空管理局最高評議会の面子や。
不死への憧れとでも言うのか、連中は身体を捨て去り、脳と脊髄だけの状態――脳髄の状態で特殊な培養液の中で脳の生命活動を維
持させとるんや。
最高評議会の面子が、半世紀以上も変わってない事がおかしいって思って調べてみたら、此れやからな……呆れて物が言えへんて。」
呆れるどころの話じゃねぇだろ此れは!
遅いか早いかの違いは有っても人は何れ必ず死ぬ――だからこそ、死んじまうその時まで懸命に生きるモンじゃないのか?不老不死って
のは、昔っから人の夢だったかもしれないが、其れはあくまでもテメェがテメェとして生きてこその話だろ!
喜怒哀楽の感情表現も出来ないような、脳味噌だけの存在になって生き永らえようなんて、生き汚いにも程があるぜ!
「やから、此れを叩き潰す。――培養ポットさえ壊してしまえば、其れで終わりやからね。
普段はセキュリティの堅い場所やけど、公開意見陳述会の日やったら、此処のセキュリティも手薄になるから其処をつく心算や。」
「誰にそれをやらせる心算だ貴様?」
「ふっふっふ、抜かりは無いで庵さん?
自分で言うのもなんやけど、私はこう見えて顔が広くてなぁ?管理局のお偉いさんから、マフィアの大物に、果ては聖王教会の最高権力
者にまで知り合いが居るんや。
その中には、暗殺のプロも居るから、その人に最高評議会の暗殺は頼んどいたわ♪」
で、その腐れ脳味噌をぶったおす手段を既に考えてたとは、流石ははやてだぜ。伊達に部隊長務めてねぇな。
……知り合いに暗殺のプロが居るってのは少しアレだけどよ?だが、その道のプロなら仕損じる事はないだろうな。相手は言うなら止まった
的な訳だからな。
如何やら、予言を防ぐ事が出来るかどうかは公開意見陳述会がどうなるかにかかってるみたいだぜ――なら、全力で事に当たらねぇとな。
ま、降りかかる火の粉は振り払うだけだがよ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
んで、意見陳述会当日なんだが、此れは予想外――否、ある意味で予想通りの事態が起きちまったなぁ?
「やだー!ヴィヴィオもママとパパと一緒に行くのーーーー!!!」
俺とシグナムは現場組だったんだが、局に残される事になるヴィヴィオが盛大にグズって大泣きしてくれてるからな?
其れだけならまだしも、シグナムに抱き付いてワンワン泣くもんだから、シグナムも困っちまってるぜ……俺も、こんな時は如何すれば良い
か分からねぇから困ってるんだけどな……
「小娘が……物理的に黙らせるか?」
「其れやったら、俺の大蛇薙となのはのバスターをダブルでブチかますからな八神?」
其れは兎も角として、聞き分けろってのは無理かもしれないが、俺とシグナムは仕事だからどうしても行かなくちゃいけないんだ。
こればっかりはどうしようもないから、俺達が帰って来るまで待っててくれないかヴィヴィオ?
「お前の不安は分かるが、私と京が居なくとも、お前を守ってくれる者は居る――特に、シャマルとザフィーラは私の友故に信頼に値する。
私も京も、ちゃんと戻って来るから、其れまで待っていてくれ。……出来るな?」
「……うん、頑張る。」
拙いやり方だったが、俺とシグナムの説得(?)で、一応ヴィヴィオも納得してくれたみたいで、泣き止んでシグナムから離れてくれたか。
少し寂しい思いをさせるかも知れないが待っててくれヴィヴィオ。
どうしても退屈になった時は、テリーに言えば良い。テリーは子供の相手が得意だから、きっと楽しませてくれる筈だぜ。
「OK、その時は任せな!」
「このお兄さん?……うん、分かった。」
よし、良い子だ。
そんじゃまぁ、公開意見陳述会とやらに行くとするかい!――現地に向かうメンバーが、六課メンバー+俺と八神なら、何が起きても如何に
かできるだろうしな。
だが、そうであっても草薙の血が騒ぐ……この公開意見陳述会が、只で終わる筈がねぇ――何かが起きる筈だぜ、間違いなくな。
――――――
Side:???
……此処は何処だ?否、其れ以前に、何故私は存在している?――私は、あの日に消えた筈なのに。
まさかとは思うが、誰かが私を再構築したとでも言うのか?――もしもそうであるのならば、何処の誰かは知らないが、感謝すべき事だな。
目覚めて確認した所、如何やら此処は何処かの研究所の様だが、他には誰も居ない……なら、此れは此処から脱出する絶好の機会だ。
私を再生したのは見事だが、記憶を奪わなかったのは失策だったな。お陰で、利用されずに済みそうだよ。
待っていてください、直ぐに貴女の下に参ります。だから待っていてください――我が主、八神はやて。
To Be Continued… 
|