Side:京


ヴィヴィオの母親役になってから、シグナムははやてから料理を習ってるらしいが……正直に言わせて貰うぜ、まだまだ精進が必要だぜこ
れは流石に。
辛うじて食べる事が出来るレベルだが、味噌汁は味が濃いし、逆に煮物は味がしねぇし、飯は水分が多くておかゆとまでは行かないが柔ら
か過ぎる。
唯一、鯖の塩焼きだけは良い焼き加減で旨かったけどな。



「ちょ、ストレート過ぎや京さん!
 仮にも彼女が作ってくれた手料理やで?此処はお世辞でも褒めるとこやろ!?」

「ふ、甘いなはやて。
 おだてれば調子に乗って潜在能力開放する真吾みたいな奴なら兎も角、シグナムみたいな生真面目な奴には、上辺だけの賞賛より、ハ
 ッキリと言ってやった方が良いんだぜ?そっちの方が伸びるからな。」

「うぅむ……京の好物である焼き魚が巧く出来たのは喜ぶべきところだが、それ以外は及第点にも至らないか……此れは要修行だな。」



な?すぐさま次に向けての事を考えてるからな。
此処で甘い評価を下すのはシグナムの為にならねぇってモンだ――てか、お前だって其れは分かってるんだろはやて?その上で、こんな
事を言ってくるとは良い性格してるぜ。



「あ、バレてた?
 まぁ、此れはアレや、シグナムの成長を願っての事って事で納得してや?」



サラッと言いやがったなこの野郎……マッタク、俺よりも年下のくせに、悪知恵が回るモンだぜ――だからこそ、19歳って若さで一部隊の最
高指揮官を務められるのかもしれないけどな。











リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round26
『ESAKA?~ACID MIX~』











つっても、シグナムの課題は味付けのバランスと飯の炊き方だから、そう遠くないうちに人並みのレベルに達するんじゃねぇかな?
少なくとも、いつぞや見たシャマルよりははるかに家事能力は有るみたいだから……それ以前に、シャマルが論外レベルってのもあるんだ
けどな――まさか、リアルに味噌汁が爆発して、炊飯器が火を噴く事態を見るとは思ってなかったからよ。



「シャマルと比較されてもアレなのだが……しかし、如何するかこの失敗料理?」

「安心しろ、全部俺が平らげやるからよ。
 確かに焼き魚以外は壊滅状態だが、食って食えなくはないから、全部俺の胃に収めてやるさ――お前も、それで良いだろシグナム?」

「って、食べて大丈夫なのか京!?自分で言うのもなんだが此れは相当に酷いのだぞ!?」



問題ねぇ。
味噌汁は味噌が濃いが、逆に煮物は味がしないから、塩分的にはプラマイが取れてるってモンだからな――何より、コイツは俺の為に作っ
てくれたんだろ?なら、残すなんて言う選択肢がそもそも存在してねぇよ。



「言い切ったーー!何此れ、京さんマジイケメン!」

「~~~!耳元で騒ぐなよ!
 つーか、こんな事で一々盛り上がるって、二十歳前のくせにすっかり性格が噂好きのおばさんになってるじゃねぇか!それで良いのかよ
 総司令様よ?」

「おばさんとは酷いなぁ?恋バナ好きのギャル言うてや。」

「ギャル……って感じでもねぇんだよな身長的に。
 なぁ、シグナム。お前の主とやらは、昔っから小さかったのか?19歳の女子平均身長と比べたら相当に低いよな?」

「……非常に言い難いが、主はやての身長は中学生の頃からあまり変わっていないと思う。
 高町やテスタロッサは、中学卒業後も伸びて今の身長になったのだが……主の身長は150cmに届く事なく止まってしまわれたのだ。」



ヤッパリか。
六課の中でもはやてより小さいのってエリオとキャロだけだしな?……ツヴァイは小さいとかのレベルじゃねぇからそもそも対象外だしな。
さてと、飯お代わり!



「分かった。では、持って行ってくれツヴァイ。」

「はいです♪」

「ツヴァイ?え、なんかデカくなってないか?」

「リインはちっちゃいですけど、必要に応じて大きくもなれるんですよ~~♪それでも、はやてちゃんよりは小さいんですけどね♪」



マジか!?流石はデバイスって言う所だぜ、ある意味で何でもアリだな。……タンの爺さんも巨大化とかしてたから、今更人のサイズが変
わったからって驚く事でもねぇな。

と、お代わりしたは良いが、鯖はも味噌汁も煮物も食っちまっておかずがなくなっちまったか……なら、此処は生卵の出番だな。
卵かけ飯は旨いからなぁ。最近は『卵かけごはんのタレ』なんてのも出てるみたいだが、俺に言わりゃ邪道だな。卵かけ飯は純粋な醤油で
やるのが一番旨いんだよ!

「つー訳で、御馳走様!」

「本当に残らず全部平らげるとは……不出来な物であったにもかかわらず、全て平らげて貰えると言うのは、嬉しい物だな。」



ま、此れ位なら食う事は出来るしな。
そんじゃあ、ヴィヴィオを起こしてから、今度はシグナムが朝飯食わねぇとな?俺には作ってくれたが、その様子だとお前は朝飯未だなんだ
ろう?



「その通りだ……自分の分までは手が回らなくてな。」

「なら、朝飯はヴィヴィオと一緒にだな。」

「ふ、其れも良かろうな。」



んで、ヴィヴィオを起こして食堂に行ったんだが……八神の野郎、今日も朝っぱらから凄かったな?いや、何時も以上だったぜ。
朝っぱらからレアステーキ(サーロイン500g)は何時もの事だが、今日は飯が牛丼で汁物は鳥団子汁って、肉率300%じゃねぇか!見て
るこっちの方が胃もたれして来たぜ……
其れとは別に、今日は髪が真っ黒だったんだが、ヴィヴィオに『変な頭』って言われたのが地味にショックだったのかもな?……尤も、ヴィヴ
ィオは色じゃなくて髪型が変だって言ったんだと思うけどよ。
つーか、お前黒にするとスゲェ怖いから。
食事とか、暴走とかじゃなくて意味もなく人殺してそうだぜ?それこそ100人でも200人でも……



「……日本人の黒髪に違和感を覚えるとは思わなかったぜ。」

「その意見には賛同するぜロック。」

「……あの人怖い。」

「安心しろヴィヴィオ、アイツがお前に何かするようなら、私と京で焼き尽くしてやるから。」

「うん♪」



挙げ句に、ヴィヴィオには今度は怖がられちまったからなぁ?……八神よぉ、そろそろその奇妙奇天烈な髪型は変える時じゃねぇか?視界
も悪いから、前髪切ってみろよ…
ったく、草薙と八神の因縁がなかったら、絶対コイツとはライバルになってねぇよな……



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んで、本日の訓練だが、1人にする事は出来ないからヴィヴィオも『見学』って言う形でこの場に来てるぜ。
でもって、只今絶賛俺とシグナムの模擬戦中なんだが、やっぱりシグナムとの勝負は楽しいぜ。八神との勝負と違って、命のやり取りじゃな
い純粋なバトルだから楽しめるのかもな。



「行くぞ京!飛竜一閃!!

「おぉぉぉ……喰らいやがれぇぇ!!!


――ドガァァァァァァァァァァァァン!


その模擬戦も、俺の大蛇薙とシグナムの飛竜一閃がかち合ってゲームエンドだ。タイミングを狙ったかのように、此処で制限時間がなくなっ
ちまったからな――今回も引き分けだなシグナム?



「その様だな京。
 しかし、炎があるとは言え、徒手空拳で私と互角の勝負が出来る事に、今更ながら感服するぞ京――徒手空拳で私と戦えるのはザフィー
 ラだけだったから余計にな。」

「単純に、得物持った相手との戦いもKOFじゃ普通だったからな。
 ビリーやビッグみたいに棍棒使うのはまだ優しい方で、匕首に鉄球に爪に鞭に暗器に、挙げ句の果てには全身武器のサイボーグまで居
 たからな?」

「……兄貴、KOFって参加資格どうなってんだ?」



知らねぇ。その時の主催者によって色々あるんだろうが、明確に『獄中者』が出場できなかったのは神楽が開催した2大会のみで、他は招
待状さえ持ってりゃ参加可能だったぜ?
俺達がこっちに飛ばされた時に開催されてたKOFⅩⅣは獄中者も普通に出場してたからな?……で、今更だが八神よぉ、何だってお前又
オロチの女2人と組んでたんだ?
バイスもマチュアも、お前がKOF96の時に暴走してぶっ殺したんじゃなかったっけか?



「どんなカラクリを使ったか知らんが蘇ったらしい……殺しても蘇るとは、正に蛇の如き執念深さだがな。」

「執念深いのはアンタも同じだろ八神……」

「京に対する執念深さは人食い蛇並み。正にオロチね。」

「……貴様とてオロチの血を引く者だろうが。」

「私は執念深くないわ。」



オロチの、人外の力とかって事なんだろうな。ま、連中の事は向こうの俺が何とかすんだろ。
そんでヴィヴィオ、俺とシグナムの勝負は如何だった?



「パパもママも凄くカッコ良かった♪」

「そうか?……お前の前で負けなかったのは良かったよ。」

「ま、実力は略互角だからな俺とシグナムは。」

取り敢えず、ヴィヴィオには高評価だったみたいで安心したぜ――それだけに、なのはvsフェイトの模擬戦の際はどっかに避難させないとだ
がな……なのはの『1人大量破壊兵器状態』を見たら、子供心に要らんトラウマ植え付けかねぇからな。

そう言えば、今日ってスバルとギンガがタイマンで戦うんだっけか?



「そうだよ兄貴。
 スバル曰く『自分がドレ位強くなったかギン姉に見て欲しい』って事らしい……訓練校の時より格段に強くなってるとは言え、まだスバルは
 ギンガには勝てねぇと思うんだけどなぁ……」

「確かにギンガの格闘センスは可成りなモンだからな?
 前に俺がこっちに来てた時は、クイントさんからシューティングアーツ習ってたんだが、その時はまだスバルは習ってなかったから、経験の
 上でもギンガの方が上だな。」

とは言え、スバルもギンガが六課に加わるまでの間もなのはの猛烈な、其れこそ一歩間違ったら拷問に成り兼ねない訓練を熟して来たん
だから、実力差はそんなにないのかも知れねぇな。
確実に言える事は、どっちが勝つにしてもワンサイドゲームにはならねぇって事だ。

と、始まるみたいだな。



「行くよギン姉!今日こそ勝たせて貰うから!」

「貴女の全力をぶつけてきなさいスバル。全て受けきってあげるから。」


――ギュン!!


でもって、試合開始と同時にスバルもギンガもウィングロードを展開して、行き成りの立体的な格闘戦か。
クイントさんが言うには、スバルとギンガのウィングロードとノーヴェのエアライナーは持って生まれた技術だから真似できる物じゃねぇって
事だったが、空中に浮かぶ相手とやり合う術は持っといた方が良いかもな。



「お前達ならば飛ぶ事も可能だと思うぞ京?
 魔力は無くとも、アレだけ見事に気を扱えるのだから、気で身体を浮かす事くらいは可能な筈だ。」

「何だその舞空術。」

だが、確かにやって出来ねぇ事はないか?
思えばキムの奴は普通に空中走ってたからなぁ……アレも『気』を使ってたんだと考えれば全然ありって事か?――となると大切なのはイ
メージか。
となると……気が身体を包み込んで、そのエネルギーで身体が浮くイメージ。そして、其の力を使って空を飛ぶイメージ!


――ふわり


「あ、出来た。」

「まさか聞いただけで出来るとは驚いたぞ京。」



ま、何処の竜玉的漫画のお陰で人が空を飛ぶ姿ってのはイメージしやすかったからな。この分だと、テリー達も空を飛ぶ術を会得出来るだ
ろうな。
思わぬ形で空を飛ぶ方法ゲットだぜ。

其れは其れとして、スバルとギンガの戦いだが……



「ふっふっはっ、せいや!!」

「ふっ、はっ、やぁぁぁ!!」



此れは、凄い格闘戦が展開されてるなぁ?其れこそKOFでも本戦出場組じゃないと中々お目にかかれない戦いだぜ。
手数ではスバルの方が上だが、ギンガは其れを的確に防ぐか躱すかしてカウンターを叩き込む。だがスバルも超反応でカウンターの点をず
らして決定打にさせない……見事なモンだ。
だが、こんだけ近距離の打ち合いになると何が切っ掛けで攻防の拮抗が崩れるか分からねぇから、勝負の行方もまた分からねぇか。



「てや!!」

「!!!」



その最中、ギンガの蹴り上げでスバルの動きが一瞬止まった!
時間にしたら1秒にも満たないだろうが、この攻防の中で一瞬でも動きが止まるのは命取り――此れは、ギンガの勝ちか。



「てぇい!せい、てりゃ、おぉぉりゃぁぁぁ!!!」



って、蹴り上げからの踵推しからの連撃……アレは草薙流!?
あの踵落としは轟斧 陽だし、其処からの連続技は毒咬み→荒咬み→鉈車を組み合わせたもので間違いねぇ!おまけに鉈車の空中踵落
としの後に奈落落としまで喰らわせてるからなぁ……俺がクイントさんのシューティングアーツをアレンジして使ってるみたいに、ギンガもアレ
ンジした草薙流を使ってるって事か。

でもって、此れで決着だ。
スバルがドンだけ頑丈でも、轟斧 陽のカウンターからの連続技を喰らっちまったら只じゃ済まねぇからな?――今回はギンガの勝ちだな。



「スバル、まだやる?」

「やめとく……あ~~~、また負けたーーー!今日こそ勝てると思ったのに!!」

「でも、良い戦いだったわスバル。……燃えたろ?」



オイオイ、人のセリフを勝手に取るなよギンガ?
でもまぁ、そう言いたくなるほどの戦いだったのは間違いねぇからな?其れこそ、スバルが草薙流の技を身に付けてたら勝敗は違ってたか
も知れないからな。



「ほんと、兄貴の言う通りだな――でも、そう言う事なら、アタシももっと強くならないとだ!
 兄貴、草薙流の蹴り技をアタシに教えてくれ!!」

「良いぜ?妹の頼みを断る理由はねぇからな。」

いっその事、ギンガとスバル、ノーヴェに本格的に草薙流の技を教えてやるのも良いかもな。
炎は出せなくても、其処は魔力で補う事が出来るし、3人ともクイントさんにシューティングアーツを仕込まれてるから格闘技のセンスは申し
分ないからな。
何よりも、真吾以上に教え甲斐がありそうだからな。此処は、少しばかり本格的に鍛えてやるとするか!
ギンガ達が本格的に草薙流を身に付ければ、六課の戦力の底上げが成されるのは間違いねぇからな――思い切りやってやるぜ!!





で、因みになのはとフェイトの模擬戦だが、例によってなのはの直射砲で訓練場が半壊した事で決着付かずのドローだったな。
だが模擬戦を終えたフェイトが『10年前、私よくなのはと戦って生きてたよね。』って言ってた当たり、やっぱりなのははトンでもない奴なの
は間違いないぜ。

もしも管理局員になって無かったら、オロチ以上の脅威になってかもな……マッタク持って笑えねぇけどな。

其れを考えると、なのはを六課に引き入れたはやての判断は英断だった訳か?取り敢えず、味方でいる内は頼もしいって奴だなのはは。
取り敢えずなのはだけは絶対に敵に回さない様にしとくか……敵に回しちまったらこの上なく恐ろしい事態になりそうだからな。

其れを踏まえると、ガジェットや俺のクローンを有してる連中は完璧に詰んだのかもな――コイツ等はなのはが明確に『敵』として認識した
相手だからな。


考えようによっては、コイツは戦う前から勝ちが決まってる状態なのかも知れないぜ。なのはが出張れば、速攻で終わるだろうからな。

だから、何時でもかかって来やがれ!降りかかる火の粉は全て薙ぎ払ってやるからよ!!










 To Be Continued…