Side:京
保護した子供の見舞いに来たら、その子が母親を探して歩き回ってて、俺達も一緒に母親を探してやるって事になった所で現れた、トンファ
ーみたいな双剣を装備した女……何モンだコイツ?
「シスターシャッハ・ヌエラ、聖王教会に務めるシスターだったと記憶しているが……」
「生真面目な性格で融通が利かない、だけど魔導師としての腕前は一流ってとこだよ兄貴。」
聖王教会に属する戦うシスターって所か?
だが、だとしたら何だってシスターに身を置く奴が丸腰の子供に武器を向ける?どんな理由があるかは知らないが、そんな狼藉を黙って見過
ごす程、俺は薄情じゃないぜ?
もし、如何してもコイツを攻撃するってんなら、俺もそれ相応の対応をしなくちゃならないんだが……さて、如何する?
「……彼方達は、其の子の危険性が分からないから、そんな事が言えるんです。」
「危険?この女の子がか?」
ったく、馬鹿も休み休み言えってんだ。
仮にお前の言うように、此の子が危険な存在だって言うなら、この世は危険人物で溢れかえってる事になっちまうぜ?テロリストなんて存在
が普通に居るんだからな。
リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round24
『Psycho sonic Trip』
大体な、コイツが危険だって言うなら、先ずはなのはや八神を取り締まれよ。
なのはと八神は此の子以上に危険極まりない存在だろうが!方や歩く大量破壊兵器、方や暴走したらミッドの人間皆殺しにするかも知れな
い大量殺戮兵器なんだぜ?
なのはや八神と比べたら、此の子は全然安全じゃねぇのか?否、絶対に安全に決まってる!
「兄貴、なのはさんや赤毛野郎を比較に持ち出すのは間違ってると思う……」
「後にも先にもヴィータが『死ぬかと思った』と語ったのは10年前の高町との戦いだけだったから、高町が歩く大量破壊兵器と言うのは納得
してしまう部分があるのを否定は出来ないのだがな……」
「だろ?
六課に所属してるから『法の下の軍事力』になってるが、そうじゃなかったらアイツ等只の危険人物の快楽狂戦闘者でしかねぇって。
危険だからって、コイツを排除しようってんなら、それ以上に危険ななのはと八神を先ずは何とかしてこいよ。」
「……私も死にたくないので其れは止めておきます。
高町一尉と比べれば、確かに戦闘能力は皆無ですが、此の子は戦闘能力以前に存在その物が危険極まりないんです!――この子が存
在していたら、世界は滅びに向かいます!」
ち、なのはや八神を引き合いに出せば何とかなると思ったが、駄目だったか……てか、存在その物が危険だと?
何処をどう見たって何処にでもいる女の子じゃないか?翠と紅のオッドアイってのは珍しいかもだがな。
一体何をどう見たらコイツが危険人物になるんだよ?――まぁ、なのはの前例があるから、見た目だけで危険かどうか判断できねぇってのも
否定は出来ねぇけど。
だが、少なくともこんな子供が危険には見えないぜ俺には。
「……此の子が世界を終わらせる最終兵器起動の鍵であったとしても危険ではないと言いきれますか?」
「最終兵器?
そいつはマッタク持って物騒だが、その兵器は現状で存在してんのか?」
「確認はされていませんが……」
なら言いきってやるよ、危険じゃないってな。
コイツがその鍵だとしても、兵器その物が存在してねぇんじゃ何も問題は無いってモンだろ?――幾ら鍵だけあっても、その鍵で動かす物が
存在してねぇんじゃ意味はねぇからな。
仮にその最終兵器が出てきたとしても、俺達六課が出張れば何とかなるだろ?
兵器である以上は絶対に破壊する手段はある訳だし、超巨大戦艦みたいなモンだったら突撃かまして中に入り込んで、中からぶっ壊しゃ良
いだけの話だからな。
「ですが……!!!」
「……私達は、八神はやて司令の命を受けてその子を保護しに来たのだが、それでもその子を排除するかシスター・シャッハよ?」
「え?」
ってシグナム?
俺達は見舞いに行けとは言われたけど、保護しろとは……いや、此れがシグナムの作戦か。
機動六課其の物は新設の部隊であっても、其処に所属する魔導師はなのはを始めネームバリューのある奴ばっかりだし、はやてに至って
は六課の総司令様だからな。
その司令様直々の命令とあらば、聖王教会のシスターであっても異を唱えるのは難しいじゃねぇか?
管理局の一部隊の総司令にして二佐の地位にいるはやてと、一介のシスターに過ぎないお前じゃ、言い方は悪いが保有してる権力が段違
いだからな。
往々にして、自分以上の権力に逆らうのは得策じゃねぇからな。
「八神司令が?……ならば仕方ありません、此処は引き下がるとしましょう。
ですが、其の子がこの世界に終焉を齎す可能性があるのだと言う事だけは忘れないで下さい…その子は本来この時代には存在していな
い筈の子なのですから。」
……最後まで訳の分からん奴だったな?この時代には存在していない筈って、まるで歴史上の人物でも蘇ったみたいな言い方だぜ。
んで、如何すんだこの子?
「あぁ言ってしまった以上、六課に連れ帰るしかあるまい。
主はやては聖王教会のトップともパイプを持っているから、此の子を引き取るのは難しくない筈だ…事後報告と言う形になってしまうが。」
「まぁ、しょうがねぇんじゃねぇか?あぁでも言わなきゃアイツは引き下がりそうになかったからな。
お前もそう思うだろノーヴェ?」
「だな。あの人は決して悪い人じゃねぇんだけど、直情型と言うか頑固と言うか、ちょっと気難しいとこあっからなぁ……
さてと、武器持ってる怖いおねーさんは、兄貴とシグナムさんが追っ払ってくれたから安心しろちびすけ。
アタシはノーヴェって言うんだ、お前は?」
「ヴィヴィオ……」
「ヴィヴィオか、良い名前だな。
俺は草薙京、宜しくな。」
「シグナムだ。」
「…………」
こりゃ、さっきので完全に脅えちまってるなぁ?
俺等がアイツを追っ払ったとは思ってるみたいだが、同時に警戒心も持ってるって所か?……テリーなら、何かこう、巧くやるんだろうが、子
供の警戒心を解くのは難しいよな?見舞いの品でぬいぐるみでも持ってくりゃよかったな此れは。
さてどうしたモンか……
「ふむ……連れてきておいて正解だったかな?頼むぞ。」
『♪』
ってオイ、胸のポケットの中から何か出てきたぞシグナム!?
サイズ的には手のひらサイズの、羽の生えたきつねみたいな謎生物が!!……フリードにしろそいつにしろ、UMA研究者が見たら狂喜乱舞
する生き物がいるよなミッドチルダは。
「何だアレ?」
「ハネキツネと言う小型の生き物だ。名前はモンド、ベルカ語で『月』を意味する言葉だな。」
ベルカ語?……地球でのドイツ語みたいなもんか。
んでハネキツネとは、また面白い奴が居たもんだぜ。てか普通に飛んでるし。
『♪』
「わぁ……可愛い!」
更にはヴィヴィオの周りを飛び回って、すっかり気に入られたみたいだな?
何にしても此れで少しは警戒心も解けたって所だな……そんじゃまぁ、もう一押しとして簡単な手品でも見せてやるか。つっても、今思い付い
た即興モンだけどな。
「モンドの事は随分と気に入ってくれたみたいだなヴィヴィオ?
そいつと遊ぶのも良いが、俺が少し面白い物を見せてやるぜ。」
「面白い物?」
そう、ちょっとしたマジックってやつさ。
此処に1本のタバコがある。
そいつを両手で握って、更に右手で握りしめて、握った拳に息を吹きかけると……あっと驚き、タバコがイチゴ味の飴玉に大変身だ。
「すごーい!!」
「此の飴玉はやるよ。別に変なモンじゃないから喰っちまいな。」
「うん。」
「中々やるな京?」
「ま、即興だし、握り拳に隠せる物が2つあれば誰にでも出来る手品だけどな。」
さてヴィヴィオ、お前はママを探してたんだよな?
非常に残念な事なんだが、此処にはお前のママは居ないみたいなんだ。……加えて言うのなら、探しても見つかるかどうか分からないって
事みたいなんだ此れが。
「え?」
「おい京!此の子にそれを言うのは酷だと……!」
「だから、シグナムがお前のママになってくれるってよ。」
「……は?何を言ってるんだお前は!?」
何って、日本語だけど?
いや、如何考えたってコイツの母親が存在してる筈ねぇだろ。ノーヴェが一緒に探してやるとは言ってたけど、探しても見つかる筈がねぇんだ
から、なら新しい『ママ』を設定してやった方が良いだろ絶対。
ノーヴェは『ママ』って感じじゃないし、俺は男だから、残るはお前だけだろシグナム?そう言う訳だから頑張れよシグナムママ。
「お前……!」
「……ママになってくれるの?」
「!?」
でもって効果抜群だなコイツは。
ヴィヴィオはシグナムの事を新しいママと認識したみたいだからな――大体にして、六課で預かるとなったら面倒を見る奴が絶対に必要にな
るんだから、誰かに特別懐いてた方が面倒がねぇだろ。
「確かに其の通りだ……其れに、こんなに純粋な目で見られてしまっては『違う』とも言えん。
子守りに自信があるとは言えんが、母親役と言う大役を、何とか務めてみるとしよう……ナカジマ夫人に教えを乞うかもしれんがな。
――そうだ、私がお前の新しいママだよヴィヴィオ。」
「シグナムママ♪」
単純だな子供は。いや、純粋なのか。――或は、ヴィヴィオが単純に母となる存在を欲していたのか……其れは分からないけどな。
にしてもシグナム、自信があるとは言えないとか言ってた割に、確りとヴィヴィオと馴染んでるじゃないか?此れなら、間違いなく大丈夫だろ
うな。
「其れじゃあヴィヴィオ、此れからママと一緒に別のところに行くとしようぜ?」
「……別の所?」
「私の仕事場にして、ヴィヴィオの新しい家となる場所だ。
少々個性的でクセも強いが、其処に居る連中は良い奴等ばかりだと保証しておこう。」
「赤毛野郎となのはさんも、子供には安全だろうからな。
其れに、新しいお家はここよりもずっと安全だから、ヴィヴィオに怖い事する人だって現れない筈。てか、絶対現れねぇって約束するぞ!」
ナイスだぜノーヴェ。此れなら、ヴィヴィオも安心できるだろうからな。
「分かった、ママと一緒に行く。」
「では、行くとするか。」
んで、シグナムがヴィヴィオの手を引いて、六課に向けて出発進行だ。
そう言えば、八神をなのはの生贄にしちまったが、多分生きてるよな?
今更ながら、八神となのはの模擬戦てのは可成りヤバいモンになるんじゃねぇかと思うんだが……まさか、管理局が更地になってるとかは
ねぇよな?
「そうならない様に、訓練場をシャマルの結界が覆ってる筈だが……其れでも絶対にないとは言い切れないのが、高町の恐ろしさだな。」
「やっぱりアイツは歩く大量破壊兵器で間違いねぇな。
そんじゃまぁ、局に戻るとしようぜ?ヴィヴィオの事も出来るだけ早い内に手続した方が良いだろうからな。それじゃあ、出発進行だぜ!」
「しんこー♪」
とりあえずヴィヴィオは六課で預かる事になったが、コイツがレリックを持っていた事を考えると、スカリエッティの奴が、ヴィヴィオに関する彼
是に係わって居そうだぜ。
となると、今度今回みたいな襲撃があった際には間違いなくヴィヴィオが狙われるか……だが、狙うのは勝手だが、其れをやるなら覚悟を
決めておけよな?
降りかかる火の粉は払うのが俺のスタイルなんでね!
ま、今はヴィヴィオと安全に局に向かうのが最重要任務だな。――先ずは、この重大任務を終わらせるとするか!!
To Be Continued… 
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