Side:京


ったく、折角の休日だってのに、其れをぶち壊すような真似しやがって。折角の休日が台無しだぜ。
何よりも、シグナムとノーヴェが誘ってくれた休日のお出掛けを台無しにしてくれたのは絶対に許せるもんじゃねぇよな?……八神との勝負を
潰されたのは別に良いけどよ。



「……貴様、俺との決着と休日と何方が大事なのだ?」

「休日に決まってんだろアホンダラ。
 大体なぁ、テメェとの勝負は何時でも出来るが、此の休日は今日しかねぇんだよ!後日同じような事をしても、其れは限りなく今日に近いだ
 けで今日じゃねぇからな。」

「ふ、詩人だな?伊達に詩を書く事が趣味ではないか。」



……まぁ、じじむさい趣味だとは思ってるけどよ。

取り敢えずはガジェット共を残らずぶっ倒すぜ!!――ノーヴェ、『スイッチ』だ!!!



「兄貴!……了解だ!!」



そんでもって此処で、チームエディットだ。
ノーヴェが『スイッチ』の意味を分かってくれたお揚げで瞬時にポジションの変更が出来た――此処からは俺とアンタがタッグだから、頼りにし
てるぜシグナム?



「ふ、私もまた頼りにさせて貰うぞ京。
 だが、我等の炎から逃れらる者は存在しまい――現れたガジェットを全て消し炭に変えてやろうではないか!!
 そしてテロリスト共に分からせてやろう……自分達が、誰に向かって喧嘩を売ってしまったのかと言う事をな。」

「異論はねえな。」


さて、消し炭になりたい奴はかかって来な!!
俺とシグナムの炎で望み通りにしてやるからよ――派手に燃やしてやるぜ!!











リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round22
『Tranquilizer』











No Side:


休日返上での出撃となった六課だが、突然の襲撃に対しても的確に対処し、現れた端からガジェットを掃討し事態は鎮圧の方向に向かって
いる――と、普通は思うだろうが、如何やらガジェットを送り込んで来た者は、相当に性格が悪いらしい。
ガジェットを倒したらその都度新しいガジェットが出て来るのだから、対処する方としては堪った物ではないだろう。

倒しても倒しても新たな敵が現れると言うのは、戦う者としては相当に嫌なモノであり、更に連戦による疲労も蓄積して、倒されてしまうのが
オチだろう――普通ならば。


「フリード!!エリオ君、テリーさん、乗って下さい!!」

「キャロ!分かった!!」

「ドラゴンに乗ってのライディングバトルかい?……何ともFantasticだが、面白くなって来たぜ!Come on Scrap!(来いよくず鉄!)」



ディバイィィィン……バスタァァァァァァ!!!

レイジング……ストォォォォォム!!!

ファントムブレイザー!!!



だが、生憎と機動六課は普通ではない。
隊長陣が特出した能力を持っているのは言うまでもないが、はやてが直々に選出した新人達は、将来的にエース格の力を持つ可能性のあ
る者達なのだ。
更には其処に、別世界からやって来た超一流の格闘家が加わっているのだから、ドレだけの敵が現れようとも押し切られると言う事だけは
ないのである。

フリード騎乗したエリオは龍騎士としての力を如何なく発揮し、同乗したテリーもまたパワーウェイブやパワーゲイザーでガジェットを倒す。

ロックとスバルは格闘戦でガジェットを圧倒しつつ、直射魔法と気を使った技を繰り出し、ティアナは指示を出しながらも射撃魔法や砲撃魔法
でガジェットを撃破し主導権を一切握らせない。


中でも凄いのは、矢張り京のチームだろう。


「ふん、中々に出来るようだな小娘?
 血が繋がっていないにも拘らず京の妹を名乗るだけの事はあるようだ……貴様の評価を修正しておいてやる。中々出来る奴へとな。」

「テメェに褒められても嬉しかねぇよ赤毛野郎。
 てか、只の危険人物だと思ってたけど、テメェこそやるじゃんよ?伊達に、兄貴の命を狙っちゃいねぇな?――まぁ、ガジェット如きにやられ
 るようじゃ、100年経っても兄貴には勝てねぇだろうけどな。」

「減らず口を……だが、戦いの場で其れだけの軽口が叩けるのならば大丈夫だろう。――雑魚共を一掃するぞ!!」

「言われるまでもねぇってんだ!!」


ノーヴェと庵は何やら言い合いながらも的確にガジェットを葬って行く。
ノーヴェの魔力付与打撃と、庵の闘争本能に物を言わせた戦い方は相性が良かったらしく、ノーヴェの拳が煌めき、庵の蒼炎が猛る度にガ
ジェットはくず鉄へと姿を変えていた。

其れだけでも凄まじいのだが、京とシグナムのコンビはその上を行く。


「ボディが、がら空きだぜ!燃えろぉぉ!!

「燃え尽きろ、煌龍!!!


京がガジェットを荒咬み→八錆→琴月 陽で派手に燃やせば、シグナムも負けじと袈裟斬り→祓い斬り→煌龍のコンボ攻撃でガジェットを倒
して鎧袖一触。
炎の貴公子と烈火の将の前ではガジェット如きでは相手にならないようだ。


「アンタじゃ燃えねぇな?」

「此の程度の相手では、私の首をやる事は出来んな。」


1800年の歴史を持つ草薙の炎と、矢張り1000年以上の歴史を誇る夜天の炎が組むと、其の力は加算ではなく乗算されると言っても過言
では無いのだろう。
と言うか、京とシグナムとノーヴェは、本来の力に、休日を潰された事への腹癒せがプラスされて、なんかもうやたらと強いのも事実ではある
のだが。

何れにしても、此れは襲撃した側からすればガジェットを無駄に消費する戦いである事は間違いないだろう。
数の暴力で圧そうにも、殆ど一撃でガジェットがやられてしまっているのでは其れも難しい上に、六課には高町なのはと言う、やろうと思えば
一撃でガジェット100体を砂鉄に変える事が出来る歩く最終兵器が居るのだから分が悪いだろう。

とは言え、襲撃者とて馬鹿ではない。
ガジェットに次ぐ戦力は既に送り込まれているのだった。


「よう、オリジナル……灯蛾の如く、燃え尽きろ!!」

「ちっ……俺のクローンかよ。
 俺と同じ顔した奴が、声も性格も全く違って敵として存在してるってのは、あんまりいい気分じゃねぇな。」

「ホテルアグスタでは大敗したにも拘らず、今また出て来るとは学習能力がないのか、それとも相当に腕を上げて来たのか……何れにしても
 我等の前に現れたのならば覚悟は出来ているな?」


京達の前に現れたのは京のクローンの中でも最も完成度の高いKUSANAGI。
族車の様なバイクに跨り、その後ろからデコトラの様な弩派手なガジェットを引き連れての登場である。

当然、京とシグナムは臨戦態勢に入るが……


「おぉっと、今日は戦いに来た訳じゃねぇ。
 つい最近こっちに加入した新戦力の顔見せをしとこうかと思ってなぁ!!連れてきてやったぜ、オッサンよぉ!後は好きにしろや!!!」


KUSANAGIは戦いに来たのではないと言う。
ならば何をしに?と、思った所で、後からついて来たガジェットが弩派手に爆発し、その中から何かが飛び出して京とシグナムの前に降り立
った。
2m近い巨躯に、長めの金髪を半分けにし、両耳には小型のリングピアス、そして口元には髭、そして身に纏うのは赤い燕尾服と、其処だけ
見るならば紳士然とした佇まいだが、その身から溢れ出る『負のオーラ』がその人物が紳士であることを否定していた。


「テメェは……ルガール!
 八神の推測で、若しかしたらと思ってたが、本当に生き返って居やがったのか!!!」


其れはルガール・バーンシュタイン。
KOF94と95の主催者であり、オロチの力をその身に宿したが故に消滅と言う末路を辿った闇の武器商人だった男だ。


「ムハハハハハァ……ひぃさしぶりだぬぁ、草薙京!
 このとぉりぃ、見事復活を果たしてやったずをぉ!こぉれどぅえ、貴様に復讐する事がどぅえきぃる!!」

「……何で若本になってんだお前?
 復讐って、俺ってお前に何かしたっけ?KOFの決勝戦で叩きのめしたのは覚えてっけど、それ以外は何もしてねぇだろ?」

「ふぅざくぇるぬぁ!!
 貴様はァ、わぁたしの覇王としてのプライドゥをズタズタにすぃ、空母までをも海の藻屑としてくれたのだずぉ!!」


そう、ルガールは94、95共に最終的には京に負けていたのである。
特に95大会では、京の父親である草薙柴舟を洗脳して尖兵にしたにも拘らず、柴舟共々京に連続撃破の2人抜きをやられていたのだ。
其れならば、確かに復讐も納得できるのだが……


「空母って……アレはテメェが自爆したんじゃなかったっけか?」

「……良いの、お前のすうぇいなのぉ!!あの空母は高ぉ~価だったのだずぉ!!」

「あ、そう。」

「意外とせこい覇王だな。」


空母はあくまでもルガールが自爆した事で失われた物であり、断じて京のせいではない。
其れでもそれを京のせいにする辺り『自分が自爆する事になったのは、お前が私に勝ったからであり、お前が負けていれば自爆する事もな
かったから、勝ったお前が悪いんだ』と言うトンでもない俺様理論が成り立っているのかも知れない。

だからと言って、目の前に現れた新たな敵を相手に怯む京とシグナムではない。


「まぁ良いさ、テメェが俺に復讐したいってんなら相手になってやるぜルガール?
 だがな、テメェじゃ俺には絶対に勝てないって断言してやるよ――ずっと死んでた奴は復活した所で勝つ事が出来ねぇって言う不文律が、
 この世には存在してるんだからな。」

「どうやら、今日とは因縁浅からぬ仲のようだが、我等と敵対すると言うのならば、再びその身を地獄道に落とすだけだ――折角復活したの
 ならば、その命は大切にすべきだと思うがな。」


京は指先で炎を爆ぜさせ、シグナムはレヴァンティンの刀身に炎を纏わせルガールに向ける。
それは、向かってくるなら相手になると言う明確な意思表示であり、京とシグナムの纏う闘気も紅蓮の炎の如く真っ赤に染まっているのだ。

しかし――


「安心すぃろぉ、今此処でお前達と戦う心算はぬぁい。
 何よりむぉ、私自身復活したばかりどぅえ、パワーぐあぁ完全どぅぇはぬぁいのでぬぁ?わぁたしのパワーが充実したころぬぃ、あらとぁめうぇ
 恐怖の招待状をわぁたしてやるとしよう!
 くぁえるぞ、KUSANAGIぃ!!!」

「あんだぁ?うるせーな若本ルガール!叫ばなくても聞こえてんだオラァ!!
 ったく、こんな事の為だけに俺を使いやがって……テメェ、帰ったら覚えとけよ!!」


今はまだパワーが十分でないと言う理由からルガールはその場から離脱。
KUSANAGIが自分のバイクの計器を弄った瞬間に転移魔法が発動し、KUSANAGIとルガールはその場から離脱!転移魔法が発動した瞬間
に京とシグナムが飛び出したが、京の百八拾弐式とシグナムの紫電一閃が炸裂するよりも一瞬早くルガール達は転移し、其処から消えた。


「ち、取り逃がしたか……」

「あの男、可成りな強さだな?
 死臭漂う血塗られた邪な強さだが、其れでも強い事に変わりはない――奴の口ぶりから察するに、お前は奴に勝った事があると推測する
 が、今度もまた勝つ事が出来るか?」

「愚問だぜシグナム。
 2度勝ってるから楽勝だ!――何て言う事を言う心算はねぇが、野郎は俺の敵じゃねぇ。アイツは只強い力を求めてるだけで他には何もね
 ぇんだ、其れじゃあ俺には勝てないさ。
 俺への復讐とか抜かしてやがったが、其れにしたって八神の物と比べたら格段に温いぜ。――今はまだパワーが充実してないって言って
 たが、パワーが充実した所でオロチ以上になる事は有り得ねぇから、負ける要素が何処にもないぜ。」

「……言われれば、そうだな。」


完全に取り逃がした形ではあるが、敵戦力が知れたと考えれば悪くはないだろう。
其れに、京からすればルガールは過去に2度倒している相手であり、復活した所で、95大会よりも強くなっている自分ならば負けないと言う
絶対的な自信があったのだから、取り逃がしても無問題だ。


「さてと、そんじゃあまぁ、残ったガジェットを打っ倒そうぜ!!」

「ふ、異論はないな。」


そして再びガジェット狩り開始!!
残ったガジェットが全滅するのは時間の問題だろう。








――――――








ルガールが京達の前に現れたのと略同刻、フリードに乗って戦うテリー達の前にも、新たな相手が現れていた。
飛行能力を持つボード型のガジェットに乗って現れたのは、金髪をオールバックにし、赤と白の袴姿のアメリカン。――かつてサウスタウンを
手中に収め、帝王として君臨していたテリーの仇敵、ギース・ハワードが其処に居た。


「ギース……貴様、生きていたのか!!」

「如何やら、私は簡単には死ぬ事が出来ないようだよテリー・ボガード。
 この世界で復活し、ミッドチルダをサウスタウン同様に手中に収める心算で居たが……まさか、貴様が此処に居るとは予想外だったよ。
 だが、だからこそ面白い。
 お前は私を止めるのだろう、テリーよ?――支配と言うのはスンナリ行くと存外面白くない物だ……貴様の様な抵抗勢力が存在し、其れを
 叩きのめした上で支配してこそ価値がある。」

「その思考形態は相変わらずだなぁ?
 だがこの街をお前の好きにはさせないぜギース?……俺の前に立ち塞がるなら、もう一度倒す、其れだけだ!!!」


互いに睨み合い、どちらも退こうとはしない。
テリーとギースの睨み合いは、物理的な火花が散っている様にも見えるが、互いに今此処で戦う心算はないようだ――かつて死闘を演じた
間柄だからこそ、此処は決着の場ではないと感じたのかもしれない。


「とは言え今日は挨拶だから戦うつもりはない故に退かせて貰おう。
 其れとは別にテリー、私の息子は、ロックは如何している?私の死後は、お前と共に居たのだろう?」

「……安心しな、アンタと違っていい子に育ってるぜ。
 でもって格闘の腕に関しても大したもんだ――今はまだ発展途上だが、5年以内にロックは俺を超える、其れだけは断言しておくぜ。」

「そうか、其れを聞いて安心した。
 アイツは私を恨んでいようが、其れでも息子が立派に成長しているのであればこれほど嬉しい事もない――ならばロックに伝えておけ。
 私が憎いのならばその手で直接私を倒しに来いとな。」

「OK、伝えとくぜギース。
 俺は一度はお前を倒して親父の仇を討ってるからな……今度は、ロックにおふくろさんの仇を討たせてやることにするよ――だが、何れに
 しても、貴様の野望は成就しないぜギース?
 此処には俺とロックの他に、京と庵とレオナも居るんだからな――俺達機動六課が負ける事はねぇ。
 一時の負け戦くらいはあるだろうが、最終的に勝つのは俺達だ、その事を努々忘れるなよギース?」

「心に止めておこう。
 では、また会おうテリー・ボガード――何時の日か、因縁も遺恨も何もなく、純粋に格闘家同士の戦いが出来る事を願っているぞ。」

「ギースゥ!!!」


瞬間、ガジェットは転移し、ギースはその場から離脱。


其れと同刻、保護された少女を輸送中のヘリが砲撃で攻撃されたが、ヘリに同乗していたレオナが、ヴァイスのストームレーダーを借りて、
砲撃を相殺し、撃墜を阻止。
重要な存在である少女は無事に聖王病院に運び込まれたのだった。








――――――








Side:京


ったく、休日に態々仕掛けて来るとは、奴さんの性格は最悪なのは間違いないぜ――ルガールの野郎を復活させてたのがその証拠だぜ。
まぁ、ガジェット共はぶっ倒してやったから俺達の勝ちだってのに、何でヴィータは浮かない顔してんだ?



「ガジェットは倒したけど、レリックは奪われた――アレは絶対に奪われちゃいけない物だったのに――!!」

「レリックを……そいつは重いな。」



「心配無用ですヴィータさん!!」



って、如何したティアナ?
やけに自信満々だが、何か策を講じてたのか?



「万が一を考えてこんな仕掛けをしておきました。」



此れは……キャロの帽子を取ったら、其処にチューリップが生えて、そんでもってレリックに変化しやがった――成程、よく考えだしたモンだ
ぜ。二重の幻術を見破る事は出来ないだろうからな。
やられたふりをして、まんまと相手に偽物を掴ませたって訳か――大したもんだぜティアナ。

誇張抜きで、お前なら管理局の次期エースになる事も出来るかもな――ったく、お前が凡人とか有り得ないぜ。

テメェ等の襲撃はマッタク持って無駄だったなテロリスト共――幻術に惑わされて真贋の区別が付かないようじゃ話にならないぜ。
精々偽物を掴まされた事に後悔しな!!







――――――








Side:???


さてと、ナンバーズの連中が意気揚々としてカプセルを持ち帰って来たけど、其処にレリックがある可能性は極めて低いでしょうね――彼女
の性格を考えるなら、奪取されることを前提に、複数体の偽物を作っていたでしょうからね。


……故に、トーレが持ち帰った巨大な箱が、レリック入りの本物である可能性は可成り低いのだけれど。――さて、結果は?



「レリックはない、ダミーだったか。
 だが其れ以上に腹立たしいのは箱内に一緒に入っていたこの手紙だぁ!!あからさまな挑発にしても、非常に腹が立つぞ此れは!!」



手紙って、其れは流石に興味がわくわね
さて何が書かれていたのか――って、此れは普通に殺意も湧くわ。だって手紙には……


『此れは偽物らしいぜ?』

『残念だったな?』

『アンタじゃ燃えねぇな?』

『アナタでは勝てない。』

『其のまま死ね。』



此れだけのメッセージが残されていたのだからね。
此処までされたら、負けを認めざるを得ないでしょうね――あ、トーレが書類を引きち切った……其れもまた、良い事なのかもね。



「ぶっ殺す!!」



其れは無理なんじゃないかしら?――アンタじゃ彼女達に勝つ事は出来ない。復活した奴等共々、そう思ってしまうわね。
これで、こっちの戦力データも大体出揃ったから、こんど総司令殿に渡しておかないといけないわ――同時に、こっちには六課のダミーデー
タを渡しておかないとね、ダミーだとばれないようにした上で。

まったく、此れも楽な仕事じゃないわね。













 To Be Continued…