Side:京


はやての命令で、機動六課一同は、俺や八神を含めて視聴覚室に集められたんだが……まさか、こんな物を見せられる事になるとは、思っ
てなかったぜ。

スクリーンに映し出されてるのは、血で赤く染まった雪と、大破したレイジングハート、そして血まみれのなのはと、そのなのはに向かって必
死に叫ぶヴィータの姿だ……此れは、作った映像じゃなくて、記録映像なんだろうな。



『おい、確りしろ!確りしろなのは!死ぬな、死ぬんじゃねぇ!!
 まだか、まだ救護は来ねぇのか!!早くこい!早く来いよ!!このままじゃ、なのはが死んじまう――お願いだ、早く来てくれーーー!』



映像は、此処で終わりか。
はやて、今の映像は……



「此れが、8年前に起こった、管理局史上最悪とも言えるべき事件や。
 僅か11歳の嘱託魔導師が任務で瀕死の重傷を負った。――二度と立って歩く事が出来ないかも知れへん程の大重傷をな。
 やけど、なのはちゃんはキッツイリハビリを乗り越えて、そんでもって再起を果たしたんやけど……この時の経験から、基礎は何よりも大事
 って思ったみたいやな。
 其れまでなのはちゃんは、馬鹿デカい魔力に物を言わせて、基礎をすっ飛ばして奥義会得しとったからな。」

「其れを言われると、面目次第もありません。」


その結果が、厳しくても基礎の繰り返しだったって言う訳か――ったく、其れならそうと言ってやれよ?
ティアナは己の意志は堅い感じだが、だからと言って石頭じゃないから、言えばきっと理解してくれた筈だぜ?……まぁ、今更かもだけどな。











リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round19
『Cool Jam~嵐のサキソフォン3~』











まぁ、なのはの過去に何があったのかは良く分かったぜ。――なのはが基礎練習に拘ったのも、まぁ一応は理解できたぜ……基礎を疎か
にしたら、やけどじゃ済まない痛手を被るって言う事を自ら体験してる訳だからな。
だからこそ基礎を徹底的に固めてたって訳か。……基礎を固めるにしては、元気が取り柄のスバルがグロッキーになる位にハードな訓練だ
ったのには、少し疑問があるけどな。



「はやて、俺の記憶が間違っていなければ、あの事件から復活した辺りから、なのはがやたらと好戦的になったのではなかったか?
 そして好戦的になるだけならばまだしも、模擬戦であっても実戦宛らの本気の砲撃を叩き込むような危険人物になってしまっただろう?」

「確かに、この事件で負った瀕死の重傷から復活した後で、なのはちゃんはえっらいバトルジャンキーになったのは否定出来へんなぁ。
 庵さんにぐるぐる巻きからのブレイカーブチかましたんも復活後やったし、なのはちゃんが出撃すると必ず始末書が出るようになったのも復
 活後やったなぁ……クロノ君が良くぼやいてたわぁ。
 そんななのはちゃんが、基礎の大切さを教える為に徹底的な基礎固めをやったら、そら『基礎』と言いつつも、スバル級の体力バカがヘバ
 るレベルのモンになるやろうな。」



自分基準かよ!いや、近しい実力の奴なら其れでも良いが、スバル達はお前よりも大分実力は下だろ!なのはが横綱だとしたら、スバル
達は平幕、其れも良くて前頭一桁後半だろ!
俺だって、偶に真吾とスパーリングやってやる時は『真吾より少し上のレベル』に抑えてやってるってのに、完全に自分基準とか、教える側と
して色々間違ってねぇか?



「そうなんやけど、なのはちゃんの教導をやり遂げた局員は、各部署で確り成績残しとるから上もあんまし文句言えんのや。
 ぶっちゃけて言うとな、管理局内、とりわけ武装隊からは『優秀な隊員は高町教官から』なんて言われとる位なんよ?だから、なのはちゃ
 ん的にも手抜きは出来へん。」

「手抜きと手加減は違うんじゃねぇか?」

「やだなぁ京さん、手加減はしてるよ?
 少なくとも訓練では、ブレイカーは勿論、バスターすら使ってないから。少なくともスバル達には♪」



当たり前だ馬鹿野郎!
八神がトラウマ植え付けられるほどの一撃を訓練でぶち込まれたら、間違いなくスバル達が使い物にならなくなっちまうだろうが!!それ以
前に、自分が撃墜されて死に掛けたんだから、教え子を撃墜しかねない攻撃はするなよ!
幾ら非殺傷とは言え、落とされた時の恐怖ってのは、存外重い物に成り兼ねねぇんだからな。



「……なのはが過去に死に掛けて、そんで基礎に重点を置いてて、死に掛けたのが切っ掛けで、色々とヤバめになったのは理解した。
 だから、今度はお前の番だティアナ。何であんな無茶な事をしたのか、ちゃんとなのはに話せよ――何で、力を求めたのかをな。」

「はい……」



と、話が妙な方向に行こうとしてた所で、ロックが軌道修正してくれたか。
テリーみたいな奴といると、自然と場の空気を作る事が巧くなるのかもな?テリーは格闘家としては超一流だが、場の空気を変な方向に持っ
てっちまう事があるから、その修正力も大事なんだろうな。

だが、確かにティアナが何であんな事をしたのかは気になるぜ。
少なくとも、俺が見た限りじゃ、ティアナは指揮官タイプだが、だからと言って『勝利の為に仲間を斬り捨てる』様な奴じゃないと思ったからな。
其れなのに、幻影じゃなくて本物のスバルを囮にしたのは何でだったんだ?



「私は、六課に配属された時は喜びました――管理局で知らない人は居ないエース・オブ・エースと同じ部隊になれた、雲の上の存在である
 人から直接指導を受けられるって。
 だから、基礎固めの練習でも、此れは必要な事なんだって思っていたんです……でも、配属された新人の中で、私は一番魔導師ランクが
 低かった上に、キャロの様な龍を使役する力も、エリオの様な魔力変換資質もなかった――私だけが、何の取り柄もない凡人だった。
 なのはさんの訓練で地力は底上げされたんだろうけど、其れだけじゃ駄目だと思ったんです……兄さんは無能じゃない、ランスターの弾丸
 は全てを撃ち抜くって証明する為には!
 だから……今回の模擬戦で、なのはさんでも対処しきれないような事をしないとって――初めに幻影をぶつけた上でスバルをぶつければ
 幾らなのはさんでも驚いて隙が出来る筈だって、そう思って……!」



それで、あの作戦か。
だがティアナ、お前の兄さんとやらが無能じゃないって事を証明するってのは如何言う事だ?お前の兄貴は、仕事でトンでもない失態をやら
かしちまったとでも言うのか?



「……違うんだ京。もしそうだったならドレだけ良かったかだ。
 ティアナの兄さんは局員で、任務で殉職しちまったらしい――其れだけなら、名誉の殉職って事に出来たかもなんだが、葬式の席に空気を
 読まない馬鹿野郎が現れたらしいんだ。ティアナの兄貴の上司ってのがな。
 そいつはあろう事か、ティアナの兄貴を『役立たず』と罵ったらしいんだ……自分の命を犠牲にしてでも任務を全うしようとした奴をな!!」



マジかよ?……ったく、何とも胸糞の悪くなる話だぜ。
葬式ってのは、死者の魂が安らかにあの世に行けるように行う儀式みたいなもんで、出席者は故人の冥福を祈ってその魂を送り出してやる
モンだってのに、その場で故人を罵倒するとは、そいつの常識を疑うぜ。

となると、ティアナは其れを聞いて憤慨し、兄貴に掛けられた根拠がなく心無い汚名を返上する為に頑張ってたって事か――其れじゃあ、確
かに無茶の一つもしたくなるってモンだぜ。
ティアナはティアナで、苦しんでた訳だ……結局の所、今回の事は、なのはもティアナも言葉が足りなかったって言う事なんだろうな。



「そう、だったんだ……其れじゃあ、基礎訓練の繰り返しを行ってたら確かに不安を覚えちゃうよね。
 ……ゴメンねティアナ、私がもっとちゃんと伝えておけば、貴女があんな事をする事態にはならなかったかも知れない――全ては、私の言
 葉が足りなかったせいなんだね……」

「そんな事ないですなのはさん!!私の方こそ、ちゃんと言うべきでした……そうすれば、なのはさんも基礎の繰り返しの意味を話してくれた
 かも知れないんですから。
 だから――」

「お互いに言葉が足りなかったって言う事で、お相子かな?」



其れが一番だろうし、其れで手打ちにすべきだろうな。
お前もティアナも、どっかで手打ちにしないと、互いに『自分が悪かった』って言って、堂々巡りになっちまうだろうし、互いに絶対譲らねぇだろ
うからよ。
んで、テメェは何難しい顔してやがんだ八神?こう言う場面は趣味に合わねぇか?……其れとも、葬式の場で死者を罵倒したクソ野郎の話
を聞いて気分が悪くなったか?



「其れもある……が、それ以上に、今回の一件は気に入らん。
 オロチが地球意思である事を考えれば、アレがオロチである筈がないが……だが、俺を暴走させる事が出来るのもオロチだけだ。」

「言われてみりゃ、其れもそうだな?
 ……って事は何か?この世界の誰かが、何らかの方法でオロチのデータを手に入れてクローニングしたとでも言うのか?……冗談キツイ
 ぜ八神。
 幾ら俺のクローンが居たからって、オロチのクローンなんざ流石に無理だろ?オロチのクローニングが不可能なのは『ミズチ』で証明されて
 るし、そもそもこの世界の人間が、どうやってオロチのデータを得る?
 仮に、テメェやレオナの髪の毛でも採取してDNA解析した所でオロチのデータを得る事は出来ないんだぜ?」

「だろうな。――だが、オロチの力に呑み込まれて消滅した者が、消滅の瞬間に俺達の様にこっちに転移したとしたらどうだ?
 そして、転移先で消滅せずに、精々半身が吹き飛んだ位で済んでいたとしたら?……何者かが其れを見つけて再生し、その段階でオロチ
 のデータを得る事が出来るのではないか?」



なに!?……って事は、まさかルガールがこの世界に来たってのか!?
確かにアイツは、八神一族以外で唯一オロチの血を引かずにオロチの力を手に入れた奴だった……だが、八神と違って『血の契約』を交わ
してなかったから、最終的にはオロチに呑み込まれて消滅した筈だったんだが……オロチの力の強さを考えると、あの瞬間にルガール1人
を転移させるだけの小規模次元震が発生しててもおかしくはねぇか。
八神の仮説を是とするなら、確かにその可能性は否定出来ねぇ……てか、間違いねぇだろうな。
俺が居た世界で作られたクローンオロチ『ミズチ』は戦闘能力こそオロチと遜色なかったが、八神を暴走させるだけの力はなかったから、こっ
ちのクローンオロチは、より本物のオロチに近い感じなのかも知れねぇけどな。

だが、そんなモンを作ってる奴が居るとしたら大問題だぜ?
限りなくオリジナルに近いオロチを作り出し、そしてそいつを完全に自分の命令に従うようにしたら、最強最悪の生物兵器の出来上がりだか
らな。



「何処の誰かは知らんが、下衆が。
 はやて、気が変わった。民間協力者としてではなく、正式に貴様の部隊の一員として働いてやる。
 馴れ合うのは好みではないが、それ以上に下衆な考えで下衆な行いをする輩は存在していると言うだけで虫唾が走る……オロチを複製
 するなどと言う愚行を見逃す事も出来んのでな。」

「ホンマに?ホンマに協力してくれるんか庵さん!!」

「ふん、こんな事で嘘を吐いてどうする?自慢ではないが、俺は今まで嘘を吐いた事だけはない。
 だがはやて、俺はこの間の出来損ないの機械兵程度を叩きのめしても満足は出来ん――俺の力を使うのならば、必ずオロチの複製を作
 ろうとしている奴を突き止めて、其れを叩きのめす為に使え!!」



って、此処で八神が六課に参戦かよ!
雇って貰う側なのに偉そうなのはこの際置いとくが、あの八神が自分から力を貸すなんて、相当オロチ擬きを作った奴の事が気に入らなか
ったみてぇだな。
そうじゃなかったら、俺が居る機動六課に属するなんて選択をする筈がねぇし。

でもまぁ、そう言う事なら今からはチームだから因縁その他はなしだぜ八神?
既に、俺にテリーにロックにレオナ、そんで八神とKOFベスト4の常連組が揃ってる上に、実力者揃いの機動六課が一緒なんだから、どんな
奴が相手であろうと負ける事はねぇからな。

加えて言うなら、今回の一件でティアナとなのはの絆は逆に深まった――雨降って地固まるって諺の如くな。



「まぁ、今回の事を引き起こした『クローンオロチ』を作っとる奴の事は、近い内に分かる筈や――あの子のスパイ能力はトンでもないしな。
 何にしても、トンでもない輩が現れたんは事実やから、機動六課としても気を引き締めて行くで?此れから先、今回のティアナの様な事に
 なってまった市民や犯罪者が現れんとは言えへんからね!!」

「「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」」



そして其れは、結果的に機動六課の結束を固める結果になった訳だ。
何の為にティアナを取り込んだのかは知らないが、其れが結果として六課の結束と戦力を高める事になってなったってのは笑えねぇよな?
六課に亀裂を入れる心算が強化しちまったんだからよ。

ま、誰が相手だろうと俺のやる事は変わらねぇ……立ちふさがる相手は、燃やしてやるだけだぜ!!



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んでもって、時は経って夕方。流石にあの後で訓練て言う空気じゃなかったから、殆ど流れ解散的な状況になって、夫々がやりたい事をや
ってたって所だな。

かく言う俺も、レオナやテリーとスパーリングしてた訳だけどな。やっぱり、レベルが近い奴とのスパーリングは良い稽古になるぜ。……八神
が、何かを期待してたみたいだが、其れは無視したけどな。アイツとはスパーリングで終わる気がしねぇし。

そんな午後の予定が終わって、今は屋上で一服って所だな。



「煙草は身体に悪いぞ草薙?」

「分かっちゃいるが、止められねぇって奴だ。
 其れに、二十歳過ぎたら喫煙は合法だから、吸うかどうかは自己責任だろ?――何なら、アンタも一本どうだいシグナム?」

「遠慮しておこう。酒は兎も角、煙草はどうにも好きになれん……体質的に合わんのだろうな。」



なら、仕方ねぇな。
んで、俺に何か用か?態々与太話をしに来たって訳じゃあないんだろ?



「その通りだ――単刀直入聞くが、オロチとは一体なんだ?
 ランスターのあの異常な能力の上昇に、庵の暴走……途轍もない力を秘めている気がするのだが、其れ程の力を持つオロチとは一体…」

「オロチか……オロチってのは簡単に言うなら地球の意思であり、ある種の神だな。
 オロチの長を筆頭に、その下に特に強い力を持った8人からなる『八傑集』が存在してて、この八傑集こそが神話に出て来る『八岐大蛇』
 の正体って訳さ。」

俺も一度取り込まれた事が分かるんだが、オロチってのは人の心の隙に巧に入り込んで来やがるんだ。そして、入り込んだ相手を操って己
の手駒とするのさ。
其れだけでも脅威なんだが、条件を満たせばオロチの長は触媒を依り代にして復活するんだ――俺が居た世界では、KOF参加者の闘気を
集めて、オロチが復活したけどな。
ザックリ言うなら、オロチとは地球そのものであり、最も神に近い存在だってこった。
そして、オロチを倒す事が出来るのは三種の神器の力を受け継いだ者だけ――この世界では、俺と八神だけって事になるがな。

でもって、草薙も八神も機動六課に属してんだ、相手が限りなく本物に近いオロチのクローンだって負ける事はねぇ。
伝承によれば『オロチは八尺瓊の炎で封じられ、草薙によって薙ぎ払われた』って事だからな?本体が出て来たとしても、八神が八酒杯使
って動きを止めた所に、俺がMAX大蛇薙ブチかませば其れで終わりってモンだ。



「そうか。其れはまた何とも頼もしい。
 確かに、お前ほどの炎使いとは此れまで出会った事はないから、その力を頼りにさせて貰うぞ?――何よりも、模擬戦とはいえ、私に勝っ
 たのは、高町とテスタロッサ以来3人目だからな――次の模擬戦も楽しみだ。」



アンタほどの使い手に言って貰えると光栄だぜシグナム。
だけど、其れだけじゃないだろ?



「うむ、良ければ今夜飲みに行かないか草薙?
 行きつけの居酒屋の優待券が有るのだが、期限が明日まででな、今日あたりで使っておかないと意味のない紙切れと化してしまうのだ。
 お前は二十歳だから飲めるのだろう?……だから、付き合ってはくれないか?」

「飲み屋、ね。」

まぁ良いぜ?キングのバーには時々行ってたからな。
でも、その飲み屋は酒だけじゃなくて飯も旨いんだろうな?幾ら酒だけ極上の物を用意しても、肴が二流じゃ興醒めってモンだぜ?



「その心配はないぞ草薙。
 この店は、最高の酒を出すだけでなく、肴に関しても超一流だ。例えば御造りはその日取れた最高の魚を使うし、肉や野菜も契約農家か
 らの直仕入れな上に、豆腐や味噌、醤油に至っては契約農家から仕入れた大豆を使っての自家製だからな。
 特に、年に数回しか出ない『牛刺し』と『鳥刺し』は絶品だぞ?」

「そいつは何とも楽しみだね?
 其れに、アンタみたいな美人さんと飲むってのも良いモンだと思うからな――OK、付き合わせて貰うよシグナム。」

「ならば、6時にロビーでな。
 お前も準備があるだろうし、私とて出掛ける場合には、最低限の化粧位はしておいた方が良いだろうからな。」



なら、ナチュラルメイクで頼むぜシグナム?厚塗りの化粧ってのは見てていいモンじゃないし、アンタ位に素材がよけれは薄化粧の方がグッ
と魅力が増すってモンだと思うからな。

何にしても、シグナムと飲み屋で一杯ってのは楽しみだな。
肴も良いらしいから楽しみになって来たぜ!――良い店だったら、今度ゲンヤに教えてやるとするか。アイツも大概飲み助だから、良い居酒
屋を知ってて損はないだろうからな。



後で知った事なんだが、時同じくしてティアナがロックをディナーに誘ったってのは驚いたぜ。
若しかして、オロチ擬きの支配から解放してくれたロックに対して、ティアナは何か特別な感情を持っちまったのかもな……ま、此れもまた青
春てやつなんだろうけどな。

ま、絆は深まった訳だから、何も問題は無いけどよ。








――――――








Side:???


1カ月ぶりにスカリエッティのアジトに戻って来たけど、此れは思った以上に計画が進んでいるわね?オロチのクローンは大体予想していた
けれど、まさか――



「ぶるぁあぁぁぁぁ!よぉみがえたずぉ!!見ぃるがよい、我がつぃからぁ!!」



オロチのデータを得る為に鹵獲した奴まで復活させるとは、スカリエッティの悪魔の頭脳は、若しかしたら八神司令の知恵すら上回ってるの
かも知れないわ。
先の一件で、オロチを意図的に作ろうとしている事は六課にバレただろうけど、幾らはやてでも此れの復活までは予測出来てなかった筈。



「生き返ったか……貴様も大概往生際が悪いなルガールよ?」

「ギィィス・ハワァドかぁ……私は不滅にして不死身ぃ!何よりも趣味は復活ぅ!
 そしとぅぇ、復活した私はァ、正に神の如き力を手にしているぅ!!私をぉ、コケにしてくれたぁ、小童共に、思い知らせてくれぇるわぁ!!」

「……うむ、力は強い様だが、何ゆえ『若本ボイス』になったのかが謎であるな?……まぁ良い、其の力、期待しているぞルガールよ。」

「ぶるあぁ!!貴様こそ、私のぉ、足を引っ張るなよグイィィスゥ!!」



色々突っ込み所はあるけど、此れでスカリエッティにギースにルガール……次元を超えて稀代の悪人が3人も集った訳か。
此れは、早急にはやての方に情報を渡しておいた方が良いかも知れないわ――この3人が本気で力を合わせたその時には、3日でミッドを
壊滅させる事が出来るでしょうからね。

オロチのクローンまで作ってるなら尚更だわ。

だけど、絶対に貴方達の思い通りにはさせないわスカリエッティ!!
貴方の暴走を喰い止める為に私は此処に居るんだからね――貴方達のスパイと八神はやてのスパイと言う二重のスパイをやってね。



「クククク……ハハハハ!
 やったぞ!遂にやった!!私は世界を手に入れたも同義だ!!ナンバーズに加えてミスターギースと、ミスタールガール、そして其処に私
 が作り出したオロチを加えれば最高の戦力が整う!!
 後は全てのレリックを回収して、『彼女』が六課の手に渡れば全ての準備が完了する!そして、全ての準備が整ったその時に革命の炎は
 燃え上がる!!
 今こそ世界は生まれ変わる時だ!!私の手によってね!!」



……此れは、手の施しようがないマッドだわ。大体予想はしていたけどさ。
だけど、アンタの計画は最後の最後で絶対に頓挫するわよ?――アンタは、人の心の振れ幅ってモノを完全に軽視していたからね。


まぁ、態々教えてあげる事でもないから黙っておくけどね。
だけど、死者の蘇生にオロチの復活……妄言とも思えるスカリエッティのセリフは、全部ガチだったみたいね?……此れは、一筋縄で行く相
手じゃないかも知れないわはやて……!!











 To Be Continued…