Side:はやて


マッタク持って、アンタの持って来た情報の通りやったな……お蔭さんで、連中が何を欲しとるか、大体の目星を付けることが出来た――連中
の狙いは、高純度エネルギーの結晶体である『レリック』やな?
かの『ジュエルシード』にも勝るとも劣らない力を有した純エネルギー結晶体って言うのは、連中でなくとも欲するモンやからな?……特に、あ
の脳味噌共は自分の欲望の為にどんな手を使ってでも手に入れるやろな。



「でしょうね。でも実際、彼も表立っては最高評議会の命令に従ってレリックを集めていると言う形で動いているわ。
 そうしておけば、仮にばれても最高評議会の子飼いの連中が、その事実をもみ消してなかった事にするだろうから、彼にしてみればこれ程
 自分の目的を達する為に都合のいい隠れ蓑はないわ。」

「手駒と思ってた相手は、手駒やなくて、自分達を動かすプレイヤーやったとは笑えへんでホンマに。
 せやけど、奴さんはレリックを手に入れて何をしようとしとるんやろ?その辺は未だ分からへんのかな?」

「其れについては調査中よ。
 ただ、この間『帰還』した時に『ウーノ姉様』に聞いたところによると、超古代の殺戮兵器を起動させる計画って言うのが有るみたいだけど。」



超古代の殺戮兵器とは穏やかやないなぁ?
なんや、奴さん世界相手に喧嘩でも吹っかける気か?――そないな事したところで、こっちには『歩く大量破壊兵器』の異名を持つなのはちゃ
んが居るから、何持ち出してきた所で無駄やと思うんやけどなぁ?



「……その彼女を8年前に落とした事が、自信に繋がってるんでしょうね。
 何れにしても、そう遠くないうちに、彼等はまた仕掛けて来る筈だから、くれぐれも油断だけはしないでおいて。」

「はいはい、了解や。引き続き、お願いな○○○○ちゃん。」

「えぇ、任されたわ。」


んで、闇に溶け込むように消えたか……見事なステルスやな。
けど、彼女をこっちに引き入れる事が出来たんは僥倖や――5年前に有る事件の現場でクイントさんが抑えてくれたおかげやけど、今や私に
取っては欠かす事の出来ない仲間やからね。
結構な無茶振りを、今はお願いしとるけど其れを見事にこなしてくれるから大助かりやで♪――せやけど、敵さんの事考えると、少し計画の前
倒しを考えた方が良いかも知れへんな。
超古代の殺戮兵器が起動してもうたら、其れこそ取り返しのつかない事態になってまうかも知れへんからね。











リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round16
『Mind Of Dark~ティアナ・ランスター』











Side:スバル


ホテルアグスタでの任務が終わった翌日。今日も今日とて訓練なんだけど、只今模擬戦のフィールドでは、京兄と庵さんが絶賛バトル中!!
何でも京兄が、庵さんに『此れが終わったら模擬戦位はしてやる』って言った事が原因みたいなんだけど、バトルの経緯は兎も角として、目の
前で展開されてるバトルは凄いとしか言えないよ!!



「へへ、ボディがお留守だぜ!!」

「ぐ……舐めるな京!ごあぁぁぁぁぁぁ……死ね!!」



京兄が、庵さんの事を、荒咬み→九傷→七瀬の連携で吹き飛ばしたと思ったら、吹き飛ばされた庵さんは即座に体勢を立て直してカウンター
の琴月 陰で反撃。
どっちも一歩も退かない戦い――格闘ファンには垂涎の戦いだろうね此れ。此れだけの超一流同士の戦いって言うのはインターミドルの本戦
でも、なかなかお目にかかる事は出来ないからね。

何よりも驚きなのが、此れだけの激しい戦いをしながら京兄と庵さんの顔には笑みが浮かんでる事だよ!
此れだけのバトルを展開してるのに笑う事が出来るって言うのは、心の底からその戦いを楽しんでないと出来ない事だってお母さんが言って
たから、京兄も庵さんもこの戦いを楽しんでるんだね。



「ククク……ハァッハッハッハッハ!!良いぞ京!矢張り貴様との戦いでなくては俺は到底満足出来ん!」

「そうかい、そりゃ良かった。
 だが、俺じゃなくてもテメェを満足させられる奴はそこそこ居るだろ?テリーやリョウ、其れこそオロチの暴走を制御出来てるレオナなら、可成
 り満足できると思うぜ?」

「如何やら分かっていないようだな京……俺は、貴様でなくては駄目なんだ。
 貴様以外に、俺の渇きを癒し、血の慟哭を沈められる相手はいない――他の誰にも渡さん、貴様は俺の物だ!!!」

「……言わんとしてる事は何となく分かるが、其れって聞きようによっちゃ可成りヤバい内容だからな八神?」



だけど、庵さんの発言は色々とアレかなぁ?……うん、ヤバい。間違いなくヤバい。
庵さん自身にその心算は全く無いだろうけど、一部の薄い本を作ってそうな腐女子が聞いたら間違いなくネタにされるから。って言うか、訓練
校時代に同期で居たからなぁそう言う子が。



「そうなると問題は、どっちが攻めでどっちが受けかやな?」

「冗談でしょうが、貴女が言うと冗談に聞こえないので、不穏な発言はしないで下さい主はやて。」



八神指令とシグナム司令、居たんですか……てか、本気で不穏な発言しないで下さい八神司令!京兄が腐女子の餌食になるとか、アタシも
ノーヴェもギン姉も絶対耐えられないし、お母さんは卒倒しちゃうかもしれませんから!



「因みに師匠は?」

「親父は、有無を言わさずに作者に(物理的に)抗議して終わるだろうな。」

「少し怖そうなイメージを持たれてるお父さんですけど、そのイメージを裏切らずに腕っ節は実はナカジマ家最強ですから♪
 流石に戦闘では兄さんには劣りますけど、『腕相撲』だったら兄さんとも互角の勝負をしますから。」

「京さんと腕相撲で互角って、師匠ドンだけの腕力やねん……若しかして、師匠って脱いだら色々とマッスルなん?」



お父さんは……うん、脱いだら確かに凄い。
制服着てると分からないけど、腕の筋肉は力入れたらお母さんの太もも以上だし、腹筋はシックスパックで胸筋なんて鉄板入れたんじゃない
かって言う位だから。
そう言えば、若い頃はボディビルダーで雑誌のグラビアとかに載った事もあったとか言ってたような…あんまり其れは考えない方が良さそう。

と、京兄と庵さんの戦いは!!



「おぉぉぉぉぉ……喰らいやがれぇぇぇ!!!

「むぅぅぅん!楽には、死ねんぞぉ!!


――ゴバァン!!!



京兄の大蛇薙と、庵さんの八酒杯がかち合って、赤い炎と蒼い炎が大爆発!!
技の威力は略互角だからかち合った衝撃は決定打にならない――となると、此処で如何動くかが勝負の分かれ目!負けないで、京兄!!



「やるじゃねぇか八神?だが、今回も俺の勝ちだ!!
 覇ぁぁぁぁ……受けろ、このブロウ!こいつで決まりだ!!

「がっ!!このままでは終わらんぞーーーーー!!」


――KO!Wiener is Kyo!!


「満足したか、八神?」



アタシの思いに応える形で、勝ったのは京兄!
大蛇薙と八酒杯がかち合ったその瞬間に百八拾弐式を発動して、爆炎が晴れたと同時にフルチャージ状態で其れを炸裂したって所だけど、
流石の庵さんも此れを躱す事は出来ずに真面に喰らってKO!

試合内容を見る限りは、京兄と庵さんの間に明確な差はない感じだったから、次にやったらどっちが勝つかは分からないかもだけどね。



「……何度やっても京が勝つと思うわ。
 八神庵の炎に宿っているのは草薙への憎しみと言った負のエネルギーだけど、京の炎に宿ってるのは更なる高みを目指す志と、オロチを討
 つと言う想いが宿って正のエネルギーを宿している。
 どれだけ強い力であっても、マイナスである負の力では、プラスである正の力を超える事は出来ない――だから八神庵は、京にKOFで連続
 13回負けてる。」

「13連敗って……其れでも京を狙う、赤毛野郎をちょっと尊敬しちまうかな……そんだけ負けたら普通諦めるだろ。」



普通は諦めるだろうけど、庵さんは京兄を狙う理由があるから諦めるなんて言う事は最初から選択肢の中から除外されてるんだよきっと。



「………………」

「って、如何したのティア?何か難しい顔してるけど?」

「え?あぁ、何でもないわスバル。ただ、京さんと庵さんの強さに驚いただけ。
 シグナム隊長と互角以上に戦える京さんと、アグスタの時に高町隊長と同じ位の数をガジェットを撃破した庵さんの強さは分かってた心算だ
 けど、何て言うか今の戦いは次元が違う感じがしたから。」



まぁ、京兄は最強だから!
空を飛ぶ事は出来ないから、空中の相手と戦うにはアタシやギン姉のウィングロードかノーヴェのエアライナーが必要になるけど、地上戦に限
って言えば殆ど無敵だよ!
京兄は、アグスタの時に出て来た偽物の100倍は強いモン!!



「でしょうね……此れだけの超人揃いの中じゃ、私なんか……

「ティア?」

「何でもない。」

「???」

ティアって、時々こう言う事があるんだよねぇ……何かを抱えてるってのは分かるんだけど、其れを話してくれた事は無いから、ティアの中にど
んな物が渦巻いてるかは分からない。
何か悩みがあるなら相談して欲しいんだけど、アタシやノーヴェじゃ頼りないのかなぁ?……仲間なんだから頼ってくれてもいいのに。



「さてと……そう言えば、お前とも模擬戦の約束してたよなシグナム?まだ時間もあるからやっちまうか?」

「一戦交えた後で本気か草薙?
 庵との戦いで大分消耗しているだろうに……そんな状態で私との模擬戦が出来るのか?」

「あぁ、出来るね。てか、八神との戦いで良い感じに身体温まってるし、闘気も大分高まってるんでね。
 其れに、連戦てのはあんまし問題じゃないぜ?KOFでは3人抜きする事だってあったんだ――1戦交えたくらいじゃへこたれねぇんだよ。」

「今のお前は、ともすれば以前に戦った時よりも強いと言う事か?
 ならば、勝負だ草薙!お前との戦いは、テスタロッサとの戦い以上に心が躍るのでな!!」

「へへ……俺を、燃えさせてくれよな?」



で、演習場では京兄とシグナムさんが模擬戦を始めるみたい。
手か1戦交えた後でシグナムさんと模擬戦やるって、京兄のスタミナってどうなってるんだろう?アタシやギン姉、ノーヴェもスタミナには自信
があるけど、アレだけのバトルを行った後でもう1戦てのは流石に無理なんだけど……
だけど、やる以上は勝ってね京兄!応援してるから!!








――――――








Side:ロック


は~~~……今日も中々にハードだったな。てか、なのはは手加減て言葉を知ってるんだろうか?
内容そのものは基礎的なもんだったが、其れでもなのはほどの奴がやると色々と半端ねぇ……テリーが前に『基本技でも、強い奴が使えば
超必殺技になる事もある』ってな事を言ってたけど、なのはは正にそれだな。

まぁ、そんななのはと模擬戦2戦こなした上で互角に渡り合ってる京は色々とぶっ飛んでるんだろうけどさ。

まぁ、何にしても明日もあるから今日はもう休むか。シャワー後にと思ってスポーツドリンク買ったら、当たりが出てもう1本出て来たが、コイツ
はテリーにやるか――って、アレは?



「ダメ……こんなんじゃ、まだ届かない。」



ティアナ?
そろそろ就寝時間だってのにまだ自主トレしてたのか?可成り汗をかいてるし、息も上がってるから相当に頑張ってたんだろうが、あれじゃあ
トレーニングの域を超えて身体を酷使してるだけだ。

おい、その辺にしとけよティアナ。



「ロックさん……」

「幾ら何でも、自分を虐め過ぎだぜ?そんな事続けてたら、何時かぶっ倒れちまう……取り敢えず此れでも飲んで一息入れろよ。」

「あ、ありがとうございます……こんなに汗かいてたんだ…気付かなかった。」



マッタク、ドレだけ集中してたのかは知らないが、あんまり根を詰めすぎるのは良くないんじゃないか?
自主トレで自分を鍛えるってのは良い事だと思うが、自分の限界を超えたトレーニングは逆効果だ。効果が上がらない所か、無理が祟って逆
に身体が弱くなるなんて事もあるらしいからな。
其れに、なのはとの訓練であれだけ身体を酷使したんだ、ちゃんと休まないと本気で壊れちまうぞ?



「分かってます。だけど、其れでも私はやらないとダメなんです。
 私は凡人だから、もっともっと頑張らないといけない……人の1万倍努力しないと、私は……!!!」

「自分を凡人何て言うなよ……確かに戦闘力に限って言えばそれほど高くないかもしれないけど、ティアナは其れを補って有り余る指揮官とし
 ての力があるじゃないか。
 正直言って、今日の訓練、お前が居なかったらフォワード陣は始まったと同時に全滅してたと思う……少しは自分の事を褒めてやれよ。」

「皆がそう言ってくれるけど、其れじゃあダメなんです!
 幾ら指揮官としての力が有っても、戦う為の力がないんじゃダメなんです!!其れじゃあ、兄さんが凄かったって言う事は証明できない!」



兄さんて……お前、兄妹が居たのか?



「はい……名前はティーダ・ランスター。
 私にとっては憧れの存在で、大好きな兄でした。……だけど兄は、有る事件で殉職して帰らぬ人となってしまったんです。
 其れは確かに悲しい事だったけど、其れだけなら良かった……兄さんはミッドの人達を助ける為にその身を散らしたんだって思う事が出来
 たから。
 だけど、兄さんの葬儀に現れた兄さんの上官は、自らの命を投げ出した兄さんに『ワシの顔に泥を塗りよって……トンでもない役立たずだ』っ
 て言ったんです!!
 ………許せなかった、そして悔しかった!!だから、私は証明したいんです、ランスターの弾丸は役立たずじゃない、どんな敵でも撃ち抜く
 事が出来るって!!
 其れを証明する事が、妹である私に出来る、兄さんの弔いだから!」



マジかよ……人としての神経を疑うぜそいつは。
個人的にぼやくなら兎も角、故人の葬儀の場で普通そう言う事を言うか?お前の両親が、その上官様とやらに殴りかからなかったのが不思
議だぜ――まぁ、其れをやったら面倒な事に成るからやらなかったんだろうけどさ。

だけど、其れだけ誇りに思える家族が居たんだなお前には……少し羨ましいぜ。



「羨ましい、ですか?」

「俺には、もうそんな家族は居ないからな。
 母さんは俺がガキの頃に死んじまったし、親父も……もう居ない。テリーが俺にとっては親父みたいなもんだが、俺の本当の父親って奴は、
 如何考えても誇れるような奴じゃなかったからな。
 ……母さんが死んだのだって、アイツのせいだから。」

「……如何言う事ですか?」



俺の母さんは病気で死んだんだが、その病気は可成り厄介な物だったんだけど決して治らない物じゃなかったんだ――治療の為の金さえあ
ればな。
其れはトンデモない金額だったが、俺には其れを出せる相手に心当たりがあった――其れが、俺の父親であるギース・ハワードだった。
スラムだったサウスタウンを一大都市にまで築き上げたギースは相当の財力を持ってたから、その財力が有れば母さんを助ける事が出来る
って、そう思ってたんだけど、ギースは俺の頼みを断りやがったんだ!
そのせいで、母さんの病気は進行して、そして死んじまった。
だから、俺には誇れる家族は居ないんだ――ギースは、誇るどころか忌むべき相手だからな……誇りに思える家族が居るお前は幸せだ。

其れに、お前が身体を壊したら元も子もないだろ?
天国にいるお前の兄貴だって、お前が無理して危険な目に遭う事なんて望んでないと思うぜ?――家族の無念を晴らすってのは分からなく
もないが、お前が倒れちゃったら意味は無いからな。

何よりも、お前の指揮官としての能力は京やテリーが認めるレベルなんだから、其れを誇りに思えよ?
実質的な戦闘能力が高くなくても、指揮官としての能力が高ければ評価だって高くなるし、お前が指揮官として最高のレベルに達したなら、き
っと兄貴への評価を覆す事だって出来るだろ?

此れだけ優秀な指揮官の兄が無能だった筈が無いってな。
だから、焦らず行けよ……お前なら、こんな無理はしなくても、きっと望む高みに上れるって思うからさ。――其れでも自分が信じられないって
言うなら、お前を信じるお前の仲間の事を信じろよ。
そうすれば、きっと全てが巧く行くぜ?まぁ、此れはテリーの受け売りだけどな。



「分かり、ました。――明日も、宜しくお願いします、ロックさん。」

「OK、明日も頑張ろうな。」

とは言え、ティアナが完全に納得したとは言い難い感じだな此れは……明日以降の訓練で何も起きないと良いんだけど、希望的観測は崩れ
るのがお約束だから、安心は出来ないよな。

如何にも嫌な予感がするぜ……此れは、少し注意しておいた方が良いかも知れないぜ――テリーと京、其れとレオナにもそれとなく伝えてお
いた方がいいかもだな。


――ヒュゥゥ……


ち……生暖かくて気分が悪くなる風だな……マッタク、嫌な風が吹いてくれるもんだぜ。――まるで、此れからの未来を暗示してるみたいだ。
……って、ガラにもないな。未来は自分の手で掴み取るもんだってテリーに教わってたのにな。
願わくば、ティアナがその手で自分の道を掴み取って欲しいもんだぜ……其れが出来なかったら、アイツはそう遠くない未来に壊れちまうだろ
うからな。


ティアナ……自分に負ける事だけは絶対にしてくれるなよ?自分に負けたら、マジで其処で終わっちまうことが否定できないんだからさ……









 To Be Continued…