Side:京


まさか、壁を突き破ってゲストが登場するとは思わなかったが、援軍が来たところで負ける気は毛頭ないぜオッサンよぉ?
歳は親父よりも若いみたいだから、まだまだ現役って所なんだろうけど、其れでもとっくにピークは過ぎてるんじゃないのかオイ?悪いが、ピー
クを過ぎて、落ち始めた奴じゃ、俺の相手は務まらないぜ。



「そうかも知れんが、私とお前では戦いにおける年季が違う――簡単に勝てると思うなよ小僧。」

「戦いにおける年季ねぇ?……なら、その年季の違いってもんを見せて貰おうじゃねぇかオッサンよぉ?
 言っとくがな、戦いってのは年季がモノを言うもんじゃないんだぜ?年季よりも、ドレだけ中身の濃い戦いをして来たかが重要になるんだ。」

悪いが、俺は二十歳だが。オロチやらネスツやらと命懸けの戦いをして来たから、年季以上の戦いの経験をしてんだよ。生憎とな!!

だが、あんたは手加減して勝てる相手でもなさそうだから、最初から本気で行かせて貰うぜ?



「寧ろ手加減などされたら興醒めなのでな……貴様の力を見せてみろ。」

「へへ、なら火傷しても文句は言わないでおいてくれよな?――行くぜ!」

「受けて立つ!来るが良い!!」


――ガキィィン!


っと……青龍刀での峰打ちと来たか?殺す心算は無いって所なのかも知れないが、峰打ちにしたって此れは結構重い一撃だ――ビリーの三
節棍よりもずっと重いからな。
実力で言うなら、さっきまでの虫人間よりも上なのは間違いねぇだろうが、何だ、此奴から感じる違和感は?
K'みたいな強化人間て言う感じでもねぇし、マキシマみたいなサイボーグでもねぇが、だからと言って完全に生身の人間かと言われると其れも
何か違う気がする……此奴、一体何モンなんだ?











リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round15
『ホテルアグスタ~嵐のサキソフォン~』











No Side


京達がホテル内で戦っている頃、外での戦いはそろそろ佳境と言う所に入っていた。
庵が京-1を撃滅したのは当然だが、京-2もまたなのはとヴィータのタッグにフルボッコにされた上で、バインドでぐるぐる巻きにされて放置さ
れていた。(序に、庵が叩きのめした京-1もぐるぐる巻きにされている。)
京-1よりも高いレベルでクローニングされ、無式まで使える京-2だがオリジナルの京と比べれば格段に劣るのだから勝てる筈がない。
分かり易く言うのならA~Eまでの5段階評価で、オリジナルの京が総合Aだとしたら、京-2は総合Cなのだから、その程度の実力では管理局
屈指の前衛後衛コンビであるなのはとヴィータの敵ではないのである。


「所詮劣悪なコピーでは貴様に勝つ事は出来なかった様だが……バインドで拘束された物体がモザイク状態なのだが、一体何をやった?」

「バインドでぐるぐる巻きにした上で、ヴィータちゃんがアイゼンでフルボッコ♪」

「無式使われたら厄介だから、先になのはがバインドで動き止めたんだよ。
 京の無式は、シグナムですらぶっ倒したすげぇ技だからな……劣化コピーが使ったとしても相当なモノだと思うから。」

「其れでも、本物の無式には到底及ばないだろうがな。
 残るコピーは京の妹共に任せておけば良かろう――奴等はまだまだ未熟だが、それでも京のアホ弟子よりは遥かに強いだろうからな。」

「だよねぇ?其れじゃあ庵さん、私達は次から次へと雑草のように湧いて来るガジェットを殺っちゃいましょうか?」

「此の程度のガラクタ、壊した所で経験値の足しにもならんがなぁ!!」


KUSANAGIとやり合っているナカジマ三姉妹の事が気掛かりではあるが、スバルもノーヴェもギンガも若手としては破格と言っても良いだけの
力を身に着けているので、如何にKUSANAGIが相手でも3人がかりならば負ける事はないだろう。

で、こんな会話をしながらも庵となのはは次々とガジェットをスクラップに変えていく。
蒼炎が猛り、桜色の砲撃が炸裂する度に、ガジェットは鉄くずへと変わっていく……敵の保有戦力がどれだけあるかは知らないが、こうも次か
ら次へと破壊されたのでは堪った物ではないだろう。


「うふふふ……あはははは……全部吹き飛んじゃえーーー♪」(ディバインバスター炸裂)

「くははは……ハァッハッハッハッハ!!!!」(MAX八稚女Ver.96炸裂)

「情け容赦ない高笑いをしながら攻撃すんなよ……怖くて仕方ねぇって。」


取り敢えず、庵となのはは大丈夫だろう。



「払え!!」

「舐めんな!!」

「京兄の偽物……此処でやっつける!!」

「と言うか大人しく投降してくれませんか?
 貴方のお仲間は、庵さんとなのはさんとヴィータさんが倒しました。如何にガジェットが居るとは言え、貴方に勝ち目はないんですよ?」

「其れが如何したぁ?かかってこいやオラァ!!」


その一方で、ナカジマ三姉妹とKUSANAGIの戦いはいまだに決着がついていなかった。
京本来の力がないとは言え、KUSANAGIは最も京に近いクローンであるせいで、京が持つ技の重さはない物の、それ以外の能力は京と同等
なのである。
となれば、幾らナカジマ三姉妹であっても、一方的に叩きのめす事は出来ないだろう――3対1の状況ながら、戦いは完全に拮抗状態になっ
ていたのである。

このままでは泥仕合は間違いない。
そうなれば有り難くないだろう――万に一つどころか億に一つもない可能性だが、自分達以外の味方が全滅してしまったら、一気に窮地に陥
ってしまうのだから。


「京のクローン……大佐達と回収したけれど、其れが此方にも現れるとはね……」


だが、此処でナカジマ三姉妹にとっては有り難い援軍が駆けつけてくれた。
ガジェットと交戦していたレオナが、空中からエックスキャリバーでKUSANAGIを強襲し、戦線に加わる。なのはと庵に任せておけば、ガジェット
は如何にでもなると判断して参戦したのだろう。
此れで状況は4対1となり、更に現役軍人であり、暗殺術のエキスパートであるレオナが加わった事で状況は一気にスバル達に有利になった
のは間違いない。

仮にKUSANAGIがレオナと同等だとしても、スバル達が一緒に居る上に、レオナがオロチの血を覚醒すれば確実にKUSANAGIを上回る。


「テメェか、レオナ・ハイデルン……」

「京のクローンの中では、貴方は可成りオリジナルに近い力を持っている様だけれど、其れでも本物の京とは比べようもない。
 其れと、貴方は自分で考える事が出来る様だから言っておく……今の状況に於いて、貴方に勝ち目はない。大人しく投降すべき。」


だからこそ、レオナはKUSANAGIに対して投降するように言う。
これ以上の戦いは無意味だと。


「勝ち目はねぇか……確かにそうかもなぁ?だが、誰が投降するかよこのアホンダラァ!
 テメェら纏めて燃やしてやろうか、あぁん?……と言いたいとこだが、こっちとしてももう戦う気はねぇよ――残念だがタイムアップでなぁ!!」


其れでも、KUSANAGIは投降する気はない。
投降する気はないが、戦う気はないらしく、タイムアップを宣言した次の瞬間――


――ドン!!


「「「「!!!」」」」


KUSANAGIの背後の地面から、此れまで現れた事のない形のガジェットが現れ、即座にロボットアームを伸ばして倒された京-1と京-2を回
収して、自身の中に収容し、其れを見たKUSANAGIもそのガジェットの上に飛び乗る。
どうやら、逃走用に最初から地面に埋まって居た様だ。

だからと言って逃がすスバル達ではない。


「逃がすかよ!」

「逃がさないよ!!」


即座に、ノーヴェとスバルがなのは直伝のディバインバスターを放つ。
が、この次元世界最強と謳われる直射砲撃が、何とガジェットに直撃する寸前で完全に掻き消えてしまったのだ――如何に本家よりも数段劣
るとは言え、技自体の威力がクソ高いために術者のステータスが其処まで高くなくともそこそこの威力にはなるのだ。
其れが、掻き消えてしまうなど、AMFを搭載しているにしてもあり得ない事だろう。


「そんな、なのはさんには圧倒的に劣るとは言え、アタシとノーヴェのダブルバスターが……!」

「掻き消された、だと?」

「おぉっと、流石に驚いてくれたかオイ?
 此奴は、AMFよりももっとスゲェモンでな?相手の魔法攻撃を完全に吸収して自分のエネルギーにしちまう優れモノよぉ!流石に開発コスト
 がデカい上に、そのエネルギーは移動エネルギーにしか転化できねぇから戦闘用ガジェットには搭載されてないがなぁ。
 だが、移動用ガジェットに搭載するなら問題ねぇだろ?相手が逃走防止の為に魔法ぶっ放してくれるだけで此奴のエネルギーは回復するん
 だからよぉ?」


それは、AMFをも上回る魔法吸収フィールドとも言うべき物だった。
攻撃エネルギーにはならないとは言え、移動エネルギーになると言うのならば、成程このミッドチルダに於いては最強の輸送・撤退用の移動
手段となるだろう。管理局員の攻撃方法は魔法しかないのだから。
其れこそ、なのはの集束砲ですらもこのガジェットには無意味となる筈だ――尤も、なのはの場合は一度防がれたら、次は此れすら超える一
発を開発する未来が否めないのだが。

其れは兎も角、この場に於いてはKUSANAGIの逃走を阻止する事は出来ないだろう。


「そんじゃあな、データは取れたからお暇するぜぇ?
 俺は当然だが、1号と2号も、次に会った時には今回よりも遥かに強くなってるから楽しみにしておけよな?あばよ、クソっ垂れ共!!!」

「待って!!」


――バビューーン!


次の瞬間、KUSANAGIを乗せた特殊ガジェットは凄まじいスピードでその場を離脱して遥か彼方に一直線!その圧倒的なスピードには、フェイ
トが本気を出しても敵うかどうかと言う所だろう。

だが、KUSANAGIがこの場を去ったと言う事は、この場での六課の勝ちは確定だろう。


「粉砕!玉砕!!大喝采!!!あはははははははははは♪」

「くくくく……ふははははは……ハ~ッハッハッハッハッハ!!!」


何故なら、残ったガジェットはなのはと庵が撃滅したのだから。
勿論ヴィータや竜騎士のエリオだって可成りのガジェットを倒したのだが、庵となのはは撃破数が違う。庵もなのはも単騎でガジェットを100体
近く撃破しているのであるから恐ろしい事だろう。


「勝って更に高笑い……どっちが悪役か分からねぇな此れ。」


そして、ヴィータの呟いた一言は、きっとこの場にいた者達全員が思った事であろう。








――――――








さて、バトルフィールドは再び倉庫及び倉庫前の廊下。

京と乱入者――ゼストと、シグナムとガリューが戦う構図のこの場での戦い。
2対1から2対2のマルチバトルになった事で、数の優位性は失われたが、其れでもシグナムはガリューとの戦いを優位に進めていた。


「如何した、此方の戦力は半減したぞ?遠慮せずに攻めてこい。」

「……」


戦闘力的は略互角だろうが、ガリューとシグナムの間には決して埋める事の出来ない『戦闘経験の差』が存在している――ドレだけガリュー
が強いとは言え、実戦経験が少ないのでは、実戦経験豊富なシグナムの敵ではない。

現に、この戦いは終始シグナムが攻め続ける展開になっているのだ。
レヴァンティンで斬り付けるだけでなく、鞘をも逆手に持って武器と使用し、疑似的な二刀流で攻め立てる!超一流の剣士にとって、鞘は単純
に刀剣類を収めるだけの物ではなく、打撃武器としても充分に機能するのである。
更に、シグナムは剣術だけでなく、蹴りを使った体術でも可也の力を有している――如何足掻いてもガリューが勝つ可能性は低いだろう。



その一方で、京とゼストの戦いだが――


「く……逃げ回ってばかりいないで戦え小僧!」

「言いがかりは止めろよオッサン、俺は戦ってるぜ?」


此方は序盤の打ち合いとは打って変わって、ゼストの一撃を京がギリギリで躱しまくると言う内容に変わってきていた。京のフットワークの良さ
には定評があるので、攻撃を躱し続けるのは難がないのだが、ゼストにしてみれば攻めて来なくなったのが疑問だった。


「如何した、何故攻めてこない?」

「攻める必要がねぇからな……このまま攻撃躱してりゃ、アンタは自然に自滅だからな。」

「なに?」

「アンタが一番分かってるだろ?……アンタの身体は制限時間付きなんだろ?
 改造人間や強化人間の類じゃないだろうが、だからと言って真面な人間でもねぇ……アンタは活動には制限時間がある上に、戦闘を行った
 ら何らかのメンテナンスをしなくちゃならない身体なんじゃねぇのか?
 そんな奴相手に、自分から攻めても面白くねぇよ――何より、シグナムがあの虫野郎を打っ倒すまで引き延ばせる事が出来れば其れで俺
 達の勝ちだからな。」


だが、己が投げかけた問いに対する京の答えに、ゼストは一瞬完全に固まってしまった。
それは、京の答えがあまりにも的を射たものであったからだ――つまり、ゼストは京の言ったような『特殊な人間』であるのだ。


「貴様……」

「オイオイ、睨むなよ?如何やら当たりだったみたいだが、だとしたらヤバいんじゃないのか?
 如何やら、あっちは勝負がついたみたいだからな。」


――ドシャァ!


そして、京が言ったその瞬間に、ゼストの足元に何かが転がり込んでくる――確認するまでもないだろう、其れはガリューだ。
タイマン勝負になった事で互角の戦いになるかと思ったが、シグナムの実力はそんな予想を遥かに上回る物であり、終始ガリューを攻め続け
て撃破に至ったのだ。


「さぁて、如何するオッサン?
 俺達の方が絶対有利ってのは火を見るより明らかだが、其れでもやるってんなら相手になるぜ?消し炭にされても構わないってんならな。」

「私も京と同意見だな。
 如何やらホテル内外の戦いも鎮静の方向で向かっているようだから、このまま戦い続けてもお前達に勝機はないぞ?」

「如何やらその様だな……倉庫をざっと見た所、目的の物がある訳でもなさそうだから此処は退くとしよう。」


形勢不利と見たゼストは、即座に撤退を決断した。
見る者によっては尻尾を巻いて逃げたと取るかも知れないが、形勢不利な状態でもまだ戦うと言うのは只の蛮勇であり、考えなしの猪武者で
しかない――騎士であるのならば退き際も弁えているモノなのだ。


「だからと言って逃がすと思うのかい?」

「逃さん!!」


無論、其れを許す京とシグナムではなく、ゼストを捕らえんと攻撃するが、其れよりも早く転移魔法が発動し、ゼストはその場から離脱。
そして、其れと同にホテル内外に出現していたガジェットも転移魔法的な物で軒並みその場から姿を消していた――と言う事は、少なくとも今
回は六課の優勢勝ちと言う所だろう。
オークションの出品品も1つも盗まれはしなかったのだから、成果も上々だ。

形的には敵の撤退だが、其れでも六課が勝利した事に変わりはないだろう。

ホテルアグスタでの戦いは、六課の優勢勝ちと言う形で幕を下ろしたのであった。








――――――








Side:ティアナ


テロリストの部隊は全員撤退して、更にホテルの倉庫の中身も無事って言う事は、今回は私達の勝ちって言えるかも知れないけど、私にとっ
ては、敗北以上だわ……まさか、誤射でスバル達を撃っちゃうなんて!!
京さんやテリーさんは、『此れだけの混戦だったんだから、フレンドリーファイヤーの一つや二つはあるだろう?』って言うのかも知れないけど
其れで仲間を傷つけたら?

そんな事に成ったら兄さんの有能を明らかにするなんて言う事は出来ない……私は、私は如何すればいいの?如何すれば兄さんの有能さを
認めさせることが出来るの?


教えて、誰か教えてよ――!!!










 To Be Continued…