Side:庵


ふん、姿形は京そのものだが、所詮はまがい物の劣化コピー……本物の京とは比べるまでもない――此の程度で草薙京を名乗る等、烏滸が
ましいにも程があるぞ!!

もう少し楽しめるかと思ったが、所詮は此の程度か――ならばもう、遊びは終わりだ!!


――轟!!!


「泣け!叫べ!!そして、死ねぇぇぇぇぇぇ!!


――ドガァァァァァン!!!



流石に殺しは御法度と言う事だから威力は抑えてやったが、それでも俺の『八稚女』は、可成り効いたのではないか?本物の京ですら、俺の
八稚女を真面に喰らったら只では済まないだろうからな。

故に、劣化コピーでは絶対に耐える事などできん。
精々そこに這いつくばっているが良い――京の劣化コピー……否、そう呼ぶのも烏滸がましい、三流以下の雑魚が。京をクローニングするな
ら、もう少し高いレベルでのクローニングを行うべきだ……せめて、本物の京に匹敵するレベルでな。

小娘達と、なのはとヴィータが残る2人のクローンを処理しているが、其れも時期に決着がつくだろう。
如何に京の遺伝子から作り出したコピーとは所詮コピーに過ぎない――其れでは俺達を倒す事は出来ん!精々足掻いて、偽物らしく散るが
良い!!



「うわぁぁあぁぁぁぁぁ!!」

「ふん……はやてに殺すなと言われているというのもあるが、貴様はそもそも殺すに値しない雑魚の様だな劣化コピーが。
 精々逃げ帰って、貴様等を寄越した親玉に教えてやるが良い――草薙京と言う人間の強さをコピーする事は出来んとな。」

とは言え、コイツ等が大量に生産され、そして一個中隊でも作られたら並の魔導師とやらでは話にならんだろうがな――尤も、そうなった場合
には、なのはが集束砲を放てば終わるだろう。

コイツを倒してしまって些か暇だな?…事が済むまで、ガジェット共の相手でもしてやるか。――玩具遊びと言うのも、偶には悪くないのでな!











リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round14
『ホテルアグスタ~Barning Blood~』











Side:京


さてと、外見で判断すると、コイツに人の言葉が通じるとは大凡思えないんだが……とりあえず聞いとくぜ?
テメェは一体何モンだ?テロリスト共の一味ってのは間違いねぇんだろうが、目的はオークションの出品品かい?――ロストロギアってのが目
的なんだろうが、ソイツを手に入れて一体何をしようとしてる!



「………」


――ス



答える代わりに、構えるか……目的を果たす為に俺達を倒すって意思表示で良いんだよな其れは?
だが、お前は後悔する事に成るぜ?俺とシグナム――炎の拳と炎の剣、2つの炎がお前の相手になるって事なんだぜ此れは?
まぁ、ざっと見た感じだと、お前の実力はK'と同等ってとこだろうが、野郎と同レベルじゃ、タイマンなら兎も角、俺とシグナムの2人の相手は務
まらねぇよ。
其れに、虫は炎に燃やされるもんだからな?――覚悟は良いな、この虫野郎!!



「覚悟が出来ていようといまいと関係ないがな……殺すのはダメだが、ロストロギアを狙って現れた相手には、多少手荒にやっても構わないと
 主はやてから仰せつかっているのでな。」

「なら、手加減なんざ要らねぇ訳だ……行くぜ!」


――轟!!



俺は何時も通りに、掌で炎を炸裂させて戦闘開始を宣言したんだが、シグナムもレヴァンティンの刀身に炎を纏わせてとは、中々魅せてくれる
じゃねぇか?

清廉な剣士かと思ったら、意外とエンターテイメント的な要素は心得てるみたいだな?……へへ、本気でアンタとは巧くやれそうだシグナム。
出会ってからそんなに時間が経ってる訳じゃないのに、アンタになら安心して背中を任せられるからな?――後は任せたぜ?



「嬉しい事を言ってくれるが、其れは私もだ草薙。
 数多の戦場を駆けてきた私だが、背中を任せられる仲間など、仲間の騎士達を除いては、精々テスタロッサぐらいのモノだったからな。」

「あれ?なのははダメなのか?」

「……高町は頼もしいが、背中を任せるには些かバトルジャンキーすぎる。
 バトルでテンションハイになったら、任せていた背中が、敵を撃滅する為の砲撃で撃ち抜かれかねんからな……アイツは、基本単騎で戦う方
 が良いんだ。主に味方への被害を防ぐ意味で。」



成程……まぁ、多分なのはは、今頃外でバスター撃ちまくってガジェット共を撃滅してるだろうからなぁ……ったく『敵なら、厄介な事この上ない
が、味方ならこれ程頼もしい相手はいない』の典型だななのはは。
だが、其れを踏まえると、本気でテロリストとかに加担しなくて良かったぜ。

其れは其れとして、行くぜ虫野郎!
草薙の灼熱の炎と、ベルカの剣騎士の紅蓮の炎の前に、敵はねぇって事を、その身に刻み込んでやるぜ!!!――精々灰にならない様に
気をつけな!!









――――――








No Side


こうして始まった京&シグナムvs虫人間ことガリューの戦いだが、此れは序盤から京とシグナムのタッグがガリューを完全に圧倒していたと言
って良いだろう。


「ふ、は、せいや!ボディが、がら空きだぜ!

「如何した、防戦一方では目的を果たす事は出来んぞ!」


草薙流古武術の猛ラッシュと、シグナムの炎の剣技が同時に襲い掛かって来たとなっては、並の魔導師よりも遥かに高い能力を持っているガ
リューでも対処しきれるものではない。
何よりも、ガリューは虫をベースにした存在だけに、京の言ったように炎に対しては極端に耐性が低いのだ。
一応障壁を張って直撃は防いでいるのだが、草薙流正当後継者の拳と、夜天の筆頭騎士の剣技による同時攻撃を防ぐ事は難しく、戦いが始
まってからと言う物、シグナムが言うように防戦一方なのである。

誤解無き様に言っておくが、決してガリューの力が低い訳ではない。単純な実力で言うのならば、其の力は六課の隊長陣にだって引けを取ら
ないと言えるだろう。

が、今回ばかりは分が悪い。
此処に現れたのは、六課隊長陣の中でも攻守速の全てがAAAであり、総合能力に於いては間違いなく六課最強であるシグナムと、そのシグ
ナムを倒した京なのだ――タイマンならば兎も角、2vs1では敗色濃厚だろう。

更に、京とシグナムのコンビネーションも可成り高いレベルなのが優位な状況に拍車をかけている。
嘱託採用の為の模擬戦の後、京とシグナムは実は結構な頻度で模擬戦を行っており、その中で互いの攻撃の癖やら何やらが大体分かる様
になってきており、其れが結果としてコンビネーションの質を引き上げている。

シグナムの攻撃の隙を京が補い、京の荒咬み、毒咬み連携のフィニッシュ後の隙をシグナムがフォローする事で、隙のない格闘と剣術のコン
ビネーションが生み出されていたのだ。
そして、此のコンビネーションはガリューの張っていた障壁に徐々に罅を入れ……


「おりゃあ!落ちろ!!!

紫電一閃!!


――バリィィン!!


京の鉈車と、シグナムの紫電一閃が遂に障壁を砕く!
障壁そのものは再構築が出来る物だが、京もシグナムもそんな暇を与える心算は毛頭なく、即座に京が突進し、琴月 陽で大ダメージを与え
ようとする。

琴月 陽は、裏式の奥義を除けば、草薙流の中でも特に威力が高い技だ。(荒咬みおよび、毒咬みの連携技は除く。あくまで単発の威力。)
此れを真面に喰らったら炎の耐性が低いガリューは只では済まないだろうが……


――ドゴォォォォォォォン!!!


「のわ!?」

「草薙!!」


ガリューに琴月の肘打ちが炸裂するかと思われた瞬間に、壁が吹き飛んで、その衝撃で京を吹き飛ばしてガリューへの攻撃を中断させた。


「のヤロォ……援軍て所か?……やってくれるじゃねぇかオイ!!」

「派手に吹き飛ばされたが、大丈夫か草薙?」

「此の程度、掠り傷にもならねぇよ。
 だが、壁ぶっ壊して乱入して来るとは、中々派手な登場の仕方をするじゃねぇかオッサンよぉ?ったく、この登場は流石に予想外だったぜ。」


吹き飛ばされた京は無事だが、此処での増援は京とシグナムにとっては有り難くないだろう。
ガリューを倒せる好機を奪われただけでなく、圧倒的に有利な2vs1の戦いが、ツーマンセルのマルチバトルになってしまったのだから。


「……よもや、お前が苦戦するとはなガリューよ……まぁ、彼らほどの実力者2人が相手ではお前も分が悪いか。」


現れた増援は、槍とも薙刀とも取れない武器――言うなれば柄の長い青龍刀を手にした40代半ばから50代と思われる男性。
ベージュのロングコートを纏った姿がとてもダンディだが、それ以上に、その身からは『幾多の戦場を駆け抜けてきた強者』のオーラが立ち上っ
ているのだ。
其の力が、ガリューよりも上である事は疑いようがないだろう。

だが、そんな事よりも――



「貴様……ベルカの騎士か!?
 いや、答えなくとも分かる……古式ではない現代式だが、貴様がベルカの騎士だと言う事はな――だが、そうであるならば如何してテロリス
 トなどに加担する!騎士の誇りを忘れたか!!」


シグナムは、現れた男がベルカ式の魔法を使う騎士だと言う事を見抜き、其れに驚き、そして憤慨していた。
ベルカの騎士は総じて底力が高く、そして騎士である事に誇りを持ち、必要ならばその誇りを捨てる覚悟を持ちつつ、誇りを穢さぬ様に戦う物
だと、シグナムはそう思っていた。
事実、10年前に、シグナムは誇りを捨てる覚悟を決めた事があったが、それでも戦いは正々堂々と正面から挑み、闇討ちや横槍の様な騎士
の誇りを穢す事だけはしなかった。

だが、現れた男はこの戦いに乱入して来た――其れ自体は良いが、シグナムが許し難かったのは、堂々と戦線に加わるのではなく、壁抜きと
言う方法で、闇討ちにも等しい形で京を強襲し、更にはテロリストに加担しているという事実だった。


「騎士の誇りか……そんな物は、とうの昔に捨てた――否、俺にはもう必要が無いと言う所か。
 俺とて、こんな事は好みではないが、生憎と選り好みをしていられる立場ではないのでな……目的を果たす為に、戦線に加わらせて貰う。」

「貴様……!!」


男の言葉に、シグナムの怒りは燃え上がる一方だが――



「熱くなるなよシグナム、燃えるのは結構だが、頭に血が上っちまったら勝てるモンも勝てねぇからな?」

「草薙……其れは、そうだな。」


今にも斬りかからん勢いだったシグナムを京が止めた。
其れがワンクッションになったのか、シグナムの中で渦巻いていた怒りは取り敢えず落ち着き、普段の冷静さを取り戻す――逆に言えば、シグ
ナムにとって、騎士の誇りを穢すという行為がドレだけ許し難い物だったかが分かるだろう。


「このオッサンの相手は俺がするぜシグナム。
 テロリストに加担した堕ちた騎士――アンタの刃の錆になる相手でもないだろ?誇りを穢した騎士は、俺の炎で焼き尽くしてやるぜ!!
 だから、そっちの虫人間の方を頼むぜシグナム?」

「草薙……その心遣い、感謝するぞ。
 だが、援軍が来たところで我等は負けん!夜天の主を守護する炎と、八岐大蛇を薙ぎ払った炎が一緒である以上、焼き尽くせない物は無い
 のだからな!」


だが、乱入者の相手を京が買って出た事で、シグナムの怒りは幾らか沈静化したらしく、男の相手を京に任せると、自分はガリューとの戦いに
集中せんと闘気を高める。


「テメェ等は、並の魔導師と比べりゃ相当に強いんだろうが……その程度で、俺達を倒そうなんて烏滸がましいぜ!
 テロリスト風情何て言う心算は無いが、テメェ等のそのちっぽけな力、俺とシグナムの灼熱の炎と比べてみやがれってんだ!」

「倉庫を狙うと言う作戦其の物は悪くなかったが、其処に誰が駆けつけるかまでは想定していなかったのが仇となったなテロリストよ。
 貴様等の力は、高町やテスタロッサにも勝るとも劣らないのだろうが、其れでも私と草薙には勝てないと言う事を、その身をもって知れ!」


――轟!!!


瞬間、京の掌と、シグナムのレヴァンティンの刀身で炎が弾け、京とシグナムの闘気も紅蓮の炎の如く真っ赤に染まる。
オークション出品品を保管した倉庫での戦いは、此処からが第2ラウンドであり、同時にファイナルラウンドでもあった。








――――――








Side:ロック


倒しても倒しても、次から次へと現れるガジェットか……何て言うか、テリーの好きなゲームで無限レベルアップしてる気分だぜ此れは。
マッタク持って敵さんはドレだけのガジェットをもってやがるんだろうな?――数に余裕が無かったら、こんな『戦力を食いつぶす』様な戦いはし
ない筈だからな。

っと、あぶねぇフェイト!

させるかよ……レイジングストォォォォォォォォォォォォォム!!!



――ドガァァァァッァァァァァァァァン!!



「ロック……ありがとう、守ってくれたんだね?
 私の防御力は、管理局でも最低レベルだから、ガジェットの攻撃を真面に喰らったら、流石にヤバかったからね……感謝するよ。」

「れ、礼は要らねぇよフェイト――仲間を守るのは当然だろ?
 其れに、アンタは六課の隊長さんなんだから戦線離脱ってのはダメだ――俺は、其れを止める為に動いたに過ぎないぜ……何よりも、ガジェ
 ットってのは、可成り、相当にウザかったからな。」

「あはは……その気持ちは分かる、うん。」



倉庫には京とシグナムが向かったし、外にはなのはが居るから、余程の事がない限りは俺達に負けは無いからな?……なら、勝利を確実に
する為にもエンジンフルスロットルで行こうじゃないか!!


限界まで、飛ばすぜ!!――覚悟しな、テロリスト共!!











 To Be Continued…