Side:京


ホテルアグスタでのオークション当日だが、オークションは夜からだから、午前中の訓練は普通にある訳で………何でか、なのはと戦う事にな
っちまったぜ。
恐らくはなのはが、俺の実力を見て戦いたいって思ったんだろうが、俺としてはあんまり戦いたくねぇ……ぶっちゃけ、八神が大人しくなる程の
一撃ってのは想像したくもねぇからな。
まぁ、やるからには相手になってやるって事だったんだが……やっぱり強いななのはは――ディバインバスターの破壊力はリョウの『覇王翔哮
拳』に匹敵するかそれ以上だからな。

だが、同時に弱点も見つけたぜ?
確かに砲撃は見事なモノんだが、近接の格闘戦に関しては『格闘戦も出来る』レベルだから、俺の敵じゃねぇんだよ!!

舐めんな!!!


――ガッ!!


「カウンターでガードをこじ開けて来た!?」

「近接格闘戦の経験の少なさが仇になったな?
 それじゃあ、俺だけじゃなく、テリーやレオナにもアンタは勝てないぜ?――ガチの格闘戦に持ち込まれたら、スバルが相手でも引き分けだ。
 スバルとノーヴェとギンガが、3人がかりで格闘戦挑んだら、スバル達の勝ちじゃねぇか?
 オラァ!ボディがお留守だぜ!!!」

それで、まだやるかなのは?――挑んで来るってんなら相手にはなるぜ?



「うぅん、もう充分――京さんの強さは、身をもって味わったからね……貴方が味方だと思うと、とっても頼もしいよ京さん!!」

「へへ、燃えたろ?」

この模擬戦は、俺の勝ちだななのは♪











リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round12
『Antimony~Mutually Exclusive~』











んで午後。
此れからホテルアグスタに向かう訳なんだが……全員でヘリに乗り込むって事は無いよなはやて?
幾ら精鋭を集めた小規模部隊とは言え、部隊員の総数は20人に満たないから、全員が入る事は出来るだろうがギュウギュウだろうからな。

まぁ、はやてはその辺も計算しているんだろうけどよ。
時にシャマル、その紙袋の中身は一体何なんだ?



「あぁ、此れ?
 此れははやてちゃん達のお仕事着よ♪頻繁に着る物でもないから、買う必要もないと思ってレンタルしたんだけどね♪」

「お仕事着って……何と言うか、不穏な空気を感じ取るんだが…多分俺の気のせいだよな?――って言うか、気のせいであってほしいぜ。」

まぁ、此のオークションが無事に終わるって言う保証は何処にもないから、潜入の為に、はやてがどんなモンを用意してた所で今更驚きはしね
ぇけどよ。

まぁ、問題は、シャマルが持ってたキャリーバッグの中身は本当に只の仕事着かって事なんだけどな。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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・・・・・・・・・・・・

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・・・・・・

・・・



で、オークション開催15分前!
シャマルが持って来た『仕事着』に着替えたはやてとフェイト、其れにシグナムは何とも言えない『華』が有るぜ……この華は、見事なもんだ。
時にはやて、何でなのはじゃなくてシグナムなんだ?

なのはが居れば、色々面倒もないだろ?



「京さん、此のオークション会場には、出品される品を狙ってテロリストが現れるかも知れないんやで?
 テロリストが襲撃して来た時に、建物の中になのはちゃんが居たらどないな事になると思てんの……一瞬でバトルモードにモードチェンジして
 ホテルの内部から、外のテロリストに向かって壁抜き上等の直射砲と、全方位発射型の射撃で全力全壊やで!?
 只の娯楽としてオークションに参加するなら兎も角、戦闘が起こるかも知れん場所で、建物内部になのはちゃんを入れる事が出来るかぁ!」

うふふふ……テロリスト共、来るなら来やがれなの……全力全壊で相手になってやるの。

「なのは……妙なオーラを纏ってるみたいだけど、アレって何か分かるかテリー?」

「アレは……そうだ、確か『殺意の波動』って奴だ!」

「なのはは、若しかしてオロチの血を引いている?」



いや、オロチって事は無いと思うぜレオナ?其れと殺意の波動ってのも違うだろテリー?……アレは単純にバトルジャンキーのオーラだぜ。
はやて、アンタがなのはをオークション会場内に入れない理由には納得したぜ――アイツが中に居たら、テロリスト襲撃と同時にホテルが崩壊
しちまうだろうからな……てか、なのはに普通にリミッターなりなんなりかけとけよ!



「リミッターはかけとるんやけど、なのはちゃんには私にかけてる4ランクリミッターでも足りんのよ?
 私がランクSSでなのはちゃんはランクS+なんやけど、戦闘中のなのはちゃんのランクはEX(測定不能)やからねぇ……今の管理局で最大の
 10ランクリミッターかけても、いざ戦闘になると、リミッターがなのはちゃんのパワーに負けて吹っ飛んでまうんや……」

「……人間だよな、なのはは?」

「そうであると信じたいで私は……まさか、10年の間にあんなバトルジャンキーになってまうとはなぁ。
 10年前の、純真無垢で真っ直ぐな魔法少女が懐かしいで。」



10年か……人が変わるには充分な時間だぜ。
時に其れは其れとして、何だって俺とテリーとロックまで『仕事着』に着替えなきゃならねぇんだ?オークション会場に入るならアンタ達だけで充
分じゃねぇのか?



「フッフッフ、甘いで京さん?良い女ってのは、良い男を連れてるもんやで?
 京さんもテリーさんもロック君も、ものごっつイケメンさんやから連れてかないとか有り得へんて――何よりも、オークション会場は女性単体よ
 りも男女同伴の方が入り易いんや。」

「此れも、作戦の内って事かい?
 なら良いが………」


「キョォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!」



八神……何で居るしコイツ。いや、はやてが呼んだんだろうが、何でコイツを呼んだし。



「性格は兎も角、実力は確かやからね。
 敵に回せば厄介やけど、味方である内は庵さんはメッチャ頼りになると思うんよ?……性格とか人格とか、色々破綻しとるけどね。」

「人格破綻人間の時点で色々ダメだろ。」

まぁ、八神の実力に関しては言う事ねぇけどよ。



「まぁ、そう言う事やから、中は私達6人で、外は皆にお任せや……ほな、行こうかロック君♪」

「おわぁぁ!!抱き付くなはやて!当たってる、当たってるから!!!」

「ふふふ……当ててんのや♪初心な反応がかわえぇなぁロック君は♪」


「私のパートナー、お願いできるかなテリー?」

「OK!俺は紳士とは程遠いが、レディに恥じをかかせない程度の振る舞いは身に付けてる心算だからな……アンタのパートナー、勤め上げて
 見せるぜフェイト。」



んで、組み合わせはロックとはやて、テリーとフェイトか……はやて、あんまりロックをからかうなよ。
となると俺の相手は、1人しか居ねぇよな?アンタが俺のパートナーかシグナム――パートナーとしては申し分ないぜ?アンタは強いからな。



「うむ、私としてもお前と一緒と言うのは頼もしいのだが……草薙、この格好は可笑しくないだろうか?
 主はやてに言われるままに着てみたのだが、矢張り少しばかり気恥ずかしい……私に、この様な衣装は似合わないと思うのだが……」

「そんな事はねぇだろシグナム?
 少なくとも俺は、その真紅のドレスはアンタに良く似合ってると思うぜ?紅蓮の炎を扱う、美人剣士様にはこの上なく似合ってるって所だ。」

「そ、そうか……ならば、此のオークションの間だけ、私のパートナーをお願いできるか草薙?」

「願ってもないね。
 って言うか、アンタにパートナー指名されるとか男冥利に尽きるだろ?人生此れナンパの紅丸だったら狂喜乱舞するのは間違いねぇって。
 美人で腕が立って、そして頭も良いと来てるからな?俺の元いた世界だったら、KOFを通じて世界的な有名人になってたかもなシグナム。」

「か、からかうな草薙!!」



からかってねぇよ。割と本心なんだぜ?
神楽やアテナとは違う……アンタには、安心して背中を任せられる安心感があるからな……其れ位、アンタは強いって事さ。――テロリストが
来るかもしれないって事だが、もしその時は大暴れしようぜシグナム?
俺の炎とアンタの炎が一つになれば、焼き尽くせねぇモンは無いからな。



「お前……ふ、是非もない!
 古代ベルカの炎と、八岐大蛇を薙ぎ払った炎が一つとなれば、確かに敵は無いだろうからな……我等の炎の前に敵は無しと言う所だな!」

「誰が来ようと敵じゃねぇぜ?……燃やし尽くしてやる!」

「ふ、頼りになるな草薙?」



俺は、人呼んで『炎の貴公子』なんでね……そんじょそこらの雑兵に負けてやる事は出来ねぇのさ――時にシグナム、何で腕を組むんだ?



「こうした方が雰囲気が出ると主から聞いたのだが……若しかして嫌だったか?」

「いや、アンタがこんな事するなんて予想外だったから驚いただけだ。てか、はやての入れ知恵かよ!」

ったく、この調子でスバル達にも変な事教えてねぇだろうな、あのタヌキ隊長様は……まぁ、あんまり変な事教えると、スバル達経由でゲンヤ
やクイントさんの耳に入る可能性があるから、多分其処まで変な事は吹き込まねぇだろうがな。
そんじゃ、俺等はオークション行ってくるから、外の方は任せたぜ?……特に八神、スバル達に変な事すんなよ?俺の妹達に手を出したら、只
じゃおかねぇからな?



「ふん、見損なうな京。小娘風情に手を上げる程、落ちぶれてはいない――俺の目的は、貴様だけだ。
 何よりも……下手な事をしたら、俺の身の方が危険なのでな?……俺は、もう二度となのはの集束砲撃を喰らいたくはない!!」

「……そんなにヤバい攻撃だったのか?」

「ルガールのジェノサイドカッターの10倍危険と言えば分かり易いか?」

「あぁ、そりゃヤバいな。」

つまり、なのはが八神に対する安全弁か……まぁ、其れなら大丈夫だろ。
そんじゃ、スバル達もしっかり頼むぜ?敵が出て来たら、遠慮しないでやっつけてやんな。



「うん、任せてよ京兄!」

「ヴィータさん達も居るし、ギンガも居る。だから任せとけよ京!」



ハハッ、頼もしいもんだぜ。此れなら、俺達は安心してオークションに潜入できるな。






――んで、オークション会場。
ホテルの多目的ホールが会場だったのか。普段は、結婚式やパーティなんかに使うもんなんだろうが、この広さなら確かにオークションの会場
としても十分機能するだろうからな。

しかし、俺達以外の客は所謂セレブな連中なんだろうな?謎の骨董品やら何やらにトンでもねぇ額付けて落札してやがる……さっきの絵とか
何処が良いのか分かるかシグナム?
俺にはどう見ても、只出鱈目に絵具をカンバスに散らかしたようにしか見えなかったんだが……



「安心しろ草薙、私にもそうとしか見えなかった。
 だがしかし、あんな物でも高名な画家が描いたと言うだけで高値が付く……絵画其の物よりも、作者のネームバリューで買ってる様なモノだ
 ろうな。」

「そう言うモンなんだろうな……ま、コイツ等の金銭感覚ってのが麻痺してんのは間違いなさそうだぜ。
 とは言え、マッタク参加しないってのも周囲から怪しまれそうだから、適当なモンに適当な値段つけてみた方が良いんだろうが……ん?」

「如何した草薙?何か目ぼしい物でも見つけたか?」



いや、そう言う訳じゃないんだが、一瞬気配を感じたんだが……今は感じない。気のせいか?
テリーとロック、はやてとフェイトも気付いてねぇみたいだし――お前は感じなかったかシグナム?



「気配?……いや、特別な物は感じなかったぞ?――ただ、ホンの一瞬だが、お前の気配が増えた気はしたがな……」

「分身はしてねぇからな?」

「見れば分かる。恐らく、私の気のせいだろう。」



気のせいだよな、多分。俺は分身も分裂もしてねぇからな……まぁ、此のまま何もなく終わるならそれに越した事はないぜ。――尤も、そうなっ
たらそうなったで、八神の奴は不満爆発だろうけどな。
そん時は、軽く相手になってやるか。



――ズゥゥゥゥゥン!!!



だが、本当に何も起きないなら、はやてが此のオークションに参加をしたりはしないよな?
テロリスト襲撃ってのも、確かな筋からの情報で信憑性が高いから、オークション参加を決めた訳だ……そして其れは大当たりだぜ!この大き
な揺れは、地震の其れとは違うからな。
コイツは、間違いなく自然じゃない、人工的な力によるモノだ。……外にはスバル達が居るから簡単に入り込む事は出来ねぇはずだから、如何
やら敵さんは、俺達が会場入りするよりも早く会場入りしてたみたいだぜ。

喰らえ!!

紫電一閃!!



ガジェットとやらが、会場に入って来やがったからな。
尤も、コイツ等如きは俺等の相手じゃねぇから、出て来たのは俺とシグナムが一瞬で焼き潰してやったけどよ?……アンタじゃ燃えねぇなぁ?
けど、今ので会場は大混乱のパニック状態だからな?何とかしろよ、隊長。



「任しとき!司会さん、ちょおマイク借りるで?
 コホン……え~~、此方時空管理局特務部隊・機動六課隊長の八神はやてです。
 会場に、オークションの出品品を狙ったテロリストが現れたようです。テロリストの排除は私等が行いますので、皆さんは落ち着いて避難をし
 て下さい。
 尚、只今現場には『高町なのは』が出撃していますので、テロリストが皆様に危害を加える事は無いと保証します♪」



「時空管理局の特務……た、助かった!」

「其れに高町なのは……千の敵を一撃で葬ると言われている彼女が来ているのならば、テロリストなど恐れるに足らず!!」

「破壊神なのは、バンザーイ!!!」



……お見事。
てか、コイツ等の中でなのははドンだけの超人なんだ?千の敵を一撃で葬るとか、破壊神とか……まぁ、あながち間違ってるとは言えねぇって
のが難しいとこだがな。

だが、敵が来たってんなら払うだけだ。準備は良いか、テリー、ロック!!



「OK!Go Ahead!!」

「手加減なしだ……限界まで、飛ばすぜ!!」


「ほな行くで、シグナム!フェイトちゃん!!」

「御意に!」

「うん、本気で行こう!!」



外はなのはと八神達が居るから大丈夫だから、俺達はホテルの内部に入り込んだ連中を一匹残らず叩きのめしてやろうぜ?オークションの品
を盗もうとする害虫は、纏めて駆除するに限るからな!!



「ふ、是非もない!行くぞ草薙!!」

「おう!……さっきのドレスも良かったけど、アンタはその騎士服の方がやっぱり似合ってるな。」

「此れは、我が主が直々にデザインして下さった物だからな。……さて、派手に燃やすとしようか?」



だな。
火だるまになりたい奴からかかって来な。……尤も、火だるまになるだけじゃなく、炭になっちまうかもしれねぇけどな!!!








――――――








No Side


会場内で襲撃が確認されたのと時を同じくして、ホテルアグスタの外でもスバル達がガジェットドローンを発見し、ホテルに侵入させまいと戦闘
を開始していた。
ヴィータやザフィーラと言った、夜天の騎士の強さは言うまでもないが、スバル達フォワード陣は、個々の能力で劣る部分をチームワークでカバ
ーしながら見事な戦いを行っていた。
ギンガが加入したというのもあるだろうが、スバル、ノーヴェ、ギンガのナカジマ三姉妹がフロントアタッカーとなってガジェットを潰し、エリオとキ
ャロは、本来の姿となったフリードに乗り、エリオは龍騎士として戦い、キャロはバックスとしてサポートに回る。
そしてティアナが、指揮官となってクロスミラージュでの射撃魔法をメインにした牽制を行いながら仲間達に指示を飛ばす――六課フォワード陣
のコンビネーションは、新人故の粗削りさはあるモノの、実に見事な物であった。

だが、それ以上に……


「テロリスト……ぶっ飛びやがれなのーーーーーー!!!

『Kill You.(取り敢えず死んでください。)』


――ドッガァァァァァァン!!!



我等が高町なのはは、『手加減?何それ美味しいの?』と言わんばかりに、ディバインバスターでガジェットドローンを粉砕!玉砕!大喝采!
一応、このガジェットドローンは『AMF』なる物を装備しており、魔法に対して高い耐性をもって居る筈なのだが、なのはの砲撃はそんな物知ら
ないとばかりに、ガジェットドローンをスクラップにして行く!
白い魔王恐るべしである。


「雑魚が……遊びは終わりだ!泣け、叫べ、そして死ねぇぇぇ!!!」

「任務、遂行します。」


更に、庵とレオナも夫々ガジェットを撃破していく。……尤も無機物であるガジェットに対して『死ね』と言うのも如何なものかと思うが。
ともあれ、現場が混戦の様相を呈しているのは間違いないだろう。
ドレだけ倒しても、ガジェットは次から次へと湧いてくるのだから。

そして、混戦ともなれば、当然予期せぬ『間違い』が起こるのは然りだ。


「しまった!!…京さん避けて!!!」


ティアナの放った魔力弾が、京に向かってしまったのだ。
混戦故に起きてしまったフレンドリーファイア………だが、此処でティアナは気が付いた――今、自分が攻撃したのは一体誰だったのかを。


「(何で京さんが此処に?京さんはホテルの中にいた筈だから、此処に居る筈がないのに……其れにあの服、京さんの仕事着ともバリアジャケ
  ットとも違う?……じゃあ彼は一体?)」



そう、京ははシグナム達と一緒にホテル内にいる筈なのだ。
幾ら最速で此処に来たとしても、早すぎる上に服が違い過ぎる――ティアナが『誤射』した京は、白いバンダナを額に巻き、漆黒の学ランを身に
付けていたのだから。


「テメェ……素手で勝負しやがれ!!」

「行くぜ……」

「焼き尽くしてやる。」


その京(?)がティアナの魔力弾を素手で握り潰すと同時に、新たに2人の『京』が姿を現す。
白いバンダナは共通だが、濃紺の学ランを着た京と、茶色の学ランを着た京が!!最初に現れた漆黒の学ランの京と合わせて、この場に突如
として、3人の『草薙京』が現れたのだった……











 To Be Continued…