「……もう朝か。」


突然だが一夏の朝は早い。
毎日AM5:00に目を覚ますと、弁当の仕込みをしてから両手と両足にトレーニング用の重りが入ったリストバンドとアンクルバンドを装着してから学園島を一周すると、その後は重りを付けたままシャドーを行う。
そして其のシャドーは普通のシャドーではなく対戦相手をリアルに想像し、その高度な想像によってシャドーの攻撃によってダメージを負うレベルのモノであり、通常のシャドーよりもより実戦に近いトレーニングが出来るモノだった。
故に一夏のシャドーは相手が居ないにもかかわらず、見ている人間が其処に相手が存在していると錯覚するほどのモノだった――そして本日のシャドーは一夏が多少被弾して左目上や頬を切る事になったが、最後はスウェーバックとダッキングでシャドーの攻撃を躱したイチカがダッキングからの渾身のボディアッパーを決め、更に逆の手でショートアッパーを叩き込み、そのショートアッパーを打ち抜く形でジャンピングアッパーに繋げる『真・昇龍拳』を決めてターンエンドだった。


「精が出ますね一夏?」

「ヴィシュヌか……此れ位のトレーニングはな。
 この世には俺より強い奴がゴマンと存在してるだろうからさ、俺は俺より強い奴を全部ぶっ倒したい……最終目標は和中のアニキにパーフェクト勝利する事だぜ。」

「織斑先生に勝つ事ではないのですか?」

「それも目標なんだが……千冬姉も和中のアニキには一度も勝ってないからさ。」

「……その和中さんは本当人間なんですか?」

「大分怪しいなぁ?
 束さん情報だと、現在行われてる横浜極道の『神代組』との抗争、通称『天城戦争』では神代組の人斬り『和泉』を相手にして全身火達磨になっても相手の首を斬り落として勝利したらしいからな。」

「千冬さんは世界最強と認識されていますが、裏の世界では其の上が存在しているのですね……」

「ISバトルは基本的にスポーツだが、裏社会の皆さんは日々が命の危険と隣り合わせだからなぁ……生き残るためには強くもなるだろうぜ。
 其れは其れとしてそろそろシャドーも終わりにしようと思ってたんだが、残り三分スパーリングの相手して貰って良いかヴィシュヌ?」

「其れは断る理由がありませんね。」


其処にヴィシュヌが現れ、少し言葉を交わした後にスパーリングとなり、天羽組の矢部から叩き込まれた実戦空手をベースにした一夏と母直伝のムエタイを自己流にアレンジしたヴィシュヌが凄まじいスパーリングを三分間みっちりと行い、スパーリング後はヴィシュヌが独自に考案したヨガを応用した柔軟運動で身体を解して朝練終了。
そして朝練後は食堂ではなく、一夏とヴィシュヌの寮室で。
本日の朝食は雑穀米に納豆(卵黄とネギと鰹節トッピング)、鯵の開き、ほうれん草の胡麻和え、豆腐とワカメとなめこの味噌汁、たくあんと言うザッツ和食なモノであった。









夏と銀河と無限の成層圏 Episode6
『降臨!学園最強の生徒会長!!』










午前中の授業も特に問題なく終わった昼休み、一夏とヴィシュヌと円夏、そして箒と鈴と乱は食堂でランチタイムを楽しんでいた。
本日のランチは、一夏が『ネギたまカルビ丼特盛、鯖の竜田揚げ、ナス味噌炒め、鳥の唐揚げ三種盛り、豚バラと白菜の重ね蒸し』、ヴィシュヌが『ガパオライス定食』、円夏が『トンカツプレート華さん盛り』、箒が定食の定番とも言える『豚の生姜焼き定食』、鈴と乱が『ラーチャーセット(ラーメン&半チャーハン&焼き餃子5個のセット)』で、鈴はラーメンが基本の醤油ラーメンで乱はラーメンが台湾ラーメンだった。


「あいっかわらずすっごい量喰うわねアンタ?
 それで太らないってんだから、アンタは世の女性の敵よ一夏。」

「燃費の悪い身体だからこれ位食わないと足りないんだよ俺は。
 天羽組のアニキ達と訓練した結果、俺は全身の筋肉が速筋と遅筋の利点のみを併せ持った性能になっちまってるんだが、この筋肉は瞬間的なパワーも凄いし持久力もあるんだが、とにかく燃費が悪いんだ。
 ぶっちゃけ俺は一食で3000キロカロリーくらい摂取しねぇと身体を維持できねぇ。」

「時代に逆行しまくった身体だな其れは。」

「否定出来ねぇな。」


相変わらず一夏のメニューがバグっていたが、燃費がコルベット並みに悪い一夏としてはこれ位の量を食べなければ身体を維持出来ないのだから致し方ないだろう……本来は生涯変わる事がないと言われている速筋と遅筋、そしてその両方の利点のみを持っている筋肉の割合を変えてしまった一夏がある意味で恐ろしいのだが。


「其れはそうと、今度のクラス対抗戦、悪いけど勝たせて貰うわよ一夏?二組の代表アタシだから。」

「へぇ、お前が二組の代表なのか鈴……上等だ、やってみろよ――お前の実力は間違いなく本物だからな……運の要素がお前に味方すれば勝てるかもしれないぜ?
 ……って、お前は運が無かったか?中学の頃の初詣でおみくじで大凶引いてたよなお前?」

「そうよ……其処から引き直して連続十回の大凶よ!!」

「ある意味で究極の凶運だなお前は。
 大凶の封入率なんぞ0.001%だってのに其れを10回連続とか逆に神がかってるっての……だが逆にその凶運が強運に反転した場合は恐ろしい事になる気がしてならねぇ――まぁ、運の要素がお前に味方したとしても俺は其れを超えてみせるけどな。」

「言うじゃない……吠え面かかせてやるわ!!」


話題は今度のクラス対抗戦に事になったのはある意味で自然の流れと言えるだろう。
一組のクラス代表はセシリアを完封した一夏が就任したが、二組は鈴と乱が推薦された末に投票で僅か一票差で鈴が代表に就任し、三組はオランダの国家代表候補生のロランツィーネ・ローランディフィルネィがクラス唯一の代表候補生だった事でクラス代表になり、四組は同じ理由で日本代表候補生の更識簪が推薦されたのだが、簪は自身の専用機が未完成である事を理由に代表就任を辞退し、四組のクラス代表は簪以外の生徒の中から立候補者と推薦者を上げ、その中から投票で選ばれ、結果として入学試験で九位になった生徒が就任する事になった――とは言え四組のクラス代表は学園に配備されている量産機を使う事になるので専用機を持っている一夏、鈴、ロランの相手ではないだろう。
詰まる所、クラス代表選は事実上一組、二組、三組の三つ巴の戦いになると言えるのだ。


「そう言えば何で四組の簪さんだったか?彼女の専用機は完成してないんだ?
 円夏と同じ日本の代表候補生なんだろ?だったらIS学園入学時には専用機が完成してて然りだと思うんだがな?」

「それなのですが、聞いた話では更識さんの専用機を開発していた企業が、一夏さんの存在が表沙汰になった事で更識さんの専用機の開発をストップさせて一夏さんの専用機の開発を行ったからだと……」

「って事は倉敷か、俺用の専用機を開発したとか言って売り込んできたからな……千冬姉の専用機だった暮桜のワンオフの零落白夜を再現したのは見事だったけど、其れ以外はエネルギー喰いなだけの欠陥機だったから普通に断ったんだが、まさか日本の代表候補生の専用機開発を放り出していたとはな……マジで売り込みを断っておいて正解だったぜ――テメェの仕事を途中で投げ出すような連中が開発した機体なんぞ不安しかねぇからな。」

「其れは断って正解だったな一夏。」

「マッタクだぜ。」


四組に在籍している日本代表候補生の『更識簪』の専用機が完成していない事が疑問だった一夏だが、専用機の開発を行っていた『倉持技研』が開発を凍結した事が原因だった。
実は一夏がISを起動出来ると発表した後に『ラビットカンパニー』に自社開発のISを売り込んできた企業が存在していたのだが、其れこそが簪の専用機の開発を行っていた倉持技研だったのだ。
倉持技研が開発した『白式』は、一時移行時点で『ワンオフアビリティ―』が発動出来る機体となっており、そのワンオフアビリティ―は世界最強と称される千冬の専用機である『暮桜』のワンオフアビリティーにして一撃必殺の『零落白夜』が搭載されていたのだが、燃費の悪さがハンパない欠陥機だったので一夏は断っていたのだ……白式の燃費の悪さは普通に走ってるだけでガソリンメーターの残量が減って行く車と同等と言えば分かり易いだろう。


「確率的に三分の一の確率でお前とは初戦で戦う事になるかもだが、初戦だろうが決勝だろうが、当たった其の時は全力で行かせて貰うからその心算で居てくれよな?
 炎が、お前を呼んでるぜ!!」

「なら燃え尽きろ、潔くな!!」


そして食堂では一夏と鈴が『KOF98』の『京vs庵』の試合前の特殊掛け合いを披露してターンエンド。
其の後は楽しいランチタイムを楽しむのだった――其の中で、一夏が『ネギたまカルビ丼』の特盛をおかわりして食堂内をざわつかせては居たが、最強の遺伝子を継いでいる者は食欲も最強だったようだ。(意味不明)








――――――








午後の授業も恙なく終わった放課後、一夏とヴィシュヌは校内放送で生徒会室に向かうように言われて生徒会室前まで来たのだが……


「IS学園の生徒会室……この扉の先には間違いなくとんでもない奴が居るよな?」

「ですね……そもそもにしてIS学園の生徒会長を務める人間が普通の人であるとは思えませんので……其れこそ織斑先生と互角に渡り合う事が出来る人かもしれません。」

「千冬姉とガチンコで遣り合って互角な人間は表の世界には存在してないと思ってたんだが、その認識を改めるべきかもな……とは言え、此処で手を拱いてる理由もないから行くか!
 たのもー!!」


扉の向こうからでも感じる強者のオーラに一夏とヴィシュヌは一瞬驚いたのだが、次の瞬間には一夏が天羽組の矢部のアニキ直伝の『殺人空手の正拳突き』を炸裂させて生徒会室のドアを粉砕!玉砕!!大喝采!!!
そして一夏とヴィシュヌは生徒会室に立ち入ったのだが……


「……!!」

「あら、気付いたのね?……中々に鋭いわね一夏君?」

「俺か千冬姉じゃなかったら気付けなかったぜ会長さんよ!」

「あら、私って生徒会長って名乗ったかしら?」

「名乗ってないが、雰囲気で察したぜ!」

「それはお見事ね♪」


突如として上から襲い掛かって来た攻撃を一夏は回避した。
普通ならば一夏を狙ったテロリストと考えるのだが、相手は改造しているとは言えIS学園の制服を身に纏っており、更に一夏とヴィシュヌに対して悪意も殺気も持ち合わせておらず、敵意も持ち合わせていない事が一夏とヴィシュヌには分かった……だからこそ一夏は回避後に反撃しなかったのだが。


「にしても、普通に入ってくる事は出来なかったのかしら?
 態々扉粉砕しなくても良いじゃない……と言うか、生徒会室の扉って学園長室の扉と同じで木製の扉に特殊な硬化塗料を塗ってあるから鋼鉄並みの硬度があるんだけど何でそれを砕けるのよ!?」

「扉の向こうから大きな闘気を感じたから先手必勝ってな。
 其れと扉を砕けたのは俺が千冬姉の弟で天羽組の猛者達に鍛えられたからだ!矢部のアニキの正拳突きと青山のアニキのラリアットは普通にやべぇっての……IS使っててもアレ喰らったら絶対防御発動確定だって。」

「織斑先生から聞いているけど、貴方は天羽組のお世話になっていたんだったわね……裏の社会では『殺しの天羽組』と呼ばれ、外道や敵対組織には一切の容赦をしない天羽組の幹部級に鍛えられたのならば此れも納得だわ。
 其れは其れとして、扉どうしましょうかね?」

「それについては大丈夫だ会長さん。
 俺達がこんな会話をしてる間に遠隔操作で直しちまったぜ束さんがな。」

「マジかぁ……流石は世界最強の頭脳の持ち主、いとも簡単に想像の上を行ってくれるわ。
 さてと、立ち話もなんだからソファーにかけて頂戴な。」


取り敢えず束が色々とぶっ飛んでいる事は間違いないが、一夏とヴィシュヌは攻撃してきた青髪の少女、IS学園の生徒会長である『更識楯無』に促される形でソファーに腰掛けた。
其処に眼鏡のポニーテールの生徒が紅茶を運んで来てテーブルに置き、一礼をしてその場から去り、生徒会室内では一夏とヴィシュヌがテーブル越しに楯無と対面する形となっていた。


「それでは改めて自己紹介しましょうか?
 私がIS学園の生徒会長の更識楯無よ。宜しくね一夏君、ヴィシュヌちゃん♪」

「既に知ってるだろうけど織斑一夏です。世界初の男性IS操縦者にしてラビットカンパニーの社長にして企業代表もやってます。」

「ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーです。タイの国家代表候補です。
 ……それで早速本題なのですが会長さん、何故私達は生徒会に呼ばれたのでしょうか?」

「駆け引きは嫌いじゃないけど君達には其れが必要ないから単刀直入に言うわ――一夏君、ヴィシュヌちゃん、生徒会に入ってくれないかしら?」

「「え?」」


改めて自己紹介をした後に楯無は一夏とヴィシュヌに生徒会に入ってくれないかと言って来た。
此れには一夏とヴィシュヌも驚き、一瞬言葉を失ってしまった――入学式から一週間ちょっとの生徒に、まさか生徒会長から直々に生徒会へ勧誘されるなど普通ならば有り得ない事なのだから当然と言えば当然の反応と言えるだろうが。


「如何して俺とヴィシュヌを?」

「他にも適任の生徒が居るのでは?」

「確かに三年にはアメリカの代表候補の『ダリル・ケイシー』が、二年にはギリシャ代表候補の『フォルテ・サファイア』とイギリスの代表候補の『サラ・ウェルキン』、ブラジルの代表候補である『グリフィン・レッドラム』が存在しているけど、君達は彼女達よりも遥かに強い。
 一夏君の実力はセシリアちゃんとのクラス代表決定戦で示されていたけど、ヴィシュヌちゃんの実力も一夏君に匹敵しているわ――貴方達の事を観察させて貰っていたけれど、一夏君とヴィシュヌちゃんのスパーリングはプロのISバトルのトップ選手の其れと大差なかったわ……だから、学園の防衛力を強化する意味でも私は君達を生徒会に迎え入れたいのよ。」


一夏とヴィシュヌが発した疑問に、楯無は至極分かり易く答えてくれた。
二年、三年の専用機持ちよりも遥かに強いと楯無は判断して一夏とヴィシュヌを生徒会に迎え入れようとしたのだ――実力的には三年のダリル・ケイシーも候補だったのだが、ダリルに関しては更識の情報網で少し怪しい部分があったので除外したのだ。


「それが理由か……だが、学園の防衛力強化は大事だとしても、タダ働きはゴメン被るぜ?
 俺とヴィシュヌが生徒会に所属するメリットを提示してくれないと首を縦に振る事は出来ないぜ流石に……社長やってる身としてはコストパフォーマンスってのは度外視できねぇからな。」

「私が君達を鍛えてあげるってのは如何かしら?
 IS学園における生徒会長の肩書は『学園最強』の証でもあるわ……学園最強の生徒会長からトレーニングしてもらうってのは可成りのメリットと思うのだけれどね?」

「学園最強ねぇ……会長さんは織斑先生よりも強いのか?」

「織斑先生は『学園最強』の更に上にある『学園最強無敵』だから勝てないわ。
 だけど、織斑先生を相手にしても勝てずとも負けない戦いは出来るわよ私は……だけど其れはあくまでも表の世界の話――何でもありの裏の世界で私と織斑先生が十回戦ったら十回とも私が織斑先生を半殺しにして勝ってるわ。
 更識は日本の暗部であり、更識楯無は歴代の頭首が継ぐ名なの。因み私で十七代目ね。」

「成程、アンタも裏社会の人間だったって事か……なら其れを断る理由は何処にもねぇ!」

「確かにそうですね……私と一夏は生徒会に入らせて頂きます。」

「ありがと~~!!」


更に楯無は自分が一夏とヴィシュヌのトレーニングに付き合うと言い、其処から得られるメリットを考慮した末に、一夏とヴィシュヌは楯無の提案を受け入れ、一夏とヴィシュヌは生徒会の会計のポストに就くのであった。

その後楯無から『私とスパーリングしてみない?』と提案され、一夏とヴィシュヌも断る理由はなかったのでトレーニングルームでスパーリングとなったのだが……


「さ、流石タイのジュニアムエタイ界で四階級制覇とジュニア大会を総なめにしただけの事はあるわ……生身の戦いで私と引き分けた人は久しぶりよ。」

「拳打や蹴りだけでなく、必殺を狙った肘や膝も点をずらして受け流してしまうとは……其れが柔よく剛を制すと言うモノですか……私がKO出来なかった相手は一夏と織斑先生以外では貴女が初めてです。」


まずはヴィシュヌと楯無がスパーリングを行ったのだが、ヴィシュヌのムエタイと楯無の柔術がぶつかったスパーリングは互いに決定打を欠く形となり、結局は時間をフルに使った末に双方グロッキーでリングにぶっ倒れる事になったのだ。
打撃の豊富さとリーチではヴィシュヌの方が有利だが、柔術を使う楯無は相手の攻撃を受け流してからのカウンターの投げや関節技、更には急所への当て身があるので総じて戦えば五分だったのだ。
ヴィシュヌの打撃に対して楯無がカウンターの投げを仕掛けてもヴィシュヌは抜群のバランス感覚で体勢を立て直して反撃し、関節技を仕掛けてもヨガを行っているヴィシュヌは身体の柔軟性が『全身が二重関節か?』と思うほどにぶっ飛んでいるので大したダメージにはならず、逆にヴィシュヌも打撃は全て点をずらされて決定打にならず、首相撲からの膝蹴りも的確にガードされ、其れならばと見様見真似のプロレス技である『垂直落下式DDT』で強引にぶっこ抜いてマットに叩きつても楯無は上手く受け身を取ってダメージを最小限に留め、結果としてのダブルKOとなったのだった。


「二人ともお疲れさん。
 ……そんで、俺ともスパーリングやるかい会長さん?」

「今日は止めておくわ……こんな状態で君とのスパーリングとか余程のマゾヒストでない限りは選択しないわ――君とのスパーリングはまた後日って事にしましょ。
 其れは其れとして、今度のクラス対抗戦頑張ってね一夏君。
 私は君の事を買ってる。そして期待もしているの……是非とも君には優勝してほしいモノだわ。」

「ならその期待には応えてみせますよ会長さん……目指すは優勝ただ一つですから!!」

「良く吠えた!男の子ならそれくらいの気概がないとね♪」


スパーリングを終えトレーニングルームから出たところで、『学園最強』の肩書を持つ楯無を打ち負かして自分が生徒会長になろうと目論む生徒の襲撃があったのだが一般生徒程度では疲労困憊状態の楯無であっても敵ではなく、全員が合気投げによって投げ飛ばされていた……その合気投げの追撃として某格ゲーのラスボスの超必殺技である『レイジングストーム』が発動していたのは見なかった事にした方が良さそうだが。

其れは兎も角、楯無とのトレーニングを行った一夏とヴィシュヌの実力は格段に底上げされ、更に一夏専属の技術班によって機体のメンテナンスもバッチリであり、自身のコンディションも機体のコンディションも最高の状態で一夏はクラス対抗戦に向かうのであった。








――――――








クラス対抗戦当日の朝、オータムは学園量の裏にてタバコを吹かしながらある人物を待っていた――オータムは愛煙家だが火を使うタバコではなく電子タバコを愛用しており、最新型の迷彩柄の『プルームX』を使う姿には学園内でひそかなファンが出来ているほどだった。


「来たか……何の用かって?
 言わなきゃわからねぇ馬鹿でもねぇだろテメェは?……少なくとも暫くは大人しくしとけって言ってんだ……とは行ってもスコールが黙ってるとは思えねぇけどよ。スコールはなんつってんだ?」

「――――――」

「亡国機業に戻ってこいだと?
 馬鹿も休み休み言え戯言はラリッテから言えだな……俺は旦那を気に入っちまったし、旦那の為に戦うって決めてんだ……何より、戦う事が好きな俺にとって人から恨まれる戦いしか出来ない亡国機業よりも、人から感謝される戦いが出来る旦那の下じゃ段違いだから。
 だから、其れをそのままスコールに伝えな。俺はもう亡国機業に戻る心算はねぇ……でもって旦那と敵対する道を選ぶなら、戦場で対峙した時には俺がお前を殺すってな。」

「!!」


オータムの本気の殺気を受けた生徒は冷や汗を全身から流しながら其の場から撤退する以外の選択肢は存在していなかった。


「このタイミングで俺に接触して来たって事は、今度のクラス対抗戦で仕掛けて来るって事か……だが、其れは上手く行かないと思うぜスコール?
 旦那は……織斑一夏は俺達が思っている以上に凄い奴だからな。」


オータムは吸い終わった煙草をプルームXから抜くとデコピンで弾いてゴミ箱に超高速インさせてターンエンドとなり、そして遂にクラス対抗戦の日がやって来たのであった。










 To Be Continued