箒への誕生日プレゼントの制作過程で見付けた白騎士のISコアのログから、千冬に関して『ある仮説』を立てた束は、解析不能な『白騎士事件と織斑千冬の真の関係』の方は一先ず置いておき、『織斑計画』の方から調べてみる事にした。

とは言っても既に凍結された計画であり、計画に関する資料の殆んどは破棄されているので、新たな情報が得られるとは束も期待しては居なかったのだが……


「むむ、此れは……『開発体ナンバー1000、個体名:千冬、量産型成功例一号:個体ナンバー1、個体名:一夏、量産型成功例二号:個体ナンバー5、個体名:秋五の人格と性格について』だって?あの三人の人格と性格についての記録か……此れは若しかしたらお宝情報かもだね?」


其処で束は『織斑計画』に於ける唯一の開発成功体である千冬と、量産型の成功体である一夏と秋五の人格と性格についてのデータを入手する事が出来た――とは言ってもこのデータ自体は更識も得て来たのだが、不要と判断して報告はしていなかったのだ。
だがしかし、このデータは実は結構重要だったのかも知れない。


「『開発ナンバー1000、個体名:千冬は自分にも他人にも厳しいところはあるが、その本質は優しく、後発型の弟達にも厳しくも優しく接している』って、学園に居るアイツとはまるで別人じゃんよ此れは?
 でもって、私と出会った時には既に当時のいっ君の事は冷遇してたんだよね?……となると、ちーちゃんは何らかの理由でドイツの眼帯ちゃんと同様に自分とは異なる第二人格を作り出して、ソイツが本来のちーちゃんを押し退けてメイン人格になった可能性がある訳だ。」


其処に記されていた千冬の性格と人格の詳細は、現在の千冬とは似ても似つかぬモノであり、其れを見た束は『千冬には何らかの理由で第二人格が発現し、其れが本来の千冬の人格を押し退けてメイン人格になった』との仮説を立てるに至った――入手したデータが真実を記しているのであれば、今の千冬の人格破綻振りはそう考える以外に説明が付かないと言うのもあるが。
『現在の織斑千冬は何らかの理由で誕生した第二人格が主人格になっている』との仮説の元に更に調査を進めて行った束は、その途中で『織斑計画の闇』とも言うべき記録も目の当たりにする事になった。
初の成功例である千冬が誕生するまでに犠牲になった九百九十九体の失敗作が存在していたと言うのは序の口で、千冬のスペア(或はドナー)として作られた『アウトナンバー』と呼ばれていた個体が存在していた事、量産型の失敗作は顔を潰された上で秘密裏に裏社会のマフィア等に売り捌かれていた事、量産型には『人を殺す為のデータ』がインストールされてる事、計画のデータの一部はドイツに高額で売り渡されていた事等々、後ろ暗い計画だとしても余りにも闇が深いモノだった。


「束さんが言っても説得力皆無かもしれねーけど、織斑計画に携わった連中ってのは大凡人としての倫理観とかぶっ飛んでんねぇ?
 ……流石に無いとは思うんだけど、計画の中で『ラウ・ル・クルーゼ』みたいな奴が生まれたりしてーねーだろうな?あんなのが生まれたらマジで最悪だから……まぁ、あの仮面はお洒落だと思うけど。
 っと、此れは何だ?なになに……『開発体ナンバー1000、量産型成功例一号:個体ナンバー1、成功例二号:個体ナンバー5の記憶操作について』だって?」


そんな中で新たに見付けたのは、千冬、一夏、秋五の記憶に関する記録だった。
千冬と一夏と秋五は『織斑計画』凍結後に偽の記憶を植え付けられて『織斑家』となったのだが、その記憶操作に関して記された記録には驚くべき事が書かれていた――一夏と秋五の記憶操作は問題なく行えたのだが、千冬は記憶の操作がどうやっても成功せず、苦肉の策として別の人格で上書きをしようと試みたが、其れも巧く行かず、最後の手段として『人としての倫理観も常識も度外視して、兎に角千冬よりも強烈な人格をインストールして千冬の人格に蓋をする』と言う手段を使ったと言うモノだった。
其れはつまり、今の千冬の人格は本来の千冬の人格を表に出さない為に作り出された人格であり、其れが本来の千冬の人格を抑え込んでいると言う驚くべき事実であったのだ……其れでも本来の千冬の人格が僅かばかり蓋から漏れ出していた事で『秋五だけを溺愛する』と言う歪んだ弟愛が出来上がってしまったのかも知れないが。

何れにしても、現在の千冬は本来の千冬の人格ではなく、織斑計画の末に人工的に生み出された人格である事が明らかになったのだが、其の更に先には『正義と愛のマッドサイエンティスト』を自称する束ですらも予想しなかったトンデモない事実が隠されているのだった。
白騎士のコアのデータログを洗い直した末に見つかった、『白騎士事件の際に、白騎士のコアに正体不明のデータがインストールされていた』と言う記録と共に……










夏の月が進む世界  Episode37
『Eine Szene aus einem Urlaub vor Rinkai Gakko』










ジメジメした梅雨も終わり、日本列島は漏れなく全国的に晴れとなって強い日差しが降り注ぎ、否が応でも『夏の到来』を感じる陽気となっており、其れはIS学園の学園島でも同じ事だった。
IS学園島は日本本土から離れた孤島に有るとは言え、『日本領』の範囲に存在しており、天気もまた日本と略同じなのである。

そんな『夏の到来』を感じるIS学園だが、六月には中間考査が行われ、一年生では夏月と秋五がワンツーフィニッシュを決め、夫々の婚約者達も二十位以内に名を連ねる結果となり、二年生では楯無がぶっちぎりのトップで、次いでグリフィンとダリルが同率の二位と言う結果だった。

と、中間考査は全員が良い結果であった――飛び級でIS学園にやって来た乱とコメット姉妹が上位に名を連ねていると言うのは中々に驚きの事態だが、此れは彼女達の日々の努力の賜物と言うモノだろう。


其れはさて置き本日は土曜日……臨海学校前の最後の土日だ。
週明けには一年生は臨海学校となるのだが、臨海学校の場所が海ともなれば、女子にとっては『水着の新調』と言う重大な任務があるので、『此の土曜日で水着を買いに行こう』となったのはある意味で当然の成り行きと言えよう。

そして其れは夏月と秋五の嫁ズも御多分に漏れず、本日は本土にある大型ショッピングモール『レゾナンス』にて水着の買い出しと相成ったのである。

待ち合わせ場所は例によってモノレールの駅であり、夏月と秋五は待ち合わせ時間の十五分前には駅に来ていた。『女性を待たせるべきではない』との考え故だろう此れは。

そんな夏月と秋五の本日のファッションは、秋五はブルージーンズに白のTシャツを合わせ、赤い袖なしのジージャンと言うコーディネートで、夏月はダークグレーのスラックスに黒のTシャツのコーディネートなのだが、その黒いTシャツには白で『外道に男も女も関係ねぇ!外道はぶっ飛ばす!』と入っていた……夏月の場合、其れが冗談ではなく本気であるのが少々恐ろしい所ではあるのだが。


「夏月、そのTシャツは……」

「結構良いだろ?
 俺がこの世で最も嫌いなモノはなぁ、外道な所業を働いておきながら『女だから殴られない』って思ってる外道女なんだよ……そう言う意味ではテメェから殴られに来るお前の姉貴は少しばかりマシかもな。ホント~に、ほ~んの少しばかりだけな。」

「姉さん猪武者だからなぁ……一発殴られたら二発殴り返せって人だからね。
 で、スマホで何をやってるの?」

「遊戯王の『マスターデュエル』。
 こう言っちゃなんだが、自分の好きなカードで構築したデッキで流行りの強カテゴリーデッキをフルボッコにするのが楽しくて堪らねぇんだわ……『憑依覚醒』と『ダーク・ドリアード』のペンデュラム効果で火力底上げした霊使いの総攻撃で決まり!此れで都合六十連勝だな。」

「因みに最終的な君のフィールドってどうなってたの?」

「モンスターゾーンに憑依装着のエリア、ヒータ、アウス、ウィン、それから守備要因のマジシャンズ・ヴァルキリア。
 ペンデュラムゾーンにダーク・ドリアードと方眼の魔術師、魔法罠ゾーンに憑依覚醒と憑依解放、フィールド魔法ゾーンに魔法族の里だな……ダーク・ドリアードと憑依解放の効果で憑依装着の攻撃力は4350にアップして、相手モンスターを攻撃する時には憑依解放の効果で攻撃力が5150までになるぜ。」

「うん、其れはもうレベル4モンスターの攻撃力じゃない。」


雑談をしながら夏月はスマホの『マスター・デュエル』で六十連勝を達成すると言う偉業を成し遂げていた――実際にカードを使ったデュエルでも、アプリデュエルでも夏月は相当な強さを発揮するようだ。
そんな事をしている間に女子陣もモノレールの駅にやって来た。
勿論全員オシャレをしており、其れが夫々の個性と魅力を十二分に引き出したモノとなっており、夏月と秋五も思わず見とれてしまった……特にヴィシュヌと箒の己のプロポーションを最大限に活かしたコーディネートは破壊力が相当に高かった。(ヴィシュヌは七分丈のストレッチタイプのジーパンに胸元にスリットが入った白いハイネックの袖なしシャツ、箒は黒いレディースのスラックスに赤いハイネックのタンクトップを合わせ、白いボタン付きシャツを羽織って裾を胸の下で縛っている。)


「すまん、待たせたか秋五?」

「いや、そんなに待ってないから気にしなくて良いよ。其れに、まだ待ち合わせ時間の五分前だしね。」

「待つのもお出掛けの楽しみってな……其れは良いんだけど、なんだって楯無さんとグリ先輩も居るんだよ?楯無さんとグリ先輩は臨海学校には行かねぇだろ?」

「臨海学校には行かないけれど、夏休みには海やプールに行く事になるから水着を新調しようと思ったのよ♪」

「で、良い機会だから一緒にと思った訳だよカゲ君。」

「さいですか……まぁ、賑やかな方が楽しいから良いけどな。」


待ち合わせ場所には臨海学校には参加しない楯無とグリフィンの姿もあったのだが、臨海学校には参加せずとも夏休みには海やプールに繰り出す事になるので水着を新調したいと言うのであれば今回の買い物に参戦するのも全然アリだろう。
ともあれ此れでメンバーは揃ったのでモノレールに乗ろうとしたところで布仏姉妹もモノレールの駅にやって来て、本音が『私とお姉ちゃんも水着を買いに行くのだ~~♪』と元気よく宣言してくれた事で布仏姉妹も一緒にショッピングと相成った――因みに、全員がオシャレをしている中でラウラだけは制服だったのだが、その訳を聞いてみると『服は制服と軍服以外には持っていない』との答えが返って来た事により、本日のショッピングプランには水着以外に『ラウラの私服の購入』が追加されたのだった。

そうしてモノレールに乗り込み本土に到着して、大型ショッピングモール『レゾナンス』を目指して移動を開始した一行だったが、極上クラスのイケメン二人が、極上レベルの美少女を複数人と一緒に居ると言うのは否が応でも注目されてしまい、夏月と秋五には所謂『非モテ男児』から、羨望と嫉妬の視線を向けられていた。
だがしかし、夏月と秋五はそんな視線は全く気にせずに居た――羨望と嫉妬程度では、『最強の人間の量産型』として誕生した二人にはマッタク持って無意味としか言いようがないのだ……相当に濃密な殺気にすら怯まないように設計されているのだから。
そんな下地がある上に、此れまでの経験が積まれた夏月と秋五を精神的に怯ませると言うのは並大抵の事ではないだろう。


其れは其れとして、間もなくレゾナンスに到着なのだが――


「おぉっとぉ、ま~たまた会ったな傷の兄ちゃんとその嫁ちゃんズ?今日はお友達も一緒かい?」


到着直前に最早お馴染みのアクセサリーの露店商とエンカウントした。
決して狙った訳ではないのだが、こうして外出する度にエンカウントするとなると、此れはもう何かしらの運命力が働いているとしか思えないのだが、或は此れも夏月が繋いだ縁であるのかも知れない。


「いや、マジで出掛ける度にアンタとは会うよなぁ……今日は友達ってか、秋五とは前に一度会ってるだろアンタ?ゴールデンウィークの最終日に。」

「お~~!そう言えば見覚えがあるな?ポニーテールの大和撫子ちゃんと一緒だったイケメン君じゃないか!……アンタも、傷の兄ちゃん同様に複数の彼女持ちかい?羨ましいねぇマッタク!!」

「アハハ、あの時はどうも……」


此の露店商、シルバーアクセサリーだけでなく新たに革製のアクセサリーの販売も始めたらしく、革製のベルトやブレスレット、チョーカーと言った製品も数は少ないとは言えそれなりに種類が揃っていた。
出会った以上は何も買わないと言うのは悪いので、夏月は嫁ズ全員に新たに販売を始めた革製品の中から夫々のパーソナルカラーのチョーカーをプレゼントし、秋五は箒以外のメンバーに好きなシルバーアクセサリーを一つずつプレゼントした。箒はゴールデンウィークの時に買って貰ったので遠慮したようだ。

本命の前に露店商で良い買い物をした後に改めてレゾナンスに向かい、到着して向かうは五階に毎年夏限定でオープンする『水着売り場』だ。
水着と言うモノはグラビアアイドルでもなければ夏しか着る機会の無いモノではあるが、逆に言えば夏にだけ着るからこそ拘りたいと言うモノでもあり、此の特設の水着売り場はそんな客のニーズに応えるようにブランド物からリーズナブルな水着まで多数取り揃えているガチの水着売り場なのである。
その水着売り場に来ると、夏月と秋五は特に迷う事もなく自分の水着を選んで購入した――元々男性用の水着は女性用の水着と比べると種類が少なく、精々トランクスタイプか競泳タイプかの二択の上で色を選ぶ程度なのでそんなに迷う事もないのだ。
だがしかし、女性用の水着となると話は別だ。
女性用の水着は男性用の水着よりもバリエーションが豊富で、更にデザイン性も高くカラーも豊富なので選ぶ側としてはどうしても目移りしてしまい、中々『此れ!』と言うのを決められないのが現実であり、其れは夏月と秋五の嫁ズもご多聞に漏れずで、どんな水着を買うか大いに悩んでいるようだ。


「こりゃ、まだまだ時間が掛かりそうだな……秋五、少しぶらつくか?」

「僕は構わないけど、この場を離れても良いのかな?」

「楯無さんにLINEでメッセージ送っとくから問題ねぇよ。何ならお前も箒にLINEでメッセージ入れときゃ良いじゃねぇか?いやぁ、こう言う時に便利だよなLINEって。」

「其れは確かにそうだね。」


女子達の水着選びにはまだまだ時間が掛かると判断した夏月は楯無にLINEで『秋五と少しぶらついて来るから水着を選び終わったら連絡プリーズ』とメッセージを送り、秋五も箒にLINEで『水着選び終わったら連絡をして』とメッセージを送り、夫々『了解』との返信を貰ったので特設の水着売り場を離れてレゾナンスの別のテナントを見て回る事にした。
三階のホビーショップでは夏月が『HGガンダムエアリアル……HGを買うべきか、其れともMGが出るまで待つべきか……』と悩んだ末に『HGガンダムエアリアル』を購入するのは止めて、代わりに遊戯王の新パックを五袋買ってウルトラレアを三枚ゲットすると言う脅威の運命力を見せ、秋五はポータブルタイプのリバーシを購入していた。
続いて九階のミュージックショップでは、夏月と秋五は共に洋楽のコーナーでコメット姉妹のCDを見つけて迷わず購入した……今のご時世、欲しい音源だけをダウンロード購入する事も出来るのだが、其れをせずに敢えてCDを購入した辺りに夏月のファニールへの、秋五のオニールへの愛が感じられると言うモノだろう。

続いてやって来たのは四階の雑貨屋だった。
雑貨屋と言うのは見ているだけでも楽しいモノであり、時間を潰すには打って付けの場所であると言えるのだが、秋五は此の雑貨屋の品を吟味しているようだ。


「秋五、何か探してんのか?」

「もうすぐ箒の誕生日だから、プレゼントになるモノがないかと思ってね……箒の誕生日を祝うのは六年振りだから最高の誕生日プレゼントを渡したいんだよ。」

「成程……テメェの嫁には最高の誕生日プレゼントをってか――その意気や良しだぜ秋五。」


秋五は箒への誕生日プレゼントを探していたらしく、其れを聞いた夏月も一緒に箒への誕生日プレゼントを選ぶ事にした――現在箒がポニーテールを纏める為に使っているリボンは、六年前の誕生日に一夏と秋五からプレゼントされたモノであり、そのリボンも一夏と秋五が一緒に選んだモノだったりするのだが、六年の時を経て再び兄弟ではなくなった夏月と秋五が箒への誕生日プレゼントを共に選ぶと言うのは何とも奇妙な縁、或は因果であると言えるだろう。


「俺としては、あのリボンは大分くたびれてるみたいだから、新たなリボンをプレゼントするってのが良いと思うんだが、新たなリボンは此のゴージャスなメタリックゴールドってのは如何よ?
 ストフリの内部フレームもビックリなこのゴールドは、結構イケてると思わないか?」

「其れは確かにゴージャスだけど、箒にはこっちのいぶし銀の方が似合うんじゃないかな?
 六年前の箒には白いリボンが似合ってたけど、今の箒には光沢を抑えた大人の『いぶし銀』が良いと思うんだよね……其れとも、こっちの桜色の方が良いかな?」

「確かにそっちも似合いそうだが、お前からプレゼントされたモノなら何でも喜ぶと思うけどな俺は……いっその事リボンじゃなくて、簪でもプレゼントしても良いかも知れないぜ?
 大和撫子でサムライガールな箒には多分似合うと思うしな……分かってるとは思うが、楯無さんの妹をプレゼントするって訳じゃないからな?」

「其れは分かってるって!」


最終的に秋五は『いぶし銀色のリボン』と、夏月が提案した簪を箒へのプレゼントとして購入した。リボンは兎も角、簪はそれなりに値が張ったのだが、大事な嫁へのプレゼントともなれば大した出費ではなかったらしい。
リボンと簪はプレゼント用にラッピングして貰ったところで二人のスマホにLINEで『水着を大体選んだ』、とのメッセージが入ったので五階の特設水着売り場に戻ると、其処には複数の水着を手にした嫁ズの姿があった。


「其れ、全部買うのか?」

「そんな訳ないでしょ。
 皆水着其の物は選んだのだけれど、色が中々決められなくて、折角だから私達は夏月君に、箒ちゃん達は織斑君に選んで貰おうって事になったのよ♪」

「そ、そう言う訳だから頼んだぞ秋五!」

「此れは予想外の高難易度ミッションが待ってたみたいだよ夏月……てか、僕達が決めて良いモノなのかな此れって?」

「良いかどうかは知らないが、頼まれて任された以上は真剣にやる以外に選択肢はねぇだろうな……でもって、俺達の選択が彼女達の臨海学校並びに夏休みの海やプールでの評価に直結する訳だから、気合入れんぞ秋五。」


嫁ズは水着の基本デザインは選んだモノの、どの色を買うかを中々決める事が出来ず、最終的な判断を夏月と秋五に委ねる事にしたらしい。
此れは夏月と秋五には予想外だったのだが、自分の嫁ズに頼まれたとなれば断ると言う選択肢は存在しないので、若干自分の趣味も入れつつではあるが『どの色が良いか』を選んで行く事になった。

先ずは夏月組。
楯無が持って来たのはアンダーが紐パンタイプのビキニで、色は赤、黒、白、シルバーの四色。その中から夏月が選んだのはシルバーだった。理由は『一番楯無さんに似合いそうだったから』と言うシンプルかつ最も納得出来るモノであり、其れを聞いた楯無はシルバーを購入する事を決めた。
其れを皮切りに、簪はフリルの付いたビキニで手にしていたのはアイスブルーとローズピンクで、夏月はローズピンクを選択し、簪は其れを購入。ローズピンクを選んだのは『髪色との対比が美しいから』だった。
ロランが手にしていたのはトップがハーフカップタイプのビキニで、色はレモンイエローと黒だったが、夏月は迷わず黒を選択。『ロランは銀髪で肌も白いから黒の方がメリハリが出る』との理由だった。
ヴィシュヌが持っていたのはシンプルなビキニタイプで色は赤と白だったが、夏月は速攻で白を選択――『ヴィシュヌの健康的な褐色肌には白が似合う』とはなんとも説得力があるモノだった。
グリフィンが選んだ水着はハイネックのワンピースタイプだったが、大胆に開いた背中部分と腰骨辺りまで切れ上がったアンダー部が何ともセクシーなモノであり、色は赤と白だったのだが、夏月が選んだのは赤だった。『同じ褐色肌でもラテン系のグリ先輩には情熱的な赤が似合う』との事らしい。
鈴の水着はセパレートタイプで色は水色とピンクとエメラルドグリーンで夏月はエメラルドグリーンを選択。『一見するとミスマッチに見えるカラーリングが実はマッチしてる事がある』とは結構冒険した選択だったのかもしれない。
乱が手にしていたのはハイネックタイプのトップと言う珍しいタイプのツーピースだったが、トップの胸元に一文字に入ったスリットが大胆な印象を与える水着で、手にした色は赤と青と黄色と青紫と結構多めだったが、夏月は青紫を選択。『紫は乱のパーソナルカラーだからな』との事だ。
ファニールの水着は可愛らしいワンピースタイプで、色はワインレッドとアイスブルーで、夏月はアイスブルーを選択し、『カナダは北国だからアイスブルー一択だろ』と言い切っていた……少しばかり安直かも知れないが、此れもまたありと言えるだろう。
序に布仏姉妹も水着を選んで来たのだが、虚が選んだのはシンプルなセパレートタイプだったのに対し、本音が選んだのは『着ぐるみ』にしか見えないモノだったのだが、その着ぐるみの下にはビキニタイプの水着が仕込まれているとの事だったので、夏月も秋五も追及はしなかった。

其れはさて置き、続いては秋五組だ。
トップバッターは箒で、手にしているのはツーピースの水着で、色は桜色と山吹色だった。


「ツーピース……箒のスタイルならビキニが似合うんじゃないかと思ったんだけど、此れは少し意外だったかな?」

「うむ……私も最初はビキニタイプにしようと思ったのだが、何と言うか、そのだな……わ、私のサイズに合うのは此れしか無かったんだ!」

「……デカいのはデカいでサイズに合う服が中々無くて苦労するみたいだな?」

「アタシに言わせて貰うなら贅沢な悩みだわ其れ……」

「何が贅沢なモノか鈴!
 此処まで大きいと下着だって店で売ってるモノではサイズが合わないから特注品をオーダーせねばならないのだぞ!そして特注品は一般販売物よりも高いからブラ一つだけでも財布からお札が羽を生やして飛んで行ってしまうのだからな!」

「だったらタバ姉さんに頼んで特別製の下着作って貰えば良いでしょうが!
 あの人なら、多分だけどアンタのサイズにジャストフィットのブラ作った上に、肩こり軽減効果も付けてくれると思うわよ?」

「姉さんならば否定出来んが……何故だろうか、明日の朝には姉さんから特注品の下着が届くのではないかと思っている私が居る……まさかとは思うのだが、見ていないよな姉さん?」


サイズに合う水着がツーピース以外に無かったとの事でこのチョイスだったらしい。
大きければ大きいなりの悩みがあるようだが、其れは持たざる者にとっては贅沢な悩みであるのだろうが、巨乳の悩みと貧乳の悩みは未来永劫相容れないモノであるのだろう。
箒と鈴の言い合いを治めた後に秋五は桜色を選び、箒は其れを購入した。『箒には山吹色よりも桜色の方が似合うと思うから』とは中々の殺し文句だろう。
次はセシリアで、手にしてたのはビキニで色はゴージャスなゴールドとシルバーだったのだが、秋五は迷わずにシルバーを選択した。『セシリアは金髪だからシルバーの方が映える』とは中々良いセンスと言える。
シャルロットが持っていたのはパレオ付きのセパレートタイプで色はオレンジと黒で、秋五が選んだのは黒だった……専用機のカラー的にはオレンジなのだが、秋五は『シャルは黒だよね……腹黒いし』と、一発かましていた。其れを聞いたシャルロットも、『うん、其れは良いセンスだね』と黒い笑みを浮かべていたが――果たして此の二人に真の愛が芽生えるのは何時の日になるのか些か謎である。
続いてラウラが持って来たのは腹部が大きく開いたスポーツタイプで、色は緑を基調にした迷彩柄と青を基調とした迷彩柄で、秋五が選んだのは青を基調とした方だった――現役軍人であるラウラには迷彩柄はジャストチョイスだったのだが、青を基調とした迷彩柄は珍しかったので其方を選んだのだろう。
因みに、ラウラは最初は所謂『スクール水着』を選ぼうとしたのだが、其れは秋五の嫁ズが全力で阻止したのだった……此れも黒兎隊の副官の入れ知恵なのだろうが、臨海学校で一人だけスクール水着と言うのは浮いているどころの騒ぎではないので、スクール水着を絶対阻止したのはファインプレイと言えるだろう。
最後にオニールが手にしていたのはファニールとお揃いのワンピースタイプで、色は白とピンクで、秋五が選んだのは白だった。
その理由は『カナダは北国だから、新雪の白が良いと思ったんだ』との事だった。夏月とは違うが、秋五もまたカナダ出身と言うのを重視したようである。


「あれ、夏月と秋五じゃねぇか?」

「ん?弾か。」

「奇遇だね……」


嫁ズの水着が決まっとところで水着売り場を後にしようとしたら、なんと此処で弾とエンカウント。
如何やら妹の蘭の荷物持ちとしてやって来たらしく、其の手には既に大量の紙袋が下げられている……荷物持ちにされると言うのは、兄として如何かと思わなくもないが『妹の為なら此れ位の事は屁でもない』のが弾なので、其処は追求すべきではないだろう。
ただ、秋五は過去の事から弾に対して少しばかり後ろめたい思いがあったのだが、其れも弾が『ゴールデンウィークの時に鈴からお前が一夏の事で悩んでたってのを聞いて、そんでもって一夏の葬式の後でお前は変わろうとしてるってのを聞いたからな……過去の事は水に流してやる』と言った事で、秋五も弾に対しての後ろめたさが無くなり、『ありがとう』と言って握手を交わし秋五と弾は『友人』となったのだった。


「しかしまぁ、『男性操縦者重婚法』ってのは知ってたけど、其の見目麗しい方々は全員お前等の嫁さんって事かよ……鈴と乱も充分美少女の類だから、正直言って羨まし過ぎんぞお前等!
 俺もそろそろ彼女が欲しい!いや、仲が良い女子が居ない訳じゃないんだが、何でか俺って女子には『友達』、良い所で『とっても良い人』なんだよなぁ……俺って男としての魅力ねぇのかな?」

「そんな事は無いと思うけどな……因みに弾、虚さんとのほほんさんは俺の嫁でもなければ秋五の嫁でもないぞ?」

「のほほんさんと虚さん?」

「だぼだぼな服着てるタレ目の子がのほほんさんこと布仏本音で、ヘアバンドと眼鏡を装備したポニーテールの人がのほほんさんのお姉さんの布仏虚さんだよ。」

「なん、だと!?」


新たな友情が紡がれた所で、弾は夏月と秋五の『合法ハーレム』状態を羨んでいたのだが、『布仏姉妹はフリーだ』と聞き、そして虚を見た瞬間に弾は全身に『デーモンの召喚』の『魔降雷』が炸裂したかのような電撃が走った。
虚は所謂『委員長タイプ』な外見なのだが、其れが逆に弾にはツボだったらしい。
そして其れは虚もだったらしく、弾を見て顔を赤らめていたのだった――生真面目な虚だけに、赤毛にバンダナと言う『ちょい悪』な容姿の弾は逆にツボだった様だ。


「んん~~?お姉ちゃん、若しかしてダンダンに一目惚れしちゃった?でもって、ダンダンもお姉ちゃんに一目惚れしちゃった感じ~~?」

「「!!!???//////」」


更に此処で本音が悪意がマッタク無い特大級の爆弾を投下した事で、弾と虚は互いに一目惚れだったのだが、メールアドレスとLINEのアカウントを交換するに至ったのだった……『恋愛とは何時何処で花咲くのかマッタクもって予想が出来ない』と言うのは至言だと言えるだろう。
そんな感じで目出度く弾と虚が結ばれた所で弾と別れ、気付けばランチに良い時間となっていた。
午後はラウラの私服を選ぶ事になるので出来ればレゾナンス内で済ませたかったのだが、レゾナンスの最上階はレストラン街となっているので問題は無かった。
無かったのだが、最上階のレストラン街は回転寿司にラーメン、牛丼チェーンにイタリアンレストラン、ステーキハウスにハンバーガーショップにケンタッキー・フライド・チキンのテナントが入っているグルメ街の群雄割拠状態だった。
此れだけ豊富だと目移りしてしまうモノだが、夏月と秋五が『ランチは何が良い?』と聞いたところ、海外組は満場一致で『ラーメン』との答えが返って来たので、本日のランチはラーメンに決まったのだった。
外国人に人気の日本食のトップは『寿司』であり、海外でも寿司屋は可成りの数出店しているのだが、外国人に人気の日本食の裏番長である『ラーメン』を提供する店はマダマダ少ないので、海外組が『ラーメン』を選択したのはある意味で当然だったと言えるだろう。

そして一行は、最上階のレストラン街にあるラーメン屋、『超熱血ラーメン!熱いぜ……バカヤロー!』に入店し、食券を購入。
夏月は『激辛ラーメン』の麺大盛りに『チャーシュー四枚』のトッピングに単品で『唐揚げ』、楯無は『塩チャーシュー麺と半炒飯と餃子』、簪は『塩豚骨チャーシュー麺とミニ麻婆丼』、ロランは『濃厚味噌チャーシュー麺とミニマヨチャーシュー丼』、ヴィシュヌは『野菜たっぷりタンメンとチャーシュー盛り』、鈴は『ワンタンチャーシュー麺と揚げニラ餃子』、乱は『激辛担々麺とミニメンマ丼』、ファニールは『キムチチャーシュー麺』、のオーダだったのだが……


「チャレンジメニューのバケツラーメンにトッピング全部乗せで更に単品で餃子と唐揚げに炒飯大盛りって、本気か嬢ちゃん?」

「本気も本気だよ?本気って書いてマジってルビ振る位にね!」


グリフィンのオーダーは、チャレンジメニューである『バケツラーメン』にトッピングを全部乗せした上で、単品で餃子と唐揚げと炒飯を大盛りで注文すると言う『お前何処のフードファイターだ?』と言いたくなるレベルでぶっ飛んだモノだった……トッピングの全部乗せは『チャーシュー四枚』、『味玉』、『メンマ』、『辛ネギ』、『焼きのり』、『唐揚げ二個』と言うボリューミーなモノなのだが、大食漢のグリフィンならば完食は容易だろう。

其れはさて置き、秋五は『味噌豚骨ラーメンと唐揚げ』、箒は『元祖中華そばと餃子』、セシリアは『油そば・塩』、シャルロットは『濃厚豚骨つけ麺とザーサイチャーシュー炒め』、ラウラは『チャーシュー担々麺と餃子(ニンニク増し)』、オニールは『アッサリ塩タンメン』のオーダーと相成った。

食券を渡してから十五分程で注文したメニューが届き、ランチタイムが始まったのだが、チャレンジメニューである『バケツラーメン』にトッピングを全部乗せして、更に餃子と唐揚げと大盛りの炒飯をオーダーしたグリフィンは初っ端からフルスロットルだった。
チャレンジメニューのラーメンをアッサリ系の塩ではなく、コッテリ系の『味噌豚骨』でオーダーしただけでも相当な猛者感があるのだが、グリフィンはその凄まじいボリュームのラーメンをダイソンのサイクロンクリーナーもビックリの勢いで吸い込み、別途注文した唐揚げと餃子と大盛りの炒飯も平らげて行く……此れだけの量を笑顔で心底美味しそうに食べているグリフィンの姿には驚きと同時に笑みが浮かんでしまうモノだった。


「レッドラム先輩、相変わらず凄いねぇ?此れならバケツラーメンの完食制限時間は余裕なんじゃないかな?」

「グリ先輩なら余裕だっての……つか、グリ先輩が此れで終わる筈ねぇんだわ。」

「美味しかった~~!それじゃあ追加で、油そばの豚骨の特盛と、豚キムチ炒め、麻婆丼、餃子のニラとニンニクマシマシで宜しく!」

「何時もながらにすっごいわねぇグリフィンちゃん……この食べっぷりを動画に収めてYouTubeで公開したら途轍もなくバズるんじゃないかと思ってる私が居るのを否定出来ないわ。」

「うん、絶対にバズると思うよお姉ちゃん。」


その超ボリュームのチャレンジメニューである『バケツラーメントッピングを全部乗せ』だけでなく、唐揚げと餃子と大盛りの炒飯までもチャレンジメニューの制限時間内に平らげたグリフィンは、更にぶっ飛んだ追加オーダーをブチかまし、其れを平らげた後には単品メニューをフルコンプリートすると言うトンデモナイ事をやってのけてくれた……此の前人未到の偉業達成に感激した店主が、チャンレンジメニューだけでなく、グリフィンの注文を全て無料にしたのだから相当だろう。


「グリ姉さん、何であれだけ食べて太らないのか謎だわ……」

「グリ先輩は、俺と同じく燃費が悪い身体なんだろうな……グリ先輩は筋肉量も多いからな――ぶっちゃけると、豊満なバストと割れた腹筋を併せ持ってる楯無さんとロランとグリ先輩とヴィシュヌは俺的には最強です!シックスパック女子は美しい!」

「其れは分かるよ夏月……箒も美しく割れた腹筋が魅力的だらね。」


夏月と秋五が少しばかり特殊な好みを明らかにしてくれたが、『闘う為の筋肉』を備えた女性と言うのは其れだけで魅力的なモノであり、特に抜群のプロポーションに『闘う為の筋肉』を併せ持ったと言うのは反則以外のナニモノでないと言えるだろう。
そんな感じのランチタイムを終え、一行がやって来たのは七階にテナントとして入っているブティックだ。
午後はラウラの私服を選ぶと言う事になっており、ブティックに到着するや否や、ラウラは楯無と箒に両脇を抱えられて店内に連行され、其処からはラウラは着せ替え人形となる運命が確定し、夏月と秋五は水着選びの時と同様に夫々のパートナーにLINEでメッセージを入れてから別行動に。

別行動中は、今度は八階のゲームセンターで夏月と秋五のタッグで『ハウス・オブ・デッド4』の二人プレイをノーミス&ノーダメージでクリアしてランキングのトップ2を決め、ストZERO3⤴⤴をドラマティックバトルモードでプレイし、夏月はザンギエフ、秋五は殺意の波動に目覚めたリュウを使って、全試合パーフェクト勝利でクリアした。
其の後はアミューズメントゲームで夏月が景品をゲットしまくった……ヌイグルミにフィギュアにプラモデルに巨大なインスタントラーメンや巨大な駄菓子等々、『いっそ店を潰す勢い』でゲットしまくり、最終的には店長が泣きを入れる事態になったのだった。


「此れだけの戦利品も、拡張領域に入れちまえば難なく持ち運ぶ事が出来るんだからISってやっぱりすげぇよな?……その拡張領域が零落白夜で容量使い切ってるお前の白式はマジで欠陥機なんじゃねぇのか?
 今度束さんに見て貰うか?束さんなら零落白夜の消費エネルギーを軽くしたり容量小さくしたり出来ると思うし――まぁ、束さんは『零落白夜』には否定的で、『私が作った最大の駄作』って言ってたから、零落白夜削除して別の何かを搭載するかも知れないけどな。」

「シールドエネルギーを一撃で削り取るとか反則以外の何物でもないからね……自分で使ってみると、改めて其れを実感するよ。
 そして同時にこうも思うんだ……もしも暮桜に零落白夜が搭載されていなかった場合、其れでも姉さんはブリュンヒルデの称号を得るに至ったのかって……当たれば一撃必殺があったから姉さんは勝てたんじゃないかってさ。」

「さぁな、歴史にIFはないから分からねぇだろ……ま、現役時代のアイツはソコソコ強かったのは間違いないだろ?今は見る影もない感じだけどな。」


ゲットした景品は拡張領域に収納して七階のブティックに戻る最中、こんな会話をしていたが、実際のところ零落白夜がなかったら千冬がモンド・グロッソを二連覇するのは難しかったと言えるだろう。
第一回大会では超高速の近接戦闘で圧倒出来たとしても、第二回大会では研究されて対処されるのがオチなのだ……対処しようとしても当たったら其の時点で機体エネルギーをゼロにしてしまう零落白夜があればこそ、千冬はブリュンヒルデになり得たのだ――第二回大会で零落白夜を禁止にしなかった大会の運営側にも問題はあっただろうが。

ブティックに戻ると、夏月の嫁ズと秋五の嫁ズと布仏姉妹が一人ずつラウラの私服を購入したらしく、計十四個の紙袋が存在していたのだが、其れとは別にラウラの手には三種類トップとアンダーがあった。
まだ値札は付いたままなので購入はしていないのだが、話を聞いてみると箒が『私達が選んだ服は一つずつ購入したのだが、ラウラが自分で選んだ服は中々に多くて、最終的にはトップとアンダーを三種類に絞り込んだのだが、決めきれなかったので最後はお前に選んで貰おうと言う事になったのだ秋五』との事であり、水着選びに続いて秋五には超絶重要なミッションが投下されたのだ。
ラウラが手にしてのはトップが黒地にシルバーで『BATT』と刻印されたTシャツと裾が膝まであるボタン付きのロングシャツとハイネックの袖なしシャツ、アンダーは赤いダメージジーンズと迷彩柄のハーフパンツと黒いミニスカートであり、其れを見た秋五は一瞬で夫々の組み合わせをシミュレートし、その結果としてトップはロングシャツ、アンダーは赤いダメージジーンズを選択した。
膝までのロングシャツにダメージジーンズの組み合わせはラウラの銀髪と眼帯ともマッチしており、更に両膝に革製のベルトを装着し、そのベルトを緩いバンドで繋ぐ事で『動きを阻害しないレベルの拘束ファッション』が出来上がり、其れが余計にラウラの魅力を引き出していた。
此の一式をラウラは購入し、其の後は適当にウィンドウショッピングを楽しんでからレゾナンスの駐車場に店を出していたクレープの屋台で『午後のおやつ』を堪能してから楯無が『折角だから、今日はとことん楽しみましょう!』と提案し、全員が其れに賛同した事で、クレープを堪能した後は大手カラオケボックスの『Big Echo』に突撃し、『ドリンクバー付きのフリータイム』でパーティ部屋を借り切りモノレールの最終便の直前まで歌いまくった。
夏月とロランがデュエットした『Meteor』、秋五と箒がデュエットした『遠雷』は高得点で、コメット姉妹による生ライブは此の上なく盛り上がり、夏月と秋五がデュエットした『夕陽と月』は夏月が八神庵パートを、秋五が草薙京パートを担当してめっちゃ盛り上がった――夏月が八神庵パートを『夕陽と月~優しい人へ~』に変えたと言うのも大きいだろう。
そして最後は、全員で『雪、無音、窓辺にて』を替え歌の『王、決闘、現世にて』の歌詞で熱唱してカラオケパーティはお終いとなり、一行はモノレールで学園島に戻り、夏月秋五も大浴場で一風呂浴びて部屋に戻り、夏月はロランと、秋五は箒と一緒のベッドで眠りに就き、翌日の日曜日は『e-スポーツ部がオンラインで他校と練習試合を行って、格ゲー部門とオンラインデュエルでは夏月が無双し、パズルゲームでは簪が無双した』と言う事以外は特に何もなかった……その練習試合で、顧問対決となった際に、真耶が格ゲーではストⅢサードでリュウを選択して、ロマンタップリの『真・昇龍拳』をスーパーアーツに設定して、見事なブロッキングから反撃コンボを決め、上段足刀蹴りにスーパーキャンセルを掛けて真・昇龍拳を叩き込んで勝利を捥ぎ取っていたのだった。
因みにその日曜日の夜には、夏月の部屋に鈴が登場し、『アタシをアンタの女にして』と言われ、夏月と鈴は恋人の濃密な夜を過ごす事になり、同時に夏月は『貧乳の感度』を知る事になり、鈴の身体を味わい尽くしたのだった。



――そして月曜日、一年生はモノレールで本土まで移動すると、移動した本土で待機してた大型バスにクラスごとに乗り込み、此処に本年度のIS学園の臨海学校が始まったのだった。
同時に、束が己のラボで箒への誕生日プレゼントを完成させ、其れを持って臨海学校の場所へとぶっ飛んで行ったのだった――この臨海学校、一筋縄で終わる事は無いのは間違いないだろう。











 To Be Continued