クラス対抗戦が行われた日の夜、学生寮の屋上には箒の姿があった。
箒は手にしたスマホから、夏月から教えて貰った束の連絡先をダイヤルすると、其れを発信し束からの応答を待つ――束のスマホの呼び出し待機音は、B’zの『愛のままにワガママに僕は君だけを傷つけない』だった……此れを聞いた箒は『姉さんB’zのファンだったのか?』と、姉の意外な一面に驚いていた。
『モスモス、ひねもすハローハロー!皆のアイドルにして正義のマッドサイエンティストの束さんだよ!久しぶりだね箒ちゃん!』
「えぇ、実に六年ぶりです……息災の様ですね姉さん?」
『アッハッハ、束さんはいつ何時でも元気一杯なのさ!生まれてこの方風邪を引いた事すらないからね!束さんは無敵なのだよ箒ちゃん!』
「『馬鹿は風邪を引かない』と言いますが、姉さんの事を考えると其れは間違いであったと思ってしまいますよ……少なくとも六年前の時点で姉さんは天才でありながら風邪を引いた事がなかったのですから。」
『ハッハッハ、天才の束さんは免疫機能もバグってるのさ!
この束さんの体内では多分致死率100%の病原菌だろうとウィルスだろうと、生存も増殖も出来ないのだよ!』
「……姉さんの細胞から万病に効くワクチンを開発出来るんじゃないですか?」
『出来るだろうけど、其れは一般人には強過ぎて使えねーと思うよ?束さんの免疫機能を一般人に投与するのは、生まれたての赤ん坊にアルコール度90%のウォッカを飲ませるようなモノだからね~~♪』
束が電話に出ると、六年振りに姉妹としての言葉を交わす……秋五に『何を話せば良いのか……』と言っていた箒だが、いざ電話をしてみると自分でも驚く位に自然と言葉が口から出て来ていた。緊張よりも六年振りに姉と話す嬉しさの方が上回ったと言う事なのだろう……尤も、束は一方的に六年間箒の事を確りとバレないように見守っていた訳であるが。
「其れは確かに危険ですが……其れよりも、今日は助かりました。姉さんがスコール・ミューゼル女史の素性を明らかにしてくれたお陰で話が円滑に進みました。」
『まぁ、アレ位の事を調べるのは私にとっては朝飯前の寝起きの牛乳だからね~~?てか、やろうと思えば世界各国の重要機密だって秒で調べ上げる事出来ちゃうし、其れこそ権力でひた隠しにしてる重大スキャンダルとかだって丸裸に出来るのだよ!
因みに国際指名手配されてる私が未だに捕まらないのは、実は私が情報操作しまくって世界の数カ所で同時に私を目撃したって情報を不定期に流してるからなんだな此れが!』
「はぁ……何だか良く分かりませんが、姉さんは矢張り凄い人なのだと再確認は出来ました。」
相変わらずの束のぶっ飛び具合に困惑しながらも、箒の顔には笑みが浮かんでいる――白騎士事件以降、要人保護プログラムによって両親と離され、IS学園入学まで何度も転校を繰り返して来た箒は、その原因とも言えるISを生み出した束に対して複雑な感情を持っていなかったと言えば嘘になるが、だからと言って束の事を嫌いにはならなかった……自分が幼い頃から手作りの奇抜なおもちゃを作っては、其れを使って驚きと楽しさを与えてくれた姉の事を嫌いになるどころか、心の底では尊敬出来る存在と思っていたのだ。
「姉さん、難しいとは思いますが一度何処かで会う事は出来ませんか?もう六年も会っていないのですから……出来ればその、一緒に食事でもと思ったのですが。」
『ん~~~~……今すぐには無理かな?今丁度新型のISを作ってる最中だし。
でもそうだなぁ?今のまま順調に進めば七月には完成するし、そうしたら時間が出来るから会う事は出来るよ!って確か、七月にはIS学園の臨海学校があるんだよね?でもって日程は……二日目が箒ちゃんの誕生日じゃないか~~!
決めた!その日に私の方から箒ちゃんに会いに行くね!もっちろん、最高の誕生日プレゼントを持って行くから楽しみにしててね!!』
「臨海学校に乱入って、其れは流石に……いえ、姉さんならば関係ありませんか……」
『そゆこと~~!其れに、IS学園の生徒会長と束さんはお友達だからね~~?彼女に事前に連絡入れとけばモーマンタイ!序にこの際だから箒ちゃんにはネタバレしとくと、かっ君やたっちゃんの機体は束さんが作ったモノなのだよ!』
「秋五の予想通りですか……ですが、少々の不安はありますが、私の誕生日に会えるのを楽しみにしています。……其れではお休みなさい姉さん。大好きですよ。」
『グハァ!!其れは破壊力あり過ぎだぜ箒ちゃんよ……此れで束さんは一週間徹夜できっかもしんね~わ。』
通話を終える直前に、箒が己の思いを伝えた事でスマホの向こうの束は鼻から盛大に愛を吹き出す結果になっていたりするのだが多分大丈夫だろう。
通話を終えた箒は屋上から自室に戻りながら、束が用意すると言っていた自分への誕生日プレゼントに一抹の不安を覚えても居た……十歳までは毎年手作りの誕生日プレゼントを渡してくれたのだが、『押すとブザーが鳴ると同時に警察に連絡が入る防犯ブザー』、『頭を乗せた三秒後に眠りに誘う超安眠枕』、『速度がマックス300km出る電動アシスト自転車』等々、色々ぶっ飛んでいたので其れも致し方ないだろう。
だがそれでも、六年振りとなる姉との会話に箒は満足したようであった。
夏の月が進む世界 Episode21
『ゴールデンウィーク前の一幕~色々急転直下~』
クラス対抗戦の翌日、IS学園は新聞部が発行した学園新聞の内容が話題となっていた。
記事の内容は、『昨日の襲撃事件は国際IS委員会による抜き打ちのIS学園のセキュリティチェックであった事』、『一夜夏月とヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーがアリーナに乱入して来た委員会のエージェントに対処した事』、『専用機持ちと織斑秋五達、山田真耶教諭によって生徒の避難が円滑に行われた事』、そして『織斑千冬が現場で的確な指示を出せずに、指揮官としての資格はないと判断され指揮官を解任された事』だったのだが、特に話題となっていたのは千冬に関する記事だった。
千冬は実技担当教師の筆頭であり、教師部隊の指揮官を務めている上に『ブリュンヒルデ』の称号も相まって、今年入学した一年生の間では憧れを抱いていた生徒も決して少なくないのだが、その千冬が指揮官を解任されたとなったら驚きもするだろう――が、驚いているのは一年生と一部の『ブリュンヒルデの信奉者』だけであり、二年と三年の『ブリュンヒルデ信奉者』ではない生徒は『遂にこうなったか』と言った感じの反応だった。
二年と三年の生徒の多くは、去年と一昨年で千冬の授業の内容の酷さを知っており、その横暴さも知っているので千冬に対して良い感情を持っている者は『ブリュンヒルデの信奉者』のみなのだ――去年楯無と打鉄同士の模擬戦で引き分けと言う結果になったのも、一部の生徒には『楯無が舐めプかました』と認識されているのかもしれない。
『ブリュンヒルデの信奉者』は記事の内容に憤慨していたが、ご丁寧に『この記事は学園長の許可を得て掲載していますので、クレームは学園長にどうぞ♪』と文末に記載されていたので如何する事も出来なかった。
学園長への直接抗議など、一介の生徒に出来る事ではない……其れこそ、楯無並みの胆力がなければ到底無理な事なのである――故に、彼女達は記事の内容に憤慨しながらも抗議する事は出来ないで居たのだ。其れを見越して、『学園長公認』と付け加えた新聞部の黛薫子の記者としての能力は高いと言えるだろう。
そんな中で授業が始まったのだが、一年一組の担任は未だに千冬のままであり、千冬も昨日は指揮官を解任された事でヤケ酒を煽ったが、二日酔いになる事もなく普通に勤務していた。
が、其れが逆に生徒達に良い感情を持たせなかったが其れは当然だろう……新聞で散々叩かれていたにも拘らず、平然と担任として振る舞うとは、果たしてドレだけ面の皮が厚いと言うのか?厚顔無恥どころの話ではないのだ。
其れとは逆に生徒達から好意的な感情を向けられていたのは真耶だ。
校内新聞の記事も然る事ながら、避難シェルターをいち早く解放し、更に拡声器で生徒の避難誘導を行っていた真耶からは何時もの『ドジな眼鏡っ娘』のイメージは霧散して『頼りになる先生』とのイメージが上書きされたのだろう――其れでも、『山ちゃん先生』、『山ピー先生』、『やまや先生』と言った愛称で呼ばれるのは、真耶の親しみやすさ故だろう。
だからと言って何が変わったと言う訳でもない――千冬はSHRで最低限の連絡事項を告げると、後は真耶に丸投げすると言う最早お馴染みになっている光景が繰り返されているに過ぎないのだから。
「秋五、お前の姉貴の面の皮って、ゴジラ並みに分厚くね?」
「うん、其れは否定出来ないかな……厚顔無恥って言葉を知ってよ姉さん……」
昨日あれだけの事があったにもかかわらずいつもの調子を崩さない千冬に対して秋五は若干頭痛を覚えていたのだが、此れもまた致し方ないと半ば諦めた様子でもあった……千冬が己の考えを変える事は無いと言う事は、子供の頃から何度も見ているので、学園新聞の記事で千冬が態度を改める事は無いと考えていたのだろう――秋五にとっても千冬が姉だと言うのは恥ずべき事実となり掛けているのかもしれない。
其れは其れとしてSHRは恙無く終わり、その後の授業も問題なく進んだ――生物の授業では、教材用のDVDを夏月が更識仕込みのテクニックで『無修正のアダルトDVD』に差し替えた事で阿鼻叫喚の事態となっていた……しかも其れは所謂『レズモノ』であり、女優の片割れは千冬にそっくりだったのだからその衝撃は計り知れないだろう。……此の夏月のイタズラにより、さらに多くの生徒は千冬に対して悪感情を抱く事になったので、夏月からしたら作戦成功と言ったところだろう。
予想外の映像に、秋五ですらドン引きしていたのだから。
そして昼休み前の四時限目、一組は体育の授業だ。
本日は二チームに分かれてのソフトボールで、夏月と秋五はグラウンドの隅でキャッチボールを行っていたのだが、そのキャッチボールは普通のキャッチボールではなかった!
夏月も秋五も投げているのはストレートオンリーなのだが、その球速がハンパなモノではなかったのだ――夏月のストレートの最高速度は169km、秋五のストレートの最高速度は166kmと、目下大リーグで大活躍中の大谷翔平の最高速度を凌駕していたのである……尤も、変化球は無いので一概に大谷を超えたと言う事は出来ないが、其れでも野球部でもないのに160kmオーバーのストレートを投げる事が出来ると言うのは充分に驚愕に値する事であると言えるだろう。
その凄まじいキャッチボールに目を奪われていたが、女子達は箒とセシリアが別チームになった事で拮抗した試合展開となっていた――ソフトボールの経験はないにも関わらず、ピッチャーを務めた箒とセシリアの剛速球は誰も打つ事が出来ず、見事なゼロ行進が続き、授業の授業時間が残り十分になったところで、後攻である箒チーム最後の攻撃だ。
既に二者が凡打しツーアウトでの箒の打順だが、此処で箒がホームランを打てばサヨナラとなる場面だけに緊張が高まる……フルカウントから箒はファールでトコトン粘って八球目!
「此れで……お終いですわ!」
「その球筋……見切ったぁ!」
放たれた九球目を、箒は見事にバットの真芯で捉えて場外ホームラン!打球は学園島を越えて海に落下したので、此れはもう箒の完全勝利と言っても過言ではないだろう――剣の道を極めんとしたサムライガールは、その過程で見事な選球眼を会得するに至ったらしい。
――――――
でもって、本日のランチタイム。
新たにヴィシュヌが加わり、夏月が作る弁当の数も一つ増えたのだが、料理が趣味である夏月にはマッタク持って問題なく、自分の分を含めて八人分の弁当を余裕のよっちゃんイカってな感じで仕上げてしまったのだから驚きだろう。しかも、数は八人分でもグリフィンが三人前食べるので実質十人前の量を作っているのだから。
そんな夏月の特製弁当の本日はメニュー、『鮭と明太子と枝豆の混ぜご飯』、『キャベツたっぷりメンチカツ』、『エノキ茸のジェノベーゼソースパスタ風』、『蒸しナスの柚子胡椒和え』、『玉子焼き』と言ったラインナップ。
彩りも良く、栄養バランスも考えられている弁当はSNSにアップしても相当に映えるだろうし、『世界初の男性IS操縦者が作った』となれば其れだけでバズる事間違いなしだ。
「相変わらずアンタの料理の腕前って滅茶苦茶高いわよね?
此のメンチカツ一つにしても、普通カツってお弁当に入れると衣がしんなりしちゃうモンなのに、此のメンチはサクサク感が残ってるじゃない?一体如何やったらこんな事が出来る訳。」
「あぁ、唐揚げの時は油で揚げてるんだけど、カツ系の時は油で揚げてないんだ。
丸めた肉ダネに油を染み込ませたパン粉を纏わせてからオーブンで焼き上げるんだよ。そうする事で時短にもなるし、衣が油を吸い過ぎる事もないからカロリーカットにもなる。
因みに唐揚げの時は、片栗粉に卵白を混ぜた衣を使う事で衣をふんわりと仕上げて弁当に入れても衣がへたらないようにしてる。卵白を衣に入れると粉だけ付けた時と違って卵白が固まる事で余計な油を衣が吸う事もなくなってやっぱりカロリーカットになるしな。」
料理が趣味と言う事もあって、夏月は料理で使える様々な裏技を幾つも知っており、其れ等を駆使する事で大量の弁当も其れほど時間を掛けずに作る事が出来るようである……IS学園での家庭科の授業で、まだ調理実習は行われていないが行われたその時は夏月が一組の女子の多くのプライドを粉砕!玉砕!!大喝采!!!してしまうのは間違いないであろう。
「あれ、この玉子焼き……甘いと思ったら中にチーズが入ってる?甘いんだけどしょっぱい、なんだか不思議な感じ。」
「あぁ、其れは前にネットで『四種のチーズのピザを頼んだら一緒にハチミツが付いて来た』って話を見てな?其れって如何だと思ったんだけど、実は意外と合うみたいな事が書いてあったから、甘みをハチミツで付けてる俺の玉子焼きにチーズ入れても行けんじゃねぇかと思ってやってみたんだよ。
如何だった?」
「意外な組み合わせだったけれど悪くないわよ夏月君!
ハチミツの甘さの後にチーズの塩味が来る……此の絶妙な甘じょぱさがクセになるわね。チーズとハチミツ、此の組み合わせは全然アリだわ。」
更に夏月は新しい事に挑戦するのを迷わない。
明らかに『此の組み合わせはアウトだろ』と言うモノでない限りは先ずは挑戦して試作し、その試作品で満足が行くモノが出来たら其れは即弁当メニューに採用しているので其れなりの頻度で目新しいメニューが登場するのも夏月特製弁当の楽しみと言えるだろう。
「ほ~んと、めっちゃ美味しい弁当なんだけど、いっつもアタシ達だけ作って貰うってのもなんか悪いわよねぇ?……だからさ、今度アタシ達が一品ずつ作って持ち寄ってのランチとか如何よ?
一人一品でも七人でやれば七品になる訳だし、その日は夏月にはご飯だけ用意して貰って。良いと思わない?」
そんな中、鈴がこんな提案をして来た。
夏月特製弁当は確かに美味で見た目も良く栄養バランスとカロリーも考えられているので文句の付けようがないのだが、だからと言って半日授業である土曜と学園が休みの日曜以外は毎日弁当を作って貰っているのは少しばかり申し訳ないと思ったのだろう……其れだけでなく夏月に自分達の料理を食べて貰いたいと言う思いもあったのかもしれない。
「あら、其れはナイスアイディアね鈴ちゃん?確かに、夏月君に作って貰ってばかりですものねぇ……偶には私達が作った料理を夏月君に食べて貰うって言うのもアリだと思うわ。」
「確かに、其れは悪くないと思う……私の料理のレパートリーは多くないけど。」
「ふ、其れは実にナイスアイディアだ鈴……己の料理を振る舞い、其れを喜んでもらえると言うのは此の上ない喜びであると同時に己の料理の腕に自信も付くと言うモノだからね?嗚呼、君に私の料理を振る舞う事が出来る機会が訪れた事を、私は神に感謝せずには居られないよ夏月。」
「こんな時でもロラン節は全開か~い!ま、此れが無かったら無かったで逆に心配になるけど。……ふふふ、台湾グルメの真髄を見せてやるわ!」
「料理ですか……母からはムエタイだけでなく家事もみっちり仕込まれたので問題はありませんが、さて何を作りましょうか?出来ればタイ独特の料理を振る舞いたいところですね?」
「豚丸ごと一頭って何処で手に入れられるんだろ?」
その鈴の提案には他の乙女協定のメンバーもノリノリだった――グリフィンが何を作る心算なのかは若干不安ではあるが。
そして夏月も其れに待ったをかける事は無かった。料理が趣味で弁当を作るのも半ば日課となっていた夏月だが、楯無達の手料理と言うモノにも興味があったのである――一応、鈴と乱の料理の腕前は『織斑一夏』が第二回モンド・グロッソで誘拐される前までに行われた調理実習で知ってはいたのだが、三年経った今では其の時よりも腕を上げているとも考えたろう。
「それじゃあそれはゴールデンウィーク明けにやるとして……明後日からゴールデンウィークに突入して、IS学園は七連休になるのだけれど、其の七連休、夏月君は日替わりで私達とデートして貰うからその心算で居てね?
七連休で、私達も七人だから丁度良いわよね♪」
「はい?って、デートだってぇ!?」
鈴の提案が全会一致で受け入れらたところで今度は楯無が割と大きな爆弾を投下して来た……ゴールデンウィークは七連休になるので、日替わりで全員とデートと言うのは夏月も予想してなかっただろう。
抜け駆け禁止の乙女協定だが、だからこそ全員が平等にデートの機会を得られる七連休を見過ごす理由は何処にも無い……故に、此の楯無の提案と言うか決定はある意味で当然と言えるだろう。
「あら、私達とデートするのは嫌かしら夏月君?」
「嫌じゃないけど、デートって言い方は如何なんだと思ってな……デートってのはなんと言うか、交際中の相手とするモノだと俺は思うんだけど?」
「ふむ……確かに一理あるわね?
良い機会だし、デートする前に今此処に集まった女の子達がなぜ貴方と一緒に居るのか、そして私達七人の女子の関係が如何言うモノかを説明しちゃいましょうか?皆も良いかしら?」
「タテナシ……そうだね、良い機会だから夏月に私達の関係と、私達が如何言った集まりであるのかを明かしてしまった方が良いだろうね。私は異論はないよ。」
「私もない。」
「でも自分の気持ちは自分で言うわよ!」
「ま、其れは当然でしょ?」
「カゲ君めっちゃ驚くと思うけどね♪」
「まぁ、驚いて然りでしょうね。」
困惑気味の夏月に対し、楯無はそう言ってロラン達に聞くと、ロラン達も『大丈夫』との答えだったので、楯無は改めて夏月と向き合うと……
「私達七人は『乙女協定』を結んでいるのよ。」
「乙女協定?」
乙女協定の存在を夏月に告げる。
夏月からしたら『乙女協定とは何ぞや?』と言ったところだが、その名前から何かしらの協定である事は理解出来た……とは言ってもその内容はさっぱり見当も付かない訳であるが。
「私達乙女協定のメンバーは全員同じ男性に思いを寄せていてね?『抜け駆け禁止』の条約を結んでいるのさ……そして其の男性とは、君だよ夏月。私達は、全員が君の虜になってしまったと言う訳さ。
嗚呼、七人もの少女を虜にするとは君はなんと罪深い男性なのか……だが、其れほどの魅力を持つ君の事を誰が責められようか?」
「俺!?」
「そう、夏月の事。此処に居る七人全員が、その……夏月の事が好きなんだよ。」
「因みにLIKEじゃなくてLOVEの方だから、其処を間違えんじゃないわよ?」
「其れに好きじゃない人と一緒に居ようとは思わないでしょ?アタシもアンタの事が好きなのよ!」
「最初は良い食べっぷりに好感を抱いたんだけどさ、なんかいつの間にか本気で好きになってたんだよ♪」
「昨日の試合で戦い、貴方の強さと人柄に惹かれてしまいました……自分でも若干驚いています。」
「夏月君には何度も危ない所を助けて貰ってるし、其の時の姿がカッコ良くてもう……惚れるなって言うのが無理な話よね♪」
「なんだとぉ!?」
其処から今度は告白ラッシュ七連打!
夏月もこの七人がまさか自分に恋愛方面での好意を持っているとは思っていなかったので、これには流石に驚く結果に……とは言え、思い返してみるとさりげなくアピールしていたと考えられる行動もあったりしたので、夏月も次第に『マジでそうなのか……』と驚きが引いて行ったようだ。
「ゴメン、俺全然気付いてなかったわ……けどさ、流石に今此処で一人選ぶ事なんて出来ないぜ?俺自身の気持ちも定まって無い訳だし。つか、一人選んで気まずくなっても嫌だしな。」
「でしょうね?
でも選ぶ必要はないのよ夏月君……何故なら、ゴールデンウィークが明ける頃には夏月君と織斑君は合法的に複数の女性と交際出来るようになるのだから。」
「何でだよ?」
「その頃に、『男性IS操縦者重婚法』が可決される見通しだから♪」
「はぁぁぁぁ!?」
此処で更なる爆弾投下!
ゴールデンウィーク明け頃に『男性IS操縦者重婚法』が成立するらしいと言う事は束のシミュレートの結果だったのだが、その後更識でも調べてみたところキッチリと裏が取れ、法案は既に出来上がり、後は審議して可決・成立させるだけの段階まで来ていたのだ――そして其の審議期間が丁度日本のゴールデンウィークの時期と重なり、成立はゴールデンウィーク明け頃になるだろうとの事なのである。
此れを聞いた夏月は少しばかり頭痛を感じたが、だが逆にこの七人の中から一人を選ばなくても良くなったと言う事には少しホッとしていた……一人を選んで関係がギクシャクしてしまうのは矢張り気分が良くない事であるから。
「マジか……でも、そう言う事なら俺も腹括らないとだよな?
此れだけ魅力的な女性に好意を向けて貰って、其れで選ぶ必要もなくなったってんなら俺には全員の気持ちに応える義務があるってモンだし……改めて、此れからも宜しくお願いします!」
「「「「「「「はい♪」」」」」」」
急転直下の出来事ではあったが、最終的には夏月が全てを受け入れて全員との交際に踏み切って万事解決。乙女協定のメンバー達も、何処かホッとした表情であると同時に嬉しそうでもあった。
「けどそうなると、皆に俺の秘密も話さないとだよな……」
「おや、何か私達に秘密にしている事があるのかい夏月?」
「二つほどな。
一つはロランとヴィシュヌとグリ先輩が知らない事、もう一つは楯無さんと簪以外は知らない事……どっちも重要な事だから付き合うんだったら話しておかなきゃならない事だ。特に後者の秘密はな……今夜俺の部屋――だと他の誰かに聞かれるか。」
「なら生徒会室を使いましょうか?
あそこならこの人数が入っても平気だし、学園長に許可取れば夜でも使う事が出来るから。」
夏月は己の秘密を話す事も決意し、場所は楯無が生徒会室を使う事に決めてくれた……夏月の秘密、特に楯無と簪しか知らない秘密と言うのはトンデモナイものであるので話すのは少し怖くもあるだろうが、其れでも秘密にしたままと言うのは嫌だったのだろう。彼女達と真摯に交際をしようと言う夏月の気持ちの表れとも言えるだろう。
夏月の秘密についてはこの場では其れ以上触れず、そして其の後、『夏月とのデート順抽選会』が行われ、その結果は初日が鈴、二日目が簪、三日目が乱、四日目がグリフィン、五日目がヴィシュヌ、六日目がロラン、最終日が楯無となった。
デートプランを考えるのが大変そうだが、夏月はゴールデンウィークの予定は特になかったので、彼女達の希望を聞く形でのデートになるであろうから実は其処まで大変と言う事はなさそうである。
「で、ではその日は私と一緒に出掛けると言う事で良いな!」
「秋五さん、約束を忘れないで下さいまし!」
「うん、その日はちゃんと予定を開けとくから安心してよ箒、セシリア。」
同じ頃、食堂では箒とセシリアがゴールデンウィーク中に秋五とのデートを取り付けていた……夏月と比べたら圧倒的に少ないが、其れでも極上美少女と言っても過言ではないない黒髪黒目のサムライガールと、プラチナブランドの髪とサファイアの瞳を持つ英国淑女を虜にした秋五も中々のモノであると言えるだろう。
――――――
午後の授業も恙無く終わり、夏月は『e-スポーツ部』の部室に向かおうとしたのだが、其処で千冬に呼び止められ『この後生徒指導室に来い』と言われた……無視をしても良かったのだが、無視したら無視したで面倒な事になると考えた夏月は、此の上なく不本意ではあるが生徒指導室に向かって行った。
そして、生徒指導室の前まで来ると……
「はいドーモ、一夜夏月DEATH!」
扉を蹴り開けて入室!
蹴り開けられた扉は近くにあった椅子を弾き飛ばし、その椅子は室内に居た千冬に真っ直ぐ飛んで行ったのだが、千冬は其れを余裕でキャッチする……腐っても鯛ではないが、現役を引退しても『ブリュンヒルデ』の名は伊達ではないと言う事なのだろう。
「……普通に入室出来んのか貴様は?」
「スンませ~ん、カチコミの時のクセが抜けなくて。
んで、俺は何で生徒指導室に呼ばれたんでしょうか織斑先生?態々生徒指導室に呼ばれるような事はしてないと思うんですけどねぇ……もしかして無意識に何かやらかしてました俺?」
「カチコミって、一体学園入学前は何をしていたのか些か気になるが……まぁ良い。
別にお前が何か問題を起こした訳でもないし、当然説教をする為に呼んだ訳ではない……只、少しばかり聞きたい事があってな。あまり人に聞かれたくない事でもあるから悪いが生徒指導室に呼び出させて貰った。」
「聞きたい事?俺に?」
「あぁ……単刀直入に聞く、お前は何者だ?」
「は?」
千冬から聞かれた事に思わず気の抜けた返事をしてしまった夏月だが、用件も告げられずに生徒指導室に呼び出された挙げ句、『お前は何者だ?』と意味が分からない事を言われたらこんな反応にもなるだろう。
「束が電波ジャックをしてお前の存在を明らかにしたあの日、アイツは二年前からお前がISを動かせる事は分かっていた、だがお前の身の安全を考えてあの日まで公表しなかったと言った……其れはまぁ分かるのだが、お前は一体何時何処でどのタイミングでISを起動した?そもそも束とは如何言った関係なのだ?
悪いがお前の事を調べさせて貰ったが、中学の三年間を更識の家で暮らしていた以前の事が一切分からなかった……何処の小学校に通っていたのか、それすらも分からなかったのに、中学時代に突如として更識の家に現れている……其れが少し気になってな。」
「あぁ、そう言う事か。
俺が今の義母さんの養子になったのが六年前で、其れまでは施設での通信教育で育ったから小学校に通ってた記録が無いのは当然ですよ。んで、義母さんに引き取られてからは一緒に世界を回ってたんだけど、中学に上がるタイミングで義母さんが旧知の仲である更識の先代当主に俺を預けた。俺の国内の記録が中学時代から急に出て来たのはつまりそう言う事ですね。
ISを動かしちゃったのは偶々義母さんが持ってるISに何気なく触れたら起動しちゃったって事で、その場には義母さんしか居なかったから外部に漏れる事は無かったけど、義母さんが実は束さんと知り合いだったみたいで、其の流れから束さんが徹底して俺がISを動かせるって事を秘匿してくれたんすよ。此れで満足ですか?」
千冬の言わんとしている事を理解した夏月は虚実を織り交ぜて説明をして行く――恐らく千冬は民間の興信所なんかを使って夏月の事を調べ上げたのだろうが、夏月に関するありとあらゆる情報は束と更識と亡国機業(スコール)によって作られ、そして操作されたモノなので民間の興信所が夏月の正体に辿り着くのは不可能であるのだ。
「話が其れだけなら俺は行かせて貰いますよ?今日は部活で他校とのオンライン練習試合があるんで。」
「いや、もう一つだけ……お前は実は私の弟の一夏じゃないのか?」
生徒指導室を出て行こうとする夏月に対し、千冬はまた突拍子もない事を言って来た……言ってる事自体は正解であるのだが、其れを聞いた夏月は思わず失笑を漏らしてしまった。其れほど千冬の言った事はオカシナ事だったのだ。
「何を言い出すかと思えば……織斑一夏は三年前の第二回モンド・グロッソの決勝戦の時に誘拐され、そして殺された。
其れは織斑先生が誰よりも知っているでしょう?織斑先生が決勝戦に出場した事で織斑一夏は殺されてしまったんですから……確かに俺と織斑先生の弟は顔が似てるとは思いますけれど他人の空似ですよ。俺に死者を重ねないで下さい。」
「確かに一夏は死んだが、だが其れは状況証拠のみで断定されただけであり一夏の遺体は発見されてない……物理的には一夏の死は証明されていない。
となれば実は生きていたが、自分が世間的には死んでいる事を知って別人として生きている可能性もゼロではないし、お前がそうでないとも言い切れんだろう?」
「別人ですよ……秋五の部屋で織斑一夏の遺影を見ましたけど、俺とは目の色が全く違う。目の色だけは他者の目を移植するでもしない限り、絶対に変える事は出来ないんですから。
仮に俺が織斑一夏だったとして、織斑先生は如何する心算なんですか?」
「私は……一夏に助けに行けなかった事を謝りたい。」
千冬は更にこんな事を言って来たが、其れは夏月にとっては到底認められるモノではなかった。
「謝りたいだって?何都合の良い事言ってんだアンタ?
秋五から聞いたぜ?織斑一夏の葬式が終わって直ぐにドイツに軍の教官をやるために行っちまって、帰国したらしたで今度は碌に家事もしないで織斑一夏の仏壇に手を合わせる事もなかったそうじゃないか?
しかもアンタは織斑一夏がドレだけ努力してもその努力を決して認めようとしなかったらしいな?そんな奴が今更助けに行けなかった事を謝りたいだとか、フザケタ事言ってんじゃねぇよ――一度も織斑一夏の事をちゃんと見なかったクセして今更姉ぶるんじゃねぇっての……反吐が出るぜ。」
だからこそ、一切の容赦なく言葉のナイフで千冬を徹底的に切り刻む……此れまでは一応教師相手と言う事で敬語を使っていたが、其れも止めての若干粗暴で荒々しい口調でだ。
まさかの反応に千冬は完全に気圧され、何時ものように『教師に対しては言葉遣いを気を付けろ!』と言う事すら出来なかった……『一夏に謝りたい』と言う事に対してこんな事を言われるとは思っても居なかったのだろう。
「兎に角俺は織斑一夏じゃねぇし、京に一つ織斑一夏だったとしてもアンタに謝られた所で許す事はねぇだろうな……まぁ、あの時に見捨ててくれた事には逆に感謝するかもだけどよ。
……ったく、無駄な時間を過ごしたぜ。下らねぇ妄想も大概にしとけよブリュンヒルデ!」
吐き捨てるように其れだけ言うと、夏月は生徒指導室から出て行き、千冬は其の場に呆然と立ち尽くす事しか出来なかった……果たして千冬が本当は何をしたかったのは不明であるが、夏月の中で千冬への感情が更に悪いモノになった事だけは間違いないだろう。
其の後部活に参加した夏月は、『KOFⅩⅤ』でのオンライン練習試合にて大将として出場し、クラーク、シェルミー、最近追加されたDLCキャラである乾いた大地の社の『投げキャラチーム』を結成して、乾いた大地の社で三タテを決めて圧勝した。
其の後、今度は『ストⅢ3rd』のオンライン対戦となったのだが、此処でも夏月は大将として出場し、持ちキャラであるリュウを使って相手の春麗の鳳翼扇にウメハラブロッキングをかましてからのジャンプ大P→中足→中昇龍拳→スーパーキャンセル真・昇龍拳を叩き込んで鮮やかに勝って見せた。
序に本日より、e-スポーツ部には新たにヴィシュヌとグリフィンが入部した――ヴィシュヌは入ろうと思っていた部活がなく、グリフィンはサッカー部に所属していたのだが、夏月と一緒に居られると言う事で入部したのだ……グリフィンはサッカー部の部長に二重所属を認めてもらうのに苦労して今日になった訳だが。
ともあれ、本日の部活も大層充実したモノであった。
――――――
夕食を終えて時間は十九時三十分。
夏月と乙女協定のメンバーと布仏姉妹は生徒会室に居た――布仏姉妹は、話が長くなるだろうと判断した楯無がお茶なんかを用意して貰う為に呼んだのだ。別に楯無がやっても良いのだが、どうせならば布仏姉妹の淹れる極上のお茶の方が良いと判断したのだ。虚のお茶の淹れ方は完璧だが、茶葉の目利きは本音の方が優れているので、本音が選んだ茶葉を虚が淹れれば其れはもう最強のお茶となるのである。
そんな最強のお茶が全員に配られた所で、夏月は口を開いた。
「先ずはロランとヴィシュヌとグリ先輩が知らない俺の秘密からだな……俺の本当の名は織斑一夏。織斑秋五の双子の兄で、織斑千冬の弟だ……尤も、今の俺にとってはもう捨てた名だけどな。」
「君が織斑一夏だって?……確かに織斑君と似ているとは思っていたけれど、まさか兄弟だったとは……だが、織斑一夏は三年前に死んだ筈じゃないのかい?」
「世間的には。
だが織斑一夏の死は俺の義母さんと仲間によって偽装されたモノに過ぎないんだよ……誘拐犯にリンチされてる所を助けられて、俺は織斑と決別する事を決めて一夜夏月になった――んで、『一夜夏月』の日本戸籍を作る間に訪れたのがオランダで、其の時に俺はお前と会ったんだよロラン。」
「そうだったのか……だが、今の君は一夜夏月なのだろう?そもそもにして私とヴィシュヌとグリフィンにとっては君は最初から一夜夏月なのだから、実は織斑一夏と言われても大した問題ではないかな?」
「えぇ、マッタク持って問題ではありません……私達が好きになったのは、織斑一夏ではなく一夜夏月なのです。貴方が一夜夏月である事は変わりませんから。」
「カゲ君はカゲ君だよ!織斑一夏じゃなくてカゲ君だから!」
先ずは自分が『織斑一夏』であると言う事を告げたが、ロランもヴィシュヌもグリフィンも特別驚く事なくその事実を受け入れた上で、夏月は夏月だと言ってくれた。夏月が一夏だったと言う事は大した問題ではなかったのだろう。
「そっか……そう言って貰えると嬉しいぜ。
そんじゃ、今度はこの場に居る中では楯無さんと簪、虚さんとのほほんさん以外は知らない俺の秘密だ……俺は、普通の人間じゃない。最強の人間を生み出す事を目的としていた『織斑計画』によって生み出された人造人間だ――織斑千冬と、織斑秋五も同じくな。
織斑千冬は九百九十九回のトライアンドエラーの末に完成したプロトタイプで、俺と秋五はそのデータを基に作り出された男性体量産型の成功体で、更に俺は『イリーガル』と呼ばれる個体だったんだ……俺は普通の人間じゃない、其れでも良いのか?」
続いて今度は己が『織斑計画』によって生み出された人造人間であり、更に『イリーガル』と呼ばれて居た存在である事を明かす――此れには流石にロラン達だけでなく鈴と乱も驚いたが、だからと言って夏月への思いが変わったかと問われればそれは否だ。
「アンタが人造人間だったからって其れが何よ?其れを聞いてアタシ達の思いが変わると思ってるなら、アタシ達を見くびり過ぎよアンタ!アタシ達の思いの強さを舐めんじゃないわよ!」
「つか、アンタが人造人間とか逆に納得だわ……人造人間なら男であってもIS動かせるかもだし、あの異常とも言える戦闘力にも頷けるからね。」
「君がまさか人造人間だったと言う事には驚いたが、だからと言って君と言う人間の魅力が変わる訳ではないだろう?寧ろ私は、その神秘的な出自に一種の感動を感じるよ……SFの世界にしか存在しないと思っていた人造人間がこうして実際に存在してるのだからね。
そして其の君と出会う事が出来るとは……嗚呼、私達の出会いには、乙女座の私は運命を感じずには居られない!」
「今の世ではデザイナーズベイビーの存在は珍しくないので、貴方が人造人間だからと言って、其れは大した問題ではないと思います……其れに貴方が何者であろうとも私達は、貴方が良いんです。」
「だから、君が何者だとか、そんなのはマッタク問題じゃないんだよカゲ君!」
「皆……ありがとな。」
夏月が『織斑計画』によって生み出された人造人間であり、更に『イリーガル』だと言う事を聞いても、ロランと鈴と乱、ヴィシュヌとグリフィンの思いが変わる事はなかった――一夜夏月が何者であっても、その全てを受け入れると言う思いは固まっていたのだろう。
夏月が己の秘密を暴露した事で、逆にその絆は強くなったとも言えるので、夏月も意を決して己の秘密を明らかにした甲斐があったと言うモノだ――其の後は風呂に入って就寝時間……とはならず、風呂に入った後は改めて生徒会室に集まってのパジャマパーティが開催され、その最中に楯無が『そう言えば、乙女協定の私達はファーストキスと初めてを夏月君に捧げる事が出来る訳なんだけど、夏月君のファーストキスと初めてを貰うのは誰になるのかしらね?』と呟いた事で、ちょっとしたデュエルが展開される事になったのだが、其れは楯無とヴィシュヌが無双して、最後には相討ちとなり、延長戦のじゃんけん勝負の結果は楯無が制し、ヴィシュヌが夏月のファーストキスを、楯無が夏月の初めてを貰う事で決着したのであった……生徒会室で何をしてるのかと思うが、此れもまた彼女達には大事な事だったのだろう多分。
そしてあっと言う間に時は過ぎ、ゴールデンウィーク初日がやって来たのだった。
To Be Continued 
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