地球軍の月面基地にて訓練を行っていたアークエンジェル級二番艦『ドミニオン』。
地球連合の最新鋭モビルスーツであるフォビドゥン、レイダー、カラミティの三機が乗り込んでおり、更に其の三機の開発を決断した地球連合の大西洋連邦の母体組織である『反コーディネーター』を掲げる『ブルーコスモス』の現盟主である『ムルタ・アズラエル』がオブザーバーとして搭乗している事を考えると、現在の地球連合最強の軍艦と言えるだろう。
そのドミニオンの艦長を務めるのは、嘗てアークエンジェルの副艦長を務めていた『ナタル・バジルール』だ。
生粋の武官であるナタルは技術将校出身であったアークエンジェルの艦長であるマリューと意見の相違からぶつかる事も少なくなく、マリューの判断や指揮を『甘い』と感じる事もあったのだが、其れが結果としてアークエンジェルをアラスカ基地まで到達させていたので、マリューの艦長としての能力は高く、同時に不必要な犠牲を出来るだけ出さないようにしていたのだと、アークエンジェルを降りてから改めて実感していた。
そのドミニオンが此れから向かおうとしているのは現在アークエンジェル、クサナギ、エターナルの三隻が集合しているL4コロニーだ。
『反コーディネーター』と言う選民思想の持ち主であるアズラエルだが、ブルーコスモスと言う組織の盟主に上り詰めただけあって慧眼であり、オーブでの戦闘で圧倒的な性能を見せつけてくれた新型の二機のモビルスーツ――フリーダムとジャスティスに『核エンジン』が搭載されている可能性に辿り着いたのだ。
核エンジンが搭載されているのであればバッテリー駆動のモビルスーツとは異なり、エネルギー切れの心配がないので高威力、高性能の武装を幾らでも搭載する事が可能なのだが、地球圏にはユニウスセブンが核攻撃された事への報復措置としてプラントが散布した『ニュートロンジャマー』が存在しているので核エネルギーは無効になってしまうのだ。
そうであるにも拘らずフリーダムとジャスティスが核の力を得ているのであれば何かしらのカラクリが存在すると考え、其の二機を鹵獲する為にアークエンジェルとの交戦を決断したのである。
更にアズラエルにとって嬉しい誤算だったのは、アークエンジェルが連合の戦艦であったと言う事だ。
連合を離脱したとしても連合の艦船であったのならば、其のシグナルパターンは当然新型のドミニオンに登録されているので、アークエンジェルのシグナルを捜索すれば今どこにいるのかは割と簡単に判明し、其の結果としてL4コロニー群に向かう事になったと言う訳だ。
ナタルは嘗ての仲間に刃を向ける事には流石に抵抗があり、自身の所属が連合の大西洋連邦でなければ命令を拒否していたのだが、大西洋連邦はブルーコスモスが母体組織とも言える一団なので、其処に所属している以上、ブルーコスモスの盟主であるアズラエルの命令を拒否する事はナタルには出来なかったのだ。
「(お飾りの艦長……其れが今の私か。
もしもアラスカ基地で命令に従わずにアークエンジェルに残る道を選んでいたらこんな事にはなっていなかったのかも知れないが……今更それを言っても仕方ない――嘗ての仲間に銃口を向けるか、私は絶対に碌な死に方はしないだろう。
更に政治的手腕は高いが戦場を経験した事のないブルーコスモスの盟主と、凡そ人としての倫理観が破綻している三機の新型モビルスーツのパイロットがドミニオンの搭乗者とは、なんとも頭が痛いな。)」
「……バジル―ル艦長、何か考え事かな?」
「……新型三機のパイロットについて少し。
モビルスーツパイロットとしての腕は確かなようですが、少しばかり人としての倫理観やら常識が欠如しているように感じましたので其れが気になっただけです――ブルーコスモスの盟主たる貴方が連れて来たパイロットなので私の考え過ぎであるのかも知れませんが。」
「あぁ、其れは君の考え過ぎではないよバジル―ル艦長。
彼等は我がブルーコスモスが幼少の頃よりモビルスーツの操縦の英才教育を、其れだけを行って誕生したパイロットだから、モビルスーツに乗って戦う以外の事に関しては、自我が芽生えて得た趣味しか興味がない。
一般的な倫理観や常識には欠けるだろうが、逆に言えば其れがないからこそ戦場に於いて迷う事無く敵を殺す事が出来ると言う訳だ――そう、彼等はある意味では最高の兵士なのさ。」
「最高の兵士が、人間としては最低であると言うのは笑えませんね。」
「そうかもしれないが、何か意見があるのかな?」
「いえ、なにも――ドミニオン、L4コロニー群に向かって出撃する。」
ナタルは命令に従いながらもアズラエルに少しばかりの皮肉を飛ばすと、ドミニオンをL4コロニー群に向けて発進させるのだった――大天使を討つべく堕天使が出撃したと言うのは、如何なる神話でも有り得なかった事象だと言えるだろう。
だが、神話でも起きえなかった事が起ころうとしていると言う事が、此の戦争の業の深さを物語ってもいた。
機動戦士ガンダムSEED INFINITY PHASE42
『立ちはだかるモノ~Despair emerges from the darkness~』
ドミニオンが出撃したのと時を同じくして、アークエンジェル、クサナギ、エターナルの三隻はL4コロニー群から離脱して、現在は廃棄されたコロニー、『メンデル』に到着し、三隻の長とメインクルーはアークエンジェルの多目的室に集まって今後の方針を話し合っていた。
『三隻同盟』の目的は此の戦争を終わらせる事であるので、被害を最小限に留めつつも戦争を終わらせる為の意見が飛び交っていた――その多くは連合とザフトが停戦状態になる事を目指していたのだが、其の方法は中々見つからなかった。
イチカは『双方に同等の被害を与えた上で停戦に持って行って、其処に監視役を置けば良い』と提案し、確かに其れならば連合もプラントも停戦に同意するしかないだろうが、誰が監視役を担うのかが決まらなかったので此の案は没となってしまった――イチカとカタナはタバネを提案したかったのだが、タバネは気紛れで気分屋で、自分の大切なモノ以外はゴミ以下と言うぶっ飛びまくった思考回路の持ち主なので監視役には不向きと判断して口にしなかった。
とは言っても三隻同盟の目的は戦争の終結なので、当面は戦争介入を行いながらフリーダムとジャスティスの圧倒的な力をもってして戦場を制圧し、其の上で停戦交渉に持って行くと言う事で取り敢えずの一致となった。
コズミックイラの世界ではチートとも言える核の力を得たフリーダムとジャスティスは連合にもプラントに属さない存在となれば、世界に対して最強の抑止力として作用する、故に此の方法が暫定的に決まったのだ。
結局は圧倒的な力を抑止力にしなければならないと言うのは、ラクスも苦渋の決断だったのだろうが。
「……そう言えば、アスランは?」
そんな中、カガリは此の重要な会議にアスランが参加していない事に気付いた。
プラントに戻ったアスランは実の父であるパトリックに撃たれ、肩に重傷を負っていたので、其の傷が原因で会議に参加しなかったのかも知れないが、アスランの事が気になったカガリはアークエンジェル内を探し回り、そしてエントランスエリアにてベンチに腰掛けているアスランのを見付けたのだった。
「アスラン……」
「カガリ……君か。」
「えっと……親父さんに撃たれたって聞いたけど、その、大丈夫なのか?」
「銃弾は摘出したから問題ない……少しばかり痛みはあるけど、モビルスーツの操縦には影響がないからな――マッタク、父さんに此の戦争の真意を聞きにプラントに戻ったのに、其の父さんから銃で撃たれて、そしてラクスを支持する一団に救出されて俺は今此処に居る。」
そんなアスランに声を掛けたカガリだったのだが、アスランは自嘲気味に己の行動を振り返っていたモノの、しかしその瞳に宿った光は消える事なく、真っ直ぐに力強い光を放っていた。
「其れだけじゃなく、俺は今こうして君と一緒に居られる……其れが嬉しいんだ、カガリ。」
「え……?」
更に此処でアスランは自身の身体をカガリに預けると、其の身を抱きしめた――突然の事に戸惑うカガリだったが、しかし嫌な気分ではなかった。
無人島での一夜、オーブでの再会を経て、アスランもカガリも無意識のうちに夫々相手の事を意識するようになっており、此処でアスランが先に一歩踏み出したと言うところだろう。
「え?あ、お……いってれぼ!!?」
――ブッシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!
だがしかし、異性との恋愛経験が皆無のカガリはアスランの行動に思考がオーバーヒートして脳ミソがエンストしてしまっていた――男勝りで竹を割ったような性格のカガリだが、恋愛に関してはとっても純情だったようである。
「え?あ、おい大丈夫かカガリ?」
「お、お、お前、フフフ、不意打ちは止めろ馬鹿者ぉ!!ビックリして心臓が止まるを一周回って脈拍が三百を突破し掛けたぞ!じゅ、寿命が縮むだろ!!」
「其れはすまなかったが、ラクスとの婚約が破談になったばかりだと言うのに俺も大概だな。
尤も、俺もラクスも親同士が決めた結婚だったから、互いに恋愛感情があったのかと言われると、多分俺もラクスもお互いの事は嫌いではなかったが恋愛感情は持ち合わせていなかったと思う。」
「親同士の……政略結婚か?」
「今にして思えばそうだったのかもな。
父さんは当時のプラント最高評議会の議長だったシーゲル・クラインとの繋がりが欲しかったんだろう……だからその娘であるラクスと俺を許嫁と言う形で婚約状態にさせていたんだろう――シーゲル氏も当時は自分にも利があると考えたから其れを是としたんだろうけど。
まぁ、恋愛の一つもせずに結婚ってのも味気ないとは思うから、俺とラクスの婚約が破談になったのはお互いにとっても良かったのかも知れないな?
……まさかラクスがキラに思いを寄せていたとは思わなかったが。」
「あぁ、其れは私も驚いた。
そして聞いた話だが、キラはフレイと交際中なのにラクスとも付き合う事になったんだってな?しかもそうなるように持って行ったのはイチカだとか。」
「そうらしい……『一人の女性しか愛してはいけないと誰が決めた。』だったか……まぁ、確かにその通りなんだが、其れを口に出来るってのは中々な……」
最もカガリもカガリで無人島での一件以降、アスランの事は何かと気にかけていたので、こうしてアスランから想いを告げられた事は実は嬉しかったりした。
反ザフトを掲げるレジスタンスに参加していたカガリが、元ザフト兵のアスランと数奇な巡り合わせを経て恋仲になると言うのは中々にドラマティックでロマンチックと言えるのかも知れない――プラスαで、コーディネーターとナチュラルのカップル其の物が非常に希少な存在なのだ。
突然のアスランの一撃にカガリは戸惑ったモノの、其のままアスランに身体を預け、二人の間には暫し安らぎの時間が流れるのだった。
――――――
ザフト軍戦艦『ヴェサリウス』内にて、クルーゼは自身の端末からプラントの重要機密データにアクセスし、其処からあるデータをUSBメモリにコピーしていた。
重要機密データへのアクセス権を持つ者はプラント内でも限られており、一部隊の隊長であってもザフトの一軍人に過ぎないクルーゼでは普通ならばアクセス権は無いのだが、クルーゼは裏でパトリックと繋がっていたので特別にアクセス権を有していたのだ。
「クルーゼ、そのデータはなんだ?」
「マドカ……詳細は語れないが、此の戦争を終わらせる為の切り札と言ったところかな?
此れが連合の手に渡れば戦争は終わる……但し最悪の結果と新たなる憎悪と戦争の火種をばら撒いた上でだがね。」
「新たな戦争を起こす為に此の戦争を終わらせると言う事か?……お前、中々に性格がひん曲がっているだけでなく根性が腐っているな?……尤も、だからこそ逆にお前と一緒に来てよかったと思うぞ。
人格破綻者であるお前が私を連れ出したと言うのは、相応の価値が私にはあると言う事だからな?……だが、私を使うのならば私の目的も果たさせろ。
イチカ・オリムラは私の獲物だ、他の誰にも渡さん……私以外の誰かが奴を殺そうとしたら私がそいつを殺す……其れはお前も例外ではない――私に価値を見出したお前には言う必要はなかったかもしれんがな。」
「安心したまえ、私も彼に興味はあるが其の命を奪おうとは思ってはいないからね……ただしイチカ君とキラ君には自身の出生を知ってもらう心算ではある。
果たして彼等が自分の出生を知って、其の業の深さに耐える事が出来るのかどうか、其れもまた見ものだからね?……その際に、イチカ君が戦意を喪失してしまった場合は容赦願うよマドカ。」
「ふん、其の程度で潰れるならそもそも殺す価値はない。
其れで、其の非常に愉快なデータをどうやって連合の奴等にくれてやる心算だ?」
「其れなのだがね、私は君が目的でアラスカ基地を訪れたのだが、其処で予期せぬモノも手に入れる事が出来ていたのだ……アラスカ基地には連合に置き去りにされた少女兵が居たのだよ。
君を見付ける前に彼女を見付けたので先に確保して船に送ったがね……彼女は連合の兵士であり、現在は事実上ザフトの捕虜となっている、その捕虜を返還すると言う事で開放し、その際に此のデータを持たせてやれば良い。
但し、アークエンジェルに回収されては元も子もないので、確実に連合に回収されるように此方も動く必要があるがね。」
「其れはまたなんとも不幸な奴も居たモノだな。」
そのデータは此の戦争を最悪の形で終わらせながら、更なる憎悪を呼び、新たな戦争の火種になると言う最悪極まりないモノだった――更にクルーゼは『此のデータが連合に渡ったら』とも言っているので、クルーゼはある意味でプラントに対しての裏切り行為を画策しているとも言えるだろう。
尤も此の場にはクルーゼとマドカしか居ないのでクルーゼの発言を咎めるモノも居ないのである意味では何の問題もないのだが。
「ところでクルーゼ、次の戦闘でテスタメントは使えるのか?」
「いや、君のテスタメントと私のプロヴィデンスはギリギリまで温存しておこう。切り札は最後の最後で使うからこそ切り札となるのだからね。
だから次の戦闘では私も君も最新鋭の量産機であるゲイツで出るとしよう……フリーダムとジャスティスの武装開発の為の試験機として生まれたゲイツだが、其の機体性能は非常に高いので戦闘も十二分に行う事が出来る。
契約と天帝が降臨するのは、イチカ君とキラ君が己の真実を知った其の後だ……其方の方が面白いだろうからね。」
「……矢張りお前は根性が腐りきっているな……歩く生ごみめ。」
「ハハハ、誉め言葉と受け取っておこう。」
ヴェサリウスの艦長室には何とも言えない緊張感とも異なる異質な空気が流れていた――其れは、或いは悪意が室内に満ちていると言うのが正しいのかも知れないが、一般人が此の部屋に入ったらクルーゼとマドカから発せられた瘴気によって意識を失っただろう。
其れほどまでにクルーゼとマドカから発せられている『悪意』と言う名の瘴気は濃密で凄まじいモノであったのだった。
――――――
廃棄されたコロニー、『メンデル』に停泊しているアークエンジェル、クサナギ、エターナルの三隻は夫々の食堂にクルーが集まって『食事の時間』になった。
アークエンジェルの料理長はイチカだが、そのイチカが自身のレシピレパートリーをクサナギとエターナルの料理長にメール送信した事で、クサナギとエターナルでもイチカの激うま料理が提供されていたのだ――尤もイチカの料理レパートリーは三百を超えていたので、メールは相当な数に上ったのだが。
そんな三隻の此の時間のメニューは、『ピリ辛味噌カルビ丼』または『明太釜揚げうどん』に、『もやしの塩昆布和え』、『焼き厚揚げ』、『切り干し大根の炒め煮』の三種の小鉢に、『ワカメとナメコと豆腐の味噌汁』の定食だった。
カルビ丼と釜揚げうどんには好みで生卵か温泉卵をトッピング出来ると言うのもポイントが高いだろう。
「少年、アフリカで会った時はケバブにトンデモナイ激辛ソースを掛けていたから味覚がオカシイのかと思ったが、料理のセンスは抜群に良いんだな?」
「料理は趣味だからな。其れと激辛は単なる好みだし。
俺一人が食うなら兎も角、そうじゃないなら激辛とかは出来ないしな……てか、明太釜揚げうどんに温玉と揚げ玉とネギのトッピングとは中々に通だな虎の旦那?」
「若い頃に訪れた東アジア連合の『オーサカ』って場所で食べた『釜玉うどん』にたっぷりのネギと揚げ玉がトッピングされててな、其の味が忘れられなくてね。
コーヒーほど拘りはしなかったんだが、ザフトに入隊する前には真剣にプラントでうどんとコーヒーの店を出そうかと考えてた事もあったんだな此れが……時に少年、冷たいきつねうどんや冷たいタヌキうどんは存在しているのに、なぜ未だに冷たいカレーうどんは存在していないのだろうか?」
「其れは……単純に冷たいカレー汁があんまり旨くないからじゃないか?……多分だけど。」
「うぅむ、そう言う理由なら仕方ないのか?」
平穏で平和な食事の時間だが、其れも長くは続かなかった。
「アークエンジェル……L4コロニーからコロニーメンデルに移動していたか……尤も、仮にも艦長を名乗るのならば目標の動きを把握出来なければならない訳だがな……」
アークエンジェルを攻撃する為にL4コロニーに向かっていたドミニオンが、コロニーメンデル港内にアークエンジェルの艦影を発見したのだ。
アークエンジェル、クサナギ、エターナルの三隻がL4コロニーからコロニーメンデルに向かう際に、ラクスの指示でエターナルからチャフが散布された事でドミニオンはアークエンジェルのシグナルをロストしてしまい、其れでもアークエンジェルはL4コロニーに居るとアタリを付けてL4コロニーに向かったのだが、L4コロニーは既にもぬけの殻となっていたので、改めてアークエンジェルの捜索を行う事になったのだが、此処でナタルの武官としての知識や経験則が働いた。
アークエンジェルのシグナルをロストした原因がドミニオンのレーダーの不調でないとなれば、探索疎外の為のチャフが散布された可能性が高いと考えた末、L4コロニーに到達してもアークエンジェルのシグナルが確認出来ないと言う事は、チャフの有効範囲内に存在していると考え、アークエンジェル級の戦艦が散布出来るチャフの最大量と、其の有効範囲を計算した結果、コロニーメンデルに居る可能性が高いと考えてやって来たらビンゴだったと言う訳だ。
「バリアント、ゴッドフリート展開!目標、アークエンジェル!」
ナタルとて嘗ての仲間に銃を向ける事に抵抗がない訳ではないが、軍人である以上命令に背く事は出来ない上、自身が所属している大西洋連邦に対して強い影響力を持つブルーコスモスの盟主が乗艦しているのならば尚の事であり、命令を遂行すべくメンデル港内のアークエンジェルに先制攻撃を行おうとしたのだが――
「か、艦長!コロニーメンデル内からモビルスーツ反応!
これは……ストライク、グラディエーター、バスター!オーブのビャクシキと、ザフトの新型二機です!」
「なに!?」
其れよりも早く、コロニーメンデル内からフリーダムとジャスティス、ビャクシキ、グラディエーター、ストライク、バスターが出撃してドミニオンへと向かっただけでなく、クサナギからも多数のM1アストレイが出撃していた。
「先制攻撃をする心算だったんだろうが、アンタ達が攻撃してくるって事はタバネさんが教えてくれたんでな……悪いがこっちから仕掛けさせて貰ったぜ?
アークエンジェル級の二番艦『ドミニオン』だったか?……堕天使の分際で大天使に刃を向けた事を後悔させてやるから覚悟しな……序に、新装備の実験台になってもらうぜ!」
アークエンジェル側が即座に対応出来たのは、イチカのスマートフォンにタバネからのメールが入り、『アークエンジェル級二番艦のドミニオンがアークエンジェルを探してて、アークエンジェルに攻撃しようとしてる』と言う事を知り、其れをマリュー等に伝えていたからだった。
尤も、そのメールを受信したのが食事の時間だったので少しばかりバタバタしてしまったのは否めないが。
そして其れだけでなく、アークエンジェルのモビルスーツには少しばかり強化が施されていた。
ビャクシキ、グラディエーター、ストライクは既に潤沢なストライカーパックが存在しているので特に大きな変化はないのだが、バスターは腰部のサイドアーマーがオミットされた代わりにストライクに搭載されているアーマーシュナイダーが内蔵されたサイドアーマーが搭載されて近接戦闘も行えるようになり、ビャクシキには新たに『宇宙用ストライカーパック』として『ウンリュウ』が開発されており、今回ビャクシキはそのウンリュウを搭載して出撃していた。
「く……読まれていたのか!」
逆先制攻撃を喰らったドミニオンは牽制にミサイルを放ったのだが、其れはフリーダムとジャスティスがビームサーベルで斬り落とし、ビャクシキ、グラディエーター、ストライク(ライトニングストライカー装備)、バスターが撃ち落とす。
「来いよ堕天使……大天使を落とせると本気で思ってるのならな……!」
ビャクシキのコックピットでイチカは首を掻っ切る仕草をするとサムズダウンし、ドミニオンをモニター越しに睨み付ける――其れと同時にドミニオンからは連合の新型三機とストライクダガー、デュエルダガー、バスターダガーが出撃してオープンコンバット。
嘗ての仲間同士の戦いが、此の宙域にて幕を開けたのだった……!
To Be Continued 
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