偶然か、或いは運命の悪戯なのか、オーブ国内でイチカとカタナは邂逅を果たしていた。
イチカもカタナも夫々相手が『自分にはない自分の記憶』に存在していた相手であったので、こうして実際に顔を合わせると互いに驚き思わず動きが止まってしまったのは致し方ないと言えるだろう。


「おい、如何したカタナ?」


突然動きを止めたカタナを心配してアスランも声を掛けたのだが――


「……アンタ達、観光者かい?オーブじゃ見ない顔だが……特にそっちの銀髪の兄ちゃんは。
 つかすっげぇ傷跡だけど、まさかマフィアの人だったりしないよなぁ?悪いがオーブにはマフィアの皆さんが欲しがるようなモノはない……と思うんだけど?」

「誰がマフィアか!
 此の傷は昔学校で工作の時間にふざけて彫刻刀を振り回していたクラスメイトの彫刻刀が運悪くクリーンヒットしてしまった時の傷跡だ!」


予想外のイチカの先制攻撃が炸裂した――イザークが咄嗟に傷跡についての設定を作ったのは見事としか言えないが。
だがしかしイチカの視線はカタナに向いており、カタナもまたイチカから視線を外していなかった――幾度となくモビルスーツを駆って戦場で激突して来たイチカとカタナだが、こうして当人達が実際に顔を合わせるのは初めての事だった。
其れでも初めて会った気がしなかったのは、互いに己とは異なる己の記憶に其の存在があったからだろう。


「お姉ちゃんがすっごく熱視線を向けてる……お姉ちゃん、この人みたいな男の人が好み?」

「カンザシちゃん!……まぁ、否定はしないわね?
 彼は私の好みにストライクズドンって感じね……其れこそ、もしかしたら前世から縁があったんじゃないかって思っちゃうくらいにね。」

「ふぅん、其れは奇遇だな?実は俺も貴女みたいな女性が好みなんだ……其れこそ、前世で何か因縁があったんじゃないかって思うレベルでな。」


カンザシがカタナの視線に気付いて少し揶揄うように言って来たが、カタナは逆に其れに乗っかった形になり、イチカも其れに追従するような感じの事を言って互いに意味深な笑みを浮かべる。
時々脳裏にフラッシュバックする己ではない己の記憶に存在している相手とは口にはしない――と言うよりも口にしてしまったら『お前何言ってんの?』と言う感じになってしまうのは目に見えているので口に出来ないと言う方が正しいのかもしれないが。


「どうやらお互いに相手の事が好みみたいね?お兄さん、もし良ければ連絡先交換しない?貴方とは時間を取ってゆっくり話をしたくなっちゃったから。
 カタナ・サラシキよ。宜しくね?」

「其れはなんとも魅力的なお誘いなんで是非とも……お父さん、お母さん、祖父のカクタロウ爺さん、其れから犬のナオジと猫のケンジロウ、ようやく俺にも春が訪れるみたいです。
 俺は、イチカ・オリムラだ。」


その流れでイチカとカタナは連絡先を交換する事になり、其の後イチカが此のクレープの屋台のお勧めをカタナ達に教え、自分は『ベンティバニラクリームフランペチーノノンバニラアドホワイトモカシロップウィズチョコレートソースウィズチョコレートチップエクストラホイップベラミルク』なる『其れ何の呪文?』と言いたくなるようなクッソ長いメニューを注文し、其れを受け取ると一行とは別れたのだが……


「あんまり派手に動かない方が良いと思うぜ、アスラン?」

「!?」


別れ際、擦れ違いざまにイチカはアスランにそう言うと足早にその場を去って行った――ラクスをイージスに受け渡す際、イチカも其の場に居たのでアスランの声を覚えており、ヘルメット越しに少し見えた顔も覚えていたのでカマかけと牽制の意味でそう告げたのだった。
同時に其れはアスランにイチカがアークエンジェルのクルーである事とビャクシキのパイロットである事を知らせるモノでもあったのだが、アスランはイチカがビャクシキのパイロットであるかもしれないと言う事を此の場で仲間達に知らせる事はなかった――知らせたらビャクシキに並々ならぬ執着を持っているカタナがイチカに対して何をしでかすか分かったモノではなかったからだ。

なんにしてもイチカとカタナの邂逅は互いに連絡先をゲットすると言う展開になったのだが、イチカの方はカタナ達がザフトである事を見抜いていたので、カタナとの連絡先の交換は大きいと言えるだろう。
事によっては、ザフトの此れからの動きを掴む事が出来るかもしれないのだから――尤も、イチカとカタナの運命はそんな単純なモノではないのだが。










機動戦士ガンダムSEED INFINITY PHASE27
『運命の出会いと再会~Ichika&Katana Kira&Athrun~』










同じ頃、アークエンジェルの学生クルー達はマリュー等の計らいでオーブ軍本部で夫々の両親と面会する事になった。
久しぶりに再会した親子はお互いの無事を確認して喜びに浸るが、父を亡くして面会者の居ないフレイは一人だったがその傍にはキラの姿があった――キラも両親と面会する事は出来たのだが、其れを断っていた。
『エリカから依頼のあったM1アストレイのOSの開発が忙しくて』との理由で、実際にキラはM1のOSの開発を寝る間も惜しんで行っていたのだ――元々『オーブ軍のパイロットが動かせるようにしてくれればいい』との依頼だったが、キラの『プログラマー』としての魂に火が点いたのか、『オーブのパイロットの誰が乗っても最高のパフォーマンスを行えるように』とのOSの開発を行っており、其れこそ依頼したエリカが『もうこれで充分なんだけど?』と言う位のOSを組み上げたのだが、キラはまだ満足しておらず、OSの開発を続行しており少しばかりの息抜きの時間にフレイに寄り添っていたのだ。


「キラは両親と会わなくて良いの?」

「良いとは言わないけど、忙しいのは事実だから少しの休憩中に両親と会うよりもフレイと一緒に居たい感じかな……いや、此れは言い訳だね――僕は怖いんだ、今両親と会うのが。
 今会ってしまったら、僕はきっと聞いてしまうと思うんだ……『どうして僕をコーディネーターにしたのか』って――コーディネーターだからって差別を受けた事は此れまではなかったけど、此の戦争に関わってしまった事で僕はナチュラルが、連合がコーディネーターに対してどんな感情を抱いているのかって事を初めて知った、知ってしまった……多くの連合の人間にとって僕達コーディネーターは忌むべき存在であり、そして滅ぼす相手だって考えてるってね。
 僕がナチュラルだったらこんな思いをしなくて済んだし、アスランとは友達になる事もなく、そして戦う事もなかったのかもしれない……僕がコーディネーターだったからこんな事になってるのかもって思ったら、ね。」

「キラ……」


だがキラの本音は別にあった。
『なぜ自分をコーディネーターにしたのか』と言うのは、ある意味で地球で暮らしているコーディネーターの多くが考えている事かも知れない――現在の地球はオーブのような一部の国を除いてコーディネーターには生き辛い世界であり、『両親がナチュラルのコーディネーター』は例外なくキラと同じ思いだろう。
しかしそれはある意味では『親の愛』故の事かも知れない――どんな親でも我が子の幸せを願うのが普通であり、同時に我が子が『優秀』である事も願うモノであるので、『受精卵の段階で遺伝子操作を行って高い能力の人間を生み出す』と言うコーディネーターの子を望むナチュラルの親は少なくない。
キラの両親もそう言った親なのだろう。


「アークエンジェルの人達は僕がコーディネーターでも差別はしなかったけど、アークエンジェルのコーディネーターが僕一人だけだったら結構辛い部分もあったんじゃないかって思うかな。
 正直な話、イチカが居てくれたから僕は此処まで来れたって言うのは決して過言じゃないと思う――僕とイチカは同い年だけど、イチカからは戦闘中に時々『幾度となく修羅場を潜り抜けて来た雰囲気』を感じ取ったからね……イチカはオーブの軍人だから、僕達よりも修羅場は経験してるんだろうけど。」

「確かにイチカって、時々同い年とは思えない位に頼りに感じる事があるのは事実ね……」


もしもアークエンジェルに乗っているコーディネーターがキラだけだったらキラも居心地があまり良くはなかったかもしれないが、イチカが居てくれたおかげで平時も戦闘中も何とかなっていた部分は決して小さくないだろう。
無論同い年であるイチカからキラが感じ取った『幾度となく修羅場を潜り抜けて来た雰囲気』と言うのは単純に『オーブの軍人だから』では若干説明し切れない部分もあるのだが……


「それじゃあフレイ、僕は作業に戻るね。」

「うん、無理はしないでねキラ?」

「大丈夫無理はしないから……まぁ、数が数だから簡単には終わらないけど、一個小隊分のM1のOS開発なら今日中に終わるかな?
 後は其れを元にインストール用のソフトを作れば誰でもM1のOSの最適化が出来るようになるからね。あ、最適化だけじゃなくて一応砂漠戦闘と水中戦闘にも対応出来るようにしておいた方が良いかな?後宇宙空間での戦闘にも。」

「……そこはまぁ、キラの匙加減で良いんじゃないかしら?」

「じゃあ、僕が出来る範囲でやれる事を全てやる事にするよ。」

「……M1アストレイ、トンデモナイ量産機になるかもしれないわね此れは。」


休憩を終えたキラはフレイと別れて作業に戻り、エリカから依頼されていた『M1アストレイ』のOS開発を再開したのだが、フレイから『キラの匙加減で』と言われた事でキラはある意味でリミッターが解除されてガチでM1のOSの開発を行い、結果としてオーブの量産機である『M1アストレイ』はザフトの主力量産機であるジンを遥かにぶっちぎる性能を獲得する事になり、其れを知ったオーブの代表首長であるウズミは『此れは絶対に国外に流出させてはならない』と言う事を心に決めて、どこかでそれを見ていたタバネは『キー君は私並の天才なのかな?』と戦慄するのだった。








――――――








キラがM1のOS開発を行っていた頃、キラの両親はウズミと面会していた。
キラの両親――特に母親である『カリダ・ヤマト』はキラとの面会を強く望んでいたのだが、キラが多忙を理由に面会を断って来たのでキラとの面会は諦めてこうしてウズミとの面会と相成ったのだった。


「貴方達も本当ならば彼と面会したいのでしょうが……」

「あの子が其れを望まないのであれば仕方ありませんわウズミ代表……其れでも私達はあの子の親として、あの子を信じるだけですから。」

「そうですか……ですが彼にはあの事は……」

「えぇ、分かっています――何があろうとも、どんな事態になろうともあの子に真実は明かす事はしません。」


其の場でウズミはカリダに意味深な事を言うと、カリダもまた意味深な答えを返していた……キラにはキラ自身も知らない重大な真実が存在しており、其れはキラには明かす事が出来ないモノでもあるのかもしれない。
此の謎めいた約束が意味する事が何であるのかは不明だが、ウズミとヤマト夫妻の間にはキラに関する『重大な情報』が共有され、そして其れが外に漏れないように徹底されているのは間違いなさそうである。


「ですが、何があろうともあの子は、キラは私達の息子です。其れは変わりません。」

「えぇ、何があっても其れだけは変わらない『真実』でしょう……此の真実に、彼が辿り着く事が無い事を願うばかりです。」


オーブの代表首長であるウズミと、一般市民に過ぎないヤマト夫妻が同じ情報を共有していると言うのは何とも奇妙な事であるのだが、逆に言えばそれほどまでに『キラの真実』は大きく、ともすれば世界に大きなうねりを与えるモノであるのかもしれない。








――――――








オーブ国内で潜入捜査を続けているアスラン達はカフェのテラス席で『アークエンジェルがオーブに入国してる』事を前提に――と言うよりも、アスランは此処でイチカの正体を『さっき会ったアイツは、おそらくビャクシキのパイロットだ』と伝え、アークエンジェルがオーブに入国していると言う事で次の一手を如何するかの作戦会議を行おうとしたのだが――


「彼がビャクシキのパイロット……どうして其れをあの場で教えてくれなかったのかしらアスラン?

「お前がビャクシキに並々ならない執念を持っているからだカタナ。
 もしもあの場でお前にアイツがビャクシキのパイロットである事を伝えたら何をしでかすか分かったモノじゃないからな……潜入捜査中に派手に動かれるのは宜しくないから伝えなかったんだ。」

「何をしでかすか分からないだなんて酷いわねぇ?
 速攻で彼をお持ち帰りするだけじゃない♪派手に動いても目撃者がいなければ問題ないし、彼自身の身柄が此方にあれば其れこそ無問題よね?」

「いや、問題しかないわ馬鹿者ぉ!」

「うん、ナイス突っ込みだよイザーク。」


矢張りと言うか何と言うかカタナが可成りヤバい事を考えていたので、アスランはあの場でイチカの事を伝えなかったのは正解だったと改めて感じており、其れは其れとして改めて作戦会議を行ったのだが、オーブで補給と改修を行ったアークエンジェルが当初の目的地であるアラスカ基地を目指すのは確定しているので、オーブ出国後にオーブ領海から出たところで攻撃を行うと言う事になり、アークエンジェルが補給と改修を受けているオーブ軍の施設を確認する為にアスラン達は移動を開始するのだった。


「それにしてもキャラメルマキアートって、イザークって意外と甘党?」

「甘党と言う訳ではないが、糖分は脳を活性化してくれるので必要な時には意識して摂取するようにはしている。其れだけだ。」

「因みに私もキャラメルマキアートだからお揃い……これもある意味でのペアルック//////」

「カタナァ、貴様妹が可愛すぎるぞ何とかしろ!!」

「カンザシちゃんが可愛いのは今に始まった事じゃないから今更如何にか出来る筈ないでしょうイザーク……其れとも貴方はカンザシちゃんが可愛くなくなった方が良いのかしら?」

「そんな筈ないだろうが!」


その道中ではこんな会話が交わされていたのだが、取り敢えずイザークとカンザシは中々いい関係であるのは間違いなさそうである。








――――――








オーブのモビルスーツ格納庫ではキラがM1のOS開発を満足出来るまで行い、其の結果としてM1はザフトの主力モビルスーツである『ジン』を遥かに凌駕する性能を獲得し、アークエンジェルがアラスカ基地に到着したらストライクをベースに開発が進むであろう連合製の量産モビルスーツでも追い付けないレベルの性能となっていたのだった。


「キラ……やり過ぎたとは言わねぇ、寧ろ良くやった。ザフトや連合からは『良くもやってくれたな』って言われるかもだけどな。」

「何て言うか『やり切った充実感』て言うモノを僕は感じているよイチカ……自分の好きな事を思い切り出来るって、こんなに気持ちの良い事なんだね。」

「お前が満足出来たんなら俺は何も言えねぇわ。」

「だけどアークエンジェルの改修も終わったから、アークエンジェルはオーブから出国する事になるんだけど……君はオーブに残るのかなイチカ?」

「オーブの軍人としてはオーブに残るのが正解なんだろうが、俺が相棒をアークエンジェルに残してオーブに残る事が出来ると思うか?……此処から先も俺は一緒に行ってやるよキラ。
 オレとお前はバディだからな……だから、改めて宜しく頼むぜ相棒!」

「イチカ……うん、宜しく。」


イチカは其れを咎める事なく寧ろ良くやったと言ったスタンスであり、キラもやり切った表情を浮かべていた。
後は補給が済めばアークエンジェルは発進出来るのだが、イチカはアスランがオーブに来ていると言う事をキラには伝えていなかった――キラがオーブにアスランが居ると言う事を知ったら戦闘時に動きが鈍ってしまうも知れないからと考えたからだ。


「時にキラ、フラガの旦那のメビウス・ゼロなんだが、有線式のガンバレルを『重力下でも使える無線式のガンバレル』に改造出来たらモビルアーマーでもモビルスーツ相手に有利が付くんじゃないかと思うんだが如何だろう?」

「其れは確かにそうかもしれないけど、重力下での無線誘導兵器の実現は難しいんじゃないかな?」

「やっぱりそうだよな……セシリアのBT兵器がオカシイんだよな――って、何言ってんだ俺?」

「イチカって時々意味不明な事言うけど大丈夫?」

「大丈夫だとは思うんだが、時々俺の記憶にはない単語やら人物やら風景が脳裏にフラッシュバックする事があるんだよなぁ……若しかしたら『前世の記憶』ってやつなのかもしれないな此れは。」

「なんか、オカルト好きな人が聞いたら喜びそうな話だね。」


そんな話をしながら、その最中にキラの『トリィ』がキラの肩から飛び立っていき、其れを追ったキラとイチカはオーブ軍の施設の境界線であるフェンスまでやってくる事となり、其のフェンスの外には……オーブで潜入捜査を行っているアスラン達の姿があった。


「あら、イチカじゃない?其処ってオーブ軍の基地よね?どうして貴方がそんなところに居るのかしら?」

「カタナ……どうしてって言われても俺はオーブの軍人だからな?
 こう見えてオーブ軍では史上最年少で尉官になった若手のホープなんだぜ?そして更に基地内の食堂に於いて『裏料理長』とも呼ばれてる……食堂のメニューだけじゃなく、オーブ軍で使われてるレーションにも俺が考案したレシピが多数採用されてるからな。」

「其れは凄いわねぇ……因みに一番の自信料理は何か聞いても?」

「食堂でもレーションでも人気なのは『カレー』なんだが、俺の一番の自信料理は実は麻婆茄子だ。
 ニンニクとショウガをふんだんに使って香りを引き立てた所に素揚げした茄子と豚の挽肉を加えて、味付けにオイスターソース、ナンプラー、豆板醤、甜面醤、豆鼓醤、XO醤を使い、花椒パウダーと五香紛でスパイシーさを際立たせた逸品は白飯が止まらなくなるぜ。」

「其れはとってもそそるわね♪」


イチカとカタナは互いの立場を知っていても其れを此の場では出さずに、あくまでも『昼間に街中で知り合った仲』を演じる――互いに其方の方が此の場では都合が良いと言うのもあっただろうが。


「……此れは、君のか?」

「うん……昔、親友が作ってくれたモノで、今でも僕の宝物だ。」

「そう、か……」


その一方でアスランは自分の所に飛んで来たトリィをキラに返し、キラは『トリィは今でも自分の宝物だ』とアスランに伝え、言外に『袂は別っても親友である事に変わりはない』と伝えていた――同時に『僕は君と戦う事には迷わない』との意思を宿した視線も向けていた。


「その親友と、何時か再会出来ると良いな……」


アスランはキラの視線を受けて目を背けそうになったが、其れでもなんとか目を背けずにその視線を受け止めてキラにそう告げた……嘗ての親友同士の戦いは今度こそ凄まじいモノになるのかもしれない。


「取り敢えず軍の基地周辺は一般人は近付く事がNGだから即刻此の場から去った方が良い……今なら俺が目を閉じて耳を塞いでたって事で通せるから。」

「おほほ……そうさせて貰うわ。」


そうしてアスラン達は基地付近から去り、イチカとキラも格納庫に戻って行ったのだが……


「フラガの旦那、マリューさん、オーブの領海から出たらザフトの連中が仕掛けて来るぜ。」

「連合製のモビルスーツ五機が攻撃をしてきます――だから、備えておいてください。」

「お前ら、なんで?」

「二人共…?……分かったわ。バジルール副艦長。」

「ラミアス艦長、みなまで言わずとも了解しています――各クルー、戦闘準備を怠るな!」


イチカとキラはムウとマリューに『オーブ領海から出たらザフトが攻撃してくる』と言う事を伝え、マリュー達も其れを聞いて戦闘準備を整える事となり、更にオーブを出国する前にアークエンジェルにはストライクとビャクシキの共通の装備となる新たなるバックパックとして高機動射撃型の『ライトニングストライカーパック』と、高機動近接型の『セブンソードストライカーパック』が搬入され、ストライクとビャクシキは戦闘の幅を大きく広げる事になった。


「カタナ……今度も俺が勝つぜ。」

「アスラン……大切なモノを守る為なら、僕は……!!」


そうしてアークエンジェルの補給と改修も終わり、アークエンジェルがオーブを発つ日がやって来た――因みに補給の食糧は当然ながらオーブ軍のレーション……だけでなく生の食材も少なくなかったのだが、其れ等の食材はイチカが速攻で保存の利く燻製や漬物に加工して食料を確保していたのだった。
ともあれアークエンジェルがオーブ領海から外に出た其の瞬間に激しい戦闘になるのは間違いないだろう。










 To Be Continued 







装備補足


ライトニングストライカーパック

ストライクとビャクシキの共通装備のストライカーパック。
エールストライカー以上の機動力を誇りながらもランチャーストライカーに引けを取らない火力を搭載した高機動遠距離型のストライカーパック。


セブンソードストライカーパック

ストライクとビャクシキの共通装備のストライカーパック。
エースストライカー以上の機動力とソードストライカー以上の近接戦闘能力を保持しているが、距離が離れた敵に対しての攻撃手段は一切存在していないと言う、砲撃装備オンリーのバスターとは真逆の欠点を抱えていたりする。