戦闘が佳境に入る中、シンとルナマリアはレクイエムを破壊すべく行動していた。


「えぇぇい!!」


デスティニーが肩部のビームブーメランを投擲して敵機を斬り裂けば、そのブーメランをインパルスがキャッチしてショートビームソードとして使用して敵機を撃破した後にデスティニーに投げ返す――投げ返す際にも敵機を撃破してるのは流石と言えるだろう。


「レクイエムの破壊に行くなら持ってけ!」

「ディアッカさん?」


更に此処でクーデター軍に対処していたジュール隊のディアッカが現れ、バスターが火力アップの為に装備していた着脱可能なエターナルの主砲『ミーティア』をパージしてインパルスに渡して来た。
ミーティア其の物は四年前の大戦の際に、フリーダムとジャスティス専用の拡張兵装として生み出されたモノだが、此の四年の間に技術が大幅に進歩した事でフリーダムとジャスティス以外のモビルスーツの拡張兵装としての運用が可能となっていた――此の最適化よりも前に、ジャンク屋のロウ・ギュールによってアストレイ・ブルーフレーム用のミーティアが開発されていたのは言うだけ野暮だろう。

それはさて置き、ミーティアを装備したインパルスは圧倒的な火力を備えた殲滅兵器へと其の姿を変えたのだった。


「坊主!!」

「オッサン!!」

「オッサンじゃない!お前の装備だ、受け取れ!!」

「はい!!」


それに加えて、現場に駆け付けたアカツキからデスティニーに『ゼウスシルエット』が渡され、デスティニーは『ゼウス・デスティニー』へと進化を遂げていた。
尚、ゼウスシルエットをデスティニーに譲渡したアカツキには宇宙戦用のバックパックである『シラヌイ』が別途搭載され、同時に本体のヤタノカガミのビーム反射機構も復活していた。
バックパックの換装によるエネルギーの補填が原因なのだろうが、詳細は不明である。


「ルナ……露払いは任せる!!」

「任されたわ……アンタは驕れる葬送歌に、神の一撃をくらわしてやりなさい!!」

「あぁ、勿論その心算だ!!」


最強クラスの装備を手に入れ、殲滅兵器と化したデスティニーとインパルスは、ファウンデーションの最悪の大量破壊兵器『レクイエム』の破壊に向かうのだった。











機動戦士ガンダムSEED INFINITY PHASE114
『進化する翼~Evolution Freedom~』











その一方で、アスランとロランはタオ兄弟を相手に戦っていた。
だが此の戦闘はあくまでもイチカとキラが戦闘可能になるまでの時間稼ぎなので、アスランもロランも攻めるよりも護る事を重視し、カルラとアニマが機能停止状態のキャリバーンフリーダムとストライクフリーダムに向かわせないようにしていた。
付かず離れず、退いたと思ったら出て来て、出て来たと思ったら退く……其の戦い方にタオ兄弟は翻弄され、∞ジャスティスとイージスセイバーを撃破する事が出来ていなかった。
無論思考を読んで次の行動に対処しようとはしたのだが、アスランの思考は『ギリギリまで引き付けて躱すと見せかけてカウンター……と思わせて距離を取ると思わせてインファイト、と見せてゼロ距離射撃etc……etc……』と思考が多岐にわたって枝分かれし、ロランの思考は『今宵は正に劇の最終幕!その最終幕は主人公が最大の敵を倒した末の大団円以外に有り得ない!ならば私は主役が最高に輝けるように努めるまで!』と要領を得ない思考だったのでマッタク役に立たなかったのだ。
加えてアスランとロランの思考が『撃破ではなく時間稼ぎ』が基本になっている事もタオ兄弟には疑問だった――フリーダムもキャリバーンも戦闘不能状態となり、仮にエンジンが稼働可能なレベルにまで冷却されたとしても直ぐに全力で機体を動かす事は不可能である事を考えれば時間を稼ぐ意味が分からないのである。


「兄さんの敵は私の敵!!アスラン、ロラン、私も混ぜろぉ!!」

「マドカ!?」

「おやおや、此処で主人公の妹君の参戦とは、ますます最終決戦のクライマックスに向けた戦いに相応しい展開になって来たじゃないか!!
 だがマドカ、あくまでも彼等を撃破するのはイチカとキラ……私達は彼等の準備が整うまでの前座に過ぎないと言う事を忘れないでくれたまえよ?」

「無論だ!だが、奴等には恐怖を与えてやる……私の思考を読めるなら読んでみるが良い!!」


更に此処でマドカが乱入して来た。
機体こそ核エンジン搭載型ではないが、Zストライクはコズミックイラに於けるモビルスーツの最高傑作とも言えるストライクのアッパーバージョンであり、其処に嘗てのマドカの愛機であるテスタメントの武装を搭載しており、中~近距離では滅法強い機体なのだ。
そしてマドカのモビルスーツパイロットの腕前はアスランが『ザフトなら赤服確定だな』と太鼓判を押すほどであり、特に特殊兵装の運用に関してはトップクラスなのである。
そんなマドカが乱入して来たら、タオ兄弟は更に分が悪くなってしまう――既に押され気味だったところに数で上回れてしまったのだから当然と言えば当然だが……


「思考を読む……いや、コイツを操る事が出来れば……ゾルガ!!」

「あぁ……闇に落ちろ!!」


だがタオ兄弟はマドカの思考を読む事はせず、精神を操る方を選択した。
マドカを操ってアスランとロランに向かわせれば同士討ちを狙う事が可能になり、最悪でもどちらか一機はマドカに対処せざるを得なくなり、そうなればオルフェとゾルガの何方かはフリーダムとキャリバーンに向かう事が可能となり、イチカとキラを仕留める事が出来ると考えたのだ。

だが――


『貴様等、私の妹の心に土足で踏み入ろうとは……命が惜しくないようだな?』

『キシャァァァァァァァァ!!』


「「!!?」」


精神感応を試みたタオ兄弟の前にはレディースのスーツをキッチリと着込んで日本刀を手にしたマドカそっくりの成人女性と、首が3本の金色のドラゴンが現れてタオ兄弟を威嚇して来た。
三つ首のドラゴンの迫力は言うまでもないが、其れ以上に女性の眼光の鋭さにタオ兄弟は完全に圧倒されてしまった――と同時に理解できてしまった、この女性が生身でも刀一本でモビルスーツを破壊する事が可能であると言う事を。
このまま強引に精神感応を行おうとすれば目の前の女性に斬り捨てられ、よしんば女性をなんとか突破したとしても三つ首のドラゴンのブレスに焼かれて精神的に殺されるのは目に見えているので大人しく精神感応を止めるしかなかった。
世界最強は次元を超えても最強であったらしい。


そんな中――


「キラ!」

「イチカ!!」

「ラクス!!」

「カタナ!!」


ラクスが乗るプラウドディフェンダーと、カタナの乗るタイラントオフェンサーがフリーダムとキャリバーンが不時着した小惑星までやって来た。


「「ドッキングを!!」」

「「了解!!」」


フリーダムとキャリバーンはドッキングの為にバックパックをパージして宇宙空間に機体を浮かべる。
まだエンジンの冷却が終わっていない機体では、これが精一杯なのだ。


「フリーダムとキャリバーン……姿を現したか!!
 一斉攻撃じゃ!キラ・ヤマトとイチカ・オリムラを血祭りにあげろぉ!!」


それをモニターで確認したアウラは全軍に対してフリーダムとキャリバーンへの集中攻撃を命令し、その命令を受けたファウンデーション軍とクーデター軍はモビルスーツと戦艦の火力を全てフリーダムとキャリバーンに向けて発射する。
たった二機のモビルスーツに対して明らかにオーバーキルな攻撃は喰らえは跡形もなく吹き飛んでしまうだろう。

だが其の攻撃が届くよりも先にフリーダムはプラウドディフェンダーと、キャリバーンはタイラントオフェンサーとのドッキングに成功した。
そしてドッキングに成功した直後、オーバーヒート状態だったエンジンは急速に冷却されてフルパワーでの稼働が可能になり、オーバーヒート状態になった事で消費してしまったエネルギーも完全回復していた。
これによりフリーダムはPS装甲がアクティブ状態になり、キャリバーンはシェルユニットがその輝きを取り戻していた。

ドッキングが完了した次の瞬間に圧倒的な、いっそ暴力的な火力がフリーダムとキャリバーンに降り注ぎ、二機を中心に爆炎が舞い上がる。
普通ならばフリーダムとキャリバーンは粉々に消し飛んでしまうところだが――


「ふ……此処からが真のクライマックスさ!!」

「主人公のお出ましだな。」


爆炎が晴れた其処にはノーダメージのフリーダムとキャリバーンの姿があった。
そしてフリーダムはプラウドディフェンダーと、キャリバーンはタイラントオフェンサーとドッキングした事で新たな姿となっていた。
フリーダムもキャリバーンも純白と金色の翼を展開し、フリーダムには日本刀型の対艦刀が一振り、キャリバーンには日本刀型の対艦刀が二振り装備されている。
此れこそがストライクフリーダムの最終形態とも言える『マイティストライクフリーダム』と、キャリバーンフリーダムの最終形態とも言える『エクスキャリバーンフリーダム』だった。

此の二機の周囲には金色と桜色の粒子が球状に展開され、その粒子が戦艦やモビルスーツからの攻撃を完全にシャットアウトしていた。
此れはマイティストライクフリーダムが散布した粒子だが、それだけでなくエクスキャリバーンはウィングの金色の部分はエスカッシャンとなっており、其れを展開して本体のエスカッシャンと共にエネルギーフィールドを展開して更に強固な防御壁を展開していたのだ。
更にエクスキャリバーンのウィングのブラック部分はシェルユニットになっており、本体のシェルユニットと同様の輝きを放っているだけでなく、その光はスコア6の青からスコア8の白へと変わっていた。

ドッキング後、カタナとラクスは夫々キャリバーンとフリーダムの肩に乗っていたのだが、ドッキング後は夫々のコックピットに移動し、並列された複座式のシートに其の身を預けていた。


「えっと……凄いねそのパイロットスーツ?」

「何処を見ていますのキラ?……ふふ、エッチですわね💖」

「~~//////」

「マッタク、最高のタイミングで来てくれたぜ!」

「貴方が私を必要としている事が分かったのよ……以心伝心って奴ね♪」


コックピットでは恋人同士が暫しの戯れを交わしていたが、そんな事は関係なくファウンデーションとクーデター部隊からの攻撃は行われ、マイティストライクフリーダムとエクスキャリバーンを狙った攻撃が放たれて来た。


「キラ、私に波長を合わせて下さい。」

「イチカ、私に合わせて。」

「分かった!」

「任せろ!!」


――バシュゥゥゥ!!


其の攻撃に対して、カタナとラクスはアコードとしての能力を最大限に発揮してカタナはイチカと、ラクスはキラと波長を合わせるとマルチロックオンで敵機とミサイルをロックオンする――其の数は5000をゆうに超えていた。
そして次の瞬間にはマイティストライクフリーダムの翼から強烈な電撃が放たれてロックオンした全てのターゲットが戦闘不能となっていた――だけでなく、エクスキャリバーンが翼の金色の部分をエスカッシャンとして射出し、本体のエスカッシャンと合わせて計二十一基のエスカッシャンを展開して広域ビーム攻撃を放ち、同じくロックオンした敵機を全て戦闘不能にしていた。
更にエクスキャリバーンの翼から射出されたエスカッシャンにはビーム砲が一基につき五門搭載されているので合計で五十門のビーム砲を放つ事が可能であり、ビーム砲の角度をそれぞれ変える事が出来るので、面の制圧を超えた空間の制圧を可能にしていた。
また、マイティフリーダムの広域電撃攻撃は、攻撃を受けた相手の電子系統をショートさせて強制的にシステムダウンさせる事が可能である上に、ビームとは異なり点の貫通力ではなく空間の制圧力で敵機を行動不能に陥らせる事が可能となっていた。


「コンパス総裁ラクス・クライン、ディスラプターの使用を承認します。」

「承認確認。ディスラプター、出力80%で使用します。」

「喰らいやがれってな!!」

「吹き飛びなさいな!!」


それでもまだファウンデーションとクーデター部隊の戦艦やモビルスーツは多数存在しており、それに対してラクスはコンパスの総裁として『ディスラプターの使用を承認』すると、マイティストライクフリーダムとエクスキャリバーンのブレードアンテナの基部にある赤い部分が展開して其処から極細のビームが薙ぎ払うように放たれ、射線上にある全てのモノを切り裂き破壊した。
ディスラプターは初代フリーダムのバラエーナーの数倍の出力を持つビームを集束させた超破壊力のビームであり、ビームに対して高い防御力を持つフェムテク装甲やビームを反射するヤタノカガミであっても簡単に貫通する事が可能となっていた。


「取り敢えず……まだ戦うってんなら相手にはなってやるが……喧嘩売る相手間違えてるよアンタ等。カタナ!!」

「えぇ……行くわよ!!」

「「パーメットスコア、リミットオーバー!!」」


此処でエクスキャリバーンがパーメットスコアを更に上げ、シェルユニットが虹色の輝きを放ち、神秘的な印象を与える。


「喰らえや……!!」

「データストーム根性焼きぃ♪」


此れによりパーメットスコアフィールド内に存在している全ての機体に干渉が可能となり、イチカとカタナは干渉可能になった機体のパイロットやクルーに対して強制的にデータストームを送り込んで脳を焼き切って絶命させた……最早直接戦わずとも相手を戦闘不能に出来るとなれば反則以外のナニモノでもないだろう。


「なんだ……アレは……!!」

「二機のフリーダムが、真の力を開放したと言う事か……!!」


マイティストライクフリーダムとエクスキャリバーンの登場は、タオ兄弟にも衝撃を与えていた。
ブラックナイトは全機にキャリバーンとエアリアルがスコア6発動時に使用出来る機体操作の奪取能力を無効にする機能を備えているので機体を乗っ取られる事はなかったのだが、だからこそ此の二機がドレだけ脅威な存在である事も分かってしまった。
そして、自分達は此れまで力を制限されていたイチカとキラと戦っていたと言う事も。


「さてと、そんじゃあ終わらせるとしようぜキラ?」

「そうだね、此の戦いは此処で終わらせる!!」


エクスキャリバーンはバックパックに搭載された二振りの日本刀型の対艦刀『ユキヒラ参式』と『セツゲッカ』を抜いてアニマに向け、マイティストライクフリーダムもバックパックに搭載された一振りの日本刀型の対艦刀『フツノミタマ』を抜き、腰部のサイドアーマーから『シュペールラケルタビームサーベル』を連結状態で展開してカルラに向ける。


「来いよ優秀種。俺とキラを倒して、その優秀さを証明してみせな……ま、無理な話だろうがな!!」

「遺伝子の優劣で世界は決まらない!大事なのは自分がどう生きたいか、其の為に何をするかなんだ!」

「世界は人を超える存在によって統治されるべきであり、其の存在がアコードなのだ!」

「我等が存在する事でこそ世界は恒久平和を手に入れる事が出来る……それが分からないのか貴様等には!!」

「用意されたレールの上を進むだけの平和な世界なんぞ真っ平ご免じゃボケェ!人生ってのは予想外の刺激があるからこそ面白いんだよ!!」


それに対してアニマとカルラも対艦刀を展開して戦闘態勢に入り――次の瞬間にはエクスキャリバーンはアニマと、マイティストライクフリーダムはカルラと鍔迫り合い状態となり、今此処に此の戦いの頂上決戦の火蓋が斬って落とされたのだった……!!










 To Be Continued