ファウンデーションの攻撃によって絶体絶命のピンチを迎えたキャリバーンとフリーダムだったが、すんでのところで駆けつけたカタナとラクス――タイラントオフェンサーとプラウドディフェンダーとドッキングしてキャリバーンはエクスキャリバーンフリーダムとなり、ストライクフリーダムはマイティストライクフリーダムとなってファウンデーションとクーデターの部隊を圧倒していた。


「アレが兄さんの機体の最強形態か……そして其れはキラも同じか。
 なれば、私達があの雑魚共と戯れる理由もない……ククク……真の力を開放した兄さんとキラを相手に、自称優秀種が何処まで食らいつけるかは見物であるかもしれんがな!!」

「基礎設計はタバネ博士が行っただけあって凄まじい性能だ。
 彼女の設計図を元に見事に完成させたコンパスの開発陣も凄いと思うのだが……これが設計だけでなく制作までタバネ博士が行ったら、性能は更にトンデモナイモノになっていたかもしれないねぇ?」

「其れは……否定出来ないな。」


タオ兄弟と交戦中だったマドカ、アスラン、ロランはタオ兄弟との戦闘から離脱し、ファウンデーションとクーデターの部隊の制圧に向かって行った。
先のフリーダムとキャリバーンの空間殲滅攻撃によって既に勝敗は決したと言える状況であり、デュランダルはクーデター部隊とファウンデーションの部隊に対して降伏勧告を行い投降するように言ったのだが、クーデター部隊もファウンデーションの部隊も其れを聞き入れず、結果として戦闘は継続される事になったのだ。
故にデュランダルはザフトクーデター鎮圧部隊に『クーデター部隊を殲滅せよ。可能ならばテロ支援国家であるファウンデーションも討て』との命令を下すに至ったのである。
クーデターは成功すれば革命だが、失敗したらタダの国家転覆を目論んだテロリストであり、現在の状況を考えるとクーデターは失敗に終わったと言えるのでクーデター部隊はテロリストであり、それと共に戦うファウンデーションはテロ支援国家扱いされても致し方ないだろう。


「まさか貴女ほどの頭脳の持ち主がイチカ君とキラ君の力を見誤ってしまうとはな。
 いや、違うか……自分の作品に酔いしれて、其れが最上であると信じてしまった。信じなければならなかったからこそスーパーコーディネーターも、モザイカの成功例も認められなかった、認めたくなかったと言う事か……その気持ちは分からなくもないが、哀れだね。
 そして彼女もまた黙ってはいまい……我が友たるウサギがきっと君の所に現れるだろう――其の時、君は如何するかなアウラ女史?」


デュランダルは誰に言うでもなくこんな事を呟くと、此の戦闘を終わらせるべく戦闘部隊に更に詳細な指示を送るのだった。











機動戦士ガンダムSEED INFINITY PHASE115
『最終決戦Ⅰ~Ichika&Katana vs ???~』











キャリバーンはアニマと、フリーダムはカルラと交戦状態になったのだが、其の戦闘は先刻のモノとは大きく異なっていた。
タイラントオフェンサーとドッキングしたキャリバーンと、プラウドディフェンダーとドッキングしたフリーダムは本体性能もアップデートされ、駆動系が現在のイチカとキラの操縦技術に対応出来るモノとなっていた。
その結果、最新の機体であるブラックナイトスコードカルラとアニマに対して互角以上に渡り合えるようになっていた。


「さぁて、私のエスカッシャン操作についてこれるかしらアグネスちゃん?」


更にキャリバーンはエスカッシャンの操作をカタナが行う事で、イチカはキャリバーン本体の操縦に集中する事が出来るようになり、キャリバーン本体とエスカッシャンによる波状攻撃はより精度が上がっていた。
それに対しアニマもドラグーン操作をアグネスが行う事でゾルガはアニマ本体の操縦に集中出来ていたのだが、カタナとアグネスではドラグーン操作の精度に大きな差がある上に、エクスキャリバーンとなった事でキャリバーンのエスカッシャンは合計二十一基となりアニマのドラグーンの数の倍以上となっていた事もあり完全に空間を制圧されていた。


「く……操作が追い付かない……私は貴女よりも上の筈なのに!!」


それに加えて、此処に来てブラックナイトスがアコード専用に開発された機体である弊害が出て来ていた。
理論上ではスーパーコーディネーターをも超える能力を持ったアコード達が操縦する事を前提に設計されたブラックナイトスは、其れこそ先の大戦で最強の名を欲しいままにしたストライクフリーダムやキャリバーンフリーダムをも超える性能が備わっているのだが、其れだけのハイスペック機を果たして少し優秀な程度の普通のコーディネーターであるアグネスに使いこなす事が出来るだろうか?

答えは否だ。
曲がりなりにもザフトの赤を取ったアグネスは間違いなくザフト軍の中でも優秀な兵士であったのだが、ザフトの赤と言ってもピンキリであり、アグネスはミネルバ隊に配属されなかった事を考えると最高評議会からの評価は『中堅クラス』だった事になるので、その中堅クラスがアコード専用の機体をドラグーンのみとは言え使いこなすのは到底不可能なのだ。


「く……ビット兵器を使いながら近接戦闘とか正気かイチカ・オリムラ!下手をしたらビット兵器が誤爆するぞ!!」

「そりゃ普通なら、だろ?
 生憎とカタナは俺と将棋指しながらスマホでテトリスやった上で晩飯のメニュー考える事が出来るんだ……二十一基のエスカッシャンの操作をしながらお前だけを精密に狙うなんてのは朝飯前の昼飯で、中ボス前のラスボスなんだよぉ!!」

「意味が分からん!!」

「中ボス前のラスボスに関してはロランス少尉でggrks!!」


そしてイチカは『近接戦闘ではビット兵器は使えない』と言う従来の常識を覆してアニマに対してユキヒラ参式とセツゲッカの二刀流でアニマを攻撃し、其処にエスカッシャンでの援護射撃を行い戦闘を優位に進めていた。
これはエスカッシャンの操作をカタナが行っているからこそ可能な事なのだが、アコードとして覚醒したカタナのエスカッシャンの操縦はミリ単位での正確さでアニマを攻撃し、同時にアニマのドラグーンにも対応して其の動きを見切りアニマのドラグーンをアッと言う間に全機破壊してしまった。

こうなれば圧倒的にアニマが不利になるのだが、それでもアニマは基本性能の高さでキャリバーンと渡り合っていたのだが、ドラグーンを失った事でキャリバーンの空間立体攻撃に対応する事が出来ずエスカッシャンからの攻撃に被弾するようになっていた。
それでもビームを無効にするフェムテク装甲なのでダメージは皆無だったのだが……


「至近距離で喰らってみるか?」

「!!しまっ……!!」


此処でキャリバーンがバリアブルロッドライフルを至近距離で展開してほぼ密着状態から極大のビームを発射して来た。
アニマは其れをギリギリで避けてコックピットへの直撃は避けたモノの、完全に避け切る事は出来ず、バックパックのウィングがビームの直撃を受けて粉々に吹き飛んでしまった。
此の局面で機動力の低下は実にありがたくないだろう。


「なんだ、これは……先ほどまでとはまるで違う……これがイチカ・オリムラの真の力だと言うのか!?」


エクスキャリバーンとなった事で其の動きは先程までよりも洗練されたモノとなり、ゾルガは自身の能力をフル稼働しても対応する事が出来ない事に驚いていた――と同時に理解出来てしまった、エクスキャリバーンとなる前は何とか戦えていたのは機体がイチカの操縦について来れていなかったからだと。
そんな状態でも猛攻を続けていたキャリバーンが、今は完全にイチカの操縦技術に対応出来るようになった上に、エスカッシャンの操作はカタナが行っている事で圧倒的な攻撃が可能となっているのだからゾルガは正に絶体絶命の状況と言えるだろう。
加えてキャリバーンはパーメットスコア8を超えたパーメットスコア10(仮)に至った事により、パーメットフィールドが半径1kmと超広範囲となり、機体のコントロール奪取能力は数万㎞先の機体にも及ぶようになっており、パーメットフィールド内に存在しているアニマはコントロールの奪取こそされていないモノの、外部干渉によって僅かに動きが鈍くなっていた……此れで勝てと言うのは可成りの無理難題と言えるだろう。


「だが、それでも私は貴様を倒し、アコードとしての役割を果たす!!」

「この期に及んでもまだか……ったく、お前等には少し同情するぜ?
 もしもカタナやラクスみたいに育ての親が真面だったらアコードとしての力を正しく使って世界をいい方向に導いていたのかもしれないが……野心に満ち溢れたロリババアに育てられて事でそんな風になっちまったんだからな。
 だからと言って慈悲を与える気はマッタクないけどよ!」

「終わりにするわ!!」


キャリバーンのシェルユニットが輝きを増し、ツインアイがグリーンからレッドへと変わる。
次の瞬間、キャリバーンはバリアブルロッドライフルをアニマに投げつけ、其れをエスカッシャンで撃ち抜いて爆発させてダメージを与える――とは言ってもこの程度の爆発ならばフェムテク装甲には大したダメージにはならないのだが、爆炎に紛れてキャリバーンが接近しユキヒラ参式を振り下ろしてきた。

アニマはその斬撃を辛くも躱すが、キャリバーンはセツゲッカを握った左腕を大きく後ろへと引き絞っており……


「牙突零式!!」


其処から強烈な突きが放たれた!
コックピットへの直撃こそしなかったモノの、此の一撃を受けた左腕は肩から吹き飛び、更に生じた衝撃波で頭部のカメラアイも損傷してしまった。
更に続けざまにエスカッシャンのビーム攻撃で腕と足の関節――フェムテク装甲でない場所を撃ち抜かれて四肢を捥がれてアニマはダルマになってしまったのだった。
こうなってはもう戦闘継続は不可能だが、だからと言ってイチカもカタナも此れで終わらせる心算は毛頭なかった。


「悪いが俺もカタナも敵対する相手を生かしておいてやるほどお人好しじゃないんでな……覚悟は良いか?」

「貴方の事を殺す代わりに、貴方の事は私が生きてる限りはずっと覚えておいてあげるわ……それが命を奪う者の責務ですからね。」

「あばよゾルガ……来世では、親に恵まれると良いな。」


キャリバーンはダルマになったアニマのコックピットをユキヒラ参式とセツゲッカで切り裂き、此の一撃を受けてゾルガは絶命した。
となれば当然アグネスも絶命したと思うだろうが、アグネスはアニマが戦闘不能なった時点で緊急脱出装置を作動させてアニマのコックピットから脱出しており無事だったのだ。
このあたりの立ち回りの巧さは見事なモノと言えるだろうが、其れでもイチカとカタナから逃げ切る事は不可能だろう。


「何処に行くんだぁアグネスゥ?」

「ひぃ!?」


アグネスはアニマの爆発によって生じた爆炎に紛れて逃げる心算だったのだが、逃げる前にキャリバーンに捕まってしまった――人間の力でモビルスーツに対抗する事は不可能なので、アグネスが逃げる事は出来ないだろう。


「自分が選ばれたモノだと勘違いして人様の彼氏を略奪するだけなら未だしも、裏切ったってのは見過ごす事は出来ねぇんだよなぁ?
 優秀なお前なら分かるよなアグネス?過去を紐解いた場合、裏切り者がどんな末路を辿ったのか……」

「裏切者の末路は……死……!!」

「正解よ♪……それじゃあ、これでお別れよアグネスちゃん!!」

「「データストーム根性焼きMAX!!」」


此処でイチカとカタナはアグネスにパーメットスコア10に至った事でより濃密になったデータストームをアグネスに叩きつけた!
そのデータストームは凡そ普通のコーディネーターでは処理出来るモノではないのだが、アグネスは半ば優秀だっただけに即死する事はなく、逆にその苦しみが長引き、脳が焼かれる苦痛を味わい、そして目と耳と鼻から血を吹き出して絶命したのだった。


「ラクス……僕に力を貸してくれる?」

「当然ですわキラ……私だけでなく、フレイも一緒ですわよ。」

「そうだったね……すべて終わらせて帰ろう。皆の所に。」


イチカがゾルガとの戦闘に入った頃に時を戻すと、フリーダムは対艦刀『フツノミタマ』を右手に、左手に連結状態で展開したシュペールラケルタを装備してカルラと対峙する。


「明日を選ぶことが出来ない世界なんて僕はごめんだ。
 だから、明日を得る為に僕は君を討つ!!」

「やってみろ、キラ・ヤマト!!」


そして今此処に、コンパス最強とファウンデーション最強の戦いが幕を開けるのだった――










 To Be Continued