シンがアコード達と戦っていた頃、イチカとキラはタオ兄弟との戦闘を繰り広げていた。
二対二のツーマンセルバトルではなく、イチカvsゾルガ、キラvsオルフェと言った構図ではあるが、此の戦いは此の戦闘における事実上の頂上決戦と言えるだろう――ヤマト隊の隊長と副隊長vsファウンデーションの宰相二人の直接対決となれば、勝利した側が戦力的にも精神的にも大きなアドバンテージを得る事になるのだから。
「ぶっ飛びやがれぇ!!」
「此れで!!」
先ずはキャリバーンフリーダムがバリアブルロッドライフルを、ストライクフリーダムが腹部のカリドゥス複相ビーム砲を放つ――戦艦の艦首陽電子砲にも匹敵する現時点でモビルスーツが搭載出来る最強のビーム兵器ならば、ビームを無効にするフェムテク装甲をも撃ち抜けるので、此の攻撃は悪くないだろう。
「其の程度……!!」
「我等には通じぬ!!」
それに対し、ルドラとアニマは背部のユニットからドラグーンを射出してドラグーンシールドを展開しようとするが、それよりも僅かに早くストライクフリーダムがドラグーンを、キャリバーンフリーダムがエスカッシャンを射出して多角的攻撃を仕掛ける。
だが、其の攻撃すらも後出しのドラグーンシールドで防いでしまったのだからブラックナイトの中でも最高性能のルドラとアニマの性能はぶっ飛んでいるのだろう間違いなく。
「オォォラァァァ!!」
「むぅ!!」
ルドラとアニマはドラグーンシールドで多角的攻撃を防いだが、其の直後にアニマにキャリバーンが肉薄して対艦刀バルムンクを振り下ろして来た。
「アグネス……俺達を裏切った代償は重いぜ?
お前の抹殺はコンパスの総意で全会一致だ……俺達を裏切った事を精々後悔して地獄に落ちやがれ!!!」
「自分以外の誰かを支配する事で実現される平和なんて、僕は認めない!!」
それをアニマはガードするが、間髪入れずにキャリバーンフリーダムの前蹴りが炸裂してアニマを吹き飛ばし、ストライクフリーダムもルドラに接近して逆手の逆袈裟を繰り出し、それがガードされると強烈な横蹴りでルドラを吹き飛ばして見せた。
「来いよ優秀種。その優秀な遺伝子とやらで俺達を圧倒してみせな……お前になら出来るかもしれないぜ?」
「君達を倒して、僕達は明日を掴み取る……誰かに決められたレールの上にある明日じゃない明日を!!」
双方ともにBT兵装を有している此の戦いは、ナチュラルはおろかコーディネーターであっても戦局を把握する事が難しい、正に頂上決戦となって行くのであった――
機動戦士ガンダムSEED INFINITY PHASE113
『決戦・最強対究極~Stärkster vs. Ultimativer~』
コズミックイラにおけるBT兵装と言えば、先ずは連合が開発した有線式のガンバレル、そしてザフトが開発したドラグーンなのだが、同じくザフトが開発したキャリバーンフリーダムとエアリアルジャスティスに搭載されているBT兵装『エスカッシャン』にはドラグーンにはない利点が存在していた。
其れは重力下でも使用可能であると言う事、合体して巨大な実体シールドになる事、そしてBT状態でもエスカッシャン其の物にエネルギーシールドが展開出来ると言う点だ――其れだけ聞くと超万能型の兵装に聞こえるが、開発コストが馬鹿にならなかったので、試作型がキャリバーンフリーダムとエアリアルジャスティスに搭載されたのみで正式採用には至っていなかったのだ。
「オォォラァァァ!!」
ブラックナイトコードアニマ(以降アニマと表記)のドラグーン攻撃を超人的な操縦技術で回避したキャリバーンフリーダムはバルムンクで斬りかかる。
クルーゼやマドカ、更に前世の記憶にあるセシリアと、イチカはビット兵器との戦闘の経験が膨大であり、ビット兵器の基本的な戦術は分り切っているのでその対応策も充分に出来ていた――其れが近接戦闘だ。
ビット兵器の最大の利点はオールレンジ攻撃だが、それが生かせるのはあくまでも中距離以上であり、近接戦闘においては其の力を発揮する事は出来ないのである。
近接戦闘においてはビット兵器によるオールレンジ攻撃は自機を誤射してしまう可能性があるので積極的に使えないのだ。
「カタナからアコードの事は聞いたぜ……スーパーコーディネーターをも超える人間らしいなお前達は。」
「そうだ。我等は母上によって生み出された上位の人間……貴様よりもより上位の存在だと言う事だイチカ・オリムラ!!!」
「俺やキラの後発ってなるとそうなんだろうが……それが如何したぁ!!
いくら俺達よりも上位の存在だからって、実戦経験皆無のお坊ちゃまにやられてやるほど俺もキラも間抜けじゃねぇ!!
――バシュゥゥゥゥン!!
此処でイチカはSEEDを発動し、更に苛烈にアニマを攻め立てる。
それに対してアニマもビームソードでバルムンクの斬撃に対応していく。
その一方でキラはカルラを相手にして少しばかり苦戦していた。
ストライクフリーダムはドラグーンを使った空間制圧+圧倒的な火力による面での制圧を得意としているのだが、カルラもまたドラグーンを搭載しており、しかもドラグーンの数がストライクフリーダムが八基なのに対し、カルラは十基と上回っているのだ。
更にカルラのドラグーンはイングリットが操縦しており、オルフェは本体の操作に集中できるので、本体操作とドラグーンの操作の両方を一人で行わなければならないキラの方が不利だったのだ。
其れはイチカの方も同じなのだが、アニマのドラグーンの操作を行っているのはアグネスであり、アニマのドラグーンは操縦者の空間認識能力に依存しないモノではあるのだが、アニマは全ての性能がアコードが操作する事を前提に作られていたので、通常のコーディネーターであるアグネスでは操作する事で精一杯で、其の性能を発揮出来ていなかったのだ。
状況的には不利なキラだが、それでも持ち前の超人的な操縦技術でなんとかカルラとギリギリの勝負を続けていた。
「キラ・ヤマト、所詮はアコードの成り損ないに過ぎない貴様に我等を倒す事は出来ぬ!!」
「遺伝子的にはそうかもしれないけど、僕には君達には無い武器がある!」
「なんだと?」
「ラクスとフレイの愛だ!!」
――バシュゥゥゥン!!
此処でキラもSEEDを発動し、ドラグーンフルバーストを敢行する。
しかしカルラは其れを防ぎ、カウンターのドラグーン攻撃でストライクフリーダムのドラグーンを五機破壊し、更に腹部のカリドゥス複相ビーム砲をも破損させて使用不能にする――カリドゥスを破損させた攻撃は本来ならばコックピットを狙っていたのだが、コックピットへの直撃を避けてカリドゥスを犠牲にしたキラの判断は妥当と言えるだろう。
だがドラグーンの数が半分以下になり、機体の最大火力を失ってしまったのは痛いと言わざるを得ない。
防御に関しては三基のドラグーンによるドラグーンシールドと、両腕部のビームシールドがあるので問題ないのだが、攻撃に関してはドラグーンによる多角的攻撃が行えなくなり、ドラグーンフルバーストも使用出来なくなってしまったので大幅に低下したと言えるだろう。
「かつて最強と言われたフリーダムも今では此の程度か!!」
「ぐぅ……!!!」
加えて問題になったのがフリーダムの性能だ。
コックピットは全天周モニターとなり、旧ストライクフリーダムの問題点も解消され、エンジンも最新型の核エンジンに交換されているのだが、駆動系等に関しては二年前のままであり、二年前よりも向上しているキラの操縦技術に機体の方が付いて行けなくなり、その結果として核エンジンの回転数が100%を超える事態となり、コックピットにはエネルギー低下を告知するアラームが鳴り響いていた。
そして其れはキャリバーンフリーダムも同様だった。
キラと違い攻勢に出ているイチカだったが、攻める場合でもイチカの超人的かつ変態的な操縦は駆動系が二年前のままのキャリバーンフリーダムに相当の負荷をかけており、それに対応する為にエンジンはフル稼働状態となり、オーバーヒート寸前になっていた。
「根性見せろキャリバーン!倒すべき相手を前にへこたれてなんぞいられないだろうがぁ!!」
「く……まだいける!!」
イチカは攻勢を強め、キラは全力で回避行動を行うモノの、だからこそ余計にエンジンへの負荷は大きくなり――
――シュゥゥゥン……
フリーダムのPS装甲がダウンしてエンジンが停止し、キャリバーンもシェルユニットが輝きを失ってエンジンが停止してしまった――オーバーヒートしたエンジンを冷却する為の安全装置が働き、エンジンを強制停止させたのだ。
機体を保護すると言う意味では此れは当然と言えるのだが戦場で動きを止めると言う事は、其れ即ち死と同義。
戦場では『コンマ0秒の判断が生死を分ける』とも、『戦場で確実に相手の動きが五秒止まったのならば殺す事が出来る』とも言われているので、エンジンが強制停止して動けなくなったフリーダムとキャリバーンは格好の的と言えるだろう。
そしてフリーダムとキャリバーンが強制停止して不時着したのは奇しくも同じ小惑星であり、其処ではシュラのブラックナイトコードス・シヴァがフリーダムとキャリバーンに向かって短針砲を展開していた。
PS装甲が起動していれば物理攻撃である短針砲による攻撃を耐える事は可能だが、PS装甲がダウンしたストライクフリーダムでは耐える事は出来ず、そもそもPS装甲が搭載されていないキャリバーンは尚更だ。
「アレで串刺しにされたら流石に死ぬよなぁ……これは人生で七番目位のピーンチ!!」
「此れで七番目って、一番はなんなの?」
「四年前のヘリオポリスでのザフトのMS強奪事件だなぁ。
たまたまビャクシキがあったおかげでなんとかなったけど、ビャクシキが無かったら多分俺は死んでた――そんでもって今も大ピンチだが……待ってたぜ最強の親友と悪友よ!!」
シヴァからの短針砲が発射された瞬間、フリーダムとキャリバーンの前に何かが躍り出て、シヴァの短針砲を其の身で受けていた。
それはアスランとロランのズゴックだ。
セカンドシリーズのアビスをベースに量産型の水陸両用機として開発されたズゴックは、PS装甲こそ搭載されていないモノの、機体装甲がザクの二倍の厚みがあるので防御力も高いのだが、短針砲の集中砲火に完全に耐える事は出来ず、装甲の一部が剥がれ落ち、頭部に至っては半分が吹き飛んでしまっていたのだ。
――ギュン!!
だが、二機のズゴックの破損した頭部の奥で緑色の光が激しく光ったと思たら、次の瞬間にズゴックは爆発し、アスラン機からは∞ジャスティスが現れて新型のリフターを背に装備し、ロラン機からはイージスセイバーが其の姿を現した。
ズゴックは∞ジャスティスとイージスセイバーの正体を隠すための外装甲に過ぎなかったのである。
「今宵は劇の最終幕。
其の最終幕にて主人公が窮地に陥るは王道の展開!そしてその窮地を最強の友が救うもまた王道!更に其処からの逆転大団円こそが王道中の王道!
其の王道を成す為に、私達がすべき事は……ラスボス以外の敵を排除する事!そうだろうアスラン……嗚呼、助演女優として此の大役を見事に演じ切って見せようじゃないか!!
アスラン、君も助演男優としてその役目を全うしたまえよ?」
「俺達が助演役者って事は主演はキラとイチカか……だがロラン、一つだけ王道を忘れてるぞ?」
「と言うと?」
「主人公の窮地に駆けつけるのは最強の友だけでなく、主人公を強化する力を持った最強のヒロインだって事さ!!」
「確かに、その通りだね!!」
正体を現した∞ジャスティスはビームサーベルを連結状態で展開し、イージスセイバーも両腕部のビームサーベルを展開してシヴァに斬りかかって行く。
ロランはザフトのエースであり、アスランはオーブのスーパーエースであり、コンパスではイチカ、キラと並ぶトップ3のパイロットなので、此の二人を同時に相手にするのは可成り無理があるだろう。
「ロランツィーネ・ローランディフィルネィの動きには対応出来る……ならば思考を読むべき相手はアスラン・ザラ!」
しかしスーパーコーディネーターをも超える遺伝子を持つアコードであるシュラにとってはロランは思考を読まずとも対応出来る相手であり、自身が最強と認めるアスランに集中しようと思考を読もうとする。
そして其れは成功し、アスランの思考を読む事には成功した。
「見えた!!」
「……矢張り使えないな其の能力は。」
だが、シュラが読んだ思考とは異なる動きを∞ジャスティスはして見せたのだ。
此れにはシュラも驚く事になったのだが、そのカラクリは直ぐに明らかになった。
「リモート操作か!小癪な……!!」
其れは何時の間にか出撃していたカガリのストライクルージュが∞ジャスティスを遠隔操作していたのだ。
アコード達が有する相手の思考を読む能力は脅威であるが、あくまでも思考を読めるのは一人だけなので、このように第三者が遠隔でMSを操作した場合には対応する事が出来ないのだ。
「よそ見をしている暇があるのかい?ザフトの赤を甘く見てもらっては困るね!!」
「く……コーディネーター風情が!!」
其処にイージスセイバーが斬り込み、其の攻撃を避けたシヴァに前蹴りを叩き込んで後退させるとMA形態に変形してフォルティススーパービーム砲とMA形態限定で使用可能となる艦首砲のカリドゥス複相ビーム砲を放つ。
如何にビームを無効にするフェムテク装甲と言えど戦艦のビーム兵器クラスの攻撃を喰らったら無事では済まないので其の攻撃はギリギリで回避したのだが、その先には∞ジャスティスの姿が!
「流石だなアスラン・ザラ……だが、思考を閉ざす事は出来ん!!」
此処でシュラはアスランの思考を読もうとしたのだが……
「…………」
アスランは目を瞑って何かを考えると……
次の瞬間にシュラの脳内に流れて来たのは全裸のカガリとメイリンだった。
しかもご丁寧に少し恥じらいの表情を浮かべた後にキス顔を披露したのだから其の破壊力は凄まじいモノがあると言える……
「き、貴様、戦いの最中になんと破廉恥な!!」
「この程度の妄想で困惑するとは情けないな……精神修業が足りないんじゃないのか?」
思春期の男子顔負けのエロ妄想を瞬時に行って敵を困惑させるアスラン恐るべしであるが、このシュラの困惑は大きな隙を生む結果となり、其の隙を逃す筈がないロランによってシヴァは両足をイージスセイバーのビームサーベルで斬り落とされてしまった――ビームに対して無敵のフェムテク装甲だが、内部フレームには其れが使用されていないので膝関節を狙えば足を斬り落とす事は可能なのである。
最も宇宙空間での戦闘に於いては足は飾りに過ぎない部分があり、寧ろ被弾箇所か減ったと捕らえる事も出来るのだが、元々足がないのならば兎も角として、あった足を失ったとなれば宇宙空間であっても姿勢制御が難しくなるところがあるのは否めない。
更に膝から下の部分に高速移動用のスラスターが搭載されていたので、それを失ったとなれば機動力の低下も免れないのである。
歯牙にもかけていなかったロランによって機体を損壊させられたシュラは焦りを感じていた。
スーパーコーディネーターをも超える優秀な遺伝子を持つアコードである自分達は他の人類よりも遥かに優れた進化した人類で、世界を導く存在だと信じていた……だからこそ、自身が最強と認めたアスランを倒し、己の優秀さを示す必要があった。
無論負ける心算はなく、二対一での状況でもロランは数の内ではないと考えていたのだが、そのロランによって窮地に追い込まれている事が信じられなかったのだ。
「遺伝子でも機体性能でも私の方が上な筈だ……なのに何故!!」
「遺伝子でも機体性能でもない……本当の強さは、生きる意志にこそ宿る!!」
――バシュゥゥゥン!!
半狂乱になって突撃して来たシュラに対し、アスランはSEEDを発動させると、シヴァの右腕を連結ビームサーベルで斬り落とし、更に左腕も脚部のグリフィンビームブレードで斬り落としてダルマにし、トドメは新たに頭部のメインカメラ部に搭載されたビームブレードでコックピットを切り裂き、更に背後からロランがコックピット部にビームサーベルを突き立ててダメ押しだ。
コックピットを切り裂かれて貫かれたシュラは断末魔の悲鳴を上げる事すら出来ず、ビームに焼かれて骨も残さずに此の世から消滅し、シヴァも爆発四散して散ったのだった。
「それではアスラン、今度は彼等の姫君が到着するまで魔王を抑えようとしようじゃないか!!」
「アイツ等が魔王と言うのは少し異を唱えたいところではあるが、ラクスとカタナが到着するまでの時間は稼がないとだな――時に抑えろとの事だったが、別に倒してしまっても構わないんだよな?」
「ふむ……倒してしまってはダメだ!
彼等に引導を渡すのは私達ではなく、あくまでもイチカとキラだ……分不相応な事をしたら手痛いしっぺ返しを食らうと相場が決まって決まっているモノだから私達は己の役目を果たす事に尽力するのが正解さ!!」
「成程な……なら、アニマの方は君に任せるよロラン――死ぬなよ!」
「この寿命が尽きるまでは生きる心算だから私は死なない……まして、実戦経験が皆無なルーキー未満に後れを取る気はサラサラないからね――私と君でイチカとキラの為の最高のウィニングロードを作ってやろうじゃないか!!」
「異議なしだ!!!」
シヴァを撃破したアスランとロランは、アスランがカルラに、ロランがアニマに向かって行き、其処から火花を散らす激しい戦闘に発展していったのだった。
―――――――
同じ頃、ミレニアムのモビルスーツドッグには二人の女性の姿があった。
其れはパイロットスーツに身を包んだカタナとラクスだ。
「ラクス様、そのパイロットスーツ何と言うか凄過ぎないかしら……率直に言ってめちゃめちゃエロいわ。」
「そうでしょうか?」
「其れはもうモビルスーツ用のパイロットスーツじゃなくてタダの全身タイツよ……普通のパイロットスーツだとそんなダイレクトに身体の線は出ないわ。」
「フレイがデザインしてくれたのですが……『こっちの方がキラが喜ぶ』と言ってましたわ♪」
「喜ぶかもしれないけど……キラ君のシュベルトゲベールが起動しない事を祈っているわ。」
何故此の二人がこの場所に居るのかと言えば、その答えは簡単――カタナとラクスは此れから戦場に出撃するからだ。
ラクスが乗り込むのはストライクフリーダムの新装備である『プラウドディフェンダー』で、カタナが乗り込むのはエアリアルジャスティス……ではなく、プラウドディフェンダーと同時に開発されていたキャリバーンフリーダムの新装備である『タイラントオフェンサー』だ。
無線通信によるドッキング機構こそ完成していなかった此の二機だが、マニュアル操作でならばドッキングは可能となっていたので、カタナとラクスは自ら乗り込んでドッキングを行おうとしたのだ。
『カタナ、それにラクスさんも本当に大丈夫?』
「大丈夫よラミアス副艦長!それにイチカ達が私達を待ってるから!!」
「私もカタナも守られているだけの女ではないのです。」
『……貴女達ならばそう言うでしょうね……グラディス艦長。』
『えぇ、私達も此れ以上は何も言わないわ……だけど、必ず生きて戻りなさい。此れは最優先で遂行される命令よ。』
「「了解!!」」
プラウドディフェンダーとタイラントオフェンサーは、何方も白を基調としたカラーリングに、白と金のカラーリングの翼が特徴的な可変機構を有した戦闘機型のモビルアーマーなのだが、此の二機には少しだけ違いがあった。
プラウドディフェンダーには刀型の実体対艦刀が一振り搭載されているのに対し、タイラントオフェンサーには同様の装備が二振り搭載され、ウィングもタイラントオフェンサーはプラウドディフェンダーでは僅かに存在している黒のカラーリング部分が多くなっていた。
この差異はタイラントオフェンサーとプラウドディフェンダーの運用思想の違いから生じたモノなのだが、此の二機がキャリバーンフリーダムとストライクフリーダムを大幅に強化する事だけは間違いなかった。
「カタナ・サラシキ。タイラントオフェンサー、行くわよ!!」
「ラクス・クライン。プラウドディフェンダー、出撃しますわ。」
こうして『誇りの守護者』と『暴君の攻撃者』はミレニアムから愛する者の窮地を救うべく飛び立って行ったのだった。
そしてキャリバーンフリーダムとストライクフリーダム、二機の自由の翼が新たな力を手にしたその時、此の戦いは大きく動く事になる――
To Be Continued 
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