Side:夏姫


昨日の夜から水切りをしておいた木綿豆腐を薄くスライスして、キッチンペーパーで表面の水を拭き取ってやったら、180度に熱した油の中に投入。
浮き上がって来たら引っくり返して、両面がこんがりとキツネ色になったら鍋から上げてバットにとって油切をしてやれば、サクサク香ばしい手作りの
油揚げの完成だ。
熱いから気をつけて食べろよ?


「♪」

「その子の為に朝から油揚げを作るとは、夏姫もやるわね?」

「油揚げの値段を考えた結果、安い豆腐を買って自分で作った方がコスパが良いと分かったからね……と言うか、キツネが本当に油揚げを食べる
 事に驚きだよアタシは。
 キツネが油揚げを食べるなんて言うのは御伽噺の世界の事だと思っていた。」

「まぁ、狐は基本肉食だから、大豆由来とは言え、タンパク質が主成分の油揚げは食べるんじゃない?油で揚げてあるから適当に脂質もあって、肉
 食獣にはピッタリだと思うわ。
 生肉買うよりは低コストだから、此れで済むなら此れが一番よね……で、私達の今日の朝ごはんは?」

「ゴハンに味噌汁、白菜と胡瓜の浅漬けと鯵の干物。それから少し厚めに切った豆腐で作った出来立ての油揚げに鰹節と醤油をかけたモノだ。」

「あら其れは素敵に和食な朝食ね♪
 時に夏姫、そのキツネちゃんの名前って決めたの?」



いや、まだ決めてない。
名前を決めなくてはとは思っているのだが、中々『此れだ』と言うモノが思い付かなくてね?……だからと言って、テキトーな名前は付けたくないから
悩んでいるんだよ。
刀奈、何かいい案は無いかな?



「そうねぇ?……なら、『クスハ』と言うのはどうかしら?」

「クスハ?」

「かの有名な陰陽師である安倍晴明の母親は『葛の葉』と言う名前で、その正体は妖狐であったと伝えられていて、その妖狐は雪の様に白い毛並
 みであったそうよ。
 だから、此の純白のキツネちゃんにはピッタリかなって。」



成程、確かにピッタリかもしれないな。
では、お前は今日からクスハだ。



「コン♪」



如何やら、クスハの名は気に入った様だね。
京都から連れてきてしまった子ぎつねだが、連れて来た以上は責任をもって育てなければならないからね……取り敢えず、悩んでいた名前が決ま
って良かったよ。











Infinite Breakers Break78
異世界旅行に行きまっしょい!』










其れでだ、修学旅行後は書類整理に忙殺された事以外は特別な事は無く、何時も通りの平和な日々を送っていたのだが、修学旅行後最初の土曜
日に束さんからの呼び出しを受けて、国家代表候補生になってるラウラとメアリーと乱を除いたレギオンIBの面子はISIR本社に集結。
本当ならラウラとメアリーと乱も来たかったんだろうが、国から『機体データの提出と報告』をしろと言われているのなら、其方を優先せざるを得ない。
ISRIに属しているなら断る事も出来ただろうが、あの3人はISRI所属じゃないから、断る事も出来なかったみたいだ。国家代表候補生と言うのは、国
との彼是が大変みたいだな。

「そう言えば今更だが、お前はロシアの方から何も言われてないのか楯無?簪もだけど。」

「私もお姉ちゃんも、特には言われてないかな?私の専用機は国が造ったモノじゃないのが関係してるのかも知れないけど。」

「言わないんじゃなくて言えないの。
 簪ちゃんの場合は、確かに専用機に国が全く関与していないからだけど、私の場合はそうじゃないでしょ?
 私が一般人だったら勝手にコアを別の機体に乗せ換えたとか、ISRIにミステリアス・レイディの機体を無断で渡したとか色々言われるんでしょうけ
 ど、私の家って特殊で、しかも私って更識の現当主じゃない?
 日本の暗部の長とその妹に下手な事言って敵に回したくないって言うのが日本政府とロシア政府の考えみたいよ?暗部を敵に回して、機密情報
 が漏洩でもしたら大変だもの。
 例えばロシアのプチーン大統領(誤字に非ず)は、元KGBのエージェントでアメリカの機密情報を握ってるとかね。」

「え?プチーン大統領が元KGBって只の噂じゃないのか?」

「いえ、真実よ?
 私がロシア代表になる時に、更識の力使って調べちゃった♪」

「いや『調べちゃった♪』じゃないだろ。国家機密レベルの情報を暴くのは凄いと思うけど、其れをアッサリと人にばらすな。暗部の長だろお前は。」

「大事な彼女に隠し事はしたくなかったのよね……今まで黙っててゴメンね?」



うん、他の事だったら其れで済んだかもしれないが、国家機密レベルの情報なんぞ墓場まで持って行ってほしかったわアタシは……この分だと、各
国要人の秘密まで知ってる可能性が否定できん。
束さんは個人の力で同じ事をやってのけるが、家の力で其れが出来る楯無も相当だよマッタク。

其れで束さん、アタシ達を集めたのは何が目的なんです?



「フッフッフ、よくぞ聞いてくれましたなっちゃん!
 其れは、此れをお披露目して、そして使う為だよ!!目ん玉ひん剥いてよく見てね!!此れこそが、束さんが作り上げた100年に1度の大発明!
 数多に存在する並行世界を行き来する事の出来るスーパーメカ!『パラレルワールド君1号(仮)』なのだーーー!!」



――ピタ



「うん、熱は無さそうだな。箒、お前は如何思う?」

「おでこを触る限り平熱だろうな。」

「なっちゃん、箒ちゃん束さんは正常だから。熱でおかしくなった訳じゃないから!!束さんは本当に並行世界との行き来を可能にするモノを製造し
 てしまったのだよ!
 いやはや、こんな物を造っちゃうなんて、造った束さん本人も驚き桃の木山椒の木だよ!」



然程驚いている様には見えないんだが……まぁ、驚いてはいるんだろうなきっと。
でも並行世界って流石に有り得ないんじゃないですか?あんなモノはSFの世界の話でしょうに……まぁ、SFの世界の話でしかなかったマルチパワ
ードスーツが今現在存在してる訳ですけど、他ならぬ束さんの手で。
だけど、並行世界は……



「ちっちっち、甘いよなっちゃん。
 並行世界は存在してるんだよ――並行世界は『選ばれなかった可能性の世界』だなんて言うけど、其れがそもそも間違っていたんだよ。
 並行世界って言うのは、選ばれなかった可能性じゃなくて『世界の条件が略同じ状態にある異世界』の事だったんだ。束さんは偶然それを見つけ
 ちゃって、其れで興味が湧いたから並行世界渡航機を造っちゃったのだ!」

「世界の常識を覆すような事を、DIYで家具造ったレベルのノリで言われても困りますよ姉さん!」

「ってか、此れが明るみに出たら色々ヤバくない!?
 ただでさえタバ姐さんは色んな国から狙われてるのに、更に各国が躍起になってタバ姐さんの事獲得しようとするんじゃないの!?」

「あ~~……其れは大丈夫だろ鈴。
 仮に束さんの居場所がバレても此処には秋姉とナターシャさんが居るから、襲撃して来た所で速攻で返り討ちにして終わりだって。」

「確かにオータムさんとナターシャさんはとても強いから大丈夫だと思う。
 あの2人がアストレイと一緒に出撃すれば、アメリカ軍でも瞬殺できる。」



……並行世界の存在まで捉えていたのか束さんは。
まぁ、束さんが確認したのならば間違いはないんだろうが、此れが明るみに出たらとんでもない事になるのは火を見るよりも明らかだから、絶対にこ
の事を表沙汰にはしないで下さいね?
オータムさんとナターシャさんが出張れば誰が来ても撃退できるとは言え、貴女へのマークがきつくなったら、箒だって大変なんですから。



「勿論、此れを公表する心算は無いよ。只の個人的な暇潰しの副産物だしね。
 でも、並行世界があって、其処に行ける装置が有るって言うなら、行ってみたくないかな並行世界に――この世界とはとてもよく似てるけど決定的
 に違う世界に。」

「そう言われれば、確かに行ってみたい気がしないと言えば嘘になりますが……」

けど、アタシ達がこの世界から居なくなるのは拙いでしょう?
並行世界とやらにドレだけ滞在する事になるか分かりませんし、2日間までは大丈夫ですけど、3日以上は無理です。月曜日は普通に授業あります
し、楯無とアタシは生徒会の会長と副会長なのでIS学園に居ない訳には行きませんから。



「ノープロブレムなんだな此れが。
 並行世界には束さんも一緒に行くし、何よりもこの装置の優れてる所は、出発前に帰還時間を設定しておく事で、並行世界で何日過ごしても、こっ
 ちの世界には設定した時間に戻って来る事が出来るんだよ。
 つまり、帰還時間を出発時間の1分後に設定しておけば、向こうで何日過ごしても私達は出発から1分後にはこっちに戻って来てるって訳!
 此れなら、並行世界旅行も時間を気にせず楽しめるよね!!」

「夏姫姉、未来の義姉がぶっ飛んでるって、改めて認識したわ俺。」

「だろうな。と言うかアタシもだよ一夏。」

まぁ、此れは並行世界旅行は確定だろうね――で、今日は何時ものウサミミ+エプロンドレスじゃないんですね束さん?
タイトスカートにボタン付きのシャツを着て、白衣を羽織ってるその出で立ちはバリバリの研究者って感じです。と言うか、何時ものぶっ飛んだ格好よ
りもそっちの方が似合ってますよ。



「ありがとうなっちゃん。
 いや、並行世界の束さんが同じ格好してる可能性は高いと思って、この格好にしたんだよ――『篠ノ之束が普通の格好してた』って言うのは、向こ
 うの人たちからしたら相当驚く事だろうからね!
 どうせなら驚かせたいじゃん!!」



其れが理由か……まぁ、貴女は昔から人を驚かせるのが好きだったからら、もう今更何を言うでもないさ――かく言うアタシも、並行世界のアタシ達
がどんな反応をするの楽しみではないと言ったら嘘になるからな。
其れで束さん、今から行くんですか?



「勿論!その為に呼び出した訳だからね!!
 其れじゃあ、早速並行世界旅行に行こうとしようか!!思い立ったが吉日って言うからね!!……其れでは、スイッチオン!!ぽちっとな!!」



え?本気で今からだったのか?
と言うか、アタシ達の了承を得ずに装置を起動させないで下さいよ束さん!!今すぐ装置を停止してください!!



「あ、其れ無理♪一度起動したら、異世界転移が終わるまで止まらないからね♪」

「なんで途中で動作停止出来ないようなモノを造ってるんですか?
 不具合とか起きた時の為に、普通は緊急停止用の機構を付けておくべきでしょう?もしも並行世界への転移が失敗したら如何するんですか!?
 永遠に時空の狭間を彷徨うとか嫌ですよアタシ達?」

「大丈夫、なっちゃん達を呼ぶ前に無人機使って何度も移動実験して安全性は確保してあるから♪
 其れに、緊急停止装置付けちゃったら、こうなった時に絶対になっちゃんや箒ちゃんが其れを起動して並行世界転移を強制停止させると思って搭
 載しなかったんだよね~~~♪」

「いや、本気で何を考えてるんですか姉さん!?」

「ハッハッハッ、今の私は皆と楽しく並行世界に行く事しか考えてないのだよ箒ちゃん!それでは並行世界にレッツラゴ~~~~~♪」



束さんの暢気な掛け声と共に装置が光を発し、アタシ達は一瞬でその光に呑み込まれたのだった……この天才災兎、無事に並行世界に転移出来
たら、一発お仕置きしてやらないとだな。








――――――








Side:一夏


光に包まれた俺達、んでもって光が収まると……へ?
目に見えるのは青い空と白い雲、其れは良いとして眼下に広がるのは大海原……って、俺達空の上に居る!?なんで行き成り空の上なんですか
束さん!



「あ~~~……如何やら並行世界転移は、戻る時は兎も角行く時は場所と時間の座標を設定できないんだよね~~?だから、今回は海の上の遥
 か上空に転移しちゃったみたいだね、エヘ♪」

「いや、『エヘ♪』じゃないでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

地球には万有引力と言うモノがある訳で、其れに伴い何かに支えられていない物質は万有引力によって地面に引き寄せられ落ちて行くしかない!
だから当然俺等も絶賛紐なしバンジー体験中~~~!!
幾ら下が海でも、この高さから落ちたら間違いなく死ぬ!幾ら俺が人造人間でも普通に死ぬって!!……つー訳で、来いストライク!!



「行くぞ、フリーダム!」

「ジャスティス、起動!」

「プロヴィデンス、来て!」

「行くわよデスティニー!」

「アカツキ、頼む!」

「出番だよ、バスター!」

「カラミティ、行くよ!」

「フォビドゥン、宜しく!」

「行くわよ、レイダー!」

「気張んぞ、ケルベロス!」

「狩るぞ、テスタメント!」

「行くっすよ、アウトフレーム!」



専用機を持ってる連中は全員自分の機体を起動して落下を止め、専用機を持ってない束さんと虚さんとのほほんさんは――



「うーちゃんと、のほほんちゃんは此れ使って~~♪」

「り、了解です!」

「分かったのだ~~~♪」



束さんが起動した、臨海学校の時に持って来た飛行ユニット、『グゥル』に乗って海面衝突を回避……もしもの時の為に持って来てたんだろうな。
取り敢えず、どっかの陸地に行かなきゃなんだが、束さん今俺達って何処に居るんです?



「ちょいと待ってねいっ君、今調べるから。
 ふむふむ、緯度と経度から考えると此処は太平洋上だね?……で、此の緯度と経度が示す場所は――如何やら私達は、IS学園のある島から南
 に2kmほどの場所にいるみたいだよ。
 其れから、並行世界への移動は無事に出来たみたい――学園の方で、『白式』と同じISが起動したのを私の専用タブレットが感知したからね。」

「「「「「「「「「「「「「「「白式!?」」」」」」」」」」」」」」」


一秋の機体だった白式の反応を捉えたってのには驚いたけど、確かに其れなら並行世界への移動は出来たって事にもなるよな?
だって、白式のコアは俺のストライクのコアである白騎士と融合してるんだから――で、今現在ストライクを起動してるってのに、IS学園の方で白式
の起動を感知したって言うんなら、ストライクに組み込まれた白式とは別の白式が存在してるって事だからな。



「確かに、そうなるな。
 しかし、ISが起動しているとなると実技の授業か、其れとも自主訓練かな?」

「いんや、此れは違うね?
 無数の無人機の存在も感知した……こりゃ、IS学園では現在進行形で戦闘が行われてるみたいだよ。其れも、結構な数の無人機を相手にね。」

「「「「「「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」」」」」」


戦闘って、マジかオイ!?
しかも無数の無人機って、相手はドレ位の数なんですか束さん!!



「数は軽く見積もっても80!
 対するIS学園の戦力は、白式を含めて8……戦力差は10倍以上だよ!」



はぁ!?戦力差10倍以上って有り得ないだろ普通に!
って言うか、白式含めて8人って、教師部隊は何やってんだよ!如何考えたって、生徒だけで対処してる数だろ其れは!……並行世界に来たばか
りだけど仕方ねぇ、無視する事も出来ないから助けてやるか!
夏姫姉達も良いよな?



「異論はない……行くぞ!」

「「「「「「「「「「「「「「おーーーー!!」」」」」」」」」」」」」

「そんじゃ、行きまっしょい!」



夏姫姉が了承して、号令かければスグにってな。――やっぱり夏姫姉はリーダー気質なんだな。
ガキの頃から、何時の間にか仲間内でリーダーになってたし、小学生の時には『夏姫ちゃんの子分になりたい』とか言ってた男子が居た位のリーダ
ーっぷりだったからな。……今にして思うと、此れ結構ヤバめの発言だけどな。

さてと、並行世界のIS学園が見えてきたが、束さんの言ったように無数の無人機と思しき機体が見えるぜ……細身の躯体に無機質な翼を搭載した
機体がな。
目に当たる部分がないから、人に近い輪郭をしててもザクやグフ以上に不気味な感じだぜ。



「アレが学園を襲撃している相手か……性能で言うのならばライブラリアンのザクやグフよりも下だろうが、数の暴力は馬鹿に出来ないから、先ずは
 数を減らすのが上策か。
 マリア、簪、静寐……ブチかますぞ。」

「了解よ夏姫……天帝の一撃、受けなさい!」

「『破壊』の名を持つ機体の真骨頂を見せてあげる。」

「此れが『厄災』からのプレゼントだよ。有り難く受け取ってね!」


んで、先ずは数を減らさないと思ってた所で、夏姫姉とマリアと簪と静寐が搭載された火器を全開放してのフルバーストを敢行!!……カラミティの
4連ビーム砲とバズーカ、胸部のカリドゥス、複合シールドの大口径ビームの一斉掃射だけでもスゲェってのに、簪のバスターは右肩のガンランチャ
ーと左肩の高エネルギーライフルと腰の大口径ビームライフルに加えて、肩のミサイルポッドから秒間60発のミサイルを発射するからなぁ。
でもって極めつけは夏姫姉のフリーダムとマリアのプロヴィデンスのドラグーンフルバーストだな。
弾幕的に見るなら簪のバスターの方が上なんだけど、フリーダムとプロヴィデンスのドラグーンフルバーストは正面からだけじゃなく、ドラグーンの特
性を使っての多角的攻撃だから避けるのは略不可能……発動したら最後、大人しく喰らうしかないからな。

だが、此れで可成り数は減ったから一気に斬り込むぜ!!



「え?行き成り爆発した!?何なんだよ一体!?」



で、斬り込んだ先に居たのは白い機体を纏った『俺』と、専用機と思しきものを纏った鈴達……コイツ等がこの世界の俺達って事か。
正直言って、この程度の無人機に手間取ってる時点で実力が察せるんだが、まぁ、助けてやるとするか――自分と同じ顔をした奴が目の前で死ぬ
ってのは良い気分じゃない……とは言い切れないか、一秋の奴が俺の前で死んでも何も感じないだろうからな。
取り敢えず、助けてやんぜ!!

「チョイサァァァァァ!!!」



――ズバァァァァァ!!!



無人機一機滅殺!!……誰が造ったかは知らねぇが、脆いなオイ?こんなんじゃ、エクスカリバーの錆にもなりゃしないぜ――オイオイ、折角面白
そうなパーティだってのに此れでお終いじゃないじゃないよな?
来いよ、もっと遊ぼうぜ……てか、恐らくはテメェ等から仕掛けた強引なパーティなんだろ?なら、最後まで付き合って貰おうじゃねぇかオイ!



「み、味方?」

「口動かす前に体を動かせアホ。――取り敢えず全機ぶっ壊すぜ?相手は、無人機だから遠慮はいらねぇ!迷わず叩き斬れ!!」

「あ、あぁ分かった!!」



こっちの世界の俺と合流して無人機とのガチバトル!
俺は勿論余裕だが、こっちの俺も中々やるじゃないか?粗削りな部分があるのは否めないが、近接ブレードとクローを使っての戦い方は、鍛えれば
相当なモノになる筈だぜ。
それに引き換え……こっちの鈴達は酷過ぎるな?
こんな状況であっても碌な連携をせずに夫々が好き勝手に戦ってる……楯無さんと簪だけはコンビネーションで戦ってるみたいだが、こんな状況で
スタンドプレーに走るとかないわ普通に。
てか、この世界の俺は特定の誰かと付き合ってないのか?……こっちの世界の鈴達の態度、明らかにこの世界の俺に良い所を見せようとしてるの
がバレバレだっての……アホか。
命が掛かった戦場で、想い人に良いとこ見せてアピールしようとか絶対馬鹿だろ?脳味噌の代わりに糠味噌が詰まってんじゃないのかマジで?
取り敢えず速攻で終わらせる!行くぞ鈴、箒!!



「了解!」

「任せておけ!」



俺はエクスカリバーの二刀流で無人機を斬り捨て、鈴はアロンダイトを展開すると光の翼を起動して、ミラージュコロイドを利用した光学分身で幻惑
しながら次々と無人機を斬り捨て、箒は得意の乱撃術で無人機を鎧袖一触!
此れだけも可成りなんだが、癒子は鉄球で無人機を粉砕し、清香は大鎌で無人機を一刀両断!ダリル先輩は疑似4本腕の攻撃で無人機を撃滅し
てるし、フォルテは女権団との戦いの時に手に入れたビームバズーカを使って無人機を粉砕!



「行くぞ楯無!!」

「此れで終わりよ!!」



そしてトドメは何時の間にかミーティアを装備していた夏姫姉のフリーダムと楯無さんのジャスティスによる、手加減無用のミーティアフルバースト!
夏姫姉、ミーティアってアークエンジェルから出して貰うモノじゃなかったのか?



「アタシもそう思っていたけど、束さんがフリーダムとジャスティスのオプションに改造したらしい……お陰様で、何時でもミーティアが使用出来る様に
 なった訳だ。
 此れは普通に有り難い事だから、お仕置きは無しにしておくか。」

「……ちなみにお仕置きって何?」

「アタシと楯無によるNIKU→LAP。
 前にやった時は大したダメージじゃなかったが、アタシのキン肉バスターと楯無のOLAPの精度を上げたから前よりも強力だ。」

「普通に鬼だな。」

だが、夏姫姉と楯無さんのミーティアフルバーストで学園を襲撃して来た無人機は、粉砕!玉砕!!大喝采!!!――跡形もなく葬ってやったぜ。
マッタク持ってこの程度じゃ、準備運動にもならねぇな。
とは言え、これからどうしたもんだろうな?
取り敢えず此れで戦闘終了だからアリーナに降りておくか。ってか勢いで参加しちまったが、俺達はこの世界には存在してない事を考えるとトンズラ
こいた方が良かったか?



「何処の誰かは知らないが、協力は感謝する……だからこそ問う、何者だ貴様等は?」



如何した物かと考えてる所に来たのは、この世界の織斑先生か――俺達の世界の千冬さんと比べると可成り目付きが鋭いぜ……こりゃ、可成りの
傲慢者かもな。
纏う雰囲気も、教師って言うよりは軍隊の鬼教官って感じだし……若しかしたら、口より先に手が出るタイプかもな。
ま、行き成りの乱入者が無人機ぶっ壊したって言うのには驚いただろうから、取り敢えず機体解除して名乗らせて貰うが、俺達を見て驚くなよ?



――シュゥゥゥン……



「「「「「「「「!!!」」」」」」」」

「え?……嘘だろ?そんな、こんな事があるのかよ!!」

「驚くなと言ったのに、驚くんだなお前等は。」

まぁ、驚くなと言われても驚くなと言うのが無理な相談かもしれないけどな――と言うか、自分と同じ顔をした奴と、自分の知り合いと同じ顔をした奴
が此れだけ集まればな。



「そんな、こんな事……お前、一体何者なんだよ!!」

「何者だと言われても、俺は俺であってそれ以上でもそれ以下でもないんでね、お前の望む答えを与えてやる事は出来ねぇよ。」

だが、一つだけ言える事があると言えば、俺はお前でお前は俺だけど、俺とお前は違う存在だって事だな。



「俺はお前でお前は俺だけど違う存在って、意味分からねぇって!マジで何モンなんだよお前は!お前達は!!」

「オイオイオイ、もっとクールに行こうぜ?……熱くなるのは構わないが、オーバーヒートでダウンなんて事になったら笑えないぜ?もう少し心に余裕
 を持てよ。」

「馬鹿にしてんのか!!」



するかボケ。
束さんの発明品で並行世界にやって来た訳なんだが、どうやらこの並行世界旅行ってのは、一筋縄ではいかないモノになるのは間違いないらしい
ね――向こうに戻る前にコッチの『俺』を鍛えてやるとするか。
だが、今の無人機程度に手こずるとか少し実力不足じゃないのか?



「いや、幾ら何でも数が多すぎだろあれは!!」

「でも、俺等普通にぶっ倒したよな?……最後は夏姫姉と楯無さんの反則技級の一撃だったとは言え。」

「う……其れはそうかも知れないけど……」

「だから決めた、お前等の事鍛える事にするわ。」

俺と同じ存在が、弱いままって言うのは嫌な気分だからな!!――お前の事は、徹底的に鍛え直してやるから覚悟しとけよ?俺の訓練は、絶対に
優しくないって有名だからな。



「俺を鍛えるってのか?」

「不満か?あの程度の無人機位、余裕で倒せるようになりたいだろ?」

「そりゃそうだけど、正体不明の奴に行き成り鍛えるって言われても流石に迷うっての。俺、オカシイ事言ってないよな?」

「まぁ、正論だな。普通はそうだ。
 何にせよ、俺等が何者であるのかは説明しなくちゃならないから、答えは其の後で聞かせてくれりゃ良いさ……其れに、何となくだがこっちの事を
 説明した後で、お前達と模擬戦する事になりそうな気がするしな。」

「あ、流れ的に否定できないかも其れ……」



まぁ、そうなったらそうなったで、改めてこっちの連中の実力を判断できるから良いけどな。
先ずは見せて貰うぜ、この世界の俺達の実力ってのが、ドレだけの物なのか……だけどまぁ、せめて俺を失望させないでくれよ?並行世界の『俺』
が、どうしようもない雑魚だったなんて事になったら、流石に萎えるからな。
だが、だからこそ持てる力の全てをかけて掛かって来な――戦闘スタイルや、得手不得手を見てからじゃないと鍛えようがないからな。
行き成りの異世界旅行でびっくりしたけど……コイツは、思った以上に楽しめそうだからな!!――けどまぁ取り敢えずは、俺達の世界とこの世界っ
てのはドレだけ同じで違うのか、其れの確認からだな。

……だが何だろう、模擬戦をやる事になるのは兎も角として、事情説明もすんなり行くとは思えないんだよなぁ……杞憂であってほしいぜ。








 To Be Continued… 





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