Side:夏姫


修学旅行が終わって、IS学園に帰ってきた翌日の放課後なんだが……



「ちょっと、この書類の多さは一体何!?
 私達が京都に行ってる間に一体何が有ったって言うのよ虚ちゃん!?幾ら何でもこの書類の多さは尋常じゃないわ……ぶっちゃけて言わせて貰
 うのなら、此れは今日の放課後で処理しきれる量じゃないわよ!幾ら夏姫が居るとは言っても!!」

「其れは重々承知していますが、お嬢様が不在の間に、多数の国から代表候補をIS学園に編入させたいとの申し出があって、その可否を決める為
 の書類には教員の他に生徒会長の捺印も必要でしたのでこのような事態に。」



生徒会室で雑務に忙殺されかけていた。
刀奈も言っていたが、この書類の量は普通に死ねる――編入生の数自体は10人程度なのだが、1人につき必要書類が30枚あるから、10人だと
しても処理すべき書類は300枚……考えるだけで鬱だ。
しかもその30枚は『基本』の書類であって、専用機とかを持ち込むための書類は別途必要になるって……本気で泣きたくなって来たわ此れ。
此れだけでも大変なのに、更に狙ったかのように明日にはブリーズの専用機が学園に届くとか、最早苛めとしか思えん……書類の精査だけではな
く、ブリーズの専用機受領には立ち会わねばならないからな。



――コンコン



ん、来客か?……何だかとても嫌な予感がするが、どうぞ。



「失礼する。」

「アラ箒ちゃん、生徒会室に来るなんて珍しいわね?如何したかしら?」

「いや、先程姉さんから電話がありまして――京都で私が散から奪った太刀を私用にカスタマイズ出来たとの事で、明日此方に搬入すると言ってい
 たのでその報告に。
 私の機体の武装なので、提出書類も書かねばならないと思いまして。」

「あぁ、そうだな……確かに其れは必要になるな。」

そうか、あの刀がやっと箒の物になるのか……仕事が早いのは良いが空気を読め、あの天災兎。
お陰で処理しなくちゃならない書類が増えたじゃないか……束さんに悪気が無いのは分かっているが、だからと言って此処から更に仕事が増える
のを其れを『はいそうですか』と受け入れられるほど大人でもないからね?












Infinite Breakers Break77
此れはある意味で平和な日常』










書類処理に忙殺された翌日の放課後、スコールさんと山田先生とアタシと刀奈、箒とブリーズは学園のドッグエリアでフランスからの輸送機とISRIの
飛空艇が来るのを待っていた――箒の専用装備とブリーズの専用機を受領する為にな。
千冬さんは千冬さんで、ブリーズが機体を受領したら試運転が必要だろうと言う事で、アリーナの方で準備をしてるんだよね。

そう言えばブリーズ、フランスの最新鋭機はどのような感じなんだ?
提出されたカタログスペックによると、第3世代ではなく、2.5世代と言った所みたいだが……



「幾ら何でも、国が新しくなったばかりだから行き成り第3世代の開発は出来ないよ。前政府のせいで、フランスは完全にイグニッションプランから外
 されたからね。
 でも、何時までも第2世代のラファールだけじゃって言う事で、ラファールをベースに第3世代の開発をしてるんだ――此れならまったくの新型を造
 るよりもコストはかからないからね。
 それと、2.5世代なのは中国の龍砲やドイツのAICみたいな特殊兵装を積んでないからってだけで、機体の基本性能だけなら第3世代機と遜色
 ないレベルだよ。」

「基本スペックは第3世代相当だけれど、第3世代の装備が無いから2.5世代と言う事ね……国が新しくなって半年と経ってないって言うのに、此
 れだけの性能の機体を造ってしまうと言うのは、余程新フランスの技術者はレベルが高いのかしら?
 其れとも、旧フランス政府お抱えの技術者が余程無能だったのか……多分両方でしょうね此れ。」

「だろうな。」

だが、短期間で此れだけのモノを造ったと言うのならば、後はお前次第で新フランスは改めてイグニッションプランに参加する事が可能になるかもし
れないな?
お前がこの機体で結果を出せば、他の欧州国も興味を示す筈だからね。



「そうだね。っと、来たみたいだ。」



ドッグエリアに入って来たのは、トリコロールカラーの小型輸送機と大きめのコンテナを持ったセイバー……って、ISRIは飛空艇じゃなくてセイバーを
寄越したのか?
てっきり箒の武装だから、束さんが直々に持って来ると思ったんだが――いや、刀だけを入れるにしては大き過ぎるあのコンテナの中に束さんも一
緒に入ってる可能性は充分にあるな?……ま、開けてみれば分かる事か。
取り敢えず先にブリーズの機体を受領するとしようか。



「やぁ、元気そうだねシャルロット?」

「え、姉さん!?」



フランスの小型輸送機から降りて来たのは、ウェーブのかかった金髪が特徴的な中々のイケメン女性……って言うか『姉さん』だと?
ブリーズ、お前姉妹居たか?アタシの記憶では居なかったと思うんだが……



「居ないよ?お母さんが生んだのは僕だけだったから。
 この人は、僕を引き取ってくれたブリーズ家の長女である『ジャンヌ・ブリーズ』で、今の僕の姉さん兼専用機開発チームのチームリーダーだよ。」

「ジャンヌ・ブリーズよ、宜しくね。」



お前を養子として迎え入れた一家の人間だったか。
だから姉と言う訳か、納得だ。そして、その姉が専用機開発チームのリーダーだと言うのならば、基本スペックが第3世代なのも頷ける……大抵の
場合、姉と言うのは妹や弟の為ならば己の持てる力を全て使う事を厭わないモノだからな。その典型例が束さんだしね。



「此方こそ。IS学園生徒会長の更識楯無です。」

「副会長の蓮杖夏姫です。」

「えっと……同輩?の篠ノ之箒です。」

「タテナシにナツキにホウキね?覚えたわ。
 其れじゃあ、早速シャルロットの機体のお披露目と行きましょうか?此れがシャルロットの専用機である2.5世代機『フォース・インパルス』よ!」



互いに自己紹介した所で現れたブリーズの専用機は……フルスキンの機体だったか。
機体の造形にはISRI製の機体の意匠、特にエールストライクの意匠が強く感じられる上にカラーリングもストライクと同様のトリコロールだが、ストラ
イクは濃い青の部分が濃い目の水色と言う違いがあるし、エールストライクよりもバックパックはスマートな印象だな。



「此れが僕の専用機……」

「今のフランスの全技術を注ぎ込んだ機体よ。
 ビーム兵器こそ搭載できなかったけど、ライフルにはレールガンの技術を使ってるから実弾兵器としては最強だし、腰のホルダーのコンバットナイ
 フもファインセラミックとカーボンファイバーの合成素材で作った特別製だから、ISRIが独自に開発したPS装甲以外なら切り裂く事が出来るわ。
 そして、バックパックのフォースシルエットの出力を最大にした場合の速度は、音速の壁を突破するわ。」

「……第3世代の兵装を搭載してないから2.5世代との事だったが、このスペックは普通に第3世代を名乗っても良いと思うのはアタシだけかなの
 だろうか楯無?」

「いえ、私も思ったわよ夏姫。」

「右に同じく、私もだ。」



だよな。
ビーム兵器こそないが、レールガンの機能を持ったライフルにPS装甲以外なら切り裂けるコンバットナイフに音速を超える機動力を叩き出すバック
パックって、此れはISRI製の機体を除いたら現行のISで最強クラスのスペックじゃないのか?
新フランス、侮れないな。
だが此れで、ブリーズの専用機は無事に受領完了――つまり次は、箒の専用装備の受領になるのだが……楯無、箒、一応確認しておくが、このコ
ンテナを開ける覚悟は充分か?
もう一度聞くが覚悟は出来てる?アタシは出来てる。



「えぇ、覚悟は出来てるわ……」

「だから、思い切りやってくれ夏姫。」

「分かった……」

其れではコンテナオープン!!



「箒ちゃーん!!」

「予想通りか……!!」

コンテナを開けた瞬間に束さんが飛び出してきて、箒にルパンダイブを敢行したが、そうは行かないぞ束さん?
貴女が直々に箒に専用装備を渡したかったと言う気持ちも分からなくはないが、そのお陰でアタシも楯無も書類処理が増えてしまったから、先ずは
其れに対しての八つ当たりをさせて貰う。



――ガシィ!!



「ほえ、なっちゃん?こ、これは何かな?ブレーンバスターの要領で持ち上げられた後に、両足と両肩をフックされた態勢ってのはとっても嫌な予感
 しかしないんだけど……」

「その予感は的中だ……合わせろ楯無!!」

「了解よ夏姫!!」



束さんをキン肉バスターに捕らえてフリーダムのブースターを部分展開して急上昇した所で、刀奈がジャスティスのブースターを部分展開してアタシ
に追いつき、アタシがホールドしてる両足を自分の両足で極め、更に両腕をチキンウィングに極め、そのまま急降下。
喰らえN&T滅殺コンビネーション。


「「NIKU→LAP!!」」

「ぺぎゃらっぱぁぁぁぁぁぁぁ!!……なっちゃん、たっちゃん、束さんを殺す気か!!!」

「……此れを喰らって生きてる時点で、この世の誰であっても貴女を殺す事は出来ないと確信したよ束さん……一応、此のツープラトンは悪魔超人
 を葬る事が出来たモノなんだけどね?
 貴女は悪魔超人以上か。」

「本気でオーバースペックよね束博士は。」



人工的に作られた最高の人間であるアタシとタメ張って、一夏には勝つお前も相当だと思うがな楯無よ。……余りの事態にブリーズ姉妹がフリーズ
しているが、まぁ当然だろうな――天下の篠ノ之束が、こんなぶっ飛んだ人だと知ったらフリーズもするわ。
ま、後で説明しとくか。
其れは兎も角として、箒の専用装備を持って来たんですよね束さん?



「その通り!
 箒ちゃんがあの馬鹿から奪った刀を箒ちゃん用に作り直したのが此の刀!天羽々斬改め、『八十枉津日太刀(やそまがつひのたち)』!
 刀身を大太刀から標準的な日本刀に切り詰めて、更に刀身にはビームを纏う機構を追加して、PS装甲であっても切断出来るようにしてみたんだ
 けど如何かな?
 柄の太さも箒ちゃんの手に合うように調整してみたよ♪」

「此れは、とても手に馴染みます姉さん……まるで、昔から使っていたかのようだ。
 ですが姉さん、確かに馴染みますが、なんで柄の部分と新たに作られた鞘は金色なのでしょうか?」

「其れはヤタノカガミをコーティングしてるからだよ~~……その鞘と柄の部分だけでウィンダムを1機作れるかな~~♪」



ドンだけ金掛けてんだと突っ込みたいが、その装備は箒の手に馴染む物だったか……まぁ、束さんが調整したのならば当然だろうな――束さんが、
箒の専用装備の開発で手を抜く事等と言う事は無いからね。
だが、持って来たのは此れだけじゃないだろう束さん?
そのコンテナは、刀と束さんだけが入るにしては大きすぎる……他にも何か持って来てますよね?



「流石はなっちゃん鋭いね?
 確かに持って来たのは箒ちゃんの専用装備だけじゃないよ……実は、やまちゃんのウィンダムの専用装備を持って来てしまったのだVV♪」

「へ、私のウィンダムのですか?」

「そうそう!京都上空での戦いを見せて貰ったけどさ、今のジェットストライカーじゃやまちゃんの能力を100%生かす事が出来てない感じだったか
 ら、あの戦闘データを基にやまちゃん専用のストライカーパックを開発してみました!
 御覧あそばっせい!これぞやまちゃん用に開発した新たなストライカーパック『デスティニーストライカーR』!」



山田先生のウィンダム用の新型ストライカーパックだったのか……追加で処理しなくてはならない書類が増えたな楯無。



「そうね……此れは睡眠時間を生贄にするしかないわね。
 睡眠時間を生贄にデスティニーストライカーRを召喚!って所だわ。」

「だな。」

しかしこのストライカーパックは、鈴のデスティニーに搭載されているモノに似ているが、少し違うな?
鈴のデスティニーにはレーザーブレード対艦刀と大口径のレールガンが搭載されていたけれど、此れに搭載されているのは2門の大型のビームラ
ンチャーか?
確かに山田先生は近接戦闘よりも、射撃と砲撃によるロングレンジ~アウトレンジでの戦いを得意としているから、この武装構成は適当かも知れな
いけれど。
でもな束さん、此れも持って来るならちゃんと伝えて欲しかったんですけどね?



「え~~?そしたらサプライズにならないっしょ?
 やっぱりサプライズって必要だと思うし、サプライズプレゼントの方が印象に残るものなんだって♪少なくとも束さんはそう思ってるよ!!」

「そう思うのは勝手ですけど、そのお陰でアタシ達生徒会の仕事が増えたんですけど。
 しかも此れって学園が所有する機体の新装備だから、箒のと違って書類の数がスッゴク多いんですよ……まぁ、アタシと楯無と虚さんで分担して
 やれば今日中には終わるでしょうけど、昨日までに300枚以上の書類を処理して凄く疲れてるんですよアタシも楯無も。勿論虚さんも。
 其処に新たな仕事持ち込んでくれて……束さん、もう一発NIKU→LAP喰らっときますか?」

「夏姫、今度はダブルファイナルアトミックバスターの方が良くないかしら?」

「ごめんなさい、束さんが悪かったですから、ツープラトンは止めて下さい。
 ぶっちゃけさっきのNIKU→LAP喰らった時、ホンの一瞬だけどお花畑の向こうで手を振ってるお爺ちゃんとお婆ちゃんが見えたので……束さんま
 だ死にたくない。少なくとも箒ちゃんといっくんの結婚式に出るまでは。」



死にたくない理由は其れか……まぁ、これに懲りたら以降は何かある場合は必ず事前に連絡して来て下さいよ?アタシや楯無に直接でも、箒経由
でも構いませんから。
良・い・で・す・ね?



「イ、イエスマム!!」

「世界広しと言えど、姉さんを震え上がらせる事が出来るのは千冬さんと夏姫だけではなかろうか?」

「奇遇ね箒ちゃん、私もそう思ったわ。」

「ま、昔から束は夏姫に頭上がらないわよね?……研究に没頭して研究室をゴミだらけの異空間にしては、その度に夏姫にキッツイお仕置きをされ
 ていたからね。」

「えっと、其れってどんなお仕置きですか?」

「真耶……世の中には知らない方が良いって事も有るの。興味本位で聞いて後悔したって事も多いのだからね。」

「そ、そうなんですか?
 そう言われると怖くなって来たので、聞くのは止めておきます……あの、蓮杖さんお仕置きをするにしても程々にして上げて下さいね?束博士が
 如何に非常識な存在であっても一応人間ですから。」



山田先生、一応人間って天然で容赦ないですね……確かに束さんは本当に人間なのか疑わしい部分があるからそう言ってしまうのは仕方ない事
なのかも知れないけど。
其れで、何時までフリーズしてるんだブリーズ姉妹?



「えっと、この人がシノノノタバネで良いのかしら?」

「箒さんが妹って言う事だから、それで良いんだよね?」



あぁ、その通り。
このエプロンドレスにウサミミって言うぶっ飛んだ格好してるのが、ISの開発者である篠ノ之束だよ……見ての通り相当にぶっ飛んでる人だから常
識は通用しないと思ってくれ。
と言うか、束さんを相手にするなら自分の常識は束さんにとっての非常識位の認識で行かないとダメだ。そうじゃないと身が持たないからな。



「なっちゃん、ちょっと其れは言いすぎじゃないかな?」

「遠隔操作で人のPCハッキングして其処から立体映像で会話に入り込んでくると言う常識外れの事を平然とやってのける人が何言ってんです?」

「あぁ、アレは流石に驚いたな……姉さん悪戯は程々にしてくださいね?」

「……はい。」



まぁ、人格的には少々問題があるかも知れないが、其れでも束さんが稀代の天才であるのは間違いないさ。
それよりもブリーズは、此れから機体の試運転をするんだろう?千冬さんが第1アリーナを抑えてあるから早く行くと良い。山田先生も、ブリーズのイ
ンパルスの試運転の相手を務める形でストライカーパックの試運転をすればいいですよね?



「え?あ、そうですね。
 確かに新装備の性能は確認しておきたいので、それで行きましょう。そちらの方が時間も節約できますからね♪」



じゃ、決まりだな。
因みに、アカツキに搭載されていた双刃式ビームサーベルは、八十枉津日太刀を搭載すると同時にオミットして束さんに返却する事になった。元々
箒は刀での戦いは得意だったが、双刃式ビームサーベルみたいな特殊な武器は得意じゃなかったから、これは丁度良かったのかも知れないね。



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で、ブリーズと山田先生の模擬戦と、箒のターゲットブレイクを行って放課後は終了。
ブリーズと山田先生の模擬戦は予想通りだったが山田先生が勝った――ブリーズの動きも決して悪くはなかったが、所詮教科書通りの戦い方では
山田先生には通じず、逆に距離を離された上でビームライフルとビームランチャーの飽和攻撃を喰らってシールドエネルギーエンプティーだからね。
現役の国家代表をマッタク寄せ付けないとか、山田先生の実力は本気でハンパないわ……何でこれで日本代表になれなかったのか謎だわ。
まさかとは思うけれど、近接戦闘が苦手ってだけで代表にしなかったとか馬鹿な理由じゃないだろうな?



「残念ながら、そう言う理由みたいよ夏姫?」

「……マジか楯無――だとしたら、日本のIS委員会の連中は無能としか言いようがない……あれ程の才能を腐らせてしまったのだからな。」

刀奈から齎された情報を聞いて呆れたわ。……恐らくは千冬さんが近接オンリーでモンドグロッソを2連覇したのが原因だろうが、だからと言って近
接苦手って言う理由で山田先生を切るとかないわ。
山田先生が代表になって居たら、日本はモンドグロッソを3連覇出来てたかもしれないのに、近接戦闘能力を重視した結果、1回戦で負けたんだか
ら笑えないわ。……山田先生は、IS委員会の被害者だな。

ま、この話はここまでにしないか?アタシから振ったとは言え態々大浴場で話す話題でもないだろ?折角のリラックスタイムなんだ、ゆったりまったり
過ごすのが一番だとは思わないか楯無?
此処サウナルームだからゆったりまったりとは程遠いかも知れんけどな。



「そうね、ゆったりまったりとは無縁ね……でも、かれこれ30分は居るからそろそろ限界~~~!!!」

「そうか、実はアタシもだったんだ。」

「夏姉さんと楯姉さんは何を張り合っていたのか……」



其れには突っ込まないでくれマドカ。
アタシも楯無も負けず嫌いだから、同時にサウナルームに入った以上、先に相手が出るまで出てく事が出来なかっただけだ……そのせいで意識が
吹っ飛びかけたけどね。
だけど今ので火が点いた……楯無、水風呂で体温下がったよな?



「えぇ、下がったけどそれが何か?」

「第2ラウンドだ、逃げないよな?」

「上等……サウナで汗かいて水風呂で身体冷やしてまたサウナって言うのはアイルランド伝統の健康法みたいだから乗らせて貰うわ……第17代
 楯無の力、思い知らせてあげるわ。」

「そう来なくてはな。」

その後、刀奈とはエンドレスの勝負が続き、第30回戦になった辺りでお開きとなり、デスティニーシルエットRに関する書類を処理してから、刀奈とベ
ッドインして……其処ら先はシークレットだ。R-18のライブになってしまうからな。

だが、忙しくとも何もなかった平和な日常って言うのは悪くないな……願わくば、こんな時間がこれからも続きますようにだ――ま、其れは望み薄だ
ろうけどね。








――――――








Side:束


こ、これは……クロちゃん、束さんは世紀の大発明をしてしまったかもしれないよ此れ!!



「今度は一体何を造ったんだ束?」

「よくぞ聞いてくれました!これぞ、束さんが開発した世界初の次元渡航システム『パラレルワールド君1号(仮)だよ!
 この世界には数多モノパラレルワールドが存在してるんだって事を束さんは長年の研究の末に突き止めて、その結果から並行世界間を行き来出
 来る装置を造ってみました~~~!!」

「……はい?」

「だから、並行世界と行き来出来る装置を造っちゃったんだよね此れが!
 これはアレだよね?発表したらノーベル化学賞受賞間違いなしだよね?……ま、束さんはあんなものに興味は無いから発表する気は更々ないか
 ら如何でも良いんだけどね?」

「はいぃぃぃぃぃ!?……いや、何造ってるんだお前!!!こんな装置……此れは最早神の領域の技術だぞ束!!……神の領域に足を踏み入れ
 た人は破滅する、知らない訳では無いだろう?」



うん、知ってるよ……だからだよクロちゃん。
私はさぁ、神様ってのが大っ嫌いなんだよね?……だけど、神様ってのは所詮は人が作り出した偶像でしかないじゃん?……だったら、神を造り出
したのは人なんだから、人が造り出した神を超えても問題はないよね?
束さんは神になる心算は無いけど、将来的には休日に束さんの名が付くかもね――ま、取り敢えずはこの装置の実験をしないとだね。
束さんが行くのは確定として、なっちゃん達にも一緒に来て貰おうかな?――並行世界って言うのがどんなモノなのか、想像しただけでワクワクして
来たからね。

異世界旅行、とっても楽しみだね?
この世界とは違う世界……大きな違いや小さな違いが沢山あるだろうし、人の性格までも違うのかも知れないし……若しかしたら束さんが極悪マッ
ドサイエンティストになってたりするかも知れないからね~~?
ん?いや、この世界の私も充分極悪マッドサイエンティストかな?白騎士事件起こして、世界に女尊男卑を生んじゃった訳だからね……一生かけて
も償いきれないかもねこりゃ。
今やってる事が、少しでも贖罪になってると良いんだけど良いんだけどね~~~……



「悲しい事言うな束……世界の誰もがお前を許さなくとも、私はお前を許す……だから、そんな悲しい事は言わないでくれ。」



――ギュ……



クロちゃん……そうだね、そうだったね。
でも其れとは別に、此れを使って皆で並行世界旅行をするのは確定だね!!よっしゃ、束さんめっちゃ漲って来たよ此れ!!次の土曜までに装置
を完全に完成させたらぁ!!天下の天災舐めんなよ!!



「誰も舐めてない。と言うか、舐めたら火傷しそうだから舐めたくないぞ?」

「クロちゃん、其処はスルーしてくれっかい?」

「スマン、私の中に流れる突っ込みの血が、突っ込まないなんて事は許してくれないんだ……悪く思わないでくれ博士。」



中二病かーい!!
まぁ、クロちゃんは目覚めて日が浅いから仕方ないか……まぁ、其れは其れとして、この装置の性能実験だけはしておかないとだよね?
今度の土曜日、なっちゃん達を呼び出して、並行世界に行こうそうしよう!我ながら実に良いアイディアだね!!如何思うクーちゃん?



「そのまま死ね。」

「思った以上に厳しかった!!」

でもまぁ、並行世界への渡航は決定事項だから取りやめる心算は毛頭ないし、並行世界の私達がどんなモノなのかって言うのは興味があるから止
める気は毛頭ないけどね。
並行世界への渡航……楽しみでならないよ!!



「そうか……ならば、私は何も言わないが、社長としての書類処理はしてから行けよ?」

「あ、はい。」

並行世界旅行よりも、先ずは書類の山を処理しないとだね……自業自得とは言え、こりゃ流石にきつそうだけど、頑張るしかないか――束さんなら
24時間ぶっ通しで働く事とか余裕だからね!!



「お前本当に人間か?」

「多分ね!!」

取り敢えず、この装置が世紀の大発明であるのは間違いないわ――この装置を使えば、今まで行く事が出来なかった並行世界間の行き来が出来
る訳だからね。
此の装置を使って初めて訪れる場所は一体何処なのか……楽しみになって来た――精々、束さんの事を満足させてくれよな?……数多ある並行
世界の中でも、束さんとタメ張れる人は少ないだろうからね。
取り敢えず、異世界ですこしばっかり英気養ってくるから……あとの事は宜しくね~~♪じゃ、そう言う事で♪










 To Be Continued… 





キャラクター設定



・ジャンヌ・ブリーズ
シャルロットが養子として入ったブリーズ家の長女で現在はシャルロットの姉。
新生フランスのIS開発部門に勤務しており、シャルロットの専用機のフォースインパルスも彼女の存在があってこそ完成した機体でもある。
シャルロットとの仲は良好で、姉御肌な姉と、少し甘えん坊な妹と言う距離感が良い感じになっているようだ。
機体設定