Side:夏姫


並行世界に転移した直後に戦闘になるとは思ってなかったが、この程度の無人機如きはアタシ達の敵ではなかったな?――ソコソコ高性能だったの
は間違い無いが、其れでもライブラリアンのザクやグフと比べれは雑魚でしかない。
その雑魚に手間取っていたこの世界の連中に一抹の不安を覚えるのだが、この世界では此れ位のレベルが普通なのかも知れないな……そうだと
すれば、アタシが不安を覚えるのはお門違いかな。

それにしても、並行世界だから同じ人間が居るのは当然だと思うが、アタシの姿が見えないな?……この世界にはアタシは居ないのか?



「その可能性はゼロじゃないよなっちゃん。
 並行世界ってのは『限りなく似た環境の異世界』だから、私達の世界では存在してる人が存在してなかったり、逆に私達の世界には存在しない人
 達が存在してるかもなんだよね。」

「成程、分かり易い回答をありがとう束さん。」

一夏はこっちの一夏……分かり難いから、こっちの一夏の事はワンサマーと呼ぶ事にしよう……と何かを話してるみたいだな?内容は分からんが。
其れは兎も角、アタシ達を見てこっちの世界の住人は驚いているが同然か……行き成り自分と同じ顔をした奴が、此れだけ現れたら驚くなと言うのが
無理な話だからな。



「一夏が2人……だけではなく、篠ノ之にオルコット、凰にボーデヴィッヒ、更識姉妹……果てには布仏姉妹にこの場には居ない鷹月に相川に谷本も
 2人存在しているだと?
 貴様等、本当に何者なんだ?」

「其れは此れから説明するが……初対面の相手に向かって『貴様』とは、如何かと思いますよ織斑先生。――教師であるのならば、言葉遣いには注
 意をした方が良いのでは?
 貴女のネームバリューは相当なのだから、アナタの真似をする生徒がいてもおかしくないのですから。」

「……まぁ良い。何にせよ、説明はして貰うぞ。」



……アタシの言う事は無視か。
こっちの千冬さんは、アタシ達の世界の千冬さんと比べると、如何やら教師と言うよりは『鬼軍曹』と言った感じみたいだな……って言うか、初めて会っ
た相手を『貴様』呼ばわりするとは人としてどうなんだ?
そして、更識姉妹以外の連中も、アタシ達を怪しむだけならば兎も角として、何だかアタシ達の事を見下しているように感じてならないわ。
若しかしなくても、この世界はアタシ達の世界以上に歪んでいるのかもしれないわね……ならば、レギオンIBとして、その歪みを破壊しなければな。











Infinite Breakers Break79
This is ParallelWorldみたいだ』










取り敢えず先ずは自己紹介と行きたい所だが、先ずはアタシ達が何者であるかを説明させて貰っても良いか?――アタシ達の素性が分からないの
では其方とて困るだろう?



「そうだな、先ずは其処から説明して貰おうか。」

「では説明させて貰います。
 アタシ達は、所謂『並行世界』からやって来た、言うなれば彼方達の異次元同位体だと思って下さい――尤も、此方の世界にはアタシは居ないみた
 いですけどね。」

「並行世界だと?……馬鹿馬鹿しい、其れを信じろと言うのか?」

「信じるかどうかはアンタ次第だぜ、この世界の千冬さん。
 だけどな、並行世界への転移装置を開発したのは俺達の世界の束さんだぜ?……束さんなら、其れ位のモノも普通に開発出来るって思うんだけど
 その辺如何よ?」

「……束が絡んでいると言われるとどんな正論をもってしても否定出来なくなるだろうが。……だがまぁ、束が一枚噛んでいると言うのならば、並行世
 界の住人と言うのも信じるには値するか。」



ナイスアシストだ一夏。……この世界でも『束さんなら』が通じるとは少し微妙な感じがするが、兎に角アタシ達の世界の束さんが殆どノリで『並行世界
渡航機』を造り、其れを使った事でアタシ達はこの世界に来ていると言う訳だ。
まさか、この世界に来た途端にドンパチやらかす事になるとは思わなかったけれどね。



「取り敢えず、お前達の話を信じるとして、お前達の世界の束も来ているのか?」

「来ていますよ。あの白衣を着たのが、私達の世界の姉さんです。」

「「「「「「「「「え゛?」」」」」」」」」



で、箒がアタシ達の世界の束さんが誰なのかを教えたら、こっちの世界の連中の目が点になっていた……この反応を見る限り、如何やら此の世界の
束さんも打っ飛んだ格好をしているらしい。
其れで、何をしてるんですか束さん?無人機なんかを調べて……



「この無人機、ダミーじゃなくて本物のISコアが搭載されてる……だけど、どこかの国が新たに開発したモノじゃなさそうだね?――と言うか、どっかの
 国が開発したモノだったら、IS学園を襲撃する理由がないし。
 ……如何やらコイツ等は、この世界の束さんが寄越した物らしいね。目的は知らないけど。」

「……はい?」

「その無人機は、この世界の姉さんが寄越したと言うのですか!?」

「間違いないね。
 形こそ違うけど、各関節部の構造なんかは私が開発したアストレイシリーズやイージス、セイバーに通じる物が有るからね……如何やらこの世界の
 束さんは、常識ってモンが欠如してるみたいだね?
 こんなモンを送り込んで、一般生徒に被害が出たら如何する気だっての。」

「馬鹿な、束がごくごく普通の研究者と言った格好をしている上に、常識的な事を言っているだと!?」

「世界が違うだけで、同じ人間でもこうも違うと言うのか!?姉さんが常識を口にするとか、世も末か!?」

「……いや、この世界のタバ姐さんはドンだけぶっ飛んでて非常識な存在なのよ……」

「マッタク持って同意見だよ鈴。」

しかしまぁ、コイツ等はこの世界の束さんが寄越したと言うのか……何の目的があったのかは知らんが、呆れてモノが言えんな?
アリーナには専用機持ちしか居なかったから、一般生徒の避難は済んでいたのだろうが、若しも生徒の避難が済んでいない状況で無人機との戦闘
が行われていたら、最悪の場合死者が出ていたかもしれないと言うのに……こっちの世界の束さんには常識とか倫理観とかがないみたいだわ。
だが、それ以上に問題なのは、こっちの学園のセキュリティだ。……教師部隊は何をしていたのやらだ――外敵の対処を専用機持ちだけが行う等と
言う事は正気の沙汰とは思えん。

「……今回の件、教師部隊は何をしていたんですか?」

「出撃命令は出したが、学園保有の機体の認証に戸惑っていたようだ。
 即使用認証が出るように、パスワードを設定していた筈だが……その入力に戸惑って居たんじゃないか?――結果論ではあるが、お前達が介入し
 てくれたおかげで、此方は助かったがな。」



はぁ?本気で言ってるのかこの世界の千冬さんは!?
学園が、生徒が危機的状況に陥ってると言うのに、幾ら何でも楽観的過ぎるだろうに……否、楽観的を通り越して、最早此れは危機意識の欠如と言
っても過言ではないレベルだ。
生徒会長として如何思う楯無?



「そうとしか言いようがないわね……まぁ、そっちの私と簪ちゃんはキッチリと対処していたからアレだけど、夏姫がそう思っても仕方ないと思うわ。」

「だよな。」

だが、その無人機がこの世界の束さんが送り込んだモノだと言うのならば、物凄く嫌な予感しかしない……間違いなく、面倒な事になるわよね?其れ
も多分最大級レベルで。
……本気で、少し頭痛がして来たわ。



「その予感は間違ってないよなっちゃん……此処に向かって飛来してる物体があるからね。――と言うか、来たみたいだね?」



――キィィィン!……ズドォォォォォォォォン!!!



そう思った次の瞬間に、ニンジン型のロケットがアリーナに突き刺さっていた……うん、此れは間違い無く中にはこの世界の束さんが乗っていると見
て間違い無いな。
束さん以外にこんなぶっ飛んだ事をする人はいないだろうからね。



「お前等ーー!束さん特製のゴーレムをよくも破壊してくれたな!!
 って言うか、箒ちゃんと同じ格好をしてるとか、ムカつくね!!……折角いっ君を鍛える為に送り込んだ無人機を撃破するとか生意気だよお前等。
 取るに足らない雑魚のくせに出しゃばりやがって……死ねよ。」



で、中から出て来たこの世界の束さんは、敵意全開の視線を向けて来て、死ねと来たか。
はぁ、完全に人格破綻者だな此れは……何処の世界に『死ね』と言われて死ぬ奴が居るって言うんだか。余程の自殺願望者でない限り、『死ね』と
言われて死ぬ人間は居ないだろうに。

こっちの束さんはアサルトライフルを向けて来たが……



「……こっちの世界の束さんが、こんなクズだったとは残念だよ……てかさ、思い通りにならなかったからって癇癪起こすとか、ガキかお前。」

「な!?」



其れよりも早く、アタシ達の世界の束さんがこっちの世界の束さん……面倒だから、こっちの世界の束さんは天災で良いか。その天災の後に回って千
冬さん張りのアイアンクローをかましてそのまま片手で釣り上げる。
蟀谷がヒクついてる辺り、こっちの世界の彼是とこっちの束さんには完全にブチ切れたみたいだ。



「どっせい!!なっちゃん、たっちゃん、やっちゃって!!」



そのまま束さんは天災を片手で上空に投げ捨て、アタシも其れを追って天災を『キン肉バスター』の体勢に捕らえる……この技から逃れる事は出来
ない。覚悟を決めるんだな。



「何だいこんな技!既に攻略法は知れてるじゃないか!こんな物、束さんの手にかかれば簡単に外せるんだよ!!」

「確かにキン肉バスターには首のフックが甘い点があり、更に両手は自由に動かせるから6を9にするキン肉バスター返しや、両腕を振る事でジャイロ
 回転をして天井を着地点とするネオ・キン肉バスターの様な返し技が存在する。」

「でも、其れはあくまでもシングルマッチに限っての事……キン肉バスターは、この技が加わる事で完全無欠の必殺技となるわ。」



そこに刀奈が飛びつき、両大腿部を己の膝で極め、両腕をチキンウィングに極める『変形型OLAP』を極め、其のまま降下!!
此れこそN&T(K)最強コンビネーション『NIKU→LAP』!!――キン肉バスターの頚椎、両肩、両大腿部の5か所同時破壊に加えて、OLAPの両肩と
背骨の破壊が加わったらダメージは相当だ。



「ぺぎゃぁぁ!!?」

「うふ、キッチリ極まったわね♪」

「暫くそこで大人しくして居ろ天災。」

アタシと楯無が完全KOした天災は、束さんがストライクに搭載されてるワイヤーでぐるぐる巻きにしてターンエンド……こっちの世界の束さんは、アタシ
達の世界の束さんと比べると半分程度の力しかないみたいだから、あのワイヤーを斬る事は出来まい。
加えて頑丈さも半分程度か?アタシと楯無のNIKU→LAPを喰らって完全に伸びているからね……まぁ、何にしても暫くは動く事も出来ない筈だ。

さて、思わぬ邪魔が入ったが、改めて自己紹介と行こうか?



「ね、姉さんをKOした、だと?」

「あの眼鏡と、あっちの楯無さんは本当に人間な訳!?普通に有り得ないんですけど!」



この世界の箒と鈴が何か言ってたが、まぁ、スルーしても問題はないだろうな――と言うか、刀奈の強さは兎も角、アタシや一夏の秘密を話したらドン
ナ面倒事が起きるか分かったモノではないし、もしもワンサマーが一夏と同じ出生だった場合、要らぬ不安を与えてしまうからな。
無難にアタシと楯無が天災よりも強かっただけだと言うのがベターな説明と言った所か?……其れで納得するかどうかは分からないが。



「あらぁ、何だか凄い人達が来ちゃったわね?
 まぁ、こんな所で話すのも何だから、生徒会室に移動しましょうか?本音と虚ちゃんも交えた方が良さそうだし。」

「流石は私、良い判断だわ。って、此れって自画自賛になるのかしら?其れとも異次元同位体とも言える存在だから、自画自賛にはならないのかしら
 ね……でも異次元同位体でも貴女も私も更識楯無……難しい問題だわ。」

「そうね、簡単な問題ではなさそうだわ。
 別の世界で生きるもう1人の自分は果たして自分と同一の存在であるのか全く別の存在であるのか……世界線を取るか遺伝子を取るかで意見が
 分かれそうね?」

「この議論だけで、100年は激論が続けられそうな気がして来たわ。」

「……そこの生徒会長2人、双子漫才みたいな事してないでさっさと生徒会室に移動しないか?」

「「其れもそうね♪」」

「いや、ハモるなよ。」

取り敢えず全員で生徒会室に移動だ。
この世界の楯無――アタシ達の世界の楯無と区別するために『さん』を付けて呼ぶ事にするか――の案内で生徒会室まで移動しているんだが、如何
にもこの世界の箒達からの視線が気になる。
この世界のワンサマーはさっきの戦闘での一夏に思う所があったみたいで、何やら色々と聞いてるみたいなんだが、この世界の箒達からはアタシ達
に対して何故か見下しているような視線を感じるんだよな……さっき、アタシ達を見下してるように感じたのは間違いじゃなかったと言う事か。
余程自分に自信があるのか、其れとも実力差すら計れない二流なのか……先程の戦闘を見る限りは後者の確率が高いだろうな。あの状況で、碌な
連携をせずにスタンドプレーに走る位だからね。


なんて事を考えている内に生徒会室に到着。
移動中に楯無さんが連絡をしたのだろう、既に中にはこの世界ののほほんさんと虚さんが待っていてくれていた……いたのだが――



「君はー、私なんだよねー?」

「私もー、君なんだよーー♪」

「「面白いね~~~~♪」」



まだ自己紹介もしてないのに、アタシ達の世界ののほほんさんと、こっちの世界ののほほんさんが速攻で馴染んでいた……お互いに顔を見合わせた
後で、ニカッと笑って通じ合うとか、のほほんさん恐るべしだな本気で。



「「ねぇ、虚ちゃん……私、時々本音って物凄く大物なんじゃないのかって思う事があるのだけれど……」」

「「いえ、気のせいでしょう……多分。」」



そして、両方の楯無と虚さんが同じやり取りをしていた。
まぁ、のほほんさんはあれで良いとして、此方は此方で自己紹介と行こうか?――この世界からしたら、アタシ達の方が旅行者である訳だから、先ず
はアタシ達からした方が良いかな?



「いえ、先ずは此方からさせて貰うわ。客人に対しては、先ずは受け入れる側が自己紹介するモノだから。
 私は更識楯無。IS学園の生徒会長をさせて貰っているわ。」



ふむ、先ずは其方からか。
では、アタシ達の方が後からだな。――で、楯無さんの自己紹介を皮切りに、こっちの世界の面子の自己紹介となった訳だが、いやぁ、自己紹介だけ
でも色々分るものね?
まず更識姉妹と布仏姉妹はアタシ達の世界と大差ないし、ワンサマーは少々軽い感じだがフレンドリーで悪い奴じゃないと思うが……その他はハッキ
リ言って最悪だった。
先ずは箒――ぶっきらぼうな態度が悪いとは言わんが、あからさま嫌悪感を隠そうともしないとは人としてどうなんだ?……コイツ、絶対友達居ないだ
ろう?少なくとも、この一団以外の仲間は居ないだろうな。
次に鈴――無い胸張って自信満々に自己紹介するのは構わんが、さっきの戦闘に関して『アンタ達の援護が無くてもアタシ達が勝ってたけど、一応
礼を言っといてあげる。』って何様だお前。
更に、セシリアは癇に障るお嬢様言葉で鈴と同じような事を言ってくるし、デュノア……この世界ではデュノアのままなのかは兎も角として、デュノアは
笑顔の裏の腹黒さが透けて見えるし、ラウラはラウラで一応アタシ達の実力を『見事だ』と言っておきながら、最終的には『助太刀は必要なかったが一
応感謝しておく。』と言い出す始末。
この時点で、大分こっちの世界の面子は人間としてヤバいと思ったのは秘密だ。

さて、今度は此方の自己紹介だ。
アタシは蓮杖夏姫……この世界にはアタシは居ないみたいだが、アタシ達の世界のIS学園で生徒会の副会長を務めさせて貰っている――因みに一
夏の双子の姉で楯無の彼女だ。



「えぇ!?ちょっと待てよ、そっちの俺は織斑じゃないのか!?」

「おうよ、俺は蓮杖一夏……夏姫姉の双子の弟さ。」

「て言うか、そっちの世界の私の恋人って如何言う事!?」

「いやん、言葉通りのままよ♪私と夏姫は恋人同士なの♪……夏姫ってばそんじょそこ等の男なんて目じゃない位のイケメン女子だから、同性であっ
 ても惚れちゃったの💛」

「確かに夏姫ちゃんはおっぱいの付いたイケメンと言えるかもだけど……まさかの百合展開は予想外よ。」



だろうな。
一発目から最大級の爆弾を投下した事で此の世界の面子は驚いていたが、自己紹介が続くにつれ驚きは更に大きくなって行ったと同時に、アタシ達
の世界とこの世界の差異も明らかになって来たな。
まずこっちの世界の静寐と清香と癒子は専用機を持たない一般生徒である事、アタシは存在しない事、一夏と箒に双子の兄弟や姉妹が存在していな
い事、オルコット家とデュノア社は健在である事……並行世界と言うのは思った以上にアタシ達の世界との違いがあるみたいだね。
他にも、亡国企業は只のテロリストである事、マドカがその亡国企業の一員である事等々……そのせいでマドカとダリルとフォルテが警戒されてしま
ったが、アタシ達の世界の事を説明したら、一応は納得してくれたみたいだ……其れでも警戒心が完全になくならないのは仕方ないかも知れんが。
マリアに関しては、詳細を説明すると色々と面倒な事になりそうだったので、セシリアとは他人の空似と言う事にしておいた……ワンサマーが『2Pセシ
リアみたいだ』とか言っていたが、まぁ間違いではないだろうな。
所謂『お嬢様言葉』でない事には、少し戸惑いがあったみたいだが。



「時に、其方のメンバーに何故私とセシリアとシャルは居ないのだ?」

「ラウラとセシリアは本国に報告する事があるから一緒じゃなかったんだ――其れからブリーズもとい、デュノアは俺達のチームの一員じゃないから誘
 う義理も義務もなかったから連れて来てない。」

「何か、ハブられてないかなそっちの僕?……若しかして、そっちの僕は何かやらかしたの!?」



あ~~……やらかしたと言えばやらかしたが、知らない方が良いと思うぞデュノア?世の中には知らない方が良いってモノが存在していて、アタシ達
の世界のお前がやらかした事もそう言った類の事だ。
絶対に知らない方が、お前の為だ。



「でも、其れでも知りたいよ!僕は何をやらかしたのさ!!教えてよ!!」

「……其処まで言うのならば話してやるが、聞いて後悔するなよ?……この話を聞いたら、最悪の場合は自殺しかねない様な内容だから覚悟だけは
 しておいてくれよ?」

「そ、其処まで言われると、怖いけど余計に聞きたくなっちゃうじゃないか……うん、覚悟だけはしておく!!」







――説明中








と言う訳だ、理解できたか?



「生きててごめんなさい。」



説明を聞いたデュノアは思いっきり凹んでいたが当然だな……一夏の機体データを狙った挙句に捕縛され、暫く学園の地下牢に閉じ込められた上で
デュノア社とフランスは崩壊したと聞けばこうなるのも当然と言えるわ。
だから聞かない方が良いと言ったのに、自己責任だぞ此れは。
一応フォローしておくと、新生フランスによって身柄を引き取られ、今は新しい家族と共に幸せに暮らしていて、学園にも新たな姓で編入し直して一夏
と鈴と同じクラスになっているよ。



「其れを聞いて、少しだけ救われたかも……ホント、興味本位で聞かない方が良い事ってあるんだね……」

「そう言う事だ。次からは気をつけた方が良い。」

さて、デュノアの方はひとまず良いとして、マドカの方は如何だろうか?
此方の世界の事を話して、一応納得はして貰ったが完全に警戒心が取れたと言う訳では無かったんだが……



「つまりお前は、向こうの世界の千冬姉の妹で、第2回モンド・グロッソの時に一緒にドイツに行って、そのまま留学してジャンク屋のギルドで暮らして
 て、専用機も其処で作って貰ったってか?
 マジでテロリストじゃないんだな……」

「だからテロリストでは無いと言っているだろう。
 ジャンク屋のギルドの仕事で、紛争地帯での人道支援やジャーナリストの護衛なんかはした事があるが、破壊活動をした事は無いぞ。」

「そうだったのか……こっちのマドカと違って、良い子だなお前。」



マドカ自らがワンサマーと話をしたら、アッサリと信じて貰えたみたいだ……面倒な事にならなくて良かったが、少々単純じゃないかワンサマーよ。
まぁ、取り敢えず此れで自己紹介は終わった訳なんだが、こっちの世界の鈴がアタシ達の世界の鈴を睨んでいるが、なんでだ?



「アンタ、アタシより胸大きくない?」

「大きいわよ?82あるわ!!」

「んな、80オーバーですってぇ!?」



胸囲の格差社会についてか。
確かに一夏のリミッターを解除したその日から、鈴の胸は急速に育って、出る所は出てるけど締まる所は締まってる極上のスレンダー美女になって居
るから、この世界の鈴が羨むのも仕方ないか。



「アンタ、なんでそんなに育ってんのよ!!」

「何でって……其れは、一夏が育ててくれたからに決まってんじゃない///



そしてここで爆弾投下。しかも只の爆弾じゃなくて核爆弾。



「そうだな、鈴の胸は一夏が育てたと言っても過言ではないな……かく言う私も、一夏に身体を開発されてしまった訳だが……」



はい、爆弾投下2発目。
しかも鈴も箒も左手薬指の指輪を見せつけているんだから、此れは核爆弾どころかシン・ゴジラの通称『内閣総辞職ビーム』級の破壊力が有ったのは
間違いないだろうね。
あ、ワンサマーも顔が固まってる……違う世界の自分が鈴と箒に何をしたのか理解したんだろうなきっと。



「ひ、左手の薬指に指輪だとぉ!?」

「アンタ達、一夏の何なのよ!!」

「私と鈴が一夏の何なのかだと……愚問だな。」

「アタシと箒は一夏の嫁よ!因みどっちも正妻だからその心算で♪――一夏は、アタシの事も箒の事も平等に愛してくれてるのよ!!」



爆弾投下3発目。
3発目の破壊力は、アルティメットバーストクラスだったんだが……其れが逆にこっちの世界の箒達を刺激してしまったかな?何やらプルプル震えてる
みたいだし――大丈夫か?



「胸を育てたって言う事はつまりそう言事よね?……一夏ーー!取り敢えず死ね!!!」

「此の不埒者が!その根性叩きのめしてやる!!」

「えぇ、俺!?」



大丈夫じゃなかったが、この世界の一夏を攻撃すると言うのはお門違いだろうに……其れよりも、生身の相手に対してISを展開して攻撃するとか本
気かコイツ等?
一歩間違えば大惨事だぞ!!



――ガキィィィン!!



尤もその最悪の事態はアロンダイトを構えた鈴と八十枉津日太刀を構えた箒が割って入った事で、事なきを得たが、生身の相手に対してISを展開し
て攻撃を加えるなど正気の沙汰ではない。
割って入った箒と鈴も相当に怒っているみたいだな。当然の事だが。
そもそもにして、今のは理不尽な暴力でしかないから黙ってる事が出来なかったのかも知れないがな。



「生身の相手にISを展開して襲い掛かるとは、常識がないにも程があるでしょ?……アンタ達馬鹿な訳?……まぁ、間違いなく馬鹿よね?
 其れは兎も角、何で一夏を殴ろうとしたの?」

「其れは、そいつが不埒な事をしたからで!!!」

「不埒な事か……恋人達の愛の営みが不埒だと言うのかお前は……その考えがある限り、お前が誰かと結ばれる事は絶対にないと断言しておいて
 やる。内容証明付きで。
 精々行かず後家にならないようにしろ。」

「貴様……偉そうに!!邪魔だてするなら貴様等から叩きのめすぞ!!」

「あら、其れ良いんじゃない箒?邪魔する奴は叩き潰すモノよねぇ?
 てか、其れならいっその事、並行世界の皆さんと一戦交えるってのは如何かしら?き~~っと、面白い事になると思うのよね?」



……如何やら、この世界の箒と鈴は人格破綻者であるのは間違いないな。
ワンサマーを庇った箒と鈴に噛みつくだけなら兎も角、其処からアタシ達と戦う事を提案するって、一体どんな思考回路しているのやら……しかも、あ
からさまに『逃げたきゃ逃げても良いけど。』と言わんばかりの顔で提案するとか、挑発にしても露骨すぎるだろうに。
まぁ、売られたケンカは買うが、最初に言っておくが、アタシ達に喧嘩を売った事を後悔するなよ?――アタシ達の実力は、最低でもお前達の3倍はあ
るからな。



――轟!!



「「「「「!!?」」」」」

「何を驚いている?ホンの少しだけ闘気を解放しただけだぞ?……この程度でビビっているのでは、この先の勝負も結果は見えたな――尤も、アタシ
 達がお前達に負ける事など、億に一つも無いがな。」

我ながら毒舌八丁だと思うが、其の効果は覿面だ――こっちの箒達は、アタシ達が解放した闘気に押されてしまったみたいだが、だからと言って手加
減をしてやる心算は無い。
先ずは徹底的にお前達の自信を叩き折ってやる――絶対的な敗北を知らないモノには成長は望めないからな……取り敢えず、先ずは自分のレベル
がどの程度であるのかを其の身でもって知るが良いさ。


弱者が強者へと至る道のりは、己が弱さを知って一歩目なのだからね……悪いが、手加減なしでやらせて貰うぞ。










 To Be Continued… 





キャラクター設定