Side:刀奈


私の相手は、一夏君のコピーって言うか、織斑計画で生み出された織斑先生の量産型の規格外品――規格外品と言えば、性能的には失敗だった
と思うだろうけれど、規格外品の中には正規品を上回る性能のモノがある場合があるのよね。
織斑先生を超える性能なんてのは悪夢でしかないからね。
尤も、正規品を上回る規格外品なんて言うモノは、極めてまれなモノであって、目の前にいる彼らは、悪い意味での規格外品のようだけど。



「フフフ、ヒャ~ッハッハッハァ!!
 覚悟は出来てるか?覚悟は出来てるかって聞いてんだよ此のアマチュアが!!俺に刃向うなんざ、100年早いんだよぉぉぉぉぉぉ!!!」

「悪いけど、私はプロよ一夏君の出来損ない君?」

「誰が出来損ないだ、殺すぞテメェ!!」



はいはい、吠えてなさい出来損ない。悪い意味での規格外品、言ってしまえば失敗作でしょ貴方達は。
マッタク持って、織斑計画で生み出された織斑先生の量産型の成れの果てと言った所だけど、ハッキリと言わせて貰うのなら、君達の実力は一夏君
の半分もないわ。
君達が束になった所で、一夏君なら5分以内に全員倒せる――そして私と夏姫なら2分以内に全員倒す、否、殺す事が出来るわ。
つまり、君如きは私の敵じゃないのよね……其れでも挑む?



「如何やら相当に死にてぇみたいだな?良いぜ、望み通りにぶっ殺してやるぜ更識楯無!!」

「殺される覚悟もないのに、軽々と殺すとか言うべきじゃないわ……覚悟のない強い言葉は、逆に弱く見えるわよ?」

まぁ、其れだけ命の重みと言うモノを知らないのだろうけれど、知らないというのならば私が――更識家当主、更識楯無が直々に教えてあげるわ。




――ジャキィィィィン!!



2本のビームサーベルを連結した状態は私の得意戦術だから、此れで教えてあげるわ、貴方達の実力で私達に挑むのは無謀で愚かな事であった
という事をね――精々己の身の程を知りなさい?
そして、誰にケンカを売ったのか――売ってしまったのか、後悔すると良いわ。










Infinite Breakers Break72
修学旅行初日の戦闘――雑魚が舐めるな』










No Side:一夏


新たな機体を手に入れた一秋を相手にしてる訳なんだが、マッタク持って歯応えがないぜ……エクスカリバーには及ばないとは言え、身長と同じ位
の大きさの剣で二刀流が出来る辺り、身体能力は確かに向上したみたいだが、戦い方に関してはマッタク向上してないな此れは。
二刀流とは言え、所詮は剣道の域を出ない動きだし、基本的に直線的で読みやすい……身体能力強化された上に、専用機まで使ってるってのに
この程度ってのは笑えないぜ。
って言うかさ、お前とあの似非パツキンはもうISに乗る事って出来なかったんじゃなかったけか?



「其れは篠ノ之束製のISに限った話だ!
 教授が作り出した『疑似ISコア』を搭載した機体なら、俺と散は動かす事が出来るんだよ!!――そして、このゲイルストライクは、白式と違って完
 全に俺用にフルチューンされた機体だ!あと5ターンで倒すとか抜かしてくれたが、果たしてそれが出来るか一夏!!」

「出来ねぇ事は言わない主義だぜ俺は?
 其れに、気付いてないのか?あと5ターンって言ってから、俺はまだ1回も攻撃してないぜ?」

つまり、残り5ターン宣言をしてから今まで、ずっとお前のターンで俺のターンは来てないんだわ此れ。
加えて、ずっとお前のターンであったにも拘らず、俺はノーダメージだぜ?――其れが何を意味するかは、天才のお前なら分かるよな?……お前の
攻撃を、俺は全部避けるかビームシールドで防ぐかしていたって事だ。
まぁ、あんな分かり易い攻撃を喰らってくれる奴なんざ、相当な間抜けか、武術の心得の無い素人か、剣道を始めたばかりの小学生位なモンだろう
けどな。

逆に言うなら、お前の実力なんぞ素人や小学生に毛が生えた程度って事だ……ハッキリ言って、俺の敵じゃないぜ?



「偉そうに言うな出来損ないがぁ!!」

「だから、出来損ないはテメェの方だろうが。
 ったく、織斑計画を考えた連中は、人格の設定までちゃんとやっとけよ……こんな人格破綻者が最高の人間になる筈ねぇって事位分かるだろ?」

「誰が人格破綻者だ!!」

「お前だお前!!少しは自覚しろよ馬鹿野郎!!」

自分が正常だと思ってんなら、一度精神科受診しろマジで。少なくとも、俺はお前や似非パツキン以上の人格破綻者を俺は知らないぜ?
だがまぁ、お前の幼稚な戦いにはもう飽きた……終わりにするぜ一秋!!
此処からは俺の5ターンだ!!



――ズバァァァァァ!!!



まずは1ターン目、エクスカリバーの二刀流でX字に斬りつけてシールドエネルギーを減らす!



「く!舐めるなぁ!!」



其れに逆上した一秋が攻撃してくるが、其れに対してカウンターの顔面蹴りを炸裂させて蹴り飛ばす!此れで2ターン目!
更に、ストライカーパックからビームブーメランを取り外し、二連続で投擲する事で、一秋のストライクのウィングスラースターを破壊した3ターン目!



「調子に乗るなよ、一夏ぁぁぁぁぁぁ!!」

「調子に乗ってるのは、新たな力を手にしたテメェの方だろ一秋!!」



――バキィィィィ!!



突っ込んできた一秋の武器をエクスカリバーで破壊して、此れで4ターン目。
そして此れが最後の5ターン目だ一秋?覚悟は良いな……零落白夜起動!!――お前のせいで苦しい思いをしてきた白式の思いを、今此処で清
算してやるぜ!!

「此処までだぜ一秋……遊びは終わりだ!!」

「なんだと!?……グバボガァァァァァ!!?」



近距離で瞬時加速を使えば、消えた様に見えるから次の攻撃に対処する事は出来ねぇ……如何に俺達が最高の人間を目指して作られた存在で
有ったとしてもな。
此れに対処出来るのは夏姫姉か楯無さん位なモンだぜ……夏姫姉は兎も角、ナチュラルな存在でありながら、夏姫姉とタメ張れる楯無さんは、束さ
んと同様の天然チートなのかも知れないけど。
少し話がずれたが、要するにテメェには俺の攻撃を避ける術はねぇ!大人しく落ちろ一秋!!

「ちょいさーぁぁぁぁぁぁ!!!」



――ズバァァァァァァァ!!



「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!」



零落白夜を発動してのエクスカリバーの一撃、此れが5ターン目だ。――零落白夜の力で、機体を強制解除された一秋は、そのまま落下して地面と
盛大なキスをした挙げ句にあの世行きになると思ったんだが、そうはならなかったみたいだな?



――キィィィィィン……パシュン



一秋の機体が解除されると同時に、一秋の身体を光が包んで、光が消えた時には一秋は居なかったからな――何らかの転移機能で、此処から離
脱したって事か。
辛くも、逃げおおせたみたいだけど、次に有った時にはそうは行かないぜ一秋……お前の事は、俺がこの手で引導を渡してやる!
何よりも今回の事で確信したからな――お前は生きてはいけない奴なんだって事をさ!……嘗ての弟としてのせめてもの務めとして、テメェは俺が
必ずこの手で終わらせてやるぜ。覚悟するんだな!








――――――








Side:箒


主力武器である天羽々斬を奪った事で、散は決定打を与える武器を失った事になるのだが、にも拘らず散にはまだ余裕があるように見えるな?
其れに、天羽々斬を返せと言っている割には、積極的に奪いに来ていると言い難い……お前、何か隠しているな散?

「出し惜しみして私に勝つ心算か?だとしたら、私も大層舐められたものだな散?――出し惜しみなどせず、お前の持てる全ての力をもってかかって
 来い。
 其れ位ではないと、私に勝つ事は出来んぞ。」

「箒……良いだろう!見せてやるぞ、ミラージュフレームの最終形態を!!そして、此れを見た事に後悔しろ!!」



む、私の挑発に反応する形で散が切り札を切ってくれたが……何だその姿は?
足に3本のブレードが展開されただけでなく、フェイスプレートが反転して新たな顔が現れ、両腕とも肘から下は実体ブレードに変わる……やや人型
とは異なる姿……其れがお前の言う最終形態か散。



「ミラージュフレーム、グラディエーターモード。
 お前を殺す者の姿を、その目に焼き付けるが良い!!此れで、だるまにしてやる――お前は、此処で死ねぇぇぇぇぇ!!!」

「誰が死ぬか阿呆が。」

グラディエーター……剣闘士と言う意味だったか?
ブレードと化した両腕に、巨大なクローが搭載された足首は、此れまで以上に格闘能力が高そうだ……正に、全身此れ凶器とはこの事か。
正直、両手両足がそのままブレードとして機能すると言うのは厄介だな?一応此方にも散から奪った天羽々斬と、アカツキのビームサーベルが有る
が、天羽々斬が大太刀だからビームサーベルとの二刀流は出来ないから手数では負けてしまう――相手が散でなければな。

「よもや形態変化をするとは思ってなかったが、その形態を見て計画変更だ。
 先ほどは7手と言ったが、お前はあと4手で詰む。」

「何だと!?それ以前に、グラディエーターモードを起動したのになぜ3手減る!!」

「貴様では、その形態を使いこなす事は出来ないと判断したからだ!」



――ギュオン!!



「んな、速い!!」

「オオワシストライカーの最大速度は亜音速に達する、姉さんが作った機体の中でも屈指の加速力を誇るバックパックだ――故に、貴様では捉える
 事は出来んぞ散!!」

まず1手目!
私の突撃に対して、咄嗟に蹴りを出して来た散に対し、足に展開されたブレードを一刀両断!!――天羽々斬の刀身にはPS素材が使用されている
らしく、電圧を最大まで上げて黒い刀にしたら、アッサリとミラージュフレームとやらの足ブレードを粉砕したな。
ミラージュフレームにもPS装甲が搭載されているようだが、黒よりも強度の低い紫では耐えられなかった様だ。



「貴様ぁ!!」

「相変わらず、お前の攻撃は温いな……己の力を過信し、只暴力を振るっていた者などこの程度か。
 マッタク持って罪深いなお前は?……お前の事を父さんに伝えたが、嘆いていた。そして、こう言っていたよ『散に剣を持たせたのは間違いだった
 様だ』とね。
 父さんは、剣を通じてお前に色々と学んで欲しかったようだが、お前は剣と言う力を得た事で、其れを無意味に振りかざす事しかしなかった……私
 が免許皆伝をしているのに、お前が門下生のままだったのは其れが原因だ。
 其れでも、父さんは何時かはお前が気付くだろうと、気付いてくれるだろうと思っていた……其れなのにお前は、気付く所か一秋と一緒に愚行を重
 ね続けた――最早御しがたい。
 姉の務めとして、貴様に引導を渡してやる!」

言うが早いか、もう片方の足のブレードも砕いて、此れで2手。
そのまま飛び上がり、オオワシのブースターでの加速を加えた唐竹割!!
散は咄嗟に両腕のブレードでガードするも、PS素材の強度が違う上に、私とアカツキの重量+落下速度+オオワシのブースターの加速が加わった、
力任せの唐竹割を防ぎきる事は出来ずにブレードは粉砕。これで3手目。
そして此れが〆の4手目だ……せめてもの手向けとして、免許皆伝をした者のみが使う事の出来る、篠ノ之流の奥義を見せてやろう!



――バシュン!!



「古都の空に、月光を浴びながら散れ……篠ノ之流奥義、月下閃翔!」



――ズバァァァァァァァァ!!!



「うわぁぁぁぁぁ!!腕が、私の腕がぁぁぁ!!」

「喚くな耳障りだ。
 本来ならば首を落としてやるところだが、せめてもの情けとして、右腕1本で妥協してやる――とは言っても、其のままでは出血多量で死んでしまう
 から、取り敢えず傷口を焼き固めるぞ。ビームでな。」

「ギャァァァァァァァァァァ!!!」



オオワシに搭載されているビームランチャーで傷口を焼き固めてやったら、余りの激痛に気を失ったか……だが、其れと同時に散は光に包まれ、其
の光が収まったら散の姿はなかった。
転移機能と言う訳か……今回は情けをかけて生かしておいてやったが、次はないぞ散――次にお前が私の前に現れたその時は、迷わずお前の首
を落とす。
テロリストに身を落としたお前は、もう正道に戻る事は出来ん……ならばせめて、私の手で葬ってやるのが、双子の姉の務めだろうからね。








――――――







――一夏が一秋を、箒が散を落とす数分前


Side:鈴


一夏のなり損ないが操るバスターと戦闘を開始した訳なんだけど、ぶっちゃけコイツ弱くない?
いや、学園の一般生徒や一秋と比べれば充分強い部類に入るんだろうけど、アタシ達に戦いを挑むにしては弱すぎるんじゃないの此れ?態々やら
れに来た訳コイツ等?まぁ、落とす心算だったから良いけどさ。
それに、戦闘力も大した事なければ、戦闘技術もハッキリ言って稚拙としか言いようがない位に低いわ。
砲撃型のバスターだから、圧倒的な火力で制圧するってのは間違ってないけど、簪ならもっと上手くやるわよ?
ぶっちゃけ無駄弾撃ちすぎ……まぁ、アタシのデスティニーの機動力がハンパないから、狙いを付けるのが難しいのかも知れないけど、だったら尚の
事、慎重に撃たないといけないんじゃないの?
後先考えずに、そんなに無駄弾撃ってたら――



「クソ、この馬鹿IS!もうパワーがヤバい!!」

「お前はどかどか撃ち過ぎなんだよバーカ!」

「何だとぉぉぉぉぉぉ!!!」



あっと言う間にエネルギー切れ起こすわよね普通に。デュエルのパイロットにまで馬鹿にされてるし。
タバ姐さんが開発してくれたアタシ達の機体には、無限のエネルギーを生み出してくれる核融合エンジンが搭載されてるけど、其れがアンタ達のISに
搭載されてるとは思えなかったんだけど、如何やらビンゴだったみたいね?
って言うか、マドカが相手してるデュエルが此処に居るって事は……



「スイッチだ鈴姉さん!」

「OK!任せなさい!!」

マドカも此処に居るって言う事で、此処で互いの相手を交換するスイッチ!
まぁ、相手が変わっても、アタシはアンタ達を倒すだけだわ……正直言って、一夏と同じ顔した雑魚以下の連中が居るってのは我慢ならないのよ。
だから、全部斬り捨てる……一夏は1人だけ居ればいいわ。



「凄い闘気ね?私も混ぜてくれるかしら鈴ちゃん?」

「のわぁぁぁ、楯姐さん!?何で此処に!?」

「ブリッツ吹っ飛ばしたら此処に来ちゃった♪」



吹っ飛ばしたらって……結構距離が有ったと思うんだけど、それにも拘らずここまで吹っ飛ばすってアンタ本気で人間ですかい楯姐さんや?まぁ、楯
姐さんが加わってくれたのなら、頼もしい限りだわ。
其れと、アンタ達、アタシ達だけに集中してると危険よ?



――バシュ!

――バシュ!

――バシュゥゥゥゥゥ!!




「「「のわぁぁ!!!」」」

「マリアのドラグーンが狙ってるから……って言うだけ遅かったわね~~。」

マリアは16基のドラグーンを手足のように操ってるからね……って言うか、16基のドラグーンを同時操作するとか、マリアはドンだけの空間認識能
力と並行分割思考が出来てるのかって思うわ。
でも、そのお陰でアタシ達は大助かりなんだけどさ!!



――ゴォォォォォォォ!!

――ジャキィィィン!!




アロンダイトを構え、光の翼を展開して、超速突撃からの一線で、デュエルのバズーカを破壊し、追撃のレールガンのゼロ距離砲撃でシールドエネル
ギーを粉砕、玉砕、大喝采!!



「落ちろ、夏兄さんのなり損ないが!!」

「出来損ないは、所詮この程度みたいね……がっかりだわ。」



更にマドカがバスターのメイン兵装である2つの大型火器をトリケロスのクローを使って破壊し、楯姐さんは持ち前の戦闘技術でブリッツを封殺!!
マドカの攻撃を喰らったバスターと、楯姐さんの攻撃を喰らったブリッツ、アタシが落としたデュエルは行動不能になった訳だけど、その瞬間に機体が
光って、光が収まった時にはその場からいなくなってた……転移したみたいね。
――今回は逃げおおせたみたいだけど、次はそうは行かないから覚悟しておきなさい!!

取り敢えず、アタシと楯姐さんとマドカは、担当の相手を退けたけど……



「ほらほら、踊りなさい?ダンスも出来なくては、女性をエスコートする事は出来ないわよ?」

「踊りなさい、私のブルーティアーズとお姉さまのプロヴィデンスが奏でるワルツの下で!!」

「敵が多いね~~……簪、一気にぶっ飛ばすのは如何思う?」

「うん、良いと思う静寐……纏めて吹き飛ばそう。」

「だよねぇ?そんじゃ行きますか!!喰らえ!!」

「「フルバーストォォォォォォォ!!」」



――バガァァァァァァァァァァァァァアァァァァァァァァァァン!!!



……マリアとセシリアがドラグーンで無人機をキリキリ舞いさせてたのは良いとして、簪と静寐のダブルフルバーストには若干引いたわ……カラミティ
の4連装ビームキャノン、プラズマバズーカ砲、胸部のカリドゥスの一斉掃射だけでも強力だってのに、簪のバスターは左肩の火線ライフル、左肩の
ガンランチャー、両腰の大口径ビームライフルに加えて両肩に搭載された6連装ミサイルポッドから、秒間60発って言う悪魔みたいなミサイルが放
たれる訳だからね……ぶっちゃけ、簪1人で国落とせるんじゃないの此れ?
夏姫のドラグーンフルバーストも相当だけど、簪のフルバーストはえげつないわマジで。



「その可能性は否定できないわ――私の妹は世界一♪」

「シスコン乙です楯姐さん。」

取り敢えず一夏の劣化品は片付けたから、後は無人機を一掃すればお終いね?――夏姫と一夏と箒は、未だ交戦中らしいけど、あの3人が負ける
なんて事は、1000兆に一つもないからね。
だから、さっさと倒して戻ってきなさいよ――『アンタは俺(アタシ)(私)の敵じゃなかったって』って余裕で決めてみてよ。アンタ達には、其れが似合う
んだからね!








――――――







――一夏が一秋を、箒が散を、楯無と鈴とマドカが一夏のなり損ないを撃滅した後



Side:夏姫


お前の言うSeeDを発現したアタシと互角に遣り合うとは大したモノだと思うのだが、戦局はアタシ達の方が有利になっているみたいだなイルジオン?
一秋は一夏に落とされ、散は箒に落とされ、一夏になり損ねた連中は、鈴とマドカと楯無が落とした。
そして、其れだけでなく、貴様等が連れて来た無人機も、レギオンの面子とスコールさんと山田先生の手によって無力化されている――状況は圧倒
的に此方が有利なのだが、まだやるかイルジオン?



「いや、止めておこう……引き際が分からない程馬鹿ではないし、今回の襲撃はお前達を倒せれば御の字と言った感じだから、別に勝つ事が出来
 なくても問題は無いからな。」

「……オイ、其れならばなぜ襲撃などして来た?」

「一秋と散の強化と、機体の実戦データを取るのが目的――と言うのはある意味で建前。
 本当の所は一秋と散のガス抜きだ……この間の女権団との戦いに連れて行かなかったのが不満だったらしくてな?ストレスが爆発して余計な事
 をされても面倒だから、少しばかり発散させようと思ってね。」

「傍迷惑な……だが、発散できたとは思わないわよ?
 殆ど何も出来ずに完封負けした上に、散に至っては右腕を切り落とされてしまったみたいだからな。」

「そうだな……教授の強化のおかげで以前よりは身体能力が上がったとは言え、それ以外は殆ど成長していないのでは、この結果は当然だ。
 アイツ等だけで出撃させると、絶対に余計な事をするだろうから私が付いて来たのだけれど、問題児の引率は楽ではないと身をもって知ったよ。」

「そうか、其れは貴重な体験だったんじゃないか?」

「相当にな。
 此れからもアイツ等のお目付け役をしなければならないと思うと頭が痛いが……まぁ、今回の事でアイツ等も少しは大人しくしてくれる事を願うばか
 りだ――今宵はここらでお暇させて貰うとしよう。
 私が言うのもオカシイが、京都旅行を楽しめよオリジナル。」



――パシュン!!



消えた?否、転移したのか……旅行を楽しめとは、お前が言うかお前が。
しかし、空間転移をするとは……如何やら、ライブラリアンと言うか教授とやらは、アタシの予想を超えた技術力を、其れこそ束さんにも負けない位の
技術力と頭脳の持ち主らしいな?
そんな奴が率いる集団がアタシ達の前に立ち塞がるか……上等だ。立ち塞がると言うのならば、砕いて進むだけだからな!
貴様等の目的が何かは知らないが、アタシ達に敵対すると言うのならば滅するだけだ……敵には容赦するなが、ISRIの社訓でもあるからね……貴
様等がどんな事をして来ようともアタシ達が負ける事だけは有り得ん。
何れ本拠地を突き止めて、本拠地諸共跡形もなく消し去ってやるから、その日が来るのを楽しみにしておけ。



「夏姫、イルジオンは?」

「形勢不利と見て転移した……コンバットクローズと言った所かな?」

「そうね、無人機も全部倒したし、追加戦力が来ると言う感じでもないから戦闘終了よ――ホテルに戻って休みましょう。」

「賛成だ。」

まさか、初日から仕掛けてくるとは思わなかったからな……苦戦はしなかったが、ドラグーンの連続操作に加えて、イルジオンのドラグーンからの攻
撃にも対処する必要があったから、流石に少し疲れた。
ホテルに戻ったら、軽くシャワーを浴びて寝るのが一番だわ。明日のクラス別行動、明後日の班別行動を充分に楽しむためにもね。








――――――







Side:イルジオン


さてと、ライブラリアンの本拠地に戻って来た訳だが……散以外の4人はメンテナンス用のカプセルに直行したようだな?
当然と言えば当然か。明らかに自分よりも格上の相手と戦い、限界に近い力を出してしまったのだからな……即メンテナンスしなければ使い物にな
らなくなってしまうからね。
其れで教授、散の右腕は如何する心算だ?生憎と、切り落とされた腕は回収していないのだが……



「ふむ、其れについては問題ない。
 彼女には新たな腕を作ってあげるとしよう。序に、奪われた天羽々斬に変わる剣もね――とは言え、今回の戦闘のデータを見る限り、彼等の身体
 はもっと大胆に改造しなくてはならないらしい。
 SeeDの発現とまでは行かなくとも、其れに近い力を引き出せるようにしてあげないと、彼等も満足はしないだろうからね?」

「……教授、矢張り一度精神科を受診しろ。
 何なら、ネットで良い病院を探してやるから。」

「フフフ、其れには及ばないよイルジオン。
 何よりも、私を診察などしたら、医者の方が使い物にならなくなってしまうだろう?違うかな?」



違わないな。
其れで此れから如何する?アイツ等を改造するのは構わんが、1日2日で済む話でもないだろう?――まさか、私に無人機引き連れてIS学園にちょ
っかい出して来いとか言わないだろうな?



「あぁ、そんな事をして貰う気はないから安心したまえ。
 少なくとも、彼等が京都にいる間はこれ以上何かをする心算はない――君にも休暇を出そうじゃないかイルジオン。折角だから、京都を観光でもし
 て来ればいい。
 折角の京都が、夜戦だけと言うのもツマラナイだろうからね。」

「京都観光か、其れも良いかも知れないな。」

しかし、普通に観光をしている私を見たら、果たしてオリジナルはどんな反応をするのかだ。
まぁ良い、折角の休暇を貰った訳だから、ゆっくりと京都観光でもしてくるとしよう。――転移装置が使えると便利なんだが、今の所外部から本拠地
に戻る場合にしか使えないのが難点だな。



「あぁそうだ。京都に行くなら、生八つ橋は忘れずに買って来ておくれよイルジオン?」



……変な所で俗っぽいな教授は。









 To Be Continued… 





キャラクター設定


・ツヴァイ
『織斑計画』によって誕生した、量産型織斑千冬の2号機。プロトタイプである『ヌォイ(一秋)』、1号機である『アイン(一夏)』に続く3体目の成功例だ
ったが、計画が凍結された事で、後発機共々全て廃棄処分になる筈だった。
廃棄処分になる前に教授によって後発機共々連れ出され、ライブラリアンの一員となる。
量産型の中でも数少ない成功例で、明確な自我を持っているが、その性格は普段は物静かだが、戦闘になると一転してハイな戦闘狂になると言う
一貫性のないモノとなっている。


・ツィーン
量産型織斑千冬の7号機。ツヴァイの完成から、実に5体ぶりとなる成功例だった存在。
ツヴァイ同様に自我を持っているが、その性格は残忍にて酷薄、そして戦闘時には狂気までもが入り混じったモノになる。ある意味では、一秋以上
の人格破綻者。


・アハト
量産型織斑千冬の8号機にして、最後の成功例。これ以降の個体は、自我が発現する事はなく、全て失敗作となった。
成功例の中では比較的真面な性格だが、戦闘時には矢張り好戦的になる。戦闘時に好戦的になるのが元々の性格なのか、其れとも教授による
調整なのかは定かではない。





機体設定


・ヘイルバスター
形式番号『LH-GAT-X103』。
ライブラリアンがバスターのデータをベースに開発したツヴァイの専用機。形式番号の『LH』は『ライブラリアンヘイル』の意味。
『ヘイル』とは英語で『雹』を意味し、全身から無数の砲弾を降らす様になぞらえて命名された。
ベース機に比べ、頭部マスク部と胸部に追加された新型の複合センサーにより命中精度が格段に向上している。
また、膝部に接地ユニットを追加することで片膝立ち状態での命中精度の向上も図られている。
捕捉した敵機の情報はライブラリアンのデータバンクで瞬時に照合され、返信された情報に基づいた最適な攻撃が可能。
ベース機とは違い、ミサイルポッドカバーの裏に大口径のバルカン砲を搭載している。


・ネブラブリッツ
形式番号『LN-GAT-X207』。
ライブラリアンがブリッツをベースに開発したツィーンの専用機。形式番号の『LN』は『ライブラリアンネブラ』の意味。
『ネブラ』はラテン語で『霧』を意味する。
機体其の物はブリッツだが、バックパックや一部の装備にゴールドフレームと同様のモノが搭載されているが、此れはライブラリアンがブリッツとゴー
ルドフレームの融合を目したからかもしれない。
尤も、ゴールドフレーム自体が夏姫がブリッツを改造したモノなので、融合させたところで意味がない気もするが……


・レーゲンデュエル
形式番号『LR-GAT-X102』
ライブラリアンがデュエルをベースに開発したアハトの専用機。形式番号の『LR』は『ライブラリアンレーゲン』の意味。
『レーゲン』はドイツ語で『雨』を意味する。
本機はレールガンやバズーカといった中・遠距離戦能力を付加し、状況に応じて装備をパージし戦う能力を強化されている。
機体各部には装甲やスラスターが増設されているが、アサルトシュラウドのように重量増を招かないよう最低限のものとしている。
また、肩アーマーはゲイルストライクで培われた技術をフィードバックしつつ小型化し、大推力によって左右に機動する事も可能となった。