Side:イルジオン


夜襲と言うのは、ありふれた手段ではあるが有効であるのは間違いない――歴史を紐解いてみても、戦力で劣る部隊が、夜襲をかけた事によって
勝利を収めたと言う例は少なくないからね。
そう言う意味では、夜襲を選んだ一秋は只の馬鹿では無いのだろうが、夜襲をかける相手が悪過ぎだ。
私が蓮杖夏姫の存在を感じ取れるように、蓮杖夏姫もまた私の存在を感じ取る事ができるのだろう――否、下手をしたら織斑一夏もとい、蓮杖一夏
はこの馬鹿の気配を、篠ノ之箒は散の阿呆の感じ取ったかも知れんな。
其れを考えると、一秋と散は死亡フラグが立ったな間違いなく――仮に死なずとも、相当に深刻なダメージを受けるのは確実だろうさ……尤も、そう
なったら、そうなったで、教授が彼是やるだけだろうけどね。



「あの出来損ないの一夏共々、此処で纏めてぶっ殺す!!
 京都の街がどうなろうと、俺達の知った事じゃねぇ……アイツと夏姫を、今度こそぶっ殺して、俺達の望む世界を実現させるんだ!!俺達にはその
 力があるんだからな!!」

「そして、その世界が実現した暁には、一秋が世界の王となり、私はその隣にいる……あぁ、夢のようだ!!」



夢のようだ、ではなく夢其の物だ散。――まぁ、そう言った所で理解しないだろうから言わないけれど。
マッタク、コイツ等みたいなゴミクズを使わないとならないのだから冗談抜きで胃が痛い感じだ……マッタク持って、何の意図があってコイツ等の事
を回収したのか、教授に問い詰めたい気分だ。

……問い詰めたところで、答えが得られるとは思ってないけれどね。


だがまぁ、状況はどうあれ、オリジナルと戦える機会が訪れたと考えれば悪い事でもないか……私の目的は、貴様を抹殺して、私が私になる事だけ
だからな。
そう言う意味では、あの馬鹿が考えた夜襲と言うのも悪くはないだろうな――京都の夜空で、オリジナルと一戦交えると言うのも素敵なモノだ。
ふふ、今すぐ現れろオリジナル……他の奴では満足できない……私は、お前でなければダメなみたいだからな。










Infinite Breakers Break71
古都上空での戦い~雑魚が図に乗るな~』










Side:夏姫


修学旅行中に仕掛けてくるとは思っていたが、まさか初日から仕掛けてくるとは……中々にふざけた事をしてくれるじゃないかライブラリアンとやら?
修学旅行の最終日に仕掛けて来たのならば、略全ての日程が消化されているから撃退するだけで良いんだが、初日に仕掛けられたとならば、そう
簡単にはスマン――生徒に被害が出た場合には、その場で修学旅行が中止になる可能性は大きいからね。



「修学旅行が中止ですって?そんなのは認められないわ!まだ、一夏とのツーショット撮ってないし!!」

「私もだぞ!金閣寺をバックに、一夏とのツーショットを!!」

「鈴、箒、まず反応するのは其処か。」

「この状況にあって、俺とのツーショット写真の方が大事な鈴と箒なんだが、俺は一体何処から突っ込めばいいのか全く分からない――俺は何処か
 ら突っ込みを入れれば良いと思う夏姫姉?」

「知らないよ。」

取り敢えず、ハリセンで『其処かよ』とでも突っ込んでおけばいいだろう。
だが、お喋りは此処までだ……見えて来たぞ敵さんの部隊が。――先頭を駆るのは黒いフリーダム……ジェノサイドフリーダムと言う事は、アタシじ
ゃないアタシ――イルジオンが来てるのは間違いないわね。
その他には、数えるのも面倒になるくらいのザクとグフの大群と、初めて見る5機のIS……ツインアイタイプと言う所を見ると有人機だろうな。ザクや
グフの様なモノアイタイプは有人機としては適さないからね。
……其れを踏まえると、女権団の連中がモノアイタイプのドムを使ってたと言うのは、完全に教授とやらの実験台だったと言う事なのだろう……少し
ばかり同情――する必要もないか。
しかし、あの5機――



「ストライク、デュエル、バスター、ブリッツ、そしてアストレイね?
 プロフェッサーが開発したモノとは装備やら何やらが異なるようだけれど、あの見た目は間違いないわ。」

「如何やらその様だなマリア。」

ヤレヤレ、技術力の高さは可成りなモノのようだが、機体のデザインに関しては束さんが開発したモノのパクリであると言うのは頂けないぞライブラリ
アンの諸君?
そのデザインを使うなら、イルジオンはアタシに、教授は束さんにロイヤリティーを入れて欲しいモノだわ。若しくは著作権料を払って貰いたいな?



「そう言うな。
 此方も中々人手が足りない上に、教授は頭は良いが美的センスは、ザクやグフを見て貰えば分かるだろうがお世辞にも良いとは言えなくてな?
 無人機は兎も角、有人機は篠ノ之束が造った機体を参考にするしかなかったと言う訳だ――まぁ、性能に関してはお前達の機体と遜色はないけ
 れどね。」

「そうか、其れを聞いて安心したよ。
 性能で劣る相手を沈めてしまったら、只の弱い者苛めになってしまうが、性能が対等であるのならば其れだけは避けられるだろう――尤も、機体
 の性能は五分でも、パイロットの腕の差は埋められないだろうけれどな。」

「……減らず口を。」

「お互い様だ。」

女権団を潰した時にも似たようなやり取りをしたな?あの時は、アタシが減らず口をと言ったけれどね。――まぁ、其れは如何でも良い事だが、一夏
よ、ドレが一秋か分かったか?



「ストライクが一秋だな。
 それから、バスター、デュエル、ブリッツは間違い無く俺の『弟』だぜ夏姫姉……アイツ等からは一秋と同じ気配を感じるからな。フェイスガードの下
 に俺と同じ顔があると思うと、ぞっとしねぇけどな。」

「夏兄さんのなり損ないの中の出来の良い奴と言う訳か……少しは楽しませて貰いたいものだ。
 正直な事を言うのならば、一秋とか言う比較するにもゴミやクズに失礼極まりないヘッポコをこの手で葬ってやりたかったのだが、其れは夏兄さん
 に任せるとしよう。
 だから、夏兄さんになり損ねたお前等に相手になって貰うぞ。」

「アストレイに酷似したISに乗っているのは散か?
 テロリストに身を落とすとはな……最早正道に戻る事など出来まい――ならば、せめてもの情けとして私の手で葬ってやろう。双子の姉として、其
 れが役目だろうからな。」



一秋がストライク、散がアストレイか。
となると組み合わせは必然的に、アタシとイルジオン、一夏と一秋、箒と散と言う組み合わせになるが、それ以外はフリーバトルになるのだが、其れ
でも負けるとは到底思えん。
だが、ここで戦うのは良くない――此処では、余りにも京都市街に近すぎて、アタシ達の戦いで貴重な歴史的文化財に被害が出ないとは言えん。
だから選べ、ここから更に1000m以上の上空で戦うか、其れとも海上まで移動して戦うかをな。



「其れは正しいなオリジナル。
 京都の美しい街並みを火の海にするのは私も望まないのでな……高度を上げるとしよう。――暗い夜の海の上で戦うよりも、華やかの京都の夜
 景の上で戦う方がシチュエーション的にも良いだろうからな。」

「だが、その夜景が貴様等の墓標となるかも知れないと言う事を忘れるなよ?
 お前達はアタシ達を倒す事だけが目的かも知れないが、アタシ達は1年の修学旅行を護ってるからその重さが違う……修学旅行を中止にさせる
 事は出来ないから、貴様等は此処で排除させて貰うぞ。」



――キィィィィン……パリィィィィィン!!



今まで何度か感じた何かが弾ける感覚を、意識して自分で引き起こす――出来るかどうかは分からなかったが、如何やら巧く出来たみたいだな。
其方から仕掛けて来たのだから、先に息切れしてダウンなんて言うダサい事だけは止めてくれよ?……今のアタシは最高に乗っているのだから。
折角の夜のデートなんだ、精々楽しませてくれるんだろう、アタシではないアタシよ?
さぁ、戦闘開始だ。








――――――








No Side


古都京都の遥か上空で始まった戦いは、初めから手加減なしのフルスロットル状態となっていた――否、IS学園屈指の実力者である専用機持ちと
ライブラリアンの有人機を加えた大部隊が激突したら其れもまた当然だろう。
学園側の戦力には、新たにゴールドフレーム天を纏ったスコールと、パーソナルカラーのウィンダムを纏った山田真耶率いる教師部隊が追加された
事で、数の上での不利は小さくなっているが故に、序盤からのフルスロットルなのだ。


「はぁ!ていやぁぁ!!」

「むん!せやぁぁぁ!!」



――バチィィィィィ!!



そんな状況の中、夏姫とイルジオンはビームサーベルで切り結び、更には互いに腕部にビームシールドを展開した状態でぶつかり合う――ビーム
シールド同士が接触した事で、火花放電が起きているが、そんな事は夏姫にもイルジオンにも関係ない事なのだろう。
互いにドラグーンは展開してないが、この状況を見る限り、夏姫とイルジオンの実力差はそれ程大きなモノでは無いのだろう――現実として、夏姫
とイルジオンの戦いは完全に拮抗しているのだから。


「成程な、それがSeeDの力か。」

「SeeD?何だ其れは?」

「何かが弾けるような感覚と共に、思考がクリアーになったんじゃないのかオリジナル?其れがSeeDだ。
 教授曰く、人類が一つ上のステージに進むための可能性を秘めた力であるらしい。」

「其れが最高の人間として作られたアタシに備わっていると?何とも笑えない話だな其れは。」


其れでも、基本的な能力は互角だとしても、今の夏姫はイルジオンが言ったSeeDの力に覚醒している状態だ。
此れにより夏姫は、身体能力、判断能力、空間認識能力、回避能力、射撃適性等の戦闘能力が大きく向上しており、その分だけイルジオンを上回
っていると言えるだろう。
今の所拮抗しているのは、夏姫がイルジオンの実力を見極めようとしているからなのかもしれない。


「少しギアを上げるぞイルジオン?」

「上等だ、オリジナル。」


夏姫がドラグーンを展開すれば、イルジオンもまたドラグーンを展開し、其処から多角的なビーム攻撃が開始される。


「お前のドラグーンは刺突兵器と思っていたが、ビーム砲としても使えたのか?」

「その通りだ。
 女権団との戦いでは刺突兵器として使ったが、普通にビーム砲塔としての性能も備えているのさ――其れに、手の内を全て晒すのは二流のやる
 事だろう?」

「ふ、違いない。」


其処からは、互いにドラグーンを操作しながら自身も動いて射撃を行うと言う、超高次元の戦いが展開された――その戦いは、集中力が切れた方
が負ける戦いであったと言えるだろう。
その為、夏姫とイルジオンの戦いだけ見れば一見泥仕合に見えるのだが、他はそうではない。


「ストライクに乗るお前、一秋だな?双子だから分かるぜ……分かりたくなかったけどな。」

「その通りだぜ一夏!
 俺は、貴様をぶっ殺す為に蘇ったんだ……テメェの断末魔の悲鳴を聞かせてくれよなぁ――俺と散に蹂躙されて泣き叫びやがれ!!
 お前みたいな出来損ないは、此の世界には存在してはいけないんだ!!」

「俺が存在して良いかどうかは俺が決める。テメェに如何こう言われる筋合いはねぇよ。
 大体にして出来損ないはテメェの方だろ一秋?初期能力だけ高くて成長値ゼロのプロトタイプが!」

「何だとこの野郎!!出来損ないの分際で偉そうに!!」

「ハッ!その出来損ないにタッグトーナメントでボコされたテメェは何なんだよ?塵か、ゴミか、クズか?
 あぁ、テメェみたいな本物の出来損ないと比べるとは、ゴミやクズの方に失礼極まりなかった――テメェと違って、ゴミやクズの中には使えるモノも
 あるんだからな。」

「抜かせぇぇぇぇぇ!!」


一夏は、一秋の乗るストライク――ゲイルストライクと戦闘を行っている。
互いに近接戦闘に特化した機体であり、一夏はレーザーブレード対艦刀エクスカリバーの二刀流、一秋は大振りの実体剣ウィングソーの二刀流で
戦っている――互いの獲物が大型武器であり、其れの二刀流での戦いと言う時点で、可成りすごい戦いであるとは言えるだろう。
だが、この戦いは一夏の方に分があった。
一秋が使っているウィングソーは対ビームコーティングが刀身に施されているために、ビームエッジとも斬り合いが可能で、アーマーシュナイダーと
同様の振動剣で、切断対象ごとに振動周波数を調節することで常に安定した切れ味を発揮するのだが、一夏が使っているレーザーブレード対艦刀
との相性は決して良くはない。――否、エクスカリバーとの相性が良くないと言うべきか。


「相も変わらず突撃からの乾坤一擲の一撃か?
 教授とやらに強化されて、タッグトーナメントの時よりは強くなったみたいだけど、まだまだ甘いぜ一秋?テメェじゃ俺を倒す事は出来ねぇよ!」

「舐めるなぁ!!」


もしも一秋の相手が鈴であったのならば、一刀流と二刀流の差で、実力差をソコソコ埋める戦いが出来ただろうが、一夏は大剣二刀流を得意として
いるだけでなく、エクスカリバーを連結させた超大型ブレード『アンビデクストラスフォーム』(長い名前だ……誰か略称考えてくれないかマジで?)で
の戦闘も得意であり、一刀流か二刀流しか出来ない一秋よりも切れる手札が多いのだ。
しかも一夏は、二刀流とアンビデクストラスフォームの使い分けを、略タイムラグなしで行えるため、近接戦闘に於いては恐ろしいまでの多様な攻撃
が可能となっているのだ。


「如何した如何した、来いよオラ?
 俺を殺すんだろ?やってみろよ、自称天才君よぉ!!」

「馬鹿にするな出来損ないがぁ!!」


完全に手玉に取られている一秋だが、一夏の挑発を受けて逆上して突撃するが、其れはアッサリといなされて、逆に背中に回転踵落としを喰らう事
になった。
ISを纏っていたからダメージは軽減されたモノの、生身で此れを喰らっていたら、間違いなく脊髄損傷に至っていただろう。


「多少強化されたみたいだが、其れでも弱いぜお前……ったく、この程度の奴に劣等感を抱いてたとか、馬鹿か過去の俺は。
 ま、良いや。テメェは此処でぶっ潰す……覚悟しやがれ一秋!!」



――パリィィィィィィン!!!



裂帛の気合と共に一夏のSeeDが覚醒し、其の力を底上げする。
夏姫の覚醒とは異なり、一夏の覚醒は集中力が向上するのは同じだが、特に近接戦闘能力・精神面においてその特徴がみられる――通常時より
もアグレッシブな戦術を執る事が多くなる。
夏姫とは違い、近接戦闘に特化した強化であり、攻撃能力の強化と引き換えに、回避力が低下している状態とも言えるのだが、近接戦闘に於ける
回避能力の価値はそれ程高くなく、重要なのは防御能力なのであまり問題にはならないのだ回避力低下のデメリットは。


「宣言するぜ一秋……テメェは、あと5ターンで詰む。コイツは決定事項だ。」

「俺があと5ターンで詰むだと?調子に乗るなよ一夏ぁぁぁぁぁ!!
 テメェは殺す!滅殺だ!!テメェだけじゃなく、俺を虚仮にした奴ら全員を殺してやる!俺を斬り捨てやがった織斑千冬も!!!」

「殺される覚悟もねぇ奴が、軽々と殺すとか抜かすんじゃねぇ!」



――バガァァァァァァン!!



そしてぶつかり合うエクスカリバーとウィングソー。
史上最大の兄弟喧嘩は、まだ始まったばかりだ。








――――――








同じ頃、箒もまた己の肉親と対面していた――言うまでもない、ミラージュフレームを纏う散とだ。
だが、久しぶりとなる双子の妹との邂逅であるにも拘らず、箒には何の感情も沸いては居なかった……辛うじて湧いた感情を表すのであれば『面倒
なのが出て来た』と言った所だろう。


「落ちるとこまで落ちたと言うのは、お前の事を言うのだろうな散――まさか、テロリスト風情に落ちぶれるとはな……恥を知れ、大馬鹿者が!!」

「テロリストの何が悪いんだ箒?
 私は此処で力を得る事が出来た!欲しかった力をな!!其の力を得られるのならば、テロリストになる等と言う事は大した問題ではない――どん
 な時だって、最終的には力を持っている者が勝者なのだからな!!」

「其処まで落ちたか。」


その散の行った事を聞いた箒はため息を一つ吐くと、左腰部に搭載された双刃式ビームサーベルを展開し、散に向き合う――フェイスプレートに阻
まれて分からないが、間違いなく箒の表情は呆れかえったモノになっているだろう。


「ならば姉の務めとして、此処でお前を落とす……悪く思うなよ散。」

「私を落とすだと?出来るモノならやってみろ箒ぃぃぃぃぃぃ!!!」

「ふ、吠えるのだけは一人前のようだな?ならば、私ではお前に勝てないと証明して見せろ。」

「上等だ、直ぐに証明してやる!!」


だが、箒の挑発を皮切りに、戦闘が開始され、アカツキのビームサーベルと、ミラージュフレームの刀がぶつかって凄まじいまでの火花を散らして居
るが、優勢なのは箒だ。
元々剣の実力では箒は散を凌駕していたが、剣の鍛錬も、ISの訓練も欠かさず行っていた事で、その実力差は更に開いたと言えるだろう――如何
に散が教授によって強化されているとしてもだ。
箒と打ち合う事が出来ているのを見る限り、身体能力は間違い無く向上している散だが、ISの戦闘技術に関しては学園に居た頃よりも上達している
とは言えず、打ち合うのが精一杯と言った感じである。


「多少身体能力は高くなったようだが、剣の腕前は相変わらずか……マッタク持って情けない奴だ。」

「黙れぇぇぇぇぇぇ!!」


逆に箒は、散の攻撃を受け流す、いなす、弾くと言った方法で捌き続けている、攻撃の隙に蹴りを入れたり、左手の盾で殴りつけるなどの攻撃も行
っている。
剣道だけでなく、剣術も収めているが故の柔軟な戦い方が出来ているのだ。


「中々の技モノだが、貴様が使うには勿体なさすぎる。」


その戦闘の中で、箒は散が手にした日本刀――天羽々斬に興味を示し、散の右手に蹴りを入れる事で其れを手放させ、そして奪い取って自分のモ
ノとしてしまったようだ……鮮やかすぎる流れる様な一連の動きは、流石は一流の武芸者と言った所だろう。

「ビームサーベルも悪くないが、やはり私には刀の方が手に馴染むな。」

「!!返せ!其れは私のモノだ!!!」

「そう言われて返すと思うのか?
 まぁ、頑張って奪い返してみるんだな。」


散から奪った天羽々斬を少しばかり振るった箒は、その感触を確かめ、そして天羽々斬を右手に持って散に切っ先を向ける――其れが死刑宣告で
有るかの様に。


「貴様は後7手で詰む……精々足掻くんだな。」

「7手だと?舐めるな箒ぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

「舐めてはいない……其れが私とお前の実力差だと知れ散!!」


その死刑宣告に逆上した散が突撃して来るが、箒は其れを冷静に捌き、あえて峰打ちで攻撃を叩き込んで行く――即戦闘不能にならないのは、教
授とやらの改造と、箒が峰打ちで攻撃しているからなのだろうが、その実力差は明白だった。








――――――








Side:刀奈


ライブラリアンとやらが仕掛けて来てくれたみたいだけれど、誰が仕掛けて来た所で問題にもならないわ――だって、相手は所詮一夏君の劣化コピ
ーでしかないのだからね。




「俺達が、劣化コピーだと?」

「そう聞こえなかった?選ぶ言葉間違えたかしら?
 ドレだけ粋がった所で、貴方達が一夏君の劣化コピーであると言う事実は変わらないわ――其れを受け入れる事が出来ないと言うのならば、お
 姉さんが強制的に受け入れさせてあげるわ。」

但し、お姉さんの受け入れさせ方はちょっとキツメだからその辺は覚悟をしておいてくれると助かるわね?ちょ~~っと、痛いと思うから。
痛い思いをしたくないのなら、大人しく投降してお縄を頂戴する事を進めるわ……って、言った所で言われた通りにする人なんていないでしょうけど。



「誰が投降するか!!貴様等を皆殺しにする為に、俺達は存在してるんだ!!俺達の前に立ち塞がるなら、容赦はしないぜ!!」

「言うまでもなく容赦は必要ないわ。」

だって、貴方達は此処でゲームオーバーになるのだからね……精々味わって貰おうじゃないの――17代目の『更識楯無』の実力と言うモノをね。
このタイミングで仕掛けて来た事を、骨の髄まで後悔すると良いわ!!
そして知りなさい――貴方達の様な存在如きで揺らぐほど、IS学園は柔ではないと言う事にね――修学旅行初日で起こった戦い……悪いけれど、
制圧させて貰うわ!
そしてその記憶に刻み込みなさい――更識楯無の名をね!!


「1人は任せて貰うぞ楯無。出来の悪い弟を教育してやるのは姉の役目だからな。」

「楯姐さん、1人貰うわよ。一夏の劣化コピーだなんて、見てて気持ちの良いモノじゃないしね。」

「そうね、鈴ちゃんとマドカちゃんには1人ずつお願いしようかしら?
 好きなのと戦っていいわよ。お姉さんは残ったのを貰うから♪」

夏姫がイルジオンと、一夏君は一秋と、箒ちゃんは散と、私と鈴ちゃんとマドカちゃんは一夏君の劣化品3人と、それ以外のメンバーと教師部隊は無
人機の相手……如何考えても負ける気がしないわね此れ。

さぁ、かかって来なさい一夏君の劣化コピー達?……一体残らずあの世に送ってあげるわ――行先は間違い無く地獄だろうけど、折角だから地獄
の最下層に叩き落してあげるわ。
何よりも、皆が楽しもうとしてる修学旅行を襲撃して来た事は絶対に許せないわ。生徒会長としても、学園の一生徒としてもね。
故に貴方達には惨めで悲惨な死をプレゼントしてあげる……受け取り拒否も返却も出来ないからその心算で居てね、ライブラリアンの刺客さん達?
――如何足掻いた所で、貴方達に待っている結末は、死刑一択のデッドエンド以外には有り得ないけれど。

さて、夜更かしは美容の大敵だし、明日の予定にも差し支えるからちゃっちゃと終わらせちゃいましょうか?



「了解したわ楯姐さん!バスターはアタシが貰うわよマドカ!!」

「ならば私は、デュエルの方を貰うとするぞ鈴姉さん。」



鈴ちゃんがバスターを、マドカちゃんがデュエルを獲物に決めたと言う事は、残ったブリッツが私のダンスパートナーと言う事になるわね?
装備の一部がスコール先生のゴールドフレームに酷似しているけれど、実力は未知数と言った所かしら?退屈で無駄な戦いだけはしたくないのだ
けれど、果たして楽しませて貰えるのかしら?



「キヒヒヒ……そりゃアンタ次第だぜぇ暗部の長さんよぉ?
 悪いが俺は他の兄弟とは違って、少しばかり頭のネジが吹っ飛んでるみたいでよぉ、敵の悲鳴や断末魔を聞くのがたまらなく好きでさぁ……退屈
 させないようにするからよぉ、良い声で泣き叫んでくれや。」

「あ~ら、なんか物凄い外れくじを引いちゃった気分だわ此れ。」

何かしら、この闇マリクと山崎竜二を混ぜ合わせたような性格は……と言うか、自分で自分の頭のネジが吹っ飛んでるとか言ってたら世話ないわ。
悪いけれど、貴方の悪趣味に付き合う心算は無いから最初から本気で行かせて貰うわよ?――更識の当主である『楯無』を名乗る者の力を、その
身に刻み込みなさい!



――パリィィィン!



神経を集中して、あの力を発動……意外とやって出来るモノなのねこれ。
こうなった以上は、貴方が夏姫以上でない限りは、私の勝ちは絶対だわ。――さてと、其方から誘って来たダンスパーティなのだから、先に踊り疲
れてしまうのだけはなしよ?
たっぷりと踊ったその後で、私達『レギオンIB』が、ライブラリアンを粉砕してあげるわ!!













 To Be Continued… 





機体設定