Side:夏姫
夜襲が有った翌朝、あの戦闘に参加していたメンバーは、簡易的とは言え、早朝からメディカルチェックを行っていた――本来ならば、戦闘直後に行
うのがベターなんだが、千冬さんが『疲れているだろうから、今日は休め。メディカルチェックは明朝改めて行う』と言ったのが大きくて、早朝のメディ
カルチェックになったんだけれど、何か問題はありましたか山田先生?
「いえ、全員問題なく健康体なのですけれど、此れは一体?」
「問題はないのに何かあったんですか?」
「いえ、悪い事では無いのですが、皆さんのIS適性ランクが上昇しているんです。
この中では最もランクが低い乱さん、オルコットさん、ボーデヴィッヒさんですらオーバーAランクのAA……此れだけでも驚くには充分ですけれど、更
に驚くべき事は、夏姫さんと楯無さんのIS適性ですよ!『測定不能』ってどういうことですか!!
暫定的にIS適性は『SSS』となりますけど、まさか此処までとは……」
「成程、其れは確かに驚いても仕方ないですね。」
と言いつつ実はあんまり驚いてはいないのよね……そもそもにしてアタシは、最高の人類を造るって言う狂った計画の中で生まれた存在だから、此
れ位の事は起こって当然だと思ってる部分もあるしな。
寧ろ、ナチュラルな存在でありながら、アタシと同じ『SSS』に分類されたお前の方が若干恐ろしいわ。
本当に、束さんと同類の天然チート、分かり易く言えば『1000年に1度生まれる伝説の戦闘民族の究極形態』なんじゃないのか?
「幾ら青髪だからって其れは無いと思うわよ?……もしそうだとしたら、私は神の領域に到達しちゃった事になるし、私と互角の夏姫も神の領域に到
達した事になっちゃうわよ?
しかも夏姫の場合は最強の神って感じかしらね?」
「最強の神と言うと……攻撃力と守備力が生贄召喚時に生贄に捧げたモンスターの攻撃力と守備力のそれぞれを合計した数値になる翼神竜か。」
「改めて聞くと長いよなこのテキスト……原作テキストは如何考えても全部テキスト欄には入りきらないぜ。」
「OCG化で大幅弱体化もやむなしだな。」
まぁ、メディカルチェックも終わった事だし、この話は此処までだ。
2日目の今日はクラス別行動だから古都の名所を思う存分満喫するとしよう――花の都である京都を満喫しなくては、修学旅行を楽しんだとは言え
ないからね。
Infinite Breakers Break73
『旅行2日目:クラス行動を満喫せよ』
さてと、そんなこんなでやって来たな修学旅行2日目――2日目の今日はクラス別行動と言う事で、先ずは金閣寺にやって来たのだが――
「うおわぁ!眩しい!!」
「光って光ってゴールデン!!」
「この輝き、ゴールデンフリーザも真っ青ね!!」
生で見る金閣寺に色々と思う所があったのか、生徒達が大興奮しているようだな――確かに晴天下の金閣寺は、その黄金のボディに如何なく太陽
光を反射させて、特徴である金色の輝きをマックスで放っているからね。
その輝きは箒のアカツキの金色に負けないというのだから相当だと思うが……
「凄いとは思うが悪趣味だな。」
アタシの金閣寺に対する評価はこうなる、
金箔を張り巡らせて作ったのは凄いと思うが、こんな物は財力が有れば誰でも作る事が出来るモノだ――後の世では、豊臣秀吉が財力にモノを言
わせた『黄金の茶室』を作っているしね。
軽率な金色は悪趣味と言わざるを得ん。
「金は悪趣味なのか?」
「……スマン、言葉が足りなかったな箒。
アタシはあくまでも、成金的な金色が趣味が悪いと言っただけだ――お前のアカツキの金色は、束さんがお前の為だけに作り出した専用機の結果
だから、お前の金色は悪趣味ではなく、姉妹愛の証だろう箒?」
「黄金の姉妹愛……なんだろう、そのままゲームやアニメのタイトルになりそうな気がする。
それにしても、確かに成金趣味としか言えない見た目ではあるが、実際に生で見ると迫力は凄い物が有るな?……時の権力者の執念みたいなモ
ノを感じるよ。」
時の権力者の執念か……確かにそうかも知れんな。
当時の最高権力者であった足利義満は、幕府と己の権力を誇示する為に、貿易で得た富を使って金閣寺を創建したと言う部分があったのは、略間
違いないと思うわ。
他の意図もあったかも知れないけれど、権力者と言うのはどんな時代でも己の権力を誇示したがるモノだからな。
まぁ、此れだけのモノを建ててしまうと言う財力には、正直に感服してしまうばかりなのだけれどね。
「時に箒、2組が金閣寺をクラス別行動に選ばなくて残念だったんじゃないか?」
「正直に言えばな。
2組も金閣寺を選んでくれていたら、金閣寺をバックに一夏と写真を撮れたかもしれないから……まぁ、クラスが違うのだから其処は割り切るしかな
いだろう?
其れに、明日の班別行動では同じ所に行くかもしれないから、その可能性に期待するだけだ。」
「そうか、一緒の所に行けると良いな。
……で、ラウラ、何やら金閣寺を興味深そうに見ているようだが、如何した?」
「姉上……あの建物は金色だが、ビームを反射したりするのだろうか?」
「いや、しないぞ?」
「金色なのにか!?」
全身金色のアカツキがビームを反射する事が出来るから、お前がそう思うのも分からないではないが、アレはただ金色なだけでヤタノカガミを搭載
してる訳じゃないからな?
と言うか、人間サイズの機体1機で開発費がぶっ飛んだモノになるヤタノカガミで覆われた建物を作ろうものなら、国家予算並みの資金が必要にな
ると思うぞうん。
そもそもにして、室町時代にヤタノカガミが開発されてたとか、其れは普通にオーパーツになってしまうからね。
「ヤタノカガミで覆われた要塞または戦艦……姉さんならば何時の日かやりそうで怖い。」
「箒、其れ若干洒落になって無い上に、束博士だとやりかねないよ……って言うか、箒って昨日の戦闘で散の武器奪ったよね?
そうなると、其れを箒用に改造する為に、束博士が回収に来そうな気がするんだけど、其れって私の気のせい?」
「いや、気のせいではないな静寐……姉さんならば、今この場にロケットで飛来してもおかしくない――あの人は悪い人では無いのだが、天才特有
のぶっ飛んだところがあるからね。
あの人の行動は、凡人の我々には予想が付かないモノだ。」
その意見には同意だが、静寐、箒、お前達は見事にフラグを建てたみたいだぞ?――何やら、此方に向かって飛来する物体があるからな。
――ゴォォォォォォ!!!
「んな、アレは巨大なニンジン!?」
「ニンジン型のロケットなのだ~~!」
十中八九、間違いなく束さんだろうなあれは。……目的は恐らく静寐の言った通りなのだろうけど、本気でぶっ飛んだ登場の仕方をしてくれる人だ。
此のままアレが着陸と言うか、着弾したら観光客に被害が出るかも知れないから……癒子、スーパーミョルニル展開。
「りょうか~い。でもって如何するの?」
「飛来するニンジンを叩き落せ。
だが、絶対に金閣寺に激突させるなよ?歴史的建造物を破壊してしまったとなれば、大問題だからね。」
「OK!そんじゃまぁよく狙って……キングダムクラッシャー!!」
――ドガバァァァァァァァン!!
スーパーミョルニルをぶん回してからの投擲がニンジンロケットに直撃して、ニンジンロケットは木っ端微塵になったか……普通なら搭乗員は間違い
なく南無阿弥陀仏だが、束さんならば大丈夫だろうな。
と言うか、あの人は本気で殺しても死にそうにないからな……下手したらテトロドトキシン(猛毒。毒性は青酸カリの数倍。)を盛っても死なないんじゃ
ないかと思うわ。
「行き成り何するのさゆっちゃん!!流石の束さんも今のは若干死ぬかと思ったよ!!」
そして、本当に無傷だからなこの人は。と言うか、今のを喰らって『若干』とは……常に身体の周囲にバリアでも張ってるんだろうか?
だが束さん、元気よく現れたのは良いけれど、背後には注意した方が良いんじゃないか?……背後に、鬼も逃げ出す最強の存在が居るからね?
「束、何をしに来た?」
「みぎゃぁぁ!?ちーちゃんストップ!頭がミシミシ言ってるから!!」
はい、世界最強のアイアンクロー炸裂……子供の頃から見慣れた光景とは言え、大人になった今は千冬さんが束さんをアイアンクローするだけでは
なく、片手で持ち上げているのだが、一体どれだけの力があるのやらだな。
天然の最強と、作られた最強の触れ合いと言うのは人知を超えたモノなのかも知れないわ……取り敢えず、束さんを降ろしてあげてください織斑先
生。束さんは、多分箒に用が有って来たのだと思いますから。
「篠ノ之に?……専用機持ちに用が有ると言うのならば仕方あるまい――篠ノ之の専用機を作ったのはお前だから、そのお前が用が有って来たと
言うのならば、重要な事なのだろうからな。
だが、其れならばもっと普通に登場しろ束――谷本が迎撃したから良かったモノの、あのロケットが地面に突き刺さったら爆撃並みの大きな被害
が出ていたぞ?」
「其れに関しては大丈夫だったんだよちーちゃん!!
だってあのロケットは着陸前に装甲が展開してパラシュートみたいになって安全に着地できるようになってたんだから……其れなのに、撃墜される
とか、束さんガッカリだよぉ!」
「其れは仕方ないだろう束さん……そんな機構があるとは思えないんだから。」
「撃墜はやりすぎだったかもしれませんが、擁護できません姉さん……無力な妹を如何か許してください。」
「うわおぉ、なっちゃんも箒ちゃんも容赦がない!!」
実際にアレが地面に激突してたら大惨事だったからね……少しやり過ぎたかも知れないけれどアタシは間違った判断をしたとは思ってないよ。
其れよりも、本題に移った方が良いんじゃないか束さん?
「おぉっとそうだったね!
箒ちゃん、アイツから奪った装備を出してくれるかな?」
「其れは構いませんが、此れが如何かしましたか姉さん?」
「ちょっとね。
……ふむふむ、PS素材を使用した刀身か……中々の業モノだけど、箒ちゃんが使うにしてはちょっと甘いかな?鞘もないみたいだしね――OK、理
解した。
箒ちゃん、此の刀を箒ちゃん仕様に作り直すから少しだけ預からせて貰うけど良いかな?」
「え?其れはまぁ、構いませんが……」
「其れじゃあ預からせて貰うね~~♪
修学旅行が終わる前には新たな刀を箒ちゃんに届けてあげるから期待しててね~~。」
「もしかして、本当にその為だけに来たんですか!?……此方から連絡して、セイバーかイージスに取りに来て貰おうか思ってたのですけれど?」
「のんのん、やはりここは束さんが自ら箒ちゃんから受け取らないと意味が無いのさ!
そんじゃ目的は果たしたから束さんは戻るよ~~~!学園の皆は京都旅行を楽しんでね~~!バイバ~~~イ!!」
本題は矢張り箒が散から奪った武器だったか。
天羽々斬……大層な名前の大太刀だが、乱撃術を得意としている箒が使うには扱い辛い武器だから、箒用に作り直す必要があったからね。
束さんは、其れを行うために、箒から天羽々斬を回収する目的で来た訳か。――もっと普通に来いと思ったのはアタシだけじゃないだろうけどな。
で、目的を果たした束さんは飛来したセイバーに乗って帰って行きましたとさ……マッタク持ってフリーダムな人だな相変わらず。
「まぁ、束博士だからアレで良いんじゃないかしら?
寧ろ束博士が少々ぶっ飛んだ事をしなくなったら、逆に皆心配しちゃうんじゃないかと思うんだけど、其れに関しては如何?」
「確かに其の通りだと思ってるアタシが居る事が否定できないよ楯無……で、其れ何?
いや、ソフトクリームだと言うのは分かるが随分と鮮やかな緑色をしてるからな?メロン、ではないよね?」
「名物の宇治抹茶ソフトクリームよ。夏姫はシュガーコーンとワッフルコーン、どっちがいい?」
「其れは勿論、サクサクのワッフルコーンだな。」
「そう言うと思ったわ♪」
コーンに盛るのならしっとりのシュガーコーンよりもサクサクのワッフルコーンの方が好きだからね。
サクサクの触感が、ソフトクリームの柔らかな口当たりとベストマッチ――じゃなくて、此れ幾らだったんだ?払うぞ?
「ふふ、必要ないわよ夏姫――偶には格好つけさせなさいな?彼女に奢ってあげる位は当然でしょう?」
「……そう来たか。此れは、一本取られた。」
だが、お前の気持ちも分からなくないから、此処は有り難くゴチになるとしよう――奢って貰うと言うのも、偶にならば悪いモノではないからね。
その後は、金閣寺をバックに記念撮影なんかをした後に、昼食を挟んで銀閣寺に向かったんだが、まさか1組の昼食に京風牛鍋が用意されていると
は思わなかったよ。
出汁の利いた薄味の牛鍋は、関東の醤油と砂糖の濃い味付けの牛鍋もとい、すき焼きとはまた違った美味しさだ。薄味で出汁が利いている事で素
材の味が生きているという感じだね。
……出来れば学食の新たなメニューに追加したい美味しさだが、此れは京都じゃないと出せない味だろうから、IS学園でも無理だろうな。
「夏姫、楯無さん、生徒会長と副会長の権限で、此れを学食に追加する事って出来ないのかしら?」
「この店の秘伝のレシピでも聞き出さない限りは、この店の料理人を学園で雇う事になるだろうから無理よマリアちゃん。
これ程の料理を出す老舗店が料理人を出張させるとは思わないし、そんな事をしたらこの店自体が続かなくなってしまうもの……学食に加えたい
のは山々だけど、学園の都合で老舗店の営業に支障をきたす事は出来ないわ。」
「そう、其れは残念だわ……」
流石のIS学園でも出来る事と出来ない事が有るって事さマリア……それに、偶に食べるからこそありがたみが有るって言うモノだから、今この場で
堪能するのが一番なんだよ。
そんなこんなで楽しい食事をしながら、鍋の最後はうどんを入れての『京風うどんスキ』で締め。
美味しい昼食を堪能してから、午後は銀閣寺の見学だな……ワビサビを凝らした質素な美しさ、楽しみだね。
――――――
Side:一夏
2日目のクラス別行動は、午前中が三十三間堂だった。
全て手作りの為に、1つとして同じ顔の千手観音は存在せず、1体は自分と同じ顔をした千手観音が居るって事だったけど、俺と同じ顔をした仏像を
見つける事は残念ながら出来なかったぜ――まぁ、本当に有ったら有ったでビックリ仰天しちまうけどさ。
余談だけど、スコールさんが他の観光客から注目されてたり、『一緒に写真撮ってください』って言われてたりしたな?……まぁ、何処からどう見ても
ゴージャスセレブなスーパーモデルって感じだから仕方ないのかも知れぜ此れは。
んで、三十三間堂を後にした俺達2組は、スコールさんが予約してくれてた隠れ家的なラーメン屋で、名物の『精進ラーメン』での昼食。
精進ラーメンって事で、勿論チャーシューなんかは乗ってないし、スープの動物系の出汁は使ってなかったんだけど、出汁を取った後の昆布と干しシ
イタケを佃煮にしたモノをミキサーでペースト状にしたモノを加えた豆乳スープは濃厚でクリーミーで、豚骨ラーメンにも負けないガッツリとしたコクが
あって滅茶苦茶旨かった。
ラーメン好きの鈴と乱が満足してたんだから相当だぜ。
ヘルシーで低カロリーって事もあって、他の生徒からも好評だったみたいだからな……よくもまぁ、こんな店を知ってたもんだぜ。
「一夏君、満足できた?男の子には少し物足りないんじゃないかと思ったんだけれど……」
「いや、大満足っすよスコール先生。麺は大盛りで頼んだから腹も膨れましたし、ぶっちゃけ動物系の出汁も具も使ってないのに、此処まで旨いラー
メンが有った事に驚きですって。」
「そう、其れなら良かったわ。
ヘルシー系だから、女子には受けると思ったんだけど、男の子には少し物足りないかもって心配ではあったのよ。」
「全然問題ないですって。旨かったですし物足りなさなんて感じないですよ。
俺よりもガタイの良い、アメリカ人のお客さんも満足してたみたいですから――まぁ、流石に大盛りを超えた『麺2倍盛』だったみたいですけど。」
「あら、そうだったの?気付かなかったわ。
でも、そう言う事なら大丈夫みたいね?満足して貰えたのならこのお店を選んだ甲斐もあったわ。」
スコールさんが何やら心配してたみたいだけど、こんだけのモンを食う事が出来たなら不満はないってな――時に鈴、食う前にラーメンをスマホで撮
ってたみたいだけど如何したんだ?
「ん~~、SNSに投稿してたのよ。
『隠れ家的ラーメン屋で革新的なラーメンを発見』ってね。……癒子がアップした、『これぞ牛鍋の元祖!黒くない京風牛鍋』と、どっちがバズるか勝
負って言う所ね!」
「何を競ってんだよお前……」
ま、今の時代、此れ位の事は当たり前なのかも知れないけどな。
さてと、昼飯を終えた俺達2組は、クラス別行動の2つ目の場所である清水寺に到着。清水寺にバスで入る事も可能だったんだけど、途中の街並み
も楽しみたいって事で、徒歩で色んな商店が立ち並ぶ坂道を上がって行く事に。
その途中で、八つ橋屋で味見をしたり、舞妓さんと写真を撮ったりできたから、バスで行くよりも良かったかもな。
「実物初めて見たけど、舞妓さんってある意味妖怪よね……」
「鈴お姉ちゃん、其れは言ったらダメだと思う。」
「あぁ、其れは完全にアウトだぜ鈴?
あの人達は、俺達じゃ想像もつかないような厳しい稽古の果てに正式な舞妓になる事が出来るんだ……確かに若干不気味に見える白塗りっての
は否定出来ないが、妖怪は失礼だぜ。」
「ゴメン、中国の京劇メイクに比べれば充分人間だったわ。」
「……中国の京劇メイクってどんなモンなんだ?」
「分かり易く言えば、グレート・カブキかグレート・ムタ。」
「成程、そりゃ確かにバケモンだ。」
そんな感じでだべってる内に清水寺に到着して、早速有名な清水の舞台に行ったんだが……こりゃスゲェ!絶景ってのは、正にこの事を言うじゃな
いのか!?
京都の街を一望できる大パノラマに、毎年大文字焼きが行われる山も見えるし、此処が京都の一大観光地になるのも頷けるぜ……この絶景は、東
京スカイツリーの展望台から拝める景色とは格が違うからな。
清水の舞台からの眺めは、古都の風情を感じさせてくれるからさ……来て良かったぜ。
「そうね、来て良かったわ……此処に来ただけでも、最高の思い出になったわ――この絶景を、一番好きな人と見る事が出来たんだもん♪」
「其れは、俺もだぜ鈴。」
そう言って、鈴の肩を抱いてやったんだが――
「IS学園一の夫婦キタコレーーー!!!」
「ラブオーラが!ラブオーラが痛い!!」
「愛に耐性の無い奴は見るな、死んでしまうぞ!!」
次の瞬間に、まさかの大爆発!!マルマインもビックリだっての!俺と鈴が恋人同士ってのは既に分かり切ってるのに、何でこんな状態になるのか
理解出来ないぜ。
と言うか、他の観光客の迷惑になるから大声で騒ぐのは如何かと思う俺がいる。
「IS学園唯一の男子が彼女持ち、この時点で大分破壊力が高いんだと思うよお兄ちゃん?」
「若干意味が分からないぜ乱……」
其れは兎も角……舞台の下を凝視して、何してるんだティナ?
「日本には『清水の舞台から飛び降りる心算で』って言う言葉があるけど、この高さから飛び降りたら普通に死ぬよね?飛び降りた5秒後にはグロい
オブジェクト確定だと思うんだけど……日本人の頑丈さはダイヤモンドレベル?」
「お前は日本人を何だと思ってんだよ?
『清水の舞台から飛び降りる心算で』ってのは、此処から飛び降りる位の覚悟を持ってって言う意味だから、此処から実際に飛び降りる訳じゃない
からな?」
「あ、そうなんだ。」
そうなんです。
まぁ、一説によると、此処から実際に飛び降りた人間の内、8割が無事に生還してるらしいけどな――だからと言って試すのは絶対にダメだと言って
おくぜ。
専用機があるからって、紐なしバンジーを敢行するのは大問題だからな乱?
「そ、ソンナコトヤロウトオモッテナイヨ?」
「なら何で目を逸らすのか、言葉が片言になってるのか、俺でも分かるように説明して貰えるか?
もう1つ言うのなら、直ぐにでも展開できるようになってるハイペリオンについても……そうだな、大体400字以内で説明して貰えると凄く有難い。」
「ごめんなさい、思いっきりハイペリオン使って『清水紐なしバンジー』をやろうとしてました。」
「うん、正直でよろしい。」
でも、本当にやるなよ?もしも機体の展開に失敗したら間違いなくあの世行き、運が良くて複数個所の骨折確定な上、そんな事件が起こったら修学
旅行中止になるから。
何よりも、他の観光客の迷惑にもなるからな?
「そうだね……ちょっと軽率だったよお兄ちゃん。」
「分かれば宜しい。
取り敢えずこの絶景を楽しめ、普通にな。」
乱の奴が本気で紐なしバンジーやる心算だったみたいだが、思い留まらせる事が出来て良かったぜ。
そんで、その後は清水の舞台で集合写真を撮って、京都の街並みをバックに鈴とのツーショット写真を撮って、2日目のクラス別行動は終了だ。
でもって、明日はクラス別行動以上に楽しみな班別行動だから、ワクワクしても仕方ないよな?――俺と鈴と乱とティナの班は、京都の映画村に行く
事になってるんだけど、其処で何があるのか楽しみだぜ。
因みにその日の夕食は、天婦羅の盛り合わせに神戸牛の石焼ステーキと言う豪華さで驚いたぜ……臨海学校の時の豪華メニューにも可成り驚か
されたが、修学旅行も負けず劣らずって所だな此れは。
「此れだけのホテルで、此れだけの食事となると相当高いんじゃないか?
少なくとも一般的な高校の修学旅行のレベルでは、味わう事が出来ないモノなんじゃないかと思うんだが……此れも、IS学園の予算は各国から出
ているが故の資金の潤沢さからか。」
「間違い無くそうだと思うわよ夏姫?普通に修学旅行のレベル越えてるでしょ此れ?」
「其れは否定しないし、否定出来ないぜ鈴――実際に、結構予算割いてるらしいからな修学旅行には。」
ま、そのお陰で旨い飯が食える訳なんだから文句を言う心算は全く無いけどな。
それにしても、ライブラリアンが仕掛けて来なかったのは意外だったな?昨日の夜襲の事もあって、アイツ等がまたちょっかいかけて来んじゃないか
と思ってたが、そんな事は無かったからな。
一秋は俺がフルボッコにしたし、散に至っちゃ箒に腕切り落とされてるから、襲撃したくても出来なかったのかもしれないけど。
其れでも、何時仕掛けて来るかは分からないから、警戒だけはしてし過ぎるって事は無いだろうぜ。――まぁ、仕掛けて来たら仕掛けてきたで、其
の日を、奴等の命日にしてやるだけの事だけどな!!
――――――
Side:イルジオン
ふぅ、京都観光をしてみたが、何とも素晴らしいモノばかりだったな京都は――オリジナルの提案に乗って、遥か上空で戦闘を行って良かったな。
此れだけのモノが失われてしまうと言うのは、容認できないからね……尤も、あの馬鹿と阿呆にはそんな事は如何でも良いのかもしれないけれど。
其れを考えると、一秋と散がこっぴどくやられ、特に散が右腕を失ったというのはある意味でよかったのかも知れん……そのお陰で、京都を舞台にし
た戦いはアレ以上はやらない事になり、こうして京都観光をする事が出来るようになった訳だからな。
神社仏閣巡りに着物の着付け体験等々、今までに体験した事ないモノを楽しむ事が出来たし、マダマダ見どころも沢山ありそうだから、楽しい休暇
になりそうだ。
ま、其れは其れとして、此の『湯豆腐』と言うのは見事だな?
昼に寺で食べた精進料理と言うのも素晴らしかったが、此の湯豆腐と言うのも其れに負けず劣らずの美味だ。
出汁で豆腐を煮ただけのシンプルな料理であるにも関わらず、その味わいは奥深い……恐らくだが、湯豆腐はだし汁の種類や、豆腐の種類によっ
て無限の種類が存在する料理なのかも知れないね?
そんなに難しい料理でもなさそうな上に、材料もシンプルだからレシピを覚えておくとするか……と言うか、これを機会に幾つか料理を覚えても良い
かもしれない。栄養バランスは取れてるとは言え、レーションだけでは流石に飽きてしまうからな。
教授から予期せずに貰った休暇は、京都の文化だけでなく、京都のグルメを満喫して、序に料理を覚えるのも良いかも知れん――こんな機会は、2
度とないかも知れないから、楽しまねば損だからね。
明日は……京都の映画村に足を延ばしてみるとするか。若しかしたら、今日以上に面白い事があるかも知れないからね。
取り敢えず今夜の宿は、温泉のある旅館に泊まる事にするか。1度で良いから、広々とした風呂にゆっくり浸かると言う事をしてみたかったからね。
To Be Continued… 
キャラクター設定
機体設定
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