Side:夏姫
京都に着いての1日目は、学年全体行動と言う事で、目的に向かってバスで移動中なんだが――
「コール。エースのスリーカードだ。」
「中々強い役を揃えたな夏姫?
だが、手札の交換で私の手札にはこの役が揃っていた……喰らえ、ジョーカーを加えたキングのファイブカード!!」
「エースのスリーカードを上回る役を、こうも簡単に揃えるとは……!」
はい、箒に負けて、此れで目出度く10連敗。
新幹線内での30連勝が嘘だったじゃないかと思う位の連敗だ……初期手札が最悪な上に、入れ替えたカードもダメでは勝てる筈がない――今の
エースのスリーカードだってやっとそろった役だったのにね。
遊戯王でも同じで、初手が青眼3体、カオスMAX1枚、ブルーアイズソリッド1枚で、ドローカードがディープアイズって苛めか。
「きっと、こうして天運はバランスを保ってるのよね。」
「多分そう言う事なんだろうな。」
となると、京都にいる間は、アタシは誰とゲームをしても勝てないって事になるんだろうな恐らく。
京都で大負けした分は、帰りの新幹線の中で返す――なんかそんな状況になる気がしてならないが……もしも本当に神様がいるのならば聞いてく
れないか?
天運のバランスをとるのは構わないが、もう少し平均的にしてくれ。
大勝ちした後での大負けと言うのは、思った以上に精神的なダメージが大きいものだからね……でも、直後に始まった車内カラオケ大会では、個人
部門で優勝し、デュエット部門で刀奈と歌った『夕陽と月~優しい人へ~』がぶっちぎりで優勝したから良いとしよう。
何にしても初めての京都観光、楽しみだな。
Infinite Breakers Break70
『全体行動と観光と不意打ちの夜襲』
学年全体行動で最初にやって来たのは『平等院鳳凰堂』――日本最古のシンメトリー建築とも言われている建物だが、実際に見てみると、その美
しさが良く分かる。
決して派手ではないが、日本人が大切にして来た『ワビサビ』が盛り込まれた見事な建築だな?
建物其の物も良いが、庭園の造りもまた見事だ……現代の日本にありながら、此れが建てられた時代にタイムスリップしてしまったのではないかと
思う位に、空気が違う。
もしかしなくても、京都の歴史的文化財からは同じような空気を感じる事が出来るのかも知れないね――で、如何したラウラ?
「いや、この建物は何処かで見た事があると思ってな?どうにも初めて見た気がしないのだ。」
「成程。
なら、財布から10円玉を取り出して、裏側に描かれている建物と、今目の前にある建物を見比べてみろ。さすれば、自ずと答えは出る筈だ。」
「ふむ……10円玉か。
姉上、非常に残念な事だが財布の小銭入れには100円玉と5円玉しかない。」
「ラウラ、何その偏った小銭構成?」
「何故と言われても……あぁ、そうだ!
売店で売られている『うまい棒』に嵌って、10円玉を全部使ってしまったのだった!」
「ドンだけうまい棒好きなんじゃーい!!」
静寐と清香の意見には諸手を挙げて賛成だ。
だがまぁ、うまい棒は単価30円と言う、駄菓子の中では高価な部類だが値段分の価値はあるとアタシは思ってる。
色んな味があるのも特徴だが、ドイツ出身のラウラだと、気に入ったのはサラミ味か?……一体何処ら辺がサラミなのか、少々突っ込みたい所では
あるけれどね。
「いや、実はなっとう味に嵌ってな?」
「まさかの予想外のチョイス。だがアレの旨さが分かるのならば、お前は今この時より『うま棒通』を名乗ってもアタシは文句は言わん。」
じゃなくて、10円玉が無いと言うのなら、ほら此れの裏を見ろ。
そこに描かれている建物と、目の前の建物は一緒だろう?実物を初めて見たのに、初めて見た気がしないと言うのはこう言う事だ――日常的に目
にしていた物ならば、初めて見た気はしないだろうさ。
だが、10円玉に描かれているを見るのと、実際に見るのでは違うだろうラウラ?
「ウム、全く違うぞ姉上。
10円玉とは違い、実際の建物は……え~と、何と言うのだ?……そうだ、雅!雅な感じがするぞ!!
ウィーンの国立歌劇場の様な豪華さは無いが、静かで落ち着いた雰囲気の美しさと言うのはドイツにはない美的感覚……此れが、Japanisch(日
本人)独特の美意識と言うモノか。」
「そうだな。
日本は古来より『派手ではない美しさ』を大切にして来た――戦国時代以降の城の天守閣にしても、一見派手に見えるが、其れは大きいからであ
って、その造りは決して派手であるとは言えないんだ。
名古屋城の金の鯱も、実はあれはワンポイントの派手さであって、城全体の雰囲気は決して派手ではない。
煌びやかな要素は、ワンポイントで使うのがミソと言う事だな。」
「OK、ナイス解説だ箒。」
箒の解説の通り、派手ではない美しさこそが日本人の本質だ……最近は、其れが忘れられているようだがな。
「へそピして、更に制服をへそ出しに改造した貴女が言っても説得力はないわよ夏姫?」
「かも知れないが、其れは盛大なブーメランだぞ楯無……そもそもにして、アタシがへそピする事になったのはお前が原因だろうが――お前がへそ
ピしなかったら、アタシだってやってないからな?
と言うか、生徒会長がへそピって如何なんだ?」
「ペアルック 絆の証の へそピアス。」
「うん、意味が分からん。」
意味が分からないが……ゴミは持ち帰れそこの中国人!!
――パカーン!!
空き缶をポイ捨てしたチャイニーズに、その空き缶を投擲してKOだ。
マッタク、只の観光地ではなく、歴史的な価値もある場所にゴミをポイ捨てすると言うのは常識を疑うぞ?……中国人観光客のマナーの悪さは世界
的にも有名だが、如何やらそれは本当だったみたいだな?
「はぁ……同じ国の人間として恥ずかしくなるわ此れ。
でも、アタシも日本で暮らした経験が無かったら同じようになってた可能性があるのよね?……自分の祖国をそう言うのは如何かと思うけど、色々
終わってるでしょ中国?」
「冗談抜きでマナー悪過ぎだろオイ……同じアジア人として恥ずかしいぜ。」
「台湾の人はマナー悪くないのに、なんで中国は……台湾が中国に取り込まれるのはマジ勘弁だわぁ。」
「中国国籍のアタシが言うのもなんだけど、その気持ちはとっても良く分かるわ乱!
如何考えたって、台湾が中国に併合されたら碌な事にならないわよ!!――そうならない為にも、臭近平(誤字に非ず)殺っとくべきね!!」
「其れは流石にヤバいから止めておけ鈴。」
其れに、そんな事をしなくとも、中国は遠からず終わりを迎えるさ。
お前が貧乏くじを引かされた代表候補選抜試験の事も有り、IS関連における中国の国際的立場は無くなっているし、金に物を言わせて中国の代表
候補になったアイツが、お前と一夏のタッグに瞬殺された事で、国民の政府に対する不満が爆発して毎週のように反政府デモが行われている。
中国政府はIS部隊をもって其れを鎮圧しているようだが、其れが逆に国際社会からの批判を受ける事になっているんだ。『生身の民間人に対してI
Sを展開するのは如何なモノか』ってね。
結局、中国政府は自分で自分の首を絞めている訳だ――遠からず人民革命が起こって、今の政府は倒れるんじゃないかと思うよアタシは。
「まぁ、そうなったらそうなったで問題ないわ。
アタシに言わせれば、何時まで旧態依然の政治体制なのかって思ったからね――ホント、民衆革命が起こって、民主主義国家へ舵を切らないと
中国に未来はないと思うわ。」
「クク、間違いなくないだろうさ。
歴史的に見ても、今の中国程何度も国の名前が変わっている所は無いからな?――人民革命が起ったら、いっその事貴女が新たな中国の指導
者になっても良いんじゃないか鈴姉さん?」
「其れも良いかも知れないけど、アタシの未来は一夏の奥さんだからパスだわマドカ♪」
「そう言えばそうだったな……夏兄さんの伴侶と言う立場に比べたら、中国の新たな指導者など、微々たるモノだった……すまなかったな。」
が、お前達は一体何を言ってるんだ鈴、マドカ?
アタシの意見に鈴が同意したのは良いとして、マドカのまさかの提案から、速攻で惚気にシフトする鈴に、アタシはこの世のモノとは思えない『恐怖』
を超えた何かを感じたぞ本気で。
アタシが言える立場ではないかも知れんが、惚気は程々にな鈴?
まぁ、其れは其れとして記念撮影と行かないか?
10円玉にも刻印されている歴史的建造物をバックにしての記念撮影は外せないだろう?――と言うか、京都観光は、訪れる全ての場所で記念撮
影を外す事は出来ないと思ってるからね。
「OK、異論はないぜ夏姫姉。記念写真は大事だしな。」
「其れじゃあ、何時もの面子で記念の1枚と行こうか♪」
一夏と静寐が同意の意を示し、他のメンバーも平等院鳳凰堂の建物が入る場所に集まって準備は完了か――アタシもフリーダムを外部展開(身体
に展開しないでISのみを展開する、機体の点検時なんかに使う状態)をして、デジカメをフリーダムの肩に乗せて、ピントと構図を調整してからタイマ
ーセットしてから、急いで皆と合流。
中心を飾るのは一夏と鈴と箒だが、両翼はアタシと刀奈が務めさせて貰った。
一夏に肩を抱かれた鈴と箒がピースサインをしてる中央に目が行くが、夫々が思い思いのポーズを決めた此の1枚は傑作だな?
両翼で『月を見るたび思い出せ』のポーズをしてるアタシと、『私達は負けないわ』のポーズをしてる刀奈は言わずもだが、マリアは祈りのポーズ、乱
はダブルピース、メアリーは左胸に右手を添えたポーズでラウラはドイツ式敬礼。
静寐はマリアの右肩に左肘を乗っけてサムズアップ、清香はのほほんさんと一緒にフュージョンのポーズ……何でそれをチョイスしたし。
癒子は笑顔全開のピースサインで、マドカとフォルテは挑発的な表情を浮かべながら、マドカは右手の中指を立て、フォルテは左手でサムズダウン
ときたか……何だ、此のアウトローコンビは。
この場にダリルが居たら、更なるアウトローポーズが展開されていたのかもしれないな。
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全体行動の2つ目は、京都から少し足を延ばした奈良県の『奈良公園』だ。
直ぐ近くに大仏で有名な東大寺がある、日本でも有数の観光名所だな――その有名さ故に、平等院鳳凰堂よりも外国人観光客が多いみたいなん
だが、中東から来たと思われるターバンと髭のオジサンが居るのは如何なんだ?
イスラム教を崇拝する彼等にとって、仏教は異教だと思うのだが……
「日本で発展した仏教には、イスラムの神を取り入れたモノもあるから問題ないのよ夏姫。
仏の位は、上から如来、菩薩、明王、天となってるのだけれど、明王と天に関しては他の宗教の神を仏教に取り込んだ存在で、その中にはイスラ
ム教から取り込まれた神も存在しているの。
だから厳格な戒律が存在するイスラム教であっても、仏教だけは例外的に異教では無いのよ。」
「そうだったのか?其れは初耳だったな。」
其れを考えると、日本で発展した日本式の仏教こそが、世界の共通宗教であるのかもしれないな。
まぁ、宗教的な彼是は良いとして、奈良公園の名物と言えば鹿だ。
二ホン鹿を見るだけならば難しい事ではないが、此処まで近くで見る事が出来るのは、日本広しと言えども奈良だけだろうね?――此処まで、人に
慣れてる鹿は日本全国どこを探しても此処以外にはないだろうからな。
「ふむ、此れが日本の鹿か。
クラリッサから話は聞いていたが、実物を目にするのは初めてだ……思っていたよりも人懐っこいのだな?――待て待て、慌てるな。お前達の分
の鹿せんべいは買ってあるから。」
「ほ~ら、鹿せんべいはこっちよ!食べたい奴は来なさい!!」
ラウラと乱は、満喫しているみたいだな?
雰囲気的に動物に好かれ易いのかもしれないが、ラウラと乱の周囲には多数の鹿が群がっているからね……割合的にオスの方が多いって言う事
には突っ込まない方が良いんだろうなきっと。
「美少女と動物が戯れてと言うのは、とても絵になると思わないか楯無?」
「そうね、貴女の言う通りだと思うわ夏姫。」
その光景を見ながら、アタシと刀奈は仲見世の茶屋で、抹茶とクリームあんみつを満喫中。
流石は京都、薫り高い抹茶は言うまでもなく、クリームあんみつも、小倉餡と蜜とクリームの甘さが絶妙で、トッピングされたフルーツも新鮮で、京都
らしく、京菓子的な芸術性もあるから正に最高だわ。
「学食のスウィーツメニューに加えても良いかもな此れは。」
「そうね、前向きに検討してみるわ。」
コスト面を考えると実現は難しいかも知れないけどね。
そう言えば、奈良公園には『よく当たる』と噂のお御籤があった筈だが、折角だから引いて行かないか?――修学旅行の思い出として、ちょっとした
運試しって言うのも悪くないだろう?
「だな、良いと思うぜ夏姫姉。」
「……同意してくれたのは良いが、何だってお前はモノの見事に『鹿塗れ』になってるんだ一夏?」
「何だがよく分かんねーんだけど、懐かれたみたいでさ……メスの鹿からは求愛されてんだけど、如何したモンだこれ?って言うか、異種族間であり
ながら求愛受けるってどうなんだ?」
「其れだけ己が魅力的だったと思っておけ。
そしてその上で、その求愛は丁重に断りを入れておけ――人と鹿では、ドレだけ頑張っても子孫を残す事は出来ないのだからね。……如何に一
夏が『織斑計画』で生み出された存在であっても、種族の壁を乗り越えるのは、多分不可能だからな。」
「つー訳で諦めてくれ。
そもそも、俺には鈴と箒って言う最高の嫁さんが居るから、其れ以外には興味ないからな。」
……理解したかどうかは分からんが、一夏に群がっていたメスの鹿は退散していったか。……何となく、後ろ姿に『ショボーン(´・ω・`)』と付きそうな
雰囲気を漂わせながらな。
取り敢えず、お御籤を引くとしようか。
100円で出来る運試しと言うと、何処か微妙な感じがしなくもないが、意外と的を射ている事が書いてあるから侮れない部分があるんだよな、お御
籤と言うのはね。
引いたのは、アタシと刀奈と一夏と箒と鈴だが、さて結果はどうだった?
「よっしゃ!アタシは大吉!
恋愛運:素敵な出会いに恵まれるって、既に彼氏持ちだっつーの。」
「私は吉だな。可もなく不可もなくと言った所か?
病気:問題なし、健康:極めて良好だが、失くし物:出ないでしょう、諦めよか……物はなくさないように注意しないとだな。」
「細かい運勢を見て行くと、吉だからと言って良い事だらけとは限らないな。
アタシは中吉だが、金運は『思わぬ損失あり』と出ているからね……まぁ、良くない運勢は、気をつけた方が良いと言う事だろうさ。
楯無は如何だった?」
「フッフッフ、聞いて驚きなさい?
私が引いたのは、このお御籤でも10万本に1つと言われている幻の『超大吉』よ!
特に最高なのは恋愛運!相手がいる場合、更に深い仲になる事が出来るでしょう。ですって!……と言う訳で、更に深い仲になりましょう夏姫。」
「……自分で言うのも何だが、ヤル事ヤッてる仲なのに、これ以上如何深くなれと?」
「決まってるじゃない。其れは勿論結婚よ♪」
残念ながら現在の日本では同性婚は認められてないから無理だ。
アタシもお前も法律上は結婚できる年齢に達しているが、学生の身では其れは如何かと思うし、アタシとお前が卒業した後だと、日本の法律が適用
される事になるから無理だからな?
「更識の力を持ってして、安武首相に法律変えて貰おうかしら?」
「絶対にやるなと強く言えないアタシが居るのが悲しいな……自分が同性愛者だった事に今更ながらに驚きだよ。」
まぁ、其れは其れとしてお前は如何だった一夏?
「超最凶ってなんだこれ!!
つーか、細かい運もザッパ過ぎんだろ此れ!『そんなに悪くないけど『すい難』の相あり』って意味わからねぇ!!何だよ、IS学園は四方を海に囲
まれてるから、水難の相ありってか!?」
「此れはまた何とも言い難い物を引き当てたみたいだが、『すい難』と言うのは水の相じゃないと思うぞ一夏?……取り敢えず、後ろを見てみろ。」
「へ?」
――キュピーン!
「ファイナルアトミーック!バスター!!!」
「のわぁぁぁぁぁぁ!?」
まさかのロシアの赤きサイクロンだな。
破壊力抜群のファイナルアトミックバスターだが、咄嗟にストライクを展開してダメージを最小限に抑えた一夏は見事だな――如何に織斑計画で生
み出された存在であっても、コンクリートの床でファイナル・アトミック・バスターを喰らったらお陀仏間違いなしだからね。
だがまぁ、一夏の運勢は『水難』ではなく『吸い難』だったと言う事か。
取り敢えず、生きてるか一夏?
「身をもって、PS装甲の有効性を痛感したぜ夏姫姉。」
「如何やら無事みたいだな。」
まさかの一幕があったが、奈良公園も楽しむ事が出来た。
鹿達と一緒に記念撮影が出来たのも奈良公園ならではだな――其れとは別に、千冬さんが眼光だけでオスの鹿の殆どを平伏させた事に関して突
っ込むのはNGなんだろうなきっと。
で、奈良公園から宿泊先のホテルに向かうまでのバスの中では、再びカラオケ大会で盛り上がったが、今度はアタシと箒の『希望の絆』が最高得点
で優勝した。
――――――
Side:一夏
全体行動を終えてやって来た宿泊先のホテルは、臨海学校の時の旅館をも上回ってるな確実に。
本館の建物がめっちゃデカいのもそうなんだが、敷地面積が兎に角広くて、俺達IS学園の生徒が宿泊するのは、敷地内にあるコテージ型の建物。
5~6人用の建物で、同じ部屋の面子は夏姫姉、マリア、鈴、箒、楯無さん。――普通は班ごとに泊るモンなんだろうけど、俺って言うイレギュラーの
事を考えると、そうも行かないんだろうな。
俺の希少性は相当だから、色んな意味で狙ってる奴は多いから、其れを考えるとISRIの面子と一緒の部屋にしておいた方が安全って事で、この面
子って訳だ。(因みに箒は、アカツキを受領した後からISRIの企業代表になってるぜ。)
コテージ型の方に宿泊って事で、本館にある大浴場を使えないのが残念だけど、コテージ内にも結構な広さの風呂場が備え付けられてるから文句
はない。……文句は無いが、何だって此の部屋に泊る面子以外もこの場に集まってるのか?
集まってるのは何時もの面子だから構わないけど、5~6人部屋に15人も入ると流石に窮屈――でもないか。床に座ってたり、ベッドに腰掛けたり
してるからな。
んで、何で居る訳?居て悪い訳じゃないんだけど、夜の点呼が終わってから他の部屋に移動ってのは拙いんじゃないの?
「其れは大丈夫だよイッチー。
コテージ型の部屋だから、ホテル本館の部屋と違って、点呼が終わった後で先生達が見回る事なんて無いから。――点呼が終わったら、先生達
は本館の一室で寝る事になってるみたいだし~~~?」
「だから、こうして部屋を移動しても大丈夫だし、就寝時間を過ぎて起きていても怒られる事は無い。」
「のほほんさん、簪……其れは確かにそうかも知れないけどさ……まぁ良いや。
どのみち最初っから就寝時間に大人しく寝る心算なんて無かったから、明日に影響が出ない範囲で遊ぶとしようぜ――っと、その前に、ソロソロこ
の面子のチーム名とか決めないか?」
「チーム名だと?」
「何故だ夏兄さん?」
夏姫姉とマドカが疑問に思うのも分かるんだけどさ、この面子が集まる事って結構多いだろ?学園ではダリル先輩と虚さんも加わってな。
だからさ、分かり易くチーム名とかユニット名、或いは部隊名みたいのを付けた方が分かり易いかなぁって思ったんだけど、如何だろう?
「チーム名……良いわね、アタシは賛成よ一夏。」
「確かにチーム名と言うモノはあった方が良いかも知れん――集まった時に呼ぶのも楽だしな。」
「流石はお兄ちゃん、良い事思い付くね♪」
「完全に思い付きではあるんだけどな。」
だけど、チーム名を付ける事に関しては異論はないみたいだぜ――鈴と箒と乱が同意してくれたけど、他のメンバーも反対はしなかったからな。
と、言う訳で良いチーム名を思いついた人は遠慮なく言ってくれ。
「では僭越ながらまずは私、セシリア・オルコットが。ブリティッシュ・ソルジャーズなど如何でしょう?」
「待て、全員がイギリス人では無いのだ、其れは駄目だろう?」
「本音と愉快な仲間達~~~!」
「ゴメン本音、若干不愉快。」
「なんで~~?」
「……自分の胸に聞いて。」
「私の胸~~?……凄く大きいです。」
「「「「「「滅殺!!」」」」」」(By:鈴、乱、ラウラ、簪、清香、癒子)
「IS学園より愛を込めて。」
「詩人ね静寐ちゃん。」
で、いざ意見を募集してみると、真面なのが出て来ないなオイ。
と言うか、其れはチーム名か静寐?如何考えてもチーム名ってよりは、詩のタイトルだよな其れ……自分で振っといて一切アイディアが思い付かな
い俺が言えた事じゃないかも知れないけどさ。
夏姫姉は、良いの思い浮かんだか?
「そうだな……『レギオン』と言うのは如何だろう?『レギオンIB』で如何だ?」
「おぉ!カッコイイじゃんか!!――でも、レギオンって何?其れと『IB』って?」
「『執行者』の意味だ。
アタシ達と敵対する連中がライブラリアン、『観測者』を名乗るのならば、アタシ達はレギオン、『執行者』を名乗ろうかと思ってな――そして、そのIB
とは『インフィニット・ブレイカーズ』の略だ。『無限の破壊者達』とは、アタシ達にピッタリと思ってね。
アタシ達の目的は、ISを本来の役目に戻す事だが、同時にこの世界の歪みを破壊する事も目的としているから、この世に歪みが存在する限り、其
れを破壊し続ける破壊者だからな。」
成程、そう言う事か……『レギオンIB』、夏姫姉はセンスがいいぜ。
其れじゃあ、チーム名は夏姫姉が提案したので良いか?
「「「「「「「「「「「「「いいとも~~~!!」」」」」」」」」」」」」
「ノリの良さは、相変わらずだな。」
「ノリと勢いは大事だぜ夏姫姉?」
「其れを否定出来んのが悲しいな。――まぁ、流れが自軍に傾いている時に限っては、ノリと勢いで押し切る事は出来るだろうけどね。」
「ノリと勢いは、案外馬鹿に出来ねぇよな。」
そんじゃ、この面子のチーム名は『レギオンIB』に決定!
チーム名も決まった事で、此れまで以上に結束は強くなったと思うから、此れからもこのチームで息を合わせてバッチリ行こうぜ――
――キュピーン!!
「「「!!!」」」
此れは、この感覚は!一秋の奴か!!
夏姫姉と箒も何かに気付いたって事は、イルジオンと散の奴も近くに居るって事か……ちぃ、早速仕掛けて来やがったって事かよ!ったく、修学旅
行初日に仕掛けてくるか普通?
……いや、アイツ等に常識とか求めても無駄だったなうん。
「夏姫、一夏、箒?如何かしたのかしら?」
「客が来たみたいだマリア。」
「客?……ってまさか、ライブラリアン!?」
「あぁ、間違いないと思うぞ鈴……散の気配を感じたからな。」
「修学旅行初日に、其れも夜襲を掛けてくるとか……取り敢えず、ライブラリアンのトップは、戦術眼はあるとは思うけど、性格に関しては絶対に最悪
で間違い無いと思うよ私。」
「賛成。して、その心は静寐?」
「簡単だよ一夏君。あの『天才(笑)』と『似非パツキン』って言う人格破綻者を自分の組織に招き入れて戦力としてる時点で真面な筈がない。
加えて、就学旅行の初日に、其れも最終点呼が終わった後に仕掛けてくるとか如何考えても性格が良い筈がない。絶対に真っ黒――分かり易く
言うと、編入して来たばかりの頃のブリーズさんよりもどす黒い。」
うん、そりゃ最悪極まりねぇわ。
ま、其れは其れとして、来た以上は相手してやるしかないんだが……な~~~んか、妙な感じなんだよな?
「如何した一夏?」
「いやな夏姫姉、一秋の存在を感じ取ったのは確かなんだが、同じような感じが一秋の他に3つもあったんだ。――其れが、少し気になってさ。」
「あぁ、成程な。
なら、一秋の他に3人居るんだろうさ、お前になり損ねたお前がな。」
「夏姉さんの言う通りかもな。
ちー姉さんの量産型は、正確な数は分からないが相当数作られたらしい……完全な成功例は夏兄さんだけだったがな。
ギルドからの指令で、シャルロット・ブリーズが学園に着くまでの間、陰ながら護衛していた時も、アイツを狙っていた連中は自我の無い夏兄さんの
なり損ないだったから、ライブラリアンが夏兄さんのなり損ないを大量に抱えてる可能性は充分にある。」
「俺の弟達って事か。」
プロトタイプの一秋と、初号機である俺、そしてそれ以降に誕生した数多の弟達……ったく、本気で胸糞が悪くなる話だが、如何に同じ遺伝子を持っ
てる『弟』でも、敵対するなら容赦はしないぜ俺は。
ましてや、折角の修学旅行に水を注そうってんなら全力で其れを阻止するだけだ――修学旅行が中止になったら、皆ガッカリだからな。
「お前の言う通りだ一夏、折角の修学旅行が中止になっては敵わん……故に、迎撃するしかあるまい。
のほほんさんは、千冬さんに連絡してライブラリアンが此方に向かってきてる事を伝えて指示を仰いでくれ――アタシ達は出撃して、連中を市街地
から引き剥がす。
京都の歴史的文化財を破壊されては堪らんからな。」
「ナッキー、了解なのだ~~!!!」
「其れから、ラウラ、乱、メアリーの3人にも今回は出て貰う。
女権団との戦いは、裏の仕事だったから学園で待機して貰ったが、今回は学園の生徒を守る為の戦いでもあるから参加して貰うぞ。」
「うむ、了解したぞ姉上!!」
「任せて!誰が相手でもやっつけて見せるから!!」
「うふふ……此のセシリア・オルコットに落とされる事を、光栄に思うと良いですわ。」
……んで、こういう状況になると、自然と夏姫姉がリーダーになるんだよなぁ。1学年上の楯無さんが居るにも拘らず。――ま、ガキの頃から夏姫姉
は姉貴肌で周囲を引っ張ってく所があったから、根っからのリーダー気質なのかもな。
ま、何にしても仕掛けてきた以上は相手になってやる……そして、引導を渡してやるぜ一秋?テメェは、存在その物が害悪でしかないからな!!
精々、首を洗って待ってろ……来い、ストライク!!
蓮杖一夏。ストライク、行くぜ!!
To Be Continued… 
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