Side:夏姫


謎の無人機は、アタシ達が協力して撃破したが、学園側の被害はゼロではない……あの無人機が強引に乱入してきたせいでアリーナの天井に
は大穴が開いてるし、アリーナと客席の間に張られていたバリアも壊されてしまったからな。
まぁ、死者がゼロと言う事を考えれば、悪くないだろう――尤も負傷者ゼロじゃないと言うのには不満があるのは否定しないけれどね。

と言うか、負傷者は乱入して来た無人機ではなく、放送室に乱入した散のせいで負傷した者達だと言うのだからマッタク持って冗談にもならん。
……前々から思ってたが、あの馬鹿は、織斑共々極刑に処していんじゃないかと思う。割とマジでな。



「極刑は兎も角として、この後の緊急会議の後で、可成り厳しい処分が下される筈よ夏姫ちゃん。
 尤も、織斑君は織斑先生の弟で、篠ノ之妹さんは、篠ノ之束の妹だから、あまりにキツイ罰は与えられないけど、其れでも今の学園が下せる上
 で最大の罰が与えられると思うわ。」

「其れを聞いて、少し気持ちが落ち着いたよ楯無。」

アレだけの馬鹿な事をしたにも関わらず、無罪放免となっていたら、間違いなくアタシはブチ切れて、一秋の事を9割殺していだろうからね――あ
んな奴は、この学園から追放しても良い位だ。



「学園から追放って言うのは、少し重いかも知れないけど――彼は其れをされても文句が言えない事をして来たのだから、そろそろ罪に対する罰
 を受けても良い頃だとは思ってる。
 そして、これからの緊急会議では、彼だけじゃなく、学園の膿を出す場になるかも知れないわ――事と次第によっては生徒会の仕事が増えるけ
 ど、其れはまぁ、必要な手続きと言う事にしておきましょ。」

「頑張れ楯無、生徒会役員としてアタシも手伝うからな。」

「ありがとう。夏姫ちゃんの優しさが身に染みるわ~~。」



だからって抱き付くな馬鹿!――まぁ、頼りにされているのは悪い気分じゃないけどな。
何にせよ……其れじゃあまぁ、緊急会議と言う名の事情聴取とやらに出席するとしようか。










Infinite Breakers Break19
『襲撃事件後の事後処理~罪と罰~』










楯無の案内でやって来たのは、会議室――それも、只の教員会議室じゃなく、学園の地下に存在している極秘事項を話し合うための会議室だ。
生徒会役員になった際に、楯無からこの部屋の存在は聞かされていたが、まさか己が此処に足を踏み入れる事になるとはな……今回の襲撃事
件は、単純に学園が狙われたと言うだけではないと言う事か。

集まっているのも生徒会に織斑先生とミューゼル先生を始めとした教師陣に、あの無人機を相手に戦った鈴と簪と一夏とマリア……そして、無謀
な乱入そして来た馬鹿と、要らん事をしてくれたボケと、そのボケを止めようとした箒と言う面子――なんだが、何でお前たちまで此処に居る、静
寐、清香、癒子!!
お前達は避難誘導を手伝っていたが、アリーナでの戦闘には直接関わっていない筈だろう?
なのに何故此処に居る――一応此処は一般生徒が入り込める場所ではないと記憶していたんだが……アタシの記憶違いだったか?



「えっとね、楯無先輩に誘われて来たんだ。
 『観客の避難誘導を円滑にやってのけたは見事――なら立派に関係者だから、事の真実を知る権利は有るから来なさい。』って言われて。」

「それと、『此れから先もこう言う事が無いとは言い切れないから、対処できる人は多い方が良いから。』とも言われてね?」

「私達でも力になれるなら、と思って来たの。」

「お前の差し金か楯無ーーー!!」

何を考えてるんだお前は!!こんなバリバリ機密事項が飛び交いそうな緊急会議と言うか、学園裏会議に一般生徒を巻き込むか普通!?
いや、静寐達の実力が、本人達の努力もあって、既に一国の代表候補レベルに達し掛けてるのは間違い無いが、だからと言って専用機も持って
無い一般生徒を呼ぶ事も無いだろう!



「確かにそうかも知れないけど、彼女達は避難誘導を行いながら『色々』見てたみたいだから、膿出しに一役買って貰えると思ってね?
 其れに、専用機を持ってないとは言っても、実力があるのなら学園の打鉄かラファールでも充分に動かせるでしょ?――学園の防衛の意味で
 も実力ある人は、出来るだけ此方側に居て欲しいのよ。」

「はぁ……まぁ、分からんでもないがな其れは。」

本来ならば静寐達を実戦の場に出すのは、もっと後の予定だったんだが、今回みたいな事が起こってしまった以上は前倒しも仕方ないか――此
れは、後で束さんに楯無の専用機の他に、更に3人分の専用機の開発をお願いする必要がありそうだ。
……尤も、束さんなら嬉々として新型機を作り上げそうだけどね。



「では、そろそろ緊急会議を始めるとしましょう。
 先ずは、1年生の諸君は初めまして。IS学園の学園長を務めている轡木十蔵です。」



と、会議が始まったか――って、この人が学園長なのか?
入学式で学園長として挨拶していたのは壮年の女性だった気がするが……まさかとは思うが、女装趣味とかじゃないよな学園長は……?



「流石に其れはねーでしょ夏姫?って言うか、学園長ってよく見たら用務員のおじさんじゃん?」

「あ、確かに言われてみれば鈴の言う通りだな?」

「ハッハッハ、バレてしまいましたねぇ?
 このご時世、IS学園の学園長が男だと、何かと面倒な事が起こるので、表向きの学園長は私の妻と言う事になっているのですよ――まぁ、用務
 員としての仕事も楽しい物は有りますがね。」



女尊男卑の馬鹿共が要らん事を起こさない為の処置と言う事か……確かに、女尊男卑の連中が、IS学園の学園長が男だと知ったら、どんなテロ
紛いの事をするか分からんからな――成程、その処置は英断ですよ学園長。



「お褒めの言葉、有り難く受け取っておきましょう。
 さて、其れではまず、此度学園を襲った機体について、現時点で分かって居る事の報告をお願いします織斑先生。」

「はい。解析を進めた結果、件の機体は無人機であると言う事が確定し、更に使用されていたISコアは、どの国にも登録されていない未登録のコ
 ア――つまり、存在しない筈の468個目と469個目のコアが使われていた事になります。」



未登録のコア……其れだけを聞いたら束さんが今回の襲撃を行ったと思うだろうが、束さんはあんな不細工な機体は作らないし、IS学園を襲撃す
る理由が無いから違う――と言うか、束さんがIS学園を攻撃するなら、今回の襲撃だけでIS学園を滅ぼす攻撃を仕掛けてくるだろうからな。



「此れだけでも重要な事ですが、それ以上に重要な事として……此の2機の無人機には、AIの代わりに、人の生体脳が使われていました。
 其れも、10代半ばから20代までの若者の脳が……」

「「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」」


んな、人の脳が使われていただと!?
と言う事は何か?あの無人機は、実はサイボーグだったと言う事か!?……何れにしても、あの2機を作り上げた奴は、真面な人の感覚と言う物
を持ってないのは確実だがな。



「俺達と大して変わらない年代の人の脳って事は、まだ生きてる人間から摘出したって事だよな?……ふざけるなよ、この野郎!!
 アレを作った奴等は、人の命を何だと思ってるんだ!!!」

「……多分、何とも思ってないんだと思う。
 己の目的を果たす為なら、どんな外道な事でも平気で行う事が出来る人って言うのは、何時の時代にも必ず存在していたモノだから……」



マッタク持って胸糞の悪くなる事実だが、簪の言う通り、どんな時代でもそう言う外道な輩と言うのは存在していたからね――まぁ、そう言う外道
共は、最後は因果が応報して悲惨な死を遂げると相場が決まってはいるがな。
何処の誰が作ったかは知らんが、その外道の行いに対する罰は必ず下るから覚悟しておく事だ――正体が判明したその時には、一切の手加減
をしないで滅してやるからな。



「人の脳が……ですが、其れだけの事をするとなると、相応の組織が必要になりますから、此度の襲撃は、決して小さくない組織の犯行と言う訳
 ですか。
 此れに関してはもう少し調べてみましょう――楯無君、お願いできますか?」

「御意に。更識の力を駆使して調べて行きます、学園長。」



ふむ……此の無人機の黒幕はISRIでも調べた方が良いかも知れん――尤も、束さんなら半日もあれば敵を丸裸にしそうだから、少し恐ろしい気
がするけどね。
まぁ、あの無人機に関しては、現時点ではこれ以上出来る事は無いだろうね。――と言う事は、次の議題になる訳だが……



「お願いします楯無君。
 さて、無人機については以上ですが、この件に関しては緘口令を敷きますので、絶対に他言しない様に。他言した場合は、残りの人生を牢獄の
 中で過ごす事になるかも知れませんんで、御注意を。
 次に、有事の際の生徒の避難についてです――今回の事は、蓮杖一夏君がロックされた扉を切り裂いてくれたおかげで生徒達が避難をする事
 が出来ました。
 此れに関しては、学園として、有事の際には扉がロックされるのではなく、扉が自動的に開放されて生徒達の避難を1秒でも早く出来る様にしよ
 うと考えていますが……それと同時に、避難誘導の見方も変えて行かねばならないでしょう。
 その上で問います鷹月静寐さん――貴女が避難誘導を行っているその時に、アリーナに居た教師陣の一部は何をしてましたか。」



次の議題は、如何やら教員の行動についての事になりそうだ。
どうにも静寐や一夏達が避難誘導をしている際に、教師陣に問題があったらしいな?……アタシ達は、無人機の相手をしてから分からないが、そ
んなに酷い奴が居たのか静寐、一夏?



「酷い人は確かに居たって言えるよ夏姫さん。
 一夏君が扉を切り裂いた直後に、アリーナの全ての扉が開いて、避難可能になったんだけど――その中で、一部の先生は生徒を押し退けて、『
 我先に』と言わんばかりに、真っ先に逃げ出してたんだよ……」

「其れだけじゃなくて、アリーナから出ても生徒の避難誘導をする所か、全速力で地下シェルターの方まで逃げてった奴まで居たぜ夏姫姉。」



何だ其れは?呆れてモノが言えん……幾ら何でも酷過ぎるだろう其れは?
生徒の安全を第一に考えねばならない教師が、生徒を押し退けて逃げ出した上に、生徒を避難させず我先に安全な場所に逃げるとは言語道断
以外の何物でもない――そんな愚行をしてくれた阿呆には相応の罰を下さねばならないんじゃないか?

――まぁ、アタシが何をせずとも罰は下されるんだけどね。
今のやり取りで、あからさまに目を逸らした奴等がいたからな……まったく、其れでは『逃げたのは私です』って言っているような物――此処まで
阿呆だと逆に笑ってしまうが、何にしても断罪を避ける事は出来ないだろうさ。




「貴様等……生徒を押し退けて我先にと逃げるとは良い度胸だな?
 その度胸に免じて、この私が自ら貴様等の罪を断罪してやるから有り難く思え……そして二度とISと関わろうとするな!ISは、貴様の様な輩が
 触れて良い物ではないのでな!」

「ま、そう言う事ね……己の身可愛さに、生徒を蔑ろにした、己の軽薄さを恨みなさいな。」



目を逸らした連中は、織斑先生とミューゼル先生にロックオンされてしまったからね。
つまり断罪者はIS学園教師陣のトップ2である織斑先生とミューゼル先生……此の2人に断罪されたら、手加減したとしても最低3ヶ月は病院暮ら
しは避けられないだろう。

取り敢えず、お祈りでもしてるんだな――







――只今織斑先生と、ミューゼル先生が、馬鹿教師を断罪してる最中だから少し待っていてくれ。



――動画で上げろ?……間違い無く規制が掛かった上にアカウントの停止がされるから無理だ。







で、5分後、織斑先生とミューゼル先生の制裁を受けた連中は、例外なく真っ黒になって、体中から煙が上がってる職員だったモノと化していた。
やり過ぎと言う心算は無いけど……程々にですよ、織斑先生、ミューゼル先生。



「やり過ぎたとは思っていない。コイツ等は教師としての職務を放棄した上に、生徒を危険に晒すような真似までしたのだ……寧ろ此れでも足りな
 い位だろう?」

「本当は、拷問染みた事をしてあげても良いんだけど、其れはちょっと刺激が強過ぎるからね。」

「「「「「「「「「「「「(汗)」」」」」」」」」」」


……取り敢えずこの2人は敵に回しちゃダメだな。
其れで、この人達はどうなるんでしょうか学園長?少なくとも、こんな意識の低い連中に、これ以上学園の教師を務めさせる訳には行かないと思
うのですが?



「そうですね……彼女達は、今日付けを持って解雇としましょう。
 鷹月君や蓮杖君の証言がある上に、監視カメラの映像もあるでしょうから言い逃れは不可能――一般の学校でも、有事の際に生徒を蔑ろにし
 たとなれば懲戒処分は免れませんからね。」



まぁ、そうだろうね。
となれば、この教師問題も此れにて解決だから……残るは、貴様等に対する処分だけだな、織斑、篠ノ之妹?



「な!ちょっと待てよ、なんで俺と散が処分を受けなきゃならないんだ!!」

「そうだ!私も一秋も悪い事は何もしていないぞ!!」


「……アンタ等、其れ本気で言ってる訳?だとしたらおめでたい通り越して、相当の阿呆よ?
 先ずは一秋、アンタなんでしゃしゃり出て来たのよ?あの時点で、生徒全員に避難指示が出されてた筈よ?――アタシと簪は、スコール先生達
 が到着するまであの無人機を足止めする必要があったし、夏姫は千冬さんに許可とって、更に千冬さんに頼まれたんだから、あの場に居たって
 問題は無いわ。
 でも、アンタは?千冬さんやスコール先生から、出撃命令でもあった訳?」

「そして、それ以上に悪いのはお前だぜ篠ノ之散。
 お前のやった事は只の危険行為だけじゃない……放送室に居た生徒を殴って気絶させると言う、立派な傷害罪が追加される上に、更に生徒の
 身を危険に晒した罪まである。
 あの時、俺とマリアが間に合ってなかったら、放送室に居た連中はお前と箒も含めて全員死んでたんだぜ?其れを理解してんのか?」



鈴と一夏の言う通り、お前等のやった事は、何の意味もない無駄で邪魔な行為だったんだよ。
織斑は命令違反の独断専行、篠ノ之妹は傷害と殺人未遂と言っても過言でない事をしたんだ……罰せられて当然だ――其れとも何か、自分が
『織斑千冬の弟』『篠ノ之束の妹』と言う理由で、罰せられる事は無いと思っていたのか?
だとしたら甘すぎるな。



「そんなの納得できるか!
 あの場面では、戦力は多い方が良いに決まってるんだ……俺は助太刀してやったんだぞ!!」

「そうだ!其れに、私は一秋に喝を入れてやっただけだ!私は何も悪くないぞ!!」

「黙れ馬鹿者共が!!」



本気でどうしようもない奴等だが、此処で千冬さんが一喝したか――織斑と篠ノ之妹も、粋がってはいたが、千冬さんの一喝の前では縮こまるし
かないみたいだな?



「まず織斑、貴様のやった事は命令違反と独断専行に他ならない!
 私は『避難しろ』とは言ったが、『凰と更識妹の援護に入れ』などと言う事は只の一度も言っていない!!それなのに勝手な真似をして、戦局を
 混乱させるとは言語道断だ!!」

「姉……織斑先生!だったら、蓮杖の弟とレインは如何なんですか!アイツ等だって勝手に乱入して!」

「馬鹿者、蓮杖弟とレインは、生徒の避難誘導が終わった後で私に連絡を入れて来た上で、私が出撃許可を出したのだから無問題だ!
 そして、篠ノ之妹……貴様は本来ならば退学レベルであると言うのを理解しているのか?貴様が怪我をさせた放送委員の中には、頭を5針縫う
 程の大怪我をした奴も居るのだぞ!!」

「学園としては勿論、私も姉として親御さんや家族に謝罪しなくてはならん……本当にお前は昔から何も変わっていないな散……」

「煩い!アイツ等が大人しく私にマイクを渡せばよかったんだ!そうすれば、怪我をしないで済んだんだ!!
 私の言う通りにしなかったアイツ等の自業自得で、私は決して悪い事はしていない!私と一秋に対する処分は不当なモノだ!――こんな事をし
 たら、束姉さんが黙ってないぞ!!」



うん、分かってはいたけど、コイツ等が己の罪を認める筈がないか。
篠ノ之妹に至っては、自分は悪くないと喚きたてた上で、束さんの名を出して脅しとも言える態度を見せているからな……アイツは、束さんの事を
嫌っているくせに、都合のいい時だけその名前を利用しようとするんだから性質が悪い事この上ないよ。



「マジでアレは無いわ……本気でアイツってたば姐さんと箒の妹なのか疑いたくなるわ~~……」

「俺も一秋が千冬さんの弟なのか疑わしくなって来たぜ……元兄である事も含めてな。」



鈴と一夏が思わずこう呟いたのも仕方ないだろうね。
其れで学園長、此の大馬鹿者2人の処分はどうなりますか?――アタシとしては、最大級の厳罰を与えて欲しい所なんですけれど……



「其れは私からもお願いします学園長――この学園の生徒会長として、彼等の行動は看過できない物が有りますので。」

「蓮杖君に楯無君……まぁ、確かに厳罰は免れないでしょうな。
 織斑君と篠ノ之散君には、ゴールデンウィーク中の奉仕活動と、毎日反省文100枚、そしてゴールデンウィーク期間中は、監視付きでの懲罰房
 生活を命じます――此れでも君達の更生を信じて、最大限まで罰を軽くしたのですから有難く思って下さい。」



確かに、罪に対する罰としては可成り軽いかも知れんが、逆に言うとこれ以上の厳罰は『織斑千冬の弟』と『篠ノ之束の妹』に対する厳しすぎる処
罰とされる可能性があるから、学園を外野からの攻撃から守るには、これがギリギリのラインなのだろうね。
其れでも、最初だからの減刑だがな。

まぁ、織斑と篠ノ之妹は最後まで文句を言っていたが、教師陣に拘束された上で、手錠を掛けられて強制連行されたがな……この懲罰を受けて
少しは真面になって欲しい所だが、多分無理だろうな。



「其れでは、これにて緊急会議を終わります。
 そして最後に、蓮杖夏姫君、蓮杖一夏君、更識簪君、凰鈴音君、マリア・C・レイン君、篠ノ之箒君、鷹月静寐君、相川清香君、谷本癒子君……
 君達は本当によくやってくれました……お蔭で1人も死者が出る事なく、事を収める事が出来ました――学園長としてお礼を言います。」

「お礼だなんて、止めて下さい学園長。俺達は、俺達に出来る事をしただけですから。」

「そうそう。其れにこんな時の為に、専用機持ちは存在してる訳だしね♪――乱も、ちゃんと己の役目を果たしてたからね。」

「アタシ達はすべき事をしただけだ……だが、その礼は素直に受け取っておきますよ学園長。」

謙遜し過ぎると言うのもまた嫌味になるからな。

それにしても人の脳を搭載した無人機か……一体何処の誰がそんな悪趣味な物を開発したのか知らんが、少なくとも真面な神経を持った奴じゃ
ない事だけは確かだな。
まぁ、何処誰かは知らんが、正体が分かり次第即断罪してやるからその心算でいろ――自由の翼は、外道を逃がさないからね。



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てな事が有ったので、そっちでも調べて貰っても良いですか束さん?どうにも、今回の件は色々ときな臭いので。



『りょーかーい!任せておいてよなっちゃん!
 黒幕まで暴く事は出来なくとも、この束さんの手にかかれば組織の全容位は明らかにして見せるからね!!――まぁ、其れは其れとして、なっ
 ちゃんはゴールデンウィークにはこっちに戻って来るのかな?』


「その心算で居ますよ束さん。」

まぁ其の時には楯無も連れて行くので、ゴールデンウィークまでに楯無の専用機を完成させておいてください。
楯無の奴も、ISRI製の自分の専用機が出来るって言うのを楽しみにしてるみたいですからね――尤も、ミステリアス・レイディにも愛着があったみ
たいなんで、コアは今の機体の物を移植したいって言ってましたけど。



『ほうほう、其れは良いね?
 コアはISにとって魂であり、機体はあくまで魂の器に過ぎないから、コアを移植させてやれば器は変わっても魂は変わらないからね――どうや
 ら楯無ちゃんとやらは其れを理解してるっぽいね。』




まぁ、楯無はセーブモードだったとは言えアタシのフリーダムと引き分けた程の実力者ですからね――恐らく、ISの事を無意識ながらに学園の誰
よりも理解してるのは間違い無いと思いますよ。

少なくとも束さんの眼鏡に適うのは間違い無い――



――コンコン!



っと、誰か部屋に来たみたいだな?束さんちょっと待って下さいね。
鍵は空いてるが、誰だ?



「私達だよ夏姫さん。」

「来ちゃった♪」

「若しかしてお取込み中だった?」



静寐に清香に癒子か――否、電話をしていただけだから大丈夫だが、何か用か?



「夏姫さんは、ゴールデンウィークの予定ってどうなってるの?」

「ゴールデンウィークは、アタシは一度ISRIの本社に戻ろうかと思ってる。
 因みに一夏と鈴は乱と箒を連れて出かける予定で、マリアはオルコットと共にイギリスに行くらしいが、其れが如何かしたか?」

「えっとね、ゴールデンウィークの間に、若し可能だったらISRIの社内見学をしてみたいなーって思って……其れで、夏姫さんに会社に連絡を取っ
 て貰おうと思って。」



何だ、そんな事か。
ISRIは何時でも会社内を見学できるように解放しているから、事前に連絡さえ入れておけば問題ないさ――まぁ、会社の場所が場所だけに見学
に来る連中など滅多に居ないがな。
だが、そう言う事ならアタシの方から本社に伝えておくから安心しておけ。



『ふーん、なんか良い子達っぽいねなっちゃんや?』



いや、実際静寐達は良い子だし、実力も中々の物だぞ?
アタシ達が直々に鍛えてると言う事も有るが、此の3人の実力は既に国家代表レベルと言っても過言じゃない――其れこそ専用機を持っていたと
してもおかしくないからな。



『其れ程の子達ってのは、結構掘り出し物だね?
 そして、良いタイミングだよなっちゃん――実は束さんは、楯無ちゃんの専用機だけじゃなくて新たな機体を3つ作ってたのだよ!!
 其れで、その3機のトライアルパイロットが欲しかったところだから、その3人も是非とも連れてきてよ!其の3人にトライアルをして貰って、結果
 次第では、此の新型機あげるから♪』




既に新型機を、楯無の機体を含めて合計4体も作ってたのか束さんは!!――流石は1日を35時間で過ごす女……色々とハンパないな。
分かりました、3人にもその旨を伝えておきます。



『よろぴくね~~!それじゃあゴールデンウィークに会うのを楽しみにしてるよなっちゃん!』

「アタシも楽しみにしてますよ……其れじゃあまた。」

ふぅ、まさかの展開になったが、会社見学は取り敢えずOKだぞ、静寐、清香、癒子――当日は、新型機のトライアルに参加する事が出来るかも
知れないから、期待しておいてくれ。



「新型機のトライアルって、本当に?」

「何それ、すっごく燃えてくる!!」

「最高にハイって奴だね此れは!!」



ハハハ、言わずとも期待はマックスか。
だが、ISRIの専用機を受領すると言う事は、裏の世界に来ると言う事に他ならない――静寐達の実力は実戦でも通じるレベルに引き上げられて
いるとは言え、今はまだ普通の女子高生だがトライアルの結果次第では、彼女達を此方側に引き込む事になるかもな――尤も、彼女達の性格を
考えると、鈴がそうだったように、割とアッサリと此方側に来るのかも知れないけどね。



「夏姫さん、如何したの?何かニヒルな笑み浮かべてたけど……」

「ん?否、何でもないよ静寐。
 ただ少し考え事をしてただけさ……今年のゴールデンウィークは楽しい物になるだろうと思ったからね――否、実際に楽しい事になるのは間違
 いないだろうな。」

ゴールデンウィーク中に、最大で3人の専用機持ちが生まれる訳だからね。

ふふ、本社に戻るのが楽しみになって来た――楯無の専用機と、3機の新型機……期待してますよ束さん!!












 To Be Continued… 



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