Side:一夏


入学してから色んな事があったが、其れは其れとして、今日からは世間が待ちに待った大型連休、ゴールデンウィークだぜ!
今年は日付の関係で、IS学園も異例の丸々1週間休みの7連休だから、結構色んな事が出来るよな――となれば、鈴とのデートってのは外す事
は絶対出来ないぜ!
鈴だって異存はないだろ?



「まぁ、アタシとしても一夏とのデートは望むところだから異存はないんだけど、アタシとのデートの前に、少しばっかり親睦を深めて、旧交を温めて
 も良いんじゃないかと思うんだけど、如何かしら?」

「へ?」

親睦を深めて旧交を温めるってのは良いのかも知れないけど、其れは一体どういう意味でしょうか鈴さんや?



「鈍いわねぇ……乱との仲を深めようって言うのよ。
 んでもって旧交云々については、箒と、其れから弾と数馬よ。――箒は兎も角として、アンタあの2人に連絡取ってないでしょ?……と言うか、ア
 ンタの性格的に、忘れてたわよね絶対に。」

「うん、完全に忘れてた。」

弾は覚えてたけど、数馬に関しては完全に忘れてたな……弾と比べると、数馬は影薄かったからなぁ……ぶっちゃけて言わせて貰うなら、鈴が
数馬の事を覚えてた事に驚きだぜ。
こう言っちゃなんだが、完全に忘れてると思ってたからな。



「まぁ、アタシもついさっきまでは忘れてたんだけどね。――と言うか、数馬ってアタシら4人の中で一番キャラが薄かったから、ぶっちゃけ覚えてる
 人は可成りのレアよ一夏。」

「だよな、ヤッパリ。」

でもまぁ、久しぶりにアイツ等と会うのも悪くないか――五反田食堂の名物である『業火野菜炒め』も懐かしいからな。
だけど其れとは別に、弾の妹の蘭には悲しい思いをさせちまうか……蘭が俺に好意を寄せてたのは知ってたけど、俺が選んだのは鈴だからな…
…はぁ、最悪の場合は弾に一発喰らわされることも覚悟しとかないとだな。










Infinite Breakers Break20
『ゴールデンウィーク其の壱』










そんな訳でゴールデンウィーク当日、俺と鈴と箒と乱は、モノレールを使ってIS学園から本土に戻って、其処からバスに乗って、嘗て俺が暮らして
た街までやって来た。
あの日から3年経ったけど、此処は大して変わって無いな……其れだけに懐かしく感じるぜ。
バス停も、商店街のアーケードも俺の記憶に有るままだ……なんて言うか、久しぶりに故郷に戻って来た、そんな感じを受けるな此の場所は。



「うむ、私も懐かしいな……私にとっても、6年ぶりとなる場所だからな。
 多くの物が変わってしまっているのだろうと思ってていたのだが、其処まで大きく変わったモノは無いみたいだから、取り敢えずは安心したよ。」

「そっか、元を正せば、アンタもこの町の出身なのよね箒。」



箒も小学校4年まではこの町に居た訳だからな。
てか、要人保護プログラムだか何だか知らないけど、もっと他にやりようがなかったのか日本政府は?――多感な時期に転校を繰り返させたりし
たら、仲の良い友達も出来ずにクラスでの孤立状態を何度も経験して、人格曲がっちまうってのにな。
恐らくは束さんの事ばかり考えてて、その辺の事情なんかは一切考慮しなかったんだろうな……こう言っちゃなんだが、箒がグレずに育ったって
のは、ある意味奇跡的かもな。

……散の奴は、グレるどころか、昔に輪をかけて酷くなっちまったけどさ。

「時に鈴、此処に来たのは良いし、五反田食堂に行くのも異論はないんだが、行き成り五反田食堂に行くって訳でもないんだろ?
 そもそも、あそこの営業って昼からだから、未だ店開いてないしな。」

「勿論、午前中はたっぷりと遊んでから弾の所に行くわよ!
 まぁ、遊ぶって言っても此処は遊園地とかがある訳じゃないから、娯楽施設って言うとゲーセンかカラオケか、或いはボーリングか打ちっぱなし
 のゴルフセンターになるんだけど、ドレにする?」



取り敢えず、最後のは除外だろ?
其れは、ゴルフ好きのオッサン達が行く所であって、少なくとも高校生が行く所じゃねぇよ……プロゴルファーを目指してる高校生なら練習の為に
行く事があるかも知れないけどな。
俺個人の意見を言わせて貰うなら、ボーリングかゲーセンだな?
ボーリングなら全員が楽しむ事が出来るだろうし、ゲーセンでもエアホッケーとかフリースローとか身体動かすゲームもあるから箒でも楽しめると
思うからな。



「はい!私としては、午前中はボーリングを楽しんで、お昼をお姉ちゃんとお兄ちゃんの友達の所で食べて、午後はカラオケをやりたいです!!」

「ふむ……私も乱の案に賛成だな。
 ボーリングならば私でも楽しめそうだし、カラオケと言うのも初めての事だから色々と楽しめそうだからな。」

「うぇ?箒、カラオケ初体験って、其れ女子高生として色々間違ってるわよ!?
 アタシ等世代だったら、カラオケボックスでどんちゃん騒ぎなんて普通の事だってのに、其れを経験した事が無いだなんて、人生損してるって言
 っても過言じゃないわマジで!
 此れはもう、乱の案で行くしかないでしょ!一夏も其れで良いわよね!!」

「おう。異論無し。」

鈴の物言いは少しオーバーかも知れないけど、箒は要人保護プログラムのせいで、同世代の連中が普通に享受してた事ですら満足に出来なか
った可能性は大きいからな……なら、普通の高校生がやる事をやらないとだよな今日は!
たがな、ボーリングをやるってんなら俺に勝てると思うなよ?――自慢じゃないが、俺のボーリングでの最高アベレージは190だからな?



「あら、随分と自信満々じゃない一夏?
 なら、アタシと乱と箒の内、一人でもアンタに勝つ事が出来たらその時は、午後のカラオケ代はアンタ持ちで良いわね?」

「おう、良いぜ?
 序に二人以上が俺よりも上だったら昼飯代も俺持ちで良いぜ?――まぁ、俺のアベレージを超す事が出来るのは夏姫姉か千冬さんか、或いは
 束さん位だと思うけどな。」

「……姉さんだったら、パーフェクト300点とか普通にやりそうな気がするがな。」



……確かに、束さんならサラッとやりそうだな箒。
つーか、あの人に出来ない事とか有るのか?頭脳チートな上に、秋姉と普通に互角以上に遣り合うし、束さん曰く『やろうと思えば、戦車位だった
ら生身で余裕』とか言ってたしさ。
こう言っちゃなんだけど、束さんて突然変異的に生まれた『進化した人類』なのかも知れないぜ――そして、其れが否定できねぇからな。



「まぁ、姉さんだからな。」

「束博士って、本当に凄いんだね……」

「まぁ、文字通り世界を変えちゃった人だからねぇ……良くも悪くも後世に名を残すのは間違い無いでしょ。」



あぁ、間違いなく束さんの名は後世に残るだろうな――世界を狂わせた存在として、そして狂った世界を元に戻した存在としてな。
まぁ、その為には俺達が頑張らないとだぜ……対IS用ISを持ってるISRIの連中だけが現行のISに対抗する力を持ってる訳だから、其れをキッチリ
と生かさないとだからな。

ま、今はそんな事は置いておいてボーリングを楽しもうぜ!



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つー訳でやって来たボーリング場。
時間的に3ゲームが妥当って事で、3ゲームでフロントに申請して、ネームを登録して靴を借りてゲームを開始!
因みに登録名は、俺が『ワンサマー』、鈴が『オオトリスズネ』、乱が『オオトリランネ』、箒が『ホウキ@モッピー』な……箒は大分はっちゃけた登録
ネームだけど、こう言う事がしてみたかったの知れないな。

尚使用ボールは、俺が最高の16、箒が14、鈴が12で乱が10。女子で14ってのは可成り重いと思うんだけど、箒は剣道部の中でも一番パワー
あるから、これ位は余裕なのかも知れないぜ。

んで、これから投げるのは其の箒。
2ゲームが終わった時点での得点は俺と同率で首位……初めてとは思えない制球能力で、要所要所でストライクやペアを取っていただけに、今
回の一投にも期待しちまうぜ。
鈴と乱はコースは良いし、球の勢いもあるんだけど、弾が軽いせいでストライクが中々入らないんだよな。其れでもストライク3本に9スペアが4本
ってのは大したモンだと思うけど。



「ふぅ……行くぞ!!!」



――ドゴォォォォォォ!!



ってオイ、今の箒の一投には、ハイスピードドライブがかかってないか!?
超高速の縦回転を加える事で、球が地面を移動する際の摩擦抵抗を限りなくゼロに近くして、超高速の加速を与える高等技術……恐らく無意識
何だろうけど、そんな高等技術を身に付けてるとは思わなかった――スゲェよ箒。


んで、ハイスピードドライブがかかった球は、見事にピンを全てフッ飛ばしての完璧なストライク!――これでまた追い付かれちまったな。
だけど、負ける気は更々ないから勝たせて貰うぜ!!



「其れはこっちのセリフよ一夏!勝つのはアタシ達女子だからね!!」

「へっ、そいつは如何かな!3ゲーム目は始まったばかりだぜ鈴?――其れに、俺も1投目からストライクを出したら面白いよな?」

「専用機がストライクだけに?」

「巧い!お姉ちゃんに座布団一枚!」

「いや、其処は学園に居る者でなければ分からないネタだから、逆に1枚没収ではないだろうか?」

「俺がストライクを出したら2枚贈呈、ガーターだったら全部没収ってとこだろ此れは。」

俺的に言わせて貰うなら、乱が日本の国民的お笑い番組を知っていた事に驚きだけどな。
ふぅ……そんじゃまぁ、気を取り直して、せぇぇの――



「一夏のシスコン!」

「何だとぉ!?」

って、やべぇすっぽ抜けた!
ガーターにはなってないけど……倒したピンは僅か3本……あんなすっぽ抜けでも3本も倒せたのはラッキーだったと言うべきなんだろうが、此れ
は幾らなんでもアレだろ?
鈴、お前キタねぇぞ!



「ふっふーん、これも勝つための作戦よ!油断しきってたアンタが悪いのよ一夏。」

「ぐ……そう言われると言い返せないけど、だが其れでもハッキリ言わせて貰うが俺は決してシスコンじゃねぇ!
 シスコンてのは、織斑みたいな奴の事を言うんだよ!俺は別に夏姫姉にベッタリでも頼り切ってる訳でもねぇからな!お詫びして訂正しろ!!」

「番組中、不適切な発言があった事を心よりお詫び申し上げます♪」



うわぁ、すっごい事務的!……はぁ、まぁ今回は完全に鈴にしてやられたって事にしとけばいいか。
次でスペア取れば傷は最小限で済むからな……そして、本来ならマジギレしても良い場面なんだろうけど、鈴の心底楽しそうな顔を見てると、本
気で怒る気はしないぜ。

さてと気を取り直して2投目……だけど、1ゲーム目の途中から妙に視線を感じるんだけど一体何なんだ?……其れも、何やら殺気が籠ってる様
な視線を感じるぜ?



「其れはアレだよお兄ちゃん、周囲の男性からの羨望と嫉妬の視線ってやつだよ。
 男女のグループで来てるお客さんは兎も角、男子だけのグループとか、1人寂しくプレイしてる男の人からしたら、女子3人も侍らせてるお兄ちゃ
 んは嫉妬の対象になってるんだよ。」

「そう言う事だ一夏。」

「其れに、一緒に居るのが美少女ともなれば当然でしょ?」



美少女って、自分で言うなよ鈴。まぁ、否定はしないけどな。
しかしなぁ、羨望や嫉妬の視線を向けられても、俺の場合環境的に休日を一緒に出掛ける野郎ってのが居ない訳でなぁ……あの自称天才と言う
名の馬鹿と出掛けるなんて絶対嫌だし。つーか、其れをする位なら俺はシュベルトゲベールで自害するっての。
まぁ、何だ、俺に嫉妬と羨望の視線を向けてる男性諸氏は、頑張って彼女を作って下さいとしか言いようが無いな此れは。

そんな負の感情が籠った視線を一身に受けながらも、俺は2投目でスペアを出し、其のままゲームは殆ど俺と箒の一騎打ち状態で進んで行った
んだけど、途中で鈴と乱がターキー(3連続ストライク)をやった事で点差が一気に縮まって、殆ど差が無いまま10投目に突入。

其の10投目は、鈴と乱が8スペアの後で9本倒して、3ゲーム総合得点は鈴が513点、乱が510点だった。
で、箒は10投目でパンチアウトを達成して3ゲーム総合得点は582点だったんだが、俺も10投目でパンチアウトを達成して3ゲーム総合得点は
自己ベストの600点!
箒もアベレージ194で、俺の過去最高記録を上回ってたから、ラストでパンチアウトが出来てなかったら負けてたな。

まぁ、結果は俺の勝ちだけど、楽しいゲームが出来たから昼飯は皆に1品奢るよ。敢闘賞って事でな。



「ホント!?お兄ちゃん太っ腹!!」

「そう言うさりげない気遣いは、昔から変わらんなお前は。」

「ふっふーん、アタシの旦那だからね。」



まぁ、此れ位はな――って、鈴の旦那発言と同時に、周囲の殺気が膨れ上がったぞオイ……はぁ、マッタク持って面倒くせぇなぁ。
取り敢えず、ゲームは終わったから、フロントで精算して昼飯にしようぜ?流石にボーリングを3ゲームもやったら腹が減ったし、何よりもこれ以上
この視線に晒されたくないからな。



「そうよね~~……んじゃあ、ボーリングはお開きにして、ランチと行きましょう!」

「「「おーーーー!」」」


今日の昼飯は五反田食堂だからな……楽しみだぜ。



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つー訳で、3年ぶりにやって来たぜ五反田食堂。
でも、店に入る前に、鈴が『ちょっと待ってて』って言って店に入って行って、俺と箒と乱は店の外で待つ事になったんだが……何かあるのか?
普通に昼飯を食いに来ただけなんだけど。

って、店から鈴が出て来たな?――否、鈴だけじゃなくてもう1人……お前、弾か!!



「一夏……テメェ生きてやがったのかこの野郎!
 生きてたんなら生きてたって連絡寄こしやがれ、この馬鹿!俺も数馬も、お前が死んじまったと思ってたんだぞ、このスットコドッコイ!」

「あ~~……其れに関しては色々とスマン。
 俺も色々あってな……って言うかお前、ISRIの記者会見の放送見てなかったのか?其れには俺が出てたんだけどな。」

「見てねぇよ!
 ぶっちゃけISの男性操縦者とか言われても興味がなかったし『蓮杖一夏』って聞いてもお前だとは思わなかったからな!――何にしても生きて
 てくれて良かったぜ……おかえり、ダチ公!」

「おう、戻って来たぜダチ公!」



――カツン!



拳合わせ……大分久しぶりだな此れも。
まぁ、色々と心配かけちまったからな……心配かけた代償に、一発殴らせろとか言われても仕方ねぇんだが、そんな事も無く、昔みたいに触れ合
えるってのは、正直有難い事だよな。



「へへ、俺もお前とこうしてまた会えるとは思ってなかったけどな。
 ……所でよぉ、お前鈴とは最近どうなのよ?お前等結構仲良かったじゃん?……若しかして、付き合ってたりしますかね一夏君や?」

「そういや言ってなかったけど、鈴が帰国する時に両想いになって現在絶賛交際中だぜ弾君よ。」

「やっぱりかー!
 まぁ、お前等の事はお似合いだと思ってたから、俺としては収まる所に収まったって感じだけどよ――でもだ、鈴と言う相手が居ながら他の女子
 2人も連れてるって如何言う事だこれ?」



誤解しないように言っておくが、別にハーレム作ってる訳じゃないからな?
黒髪のポニーテールが篠ノ之箒、小学校4年生の時に転校しちまった俺の幼馴染で、茶髪のサイドテールは鈴の従妹の凰乱音、通称『乱』。
今日は休日って事で、一緒に出掛けて来たんだよ。



「一夏の幼馴染と、鈴の従妹か……しかし乱か、俺の妹と被るな。」

「……そう言えば、お前の妹も『蘭』だったな。」

字は違うけど、音は一緒だから、乱を連れて五反田食堂に来た時には、乱と蘭の呼び分けをする必要があるかも知れないな――乱の事は『乱』
で蘭の事は『蘭ちゃん』とでも言った方が良いか。

んで、何を難しい顔してんだ弾?



「ん?否ぁ、お前の事は蘭に如何言ったもんかと思ってな?
 お前が生きてたって事を知ったら喜ぶだろうが、アイツはお前に惚れてたから、お前と鈴が付き合ってたと知ったら大層ショックを受けると思うん
 だよなぁ……兄貴としては、妹を悲しませたくねぇ訳よ。」

「あ~~……成程そう言う事か。」

なら、今の俺の立場を利用しちまえよ。
今の俺は『織斑一夏』じゃなくて『蓮杖一夏』だから、同じ名前の他人の空似って事にすれば蘭のショックも無いだろ?――現実として、今の俺は
髪の色も前とは違って茶色だし、何よりこの顔の傷のおかげで大分印象が違うから、他人の空似で通す事は難しくないしな。



「あ~~……まぁ、其れがベターだろうな。
 蘭に嘘を吐くのはアレだけど、アイツの中では『織斑一夏』は永遠の初恋の人でいた方が良いのかも知れねぇ――まぁ、アイツが彼氏を見つけ
 て来たその時は、俺が吟味して最低でも一夏レベルじゃない野郎は物理的に撃滅すっけどな。」

「弾、其れやったらアンタ蘭に殺されるわよ?」

「うむ、その通りだな。
 古来より『人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて地獄に堕ちろ』と言うしな………」

「弾さん、若しかして結構シスコン?」

「いや、シスコンじゃないからな乱ちゃん!?」



ハハハ、懐かしいな此の空気。
俺と鈴と弾と数馬でつるんでた時は、大体いつもこんな感じだったからな――今更ながらに大分時が経っちまったんだって実感させられるぜ。

取り敢えず、店の中は入っても良いか弾?
ボーリングを3ゲームもやったから、腹ペコなんだ俺。



「何だよ、ボーリングを3ゲームもやって来たのか?其れじゃあ腹も減るって。
 でも、そう言う事なら腕を揮うぜ?――今日の昼間は爺ちゃん出掛けてるから、俺が店番任されてるんでな……爺ちゃんから免許皆伝貰った
 腕前を見せてやるぜ!!」



おぉ、厳さんから免許皆伝貰ったのかお前!
其れは期待出来るな――だが、俺の舌は甘くないぜ弾?お前の腕がどれ程か、五反田食堂の看板メニューである『業火野菜炒め』で確かめさせ
て貰うぜ!!



「へっ、なら其れには応えねぇとな?
 俺の腕前に驚いて腰を抜かすんじゃねぇぞ!」

「楽しみにしてるぜ弾!」

――で、結果だけ言うと、弾の腕前は確かに厳さんが免許皆伝を言い渡したレベルだったぜ。
看板メニューの業火野菜炒めも、厳さんの味を守りつつ、豚バラ肉を牛モツ肉に変えた弾オリジナルのバージョンもあって、メニューの幅が増えて
たからな……此れなら五反田食堂は安泰だな。

ボーリングの敢闘賞での俺の奢りでの一品は、鈴が青椒肉絲、乱が麻婆豆腐、箒が鯖の味噌煮で、夫々を一口ずつ貰ったんだが、全部が全部
一流の味だった。其れこそ、IS学園の学食で提供しても良い位だったぜ。

弾は、本気でプロの料理人を目指しても良いんじゃないかって、そう思ったな此れは。








――――――








Side:鈴


五反田食堂で、一夏と弾を再会させてからのランチは、会話にも花が咲いて、結構楽しかったわね。――途中で蘭が来て、一夏を見てショックを
受けてたみたいだけど、其処は弾が『彼は蓮杖一夏で、織斑一夏じゃねぇ。他人の空似だ。』って言って何とかしてくれたから無問題。
ダチ公ってのはこう言う時に頼りになるわ。


で、ランチを終えたアタシ等は、カラオケボックスに来てるんだけど……まさかの箒の美声に驚いてるわマジで!



「長い髪の女の子、彼の好みは知ってるの?
 伸ばし始めた髪は、やっと肩に付くわ
 どこかに気のきいたキューピットはいないかな
 不思議な魔法かけて 彼振り向かせて

 My Love もうとまらないの
 いつでも ときめいて
 この気持ちわかってほしい 気付いてよ はやく

 今は友達だけど 特別な人になりたい
 あと5cm髪伸びたら勇気がでるかも
 星に願いかける どうか奇蹟おこして
 彼に胸の鼓動聞こえないように

 My Love 走り出している
 いますぐ 飛び出して
 この想いをうけとめてよ 一緒にいたい ずっと

 My Love もうとまらないの
 いつでも ときめいて
 この気持ちわかってほしい 気付いてよ はやく

 My Love 走り出している いますぐ 飛び出して
 この想いをうけとめてよ 一緒にいたい ずっと……」



国民的大人気アイドル『麻宮アテナ』のミリオンナンバーである『My Love~勇気を出して~』を完璧に歌いきっただけじゃなく、オンライン全国ラン
キングで100点満点でぶっちぎりのトップって、幾ら何でも凄すぎじゃない!?
束さんは大概オーバースペックだったけど、箒も其れに負けず劣らずみたいね……剣道最強、華道金賞、茶道も完璧な上に歌もうまいって、完璧
超人かアンタは!!



「いや、完璧超人ではないぞ?」

「それでいて、嫌味を全く感じないんだから大したモンだわアンタ――仮に散が同じセリフを吐いてたら、言ったその瞬間に顔面に一発かましてる
 わね間違いなく。」

「アタシだったら顔面蹴りブチかましてるかも……お兄ちゃんは?」

「低空ドロップキックで膝を破壊した後で、起き上がりにシャイニングウィザードをブチかます。そして、ドラゴンスクリューからの足四の字をかまして
 アイツの膝を容赦なくぶっ壊す。」



いや~~、容赦ないわね一夏?
まぁ、一秋と散の大馬鹿コンビは、現在謹慎中だけど、其れでアイツ等が改まるとは思えないから、何か因縁つけて来たら思い切りやっちまいま
しょう――千冬義姉さんに『もうアイツ等には手加減しなくて良い』って言われてるしね♪



「……遂に見限ったか千冬姉、もとい千冬さん。」

「まぁ、この間の事は余りにも酷過ぎたからな……見限られても仕方なかろうな。」



そう言う事よ。


取り敢えず今はカラオケを楽しみましょ♪

この後連続5時間のぶっ続けカラオケをやって、アタシと一夏が『夕陽と月~優しい人へ~』のデュエットで全国ランキング1位になった事を追記し
ておくわ。
何にしても、今日は充実した1日だったわね♪








――――――








Side:箒


今日はとても楽しい1日だったな……だが、五反田弾の妹への気遣いと言うのを見て、改めて家族と言うのは良い物だと実感させられたな。
要人保護プログラムのせいで、篠ノ之家は家族がバラバラになってしまったからな……そう思うと、久しぶりに貴女の声が聞きたくなってきたよ姉
さん。
電話を掛けてみるか。


――PiPiPiPiPi……



『ハロハロ~~!世界のアイドル束さんだよ~~♪』

「お久しぶりです、姉さん。」

『お?その声は箒ちゃんだね?
 お久しぶり~~!元気してた?』




えぇ、元気ですよ姉さん。
其れよりも姉さんの方こそ元気ですか?声を聴く限り息災なようですが……



『イエーイ、束さんはバリバリ元気だから心配はご無用だよ!
 そもそもにして、遺伝子レベルで束さんはドチートレベルだから病気とは無縁ってもんだよ!つまりは無敵になりまっせい、せっせせのよいよい
 よいってね!』




意味が分かりません――ですが、元気そうで安心しました。
姉さん、一度何処かで会いませんか?もう随分と離れ離れになってしまったので、久しぶりに会いたいですよ。



『およ?其れは何とも魅力的な提案だねぇ?
 私としても久しぶりに箒ちゃんと会いたいし……よし、其れじゃあ箒ちゃんの誕生日に、プレゼントを持って会いに行くから期待しててよ!
 最高のプレゼントを用意して行くからさ♪』



私の誕生日と言うと……2か月とちょっとか。
大分空きますが、その時を楽しみにしていますよ姉さん――尤も、プレゼントに超ハイスペックで、一般人には理解不能の発明品を渡されたら、其
れは其れで困りますけどね。



『其処は大丈夫だから安心してよ箒ちゃん。――君の為のプレゼントは、良い物を用意してるぜい!』



其れが逆に不安なのですが……同時に姉さんがどんなプレゼントを用意してくれているのかと言う期待も高まる――貴女との再会が楽しみにな
って来ましたよ姉さん。
あまり長電話は禁物なので、そろそろ切りますが、最後に一つだけ――I Love You My Sister.(愛しています、姉さん。)



『ブッハァ!?……此れは予想以上の威力だぜ……箒ちゃん、私も君を妹として愛してるよ……うん、大好きだ。』



うん、私もです。貴女と再会する日を、楽しみにしていますよ姉さん。











 To Be Continued… 



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