Side:夏姫


クラス対抗戦の事実上のメインイベントとも言える鈴と簪の無敗対決が始まったと思ったら、其れは突如現れた謎の襲撃者によって強制的に終
了されてしまった。
IS学園のアリーナのシールドは最高クラスの防御力を持っているが、其れを貫通して来たと言うのは並の相手ではないだろうな――と言うか、見
た目からして普通じゃないからなアレは。

上半身だけで並のISと同じ大きさがあるだけでなく、人型の上半身が鎮座している下半身は、複数の足が生えた機械蜘蛛を思わせる異様な構
造――スパイダーベースになっているからな。

何にしても、あれが友好的な存在でないのは確かだ……ならば、先ずはアリーナに居る生徒の安全を確保しなくてはだ!

「楯無、避難誘導は?」

「本音と虚ちゃんがやってくれているけど、少し時間が掛かってるわね……って此れは、客席のドアがロックされてる!?これじゃあ、逃げる事も
 出来ないじゃない!!」



ドアがロックされてるだと!?……電子ロックキーはピッキングも出来んから此れは少し拙い事になったかも知れん。
だが、ロックされていると言うのならば、扉を直接壊してしまえば良いだけの事だ――一夏、ストライクを部分展開して扉を斬り壊せ!!シュベル
トゲベールの一撃でもってして、避難用の扉を切り開け!!



「了解したぜ夏姫姉!!その扉、俺が切り裂くぜ!!」

「決めゼリフも鮮やかに、良い感じに決まったな一夏。」

取り敢えず避難誘導の方はお前達に任せる。
アタシは千冬さんに連絡を入れてから、鈴と簪の援護に向かう――あの2人の実力ならば後れを取る事は無いだろうが、どうにも嫌な予感がする
のでな……主に、あの馬鹿と阿呆が何かしでかす気がしてならん。
だが其れは其れとして、学園に襲撃を掛けて来た馬鹿に、かけてやる慈悲は雀の涙ほども無い――何処の誰かは知らんが、IS学園に喧嘩を売
った愚行を、精々後悔させてやる。










Infinite Breakers Break18
『敵襲?なら全力でブッ飛ばすぜ!!』










No Side


クラス代表戦の最中に、突如として乱入して来た謎のISと対峙している鈴と簪は、戦場での最低限の緊張感は維持していたがしかし、緊張し過ぎ
ると言う事も無く、自然な形で謎の乱入者と対峙しているのだ。


「アンタが何処の誰で、何の目的でIS学園を襲ったのか……そんな事は如何でも良いけど、アタシとしては簪との直接対決がおじゃんになった事
 は、絶対に許せない!!
 この鬱憤、アンタをぶっ倒す事で晴らさせて貰うわ!!」

「鈴との試合は楽しみだったのに、其れを潰した罪は重い……貴方には、其れを分からせる。」


鈴はゲイボルグⅡを、簪は高エネルギー集束火線ライフルを前に持って来て35㎜ガンランチャーと直列に繋いだ『超高インパルス超射程狙撃ラ
イフル』を謎の乱入者に向けて戦う意思を示す。
だが同時に此れは襲撃者に対する警告でもある――『退かないのならば、撃つ』と言う最後通告だ。

鈴も簪も折角の試合を潰された事は頭に来てるし、行き成り襲撃を掛けてくる相手に掛けてやる慈悲は一切ないが、だからと言って警告も無しに
攻撃した場合、IS学園の対応に問題が投げかけられる可能性はゼロではない……だからこそ、最後通告を突きつけたのだが。


『…………』


謎の襲撃者は其れに答える事なく、両手に保持したライフルを鈴と簪に向けると、其処からビームを放っての先制攻撃!
完全なる奇襲だが、鈴と簪は、襲撃者が行き成り攻撃してくる事は織り込み済みだったので、その場から飛び立って其れを回避し、更に2人で襲
撃者を左右から挟み込む形でポジションをとる。


「今の攻撃……先に攻撃して来たのはアンタなんだから、ぶっ飛ばされても文句言うんじゃないわよ?」

「これで、IS学園側に正当防衛が成り立つ……アナタは此処で私と鈴に倒される運命。」


見事なポジショニングから、鈴はゲイボルグⅡからリニアグレネードを放ち、簪は超高インパルス超射程狙撃ライフルから超威力のビームを放っ
て襲撃者を攻撃!
緊急回避から、略ノータイムで放たれた攻撃は、完全なカウンターであり、襲撃者も其れを避ける事が出来ずに被弾!――実弾兵器としては最
強の破壊力を持つリニアグレネードと、フリーダムのバラエーナに匹敵する超高インパルス超射程ライフルのビームのダブルパンチを真面に受け
たら、如何にISとは言え一撃で戦闘不能は間違い無いだろう。


「……あんまし、効果は無かったみたいね?」

「あのエネルギーシールド……陽電子リフレクター?……だとしたら、結構拙いかも知れない。」


だが、爆炎が晴れて現れたのは無傷の襲撃者。
機体の略全てを覆ったエネルギーシールド、簪曰く陽電子リフレクターで、鈴と簪の攻撃を完全にシャットアウトしたのだ――つまり其れは、襲撃
者への射撃・砲撃は無力と言う事に他ならないのだ。


「陽電子リフレクターって……ウチの会社だって、ビームシールドを開発してる最中だってのに、ドンだけの技術力なのよ其れ!?」

「ううん、ビームシールドと違って陽電子リフレクターはビームをシールドの形に固定する物じゃないから、技術レベルで言うならビームシールドよ
 りも下……ビーム兵器を開発出来るだけの技術力があれば、開発は難しくない、と思う。
 ただ、あの手の装備は可成りエネルギーを消費するから、私達の機体みたいなエンジンを搭載するか、超大容量のバッテリーを複数搭載してな
 いと装備出来ないとは思うけど。」

「あ、そうなんだ?
 名前からしてビームシールドよりも難しいと思ってたわ……だけど、そんだけの装備を搭載するだけのエネルギー供給機構があの機体にはある
 って事よね?
 となると、アイツをぶっ倒すにはリフレクターごと切り裂いて機体本体に大ダメージを与えられる近距離攻撃が無いと無理って事になるわよね?
 一応、アタシのシュベルトゲベールⅡなら、大概の物を切り裂く事は出来るけど、近付く為の牽制が意味を成さないんじゃ近付くのも困難よ?」

「確かに状況は不利かもしれないけど、無敵の機体なんて存在しないから、絶対に攻略法は有る筈。」

「ま、そうよね……なら、何とかして近付いて、ぶった切るに限るわね!!」


正に難攻不落とも言うべき防御力を備えた相手だが、鈴も簪も怯む事はしない――フルスキンであるから外からは分からないが、鈴は装甲の下
で、笑みを浮かべて八重歯を覗かせ、簪は眼光を鋭くして襲撃者を睨む。……此れに呼応するようにストライクのツインアイがイエローの、バスタ
ーのツインアイがグリーンに光った。


「簪、アタシがトップ、アンタがバックで行くわ――搭載火器での飽和攻撃、期待してるわよ?」

「任せて。私も鈴の豪快な剣術に期待する。」


其れと同時に鈴はシュベルトゲベールⅡを抜き、簪も超高インパルス超射程狙撃ライフルを高エネルギー集束火線ライフルと35㎜ガンランチャー
に分離し、両肩のミサイルポッドを展開して襲撃者に向ける。


「さぁてと……そんじゃまぁ、アタシ等に喧嘩売って来たズベ公に、身の程って奴を教えてやるとしましょうかねぇ?」

「うん……ギッタンギタンの全殺しにする……!」

「……簪、アンタ大人しそうな顔して、サラッとオッソロしい事言うわね?」

「そうかな?お姉ちゃんなら『ギッタンギタンの400%殺しね♪』って言ってる所だと思う。」

「400%殺しって、幾ら何でもやり過ぎよ楯姐さん!!」


若干締まりのない展開となったが、戦い方を完全に近接戦闘にシフトした鈴と、後方支援に集中する事になった簪のコンビネーションはオーソドッ
クスな前衛後衛のコンビネーションだが、其れだけに信頼できるのは間違い無い。

仕切り直しとばかりに簪がミサイルポッドでの飽和攻撃を行うと同時に、鈴も襲撃者の懐に飛び込んでシュベルトゲベールⅡを叩きつける!!
普通なら、ミサイルの弾幕に飛び込むのは自殺行為だが、物理攻撃を無効化するPS装甲を搭載してる機体だからこそ、こんな強引な戦術を行う
事が出来たのだ。


「アンタをぶっ壊すだけじゃ飽き足らないわ……二度とISに乗る気が起きない様にしてやるから覚悟しなさいよ!!」

「其れがアナタの罪に対する罰……其れは受け入れるべき。」


だが、そんな強引な連携でも、否、此の連携だからこそ謎の襲撃者にこれ以上の破壊をさせないようにしていたのである……何にしても、鈴と簪
のコンビなら、早々負ける事は無いだろう。








――――――








Side:夏姫


さてと、アリーナ前の扉にやって来た訳だが……矢張りロックされていて開く事は出来んか――ならば、壊して中に入るしかないんだが、許可願
えるか千冬さん……もとい織斑先生?



『状況が状況だからな……良いだろう、扉を破壊してアリーナに突入する事を許可する。
 教師陣も直ぐに出撃するから、何とかなるだろうが……蓮杖姉、否夏姫よ……学園を襲撃するなどと言う事をしてくれた大馬鹿者に対して手
 加減は要らん……私が許可するから、徹底的に叩きのめせ。』


「……了解しました、千冬さん。」

アタシを『蓮杖姉』じゃなく『夏姫』って呼んだっていうのは、教師としてではなく『織斑千冬』個人としてと言う事なのだろうが……徹底的に叩きの
めせとは、千冬さんもこの襲撃に関しては可成りお怒りと言う事か。
まぁ、言われずとも徹底的に叩き潰す心算だがな。

取り敢えず許可が下りたからな……行くぞ、フリーダム!!!


――バシュン!!


フリーダムを展開し、更にバラエーナをアリーナへと繋がる扉に向けてロックし、そのままビーム発射!!――アーマーシュナイダーの刃をも弾き
返す扉を難なく壊すとは、フリーダムのバラエーナは本気で反則だと思う。

だが、これで道は開けた!!――蓮杖夏姫、フリーダム。行きます!!




で、当然ながら中では鈴と簪が、謎の機体と交戦中と言う訳か……状況としては、攻撃を喰らう事は無いが、だからと言って決定打を与える事が
出来ると言う訳でもないようだな?

原因は、あの陽電子リフレクターか……フリーダムのバラエーナでもアレを貫通するのは難しいだろうが、だがやりようがない訳では無い。幸いな
事に、扉を吹き飛ばして乱入した事で、謎の機体の注意を此方に向ける事が出来たからね。

「鈴、今だ!斬り裂け!!」

請託付(任せなさい)!一刀両断にしてやるわ!!――この一撃で、終わりにしてやるから大人しく喰らっとけ!!」



イグニッション・ブーストでの踏み込みに、斬り込むタイミングと100点満点の攻撃だな鈴?
シュベルトゲベール程の威力の攻撃を喰らえば、間違いなく『絶対防御』が発動するだろうが、アレだけの質量による攻撃なら、大抵のISは絶対
防御1発でシールドエネルギーが尽きて行動不能に陥るし、この正体不明機は陽電子リフレクターの為のエネルギーを確保する為に容量を割い
てるだろうから、機体本体の防御力を司るシールドエネルギーは其処まで多くはない筈だしな。
この攻撃が決まれば其れでゲームセットだ。


って、上空に熱源反応だと?
これは……まさか!!鈴、そいつから離れろ!!



「へ?……って、うおわぁぁぁぁ!?な、今のってプラズマビーム砲!?」



熱源反応をキャッチした次の瞬間、鈴と謎の機体の間をプラズマビームが通り抜けた。――アタシの声に反応して、鈴が持ち前の運動神経でギリ
ギリ避けたが、回避出来なかったら鈴は落とされていただろうね。
だが、今の攻撃は完全に第3者が放ったモノ……お前が今の攻撃を放った犯人か?



『………』



最初に現れた奴がアリーナに開けた大穴から入って来たのは、甲殻類を思わせる外見の機体……見た目の異様さだけなら、最初に乱入して来
た奴以上だな?
まるで機体全体が巨大な顔にも見えるぞ……何処の誰が作ったかは知らんが、取り敢えず美的感覚が壊滅的なのは間違い無い。こう言ったら
アレだが、ハッキリ言ってコイツ等の機体のデザインは悪趣味としか言えん。



「うん、夏姫の言う事は尤もだと思う。」

「蜘蛛の形の下半身に人型の上半身の奴と、全身顔面なカニ野郎だからね……てか、戦闘中にこんな雑談してるのに攻撃してこないとか、余程
 自分に自信があんのかしらアレのパイロットは?」



……そう言えば、こんなに堂々と隙を曝していると言うのに攻撃してこないなアイツ等は?――否、攻撃してこないと言うよりも、これはアタシ達を
観察してるのか?でも、何の為に?
どうにも妙な感じがするな……改めてじっくり見てみると、コイツ等からは生気をまるで感じる事が出来ん。
そもそもにして、今乱入してきた奴は、人が乗って操縦するには可成り無理のある機体構造をしている……確かに巨大ではあるが、機体其の物
の全高は100cmにも満たないからね?
若しかしてコイツ等、無人機か?



「無人機って、そんな物存在するの?」

「少なくともISRIは無人機の開発に成功して、ある程度の量産も実現しているから、やろうと思えば出来る筈だ。
 アイツ等が無人機であるのならば、あくまでも『戦闘』に関してのデータのみをインストールされてるだろうから、此方が戦闘行為を行っていない
 状態では、武装を展開しながらも攻撃はしてこないのかも知れないな。
 ……とは言え、無力化するには戦うしかないのだが――相手が無人機であるのならば、此方も手加減をせずに攻撃が出来る。」

「そうよね?相手が無人機なら、パイロットの事を考えないで攻撃出来るもんね!!」



そう言う事だ!
此処からは本当に手加減なしだ……奴等を徹底的に破壊する!但し、コアだけは破壊せずに回収しないとな――何処の国の機体か調べるのに
必要になるし、場合によっては束さんに送って解析して貰う事になるかも知れないからね。

避難誘導も順調に進んでいるみたいだから、直に一夏とマリアも合流する筈だし、スコールさんもIS部隊を率いてくるだろうから、貴様等に待って
いる未来は敗北だけだ!



「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「って、何処から湧いた織斑一秋(今世紀最大の馬鹿)!!
 と言うかお前、鈴と簪にボコボコにされて、機体の修理中じゃなかったのか?」

「次の試合には間に合うように、修理をして貰ってたから、機体はもう万全なのさ。
 其れで次の試合を待ってたら、何かとんでもない事になってる上に、鈴と更識さんが苦戦してるみたいだったから助太刀しようと思ってね?」

「「「助太刀所かお前(アンタ)(貴方)は、只の足手まといでしかない、この馬鹿!!」」」


思わぬ乱入者に、アタシと鈴と簪の心は一つになった。本気で馬鹿かコイツは!?
一体全体、何を思って乱入して来たのか――って、考えるまでもないか。大方、コイツ等を自分の手で撃破して、鈴と簪が苦戦してた相手を一人
で倒したって実績を手に入れる心算だったんだろうな。
そして、あわよくばこの一件で活躍して、(主に癒子がSNSで発信したせいで)学園全土に拡散した己の悪評を塗り潰す算段だったんだろうけど、
お前の悪評は早々覆らんぞ一秋?
鈴と簪の試合も、癒子がスマホでバッチリ撮影して『此れがブリュンヒルデの弟(笑)』のタイトルでようつべとかニコニコとか、名だたる動画サイト
にアップしてたみたいだからな。――って、聞こえてないなアレは。



「さぁ、精々俺の踏み台になって貰うぜ?お前等を倒せば、俺の株は鰻上りだからな!!」



聞くに堪えない事を言いながら蜘蛛人間とカニ野郎に攻撃を仕掛けていくが、マッタク持って掠りもしないとは、天才が聞いて呆れると言うか、才
能に胡坐をかいて、才能を錆びつかせると此処まで酷いのかと思ってしまうな?
アイツの剣技、篠ノ之道場に通っていた頃から殆ど成長してないじゃないか……あの程度の腕前なら、近接戦が得意でないマリアでも圧勝出来
るぞ絶対に。
その為に苦戦を強いられているのだが……

「アイツの事、助ける気になるか?」

「ならないわね全然。」

「寧ろ邪魔だから、さっさと倒されて欲しい。」



だよな。
まぁ、アタシ等としても、身の程を弁えずに戦場に飛び込んで来た大馬鹿者を助けてやる気はない――乱入して来たのは自己責任だからな。
尤も、謎の2機は一秋との戦闘に集中してるから、其れは利用させて貰うさ……取り敢えず、強襲しやすいように高い位置にポジショニングをして
――って、放送室に誰か……アレは散!?



『一秋ーーー!男ならば、その程度の相手に勝てずしてどうするーーーふげっ!?』

『何をしているこの馬鹿!!』




散の馬鹿が、放送室から要らん事を言った所で、箒が殴って止めたか……恐らくは避難している生徒の中に散が居ない事に気付いた箒が、散
のやりそうな事を予測して放送室に辿り着いたと言う所だろうが、少しばかり遅かったか。

そして最悪な事に、これに反応した2機が、放送室に向かって搭載火器を一斉に開放して掃射してくれた!!
散だけが放送室に居るのなら未だしも、あそこには散を止めに来た箒も居るし、放送室の窓から見えた室内には気を失っていると思われる生徒
が複数見受けられた……此のままでは、放送室に居る全員が死にかねない!!

だが、此の距離では迎撃も防御も間に合わん……万事休すか――!!



「させるかよ!!」

「これ以上はやらせないわ!!!」



と思ったら、何処からともなく飛んできたシュベルトゲベールが攻撃の一部を受け、更にはドラグーンのビームを応用した疑似ビームシールドが展
開されて、放送室を守った?……一夏とマリアか!



「避難誘導に少し手間取っちまった、悪いな夏姫姉、鈴、簪。」

「此処からは、私達も参加させて貰うわ。」



このタイミングで参戦とは、中々に美味しい所を持って行くじゃないか、一夏、マリア?
アニメやドラマの世界だったら、特別なBGMが再生されて、お前達の行動が分かり易くピックアップされてる所だが……そんな、ジャストタイミング
での乱入が面白くない奴も居るみたいだな?



「お前……何余計なことしてるんだ、出来損ないのくせに!!」

「余計な事?苦戦してた分際で良く言うぜ。
 俺とマリアが介入しなかったら、放送室に居た連中は死んでたぜ?……感謝されても、文句言われる筋合いは無いと思うぜ織斑?」



一秋……マッタク持って小者だなお前は本当に。
一夏とマリアの介入が無かったら、放送室の連中はお陀仏になっていたのが分からんのか?そんな事になったら大事なのは理解出来るだろ?
今の一夏とマリアの行動は、学園側から感謝状が贈られても良い位だ。

それと、文句を言ってる余裕がお前に有るのか?大分シールドエネルギーが減ってるみたいだが……



「一撃当てれば勝てるんだ!此れくらい減っても問題ない!」

「そうか……だが取り敢えず、後には気をつけた方が良いぞ?」

「へ?」

『『……………』』



――ドガァァァァァァァァァァァァァァァァン!!




謎の機体2機がお前を狙ってるからな――って、遅かったか。
略ゼロ距離で、プラズマビーム砲を4門喰らったら一溜りもないだろうな……実際に、爆煙が晴れたら其処には、ISが解除された一秋が目を回し
て転がっていたからな。

勝手に乱入しておきながら、成果を残す事が出来ずにKO……コイツの株は、また下がるだろうな。――其れに関しては如何でも良い事だかな。
だが、これで邪魔者は居なくなったから、思う存分戦う事が出来るようになった訳だが……取り敢えず、蜘蛛人間は、これで終わりだ。
学園のIS部隊の機体反応をキャッチしたしね。



――ドス!ドス!ドス!!



で、胴体を貫いたのは3本のランサーダート……ミューゼル先生のブリッツゴールドフレームだな?――姿は見えないからミラージュコロイドを使っ
てるのか。
胴体を貫かれた蜘蛛人間は爆発し、その機能を停止した――その光景を間近で見たカニ野郎は、形勢不利と見てこの場からの離脱を決めた様
だが、其れもまた無駄な事だ。



「逃がすかよ!」

「少し、おいたが過ぎた様ね?」



――バシュン!ガシィィィ!!



貴様の身体は、ブレードストライクのパンツァーアイゼンと、ブリッツゴールドフレームのマガノシラホコで拘束されたからな――先程の一撃もです
がミラージュコロイドステルスで姿を消しての一撃は、見事ですねミューゼル先生?



「折角の光学迷彩ステルスを使わない手はないでしょう?
 まぁ、この奇襲が成功したのは、貴女達がコイツ等の気を引き付けてくれたお陰だけれど――何にしても、此処まで拘束してしまえば陽電子リフ
 レクターだって使う事は出来ないわ。
 貫きなさい夏姫!!」

「了解した!!」

此れで終わりだ……喰らえ、ハイマットフルバースト!!



「此れで終わりにする……全砲門開放――フルバースト!!!」



っと、簪もバスターに搭載された火器を全開放してのフルバーストか。
アタシのフリーダムのビームライフルと2門のバラエーナと2門のレール砲だけでなく、簪のミサイルポッドによる弾幕とビームライフルとガンランチ
ャーの一斉掃射が織りなす飽和攻撃に耐えられる機体は存在しないだろうから、奴も此れで終わりだな。



――ドッガァァァァァァァァァァァン!!



アタシと簪の攻撃に加え、スコールさんが引き連れて来たIS部隊の攻撃がクリーンヒットして、カニ野郎も此れにて沈黙……生徒会も独自に動い
ていたらしく、楯無の一撃もフィニッシュに一役買っていたけどな。



「あら、其れだけ?」

「他に何かあるのか楯無?」

「そうねぇ?……勝利に貢献した御褒美として、ほっぺにチューとか?」

「其れ位なら別に構わんぞ?」

「へ?」


――ちゅ


「へ?あ……夏姫ちゃん!?」

「何を狼狽えてる?頬へのキスなど挨拶みたいなモンだろうが――イギリスに居た頃には、其れこそ毎日のようにマリアとしていたからな。」

なのに、この程度の事で真っ赤になるとは、意外と初心だな楯無?



「うぅ……夏姫ちゃんの意地悪。」

「下手にからかった己を恨め。――まぁ、其れは其れとして、コイツ等は一体何者だ?」

「其れは分からないけど、現在更識の持てる力の全てを持ってして調べるように当主として命令を出したわ――更識の暗部としての力を全開にす
 れば大概の情報は手に入るからね。」



だろうな。
そして、コイツ等の事は束さんも調べ始めてるだろうから、そう遠くなく詳細が分かるだろうさ――一体誰が何の為に、こんな事をしたのか……何
にせよ、犯人がアタシ等の敵である事に間違いは無いな。

だが、アタシ達と敵対する道を選んだ事は最大の過ちだ――正体が分かり次第、貴様等を滅殺してやる……精々首を洗って待って居るんだな!








――――――








Side:千冬


夏姫達と、スコール率いるIS部隊と、更識姉のおかげで一般生徒に被害が出る事は無かったが、まさか襲撃して来た機体が無人機だったとは。
……果たして技術が進歩したと言うべきなのか、進歩した技術の無駄遣いと言うべきか判断に迷うな。
ともあれ、夏姫がコアを回収してくれたおかげで、詳細を調べる事が出来るのだが……何か分かったか山田先生?



「織斑先生……矢張り此の2機は無人機であるのは間違いありませんが、此の2機に搭載されていたISコアは、未登録のコアでした。」

「未登録の……つまりは篠ノ之束が世界にばら撒いたコア以外のコアと言う事か?」

「そう言う事になります。
 其れと、此方はそれ以上に重要な事になるのですけど……此の2機の無人機には、その……人の脳が搭載されていました――それも、10代
 半ばから、20歳までの若者の脳が。」

「なんだと!?」

と言う事は、コイツ等はメインコンピューターの代わりに、人の脳を生体CPUとして搭載していたと言うのか!?……何と言う事をしたのだ――コイ
ツらを作った連中は悪魔か!?
こんな非人道的な事は、束が最も嫌う事だ……其れをISでやるとは、如何やらこの世界は、私が思っている以上に歪み、腐りきっているらしい。

なればこそ、この世界は変えなければなるまい――其れが、嘗て白騎士として多くの命を奪ってしまった、私に出来るせめてもの贖罪だからな。









 To Be Continued… 



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