日本では多くの人達が休日を満喫しているGWも残り数日となったある日の事――場所はIS学園ではなく、スイスにある『国際IS委員会』の本部。
何でスイスに国際IS委員会の本部があるのかと問われば、其れはスイスが永世中立国だからと答える事になる……今や国連に次ぐ規模となっている国際IS
委員会だが、其れだけにアメリカやロシアの様な国にその本部を置く事は出来なかった――中立でない大国に本部を来たら、委員会の幹部が本部のある国
の人間が占める事になり、公平さを欠く事になるからだ。
なので、国際IS委員会は永世中立国のスイスに本部を設置した訳である……永世中立国ならば幹部を一国の人間が占めるなんて事にはならないからね。
実際に現在の国際IS委員会の幹部は、ISの生みの親とも言える日本人が多いとは言え、アメリカ、カナダ、ブラジル、イギリス、ドイツ、フランス、ロシア、中国、
台湾、オーストラリアと言った主要国の人間で構成されているのだから。
んで、その委員会で何が行われているのかと言うと……
「では、この方向で進めて行くと言う事で宜しいですね?」
「あぁ、ベストとは言えませんが、現状では此れがベターと言えるでしょう……彼等以外の男性IS操縦者が大量に現れたその時には無意味になってしまうかも
知れませんが、毎日の様に男性のIS適合者が他に居ないかどうか検査しているにも関わらず、未だに彼等以外の男性IS操縦者が現れない事を考えると、こ
れから先、彼等以外の男子IS操縦者が現れる確率は限りなく低いですからね。」
「その貴重な存在を五人の人間が護衛すると同時に、男性IS操縦者に国籍が被らない様に五人選ばせる事で、選ばれた五人が互いに監視する事にもなりま
すからね。」
何やら、新しい法案について審議しているみたいだな此れは?
話してる内容から察するに、世界に二人しか存在しない男性IS操縦者である一夏と陽彩に関する事みたいだけど、国籍が被らない様に選ばせるって、一体何
をさ?――でもって、選ばれた五人が護衛になると同時に互いの監視役になるって、ちょっと穏やかなモノじゃない気がするんだけどね?
「では、全会一致と言う事で良いかしら?」
「確認するまでもあるまい……寧ろ、此れを制定するのが遅過ぎた位だと私は思っているよ。男性IS操縦者が現れたその時に、この法案を可決しておくべきだ
ったとすら思っているからね。」
「其れは流石に無茶振りでしょう?――恐らく男性がISを動かすなんて事は、ISの開発者である篠ノ之束博士ですら想定していなかった事だと思うからね。」
「ISの生みの親でも想定していなかった事態……かの天才でも全てを予測出来る訳ではないと言う事ね。」
う~ん、其れは如何かなぁ?
あの天災兎なら、一夏がISを起動するって事はある程度予想してた可能性は充分にあると思う――寧ろ束ですら想定してなかったのは、二人目となった陽彩
の方かも知れんな。
コイツは存在その物が見習いとは言え人よりも遥かに高位の存在である神によって誕生したと言える奴なので、束からしても完全に予想外の事だったかも知
れないからな。……尤も、驚いた後で陽彩の正体を暴いてる可能性が少なからずあるのがおっかねぇけど。やりかねねぇからなあの天災だと。
まぁ、其れは其れとして、国際IS委員会では新たな法案が可決されたようだ……発表は、日本時間でのGW終盤の五月三日――果たしてどんな法案が可決さ
れたのか気になるが、其れは時が来れば分かる事だろう。
只一つ言える事があるとすれば……この法案、絶対にトンデモナイ爆弾の可能性が高いと言う事だ――法案の根幹である『男性IS操縦者である織斑一夏と、
正義陽彩の夫々に、国籍が被らない様に五人選ばせる』と言うのが特に。
そんでもってその破壊力は恐らく核爆弾千発レベルって考えた方が良い訳で……うん、如何考えてもトンデモない事になりそうだな此れは。
取り敢えず頑張れよ一夏。……陽彩は、まぁ自分の好きな様にすりゃ良いんじゃないですかね?って言うか、自分の好きな様にしかやらねぇからなアイツは。
夏と刀と無限の空 Episode13
『GW其の肆~大企業を見学しましょう』
さて、如何に大型連休のGWとは言え、流石に十連休ともなると、学園残留組の生徒はやる事が無くなってしまうのでは思っていたのだが、其処は流石の現役
高校生。学園外に遊びに行くだけでなく、部活やISの訓練など休日だからこそ平日よりも時間が取れる事をして確りと休日を消化しているようだ。うん、感心。
一夏達も、つい二日前に終日部活で汗を流したばかりだ……因みにその日は、学園長から許可を取った千冬が稼津斗を学園島に連れてきており、『一夏と刀
奈がドレ位強くなったか見てやるか』と稼津斗が部活に参加し、何故か部員全員とスパーリングを行って――余裕で全勝したらしい。(一夏以外の相手は投げ
や、関節技しか使わなかったところが稼津斗らしいっちゃらしいが。)
まぁ、スパーリング後に相手の良い点と悪かった点を丁寧に説明してくれたので、其れだけでも充分に稼津斗が来た価値はあっただろう……まぁ、この一件で
千冬が彼氏持ちだった事が多くの生徒にバレてしまったが、其れは些細な事だ。何名かは一夏や円夏から聞いてるしな。
そんな濃い部活動を行った翌日、一夏は何時ものメンバー(刀奈、円夏、簪、ロラン、乱、ヴィシュヌ、コメット姉妹、グリフィン)+護衛のオータムと共にモノレー
ルで本土に向かっていた。夏姫と布仏姉妹の三名は、本日は別の予定で出掛けているので一緒ではない。
尚、コメット姉妹はカナダで無事にライブイベントを終えて学園に戻って来ている。
余談ではあるが、コメット姉妹のライブは会場が超満員札止めになっただけでなく、You Tubeでの生配信も多くのユーザーが視聴し、チャットのコメント数が過
去最高を記録したとかなんとか……まぁ、此の子達可愛いし、歌も上手いから当然と言えば当然だなうん。
因みに、この面子は学園でもつるんでる事が多く、ランチも基本このメンバーで摂っている事から、一部の生徒の間では『一夏チーム』と言われていたりする。
その一夏チームは、本日は刀奈と簪の両親が経営している『更識ワールドカンパニー』へ会社見学へと出掛けているのだ――会社見学なんて、そう簡単に出
来るモノではないんだけど、更識ワールドカンパニーは、最近よくある『工場見学』のノリで会社見学を行っており、事前に見学を申し込んでおけば会社見学が
出来るのだ。
そんな訳で、刀奈と簪が見学の申し込みを済ませて一行は会社見学に向かっているのだ――社長令嬢から会社見学を申し込まれたら、最優先で見学させて
貰えるのを見越していた辺り、更識姉妹は中々の策士である。
「それにしても、この前来たあの人、澤稼津斗って言ったっけか?……トンデモナイ強さだったな~。
ブラジリアン柔術の黒帯持ってるから、生身の格闘でも自信あったんだけど、マッタク全然敵わなかった……あの人なら、全盛期のヒクソン・グレイシーにだっ
て勝てると思うわ。」
「でしょうね。
私も『肉体凶器』の異名を持つムエタイチャンピオンの母から幼い頃よりムエタイの指導を受けていたので格闘技には自信があったのですが、彼には私の技
は一切通じませんでした……世界は広いですね。」
「グリ先輩もヴィシュヌも落ち込むなって。
カヅさんに勝てる人なんざ早々居ないと思うぜ?だって、カヅさんは千冬姉よりも強いからな……『超サイヤ人ブルーの悟空とタメ張れる』ってドンだけだって
んだよ?ブロリーゴッドか?」
移動中のモノレールでは各々雑談を楽しんでいるようだが、二日前の部活で戦った稼津斗の強さにグリフィンとヴィシュヌは驚いているみたいだが、一夏の言
う様に、稼津斗の強さは規格外なので、比較する事自体が大間違いだろう。ぶっちゃけ、コイツの戦闘力はバグってるからね。
「それにしても刀奈、左の薬指に指輪とは……中々見せ付けてくれるじゃないか?嗚呼、君と一夏の愛は実に尊い……真実の愛は此処にあったか。」
「見せ付けてる訳じゃないけど、折角一夏がプレゼントしてくれて、左の薬指に嵌めてくれたんだから外す事なんて出来ないじゃない。
宝石が付いて無いとは言え、プラチナの指輪はとても高かった筈よ?……恐らくだけど、貯めに貯めていたお小遣いを殆ど使ったんじゃない?……私の為に
其処までして作ってくれた指輪、外したりしたら罰が当たるわよ。」
更に話題は刀奈の左の薬指に嵌められた指輪にも及ぶ。――まぁ、一夏って言う彼氏が居る状況で、左の薬指に指輪が嵌められてるって言うのは色々彼是
想像しちゃいますからね。
って言うかその指輪プラチナだったんだ?銀色だから、普通に純銀かと思ってたわ……まぁ、純銀は経年変化で黒く腐食するから指輪の素材としてはあんまり
向かないか。
その点プラチナなら、金が入ってるから錆びないし腐食する事もないから指輪の素材には向いてるんだよね……銀よりも値段がクッソ高いけどな。――そんな
高級品を迷わず選択した一夏が凄い!刀奈の為なら貯めた小遣いを全部使っても構わないって言う思い切りの良さも良いぜ……マジでラブラブだねお前さん
達は。そのラブラブを生涯貫いてくれ。
「そうか……君は愛されているな刀奈。
だが、一夏が君を愛しているのと同じ位、君は一夏を愛しているか?」
「愚問ねロラン……そんなの当然でしょ?
もしも世界の全てが一夏の敵になっても、私だけは最後まで一夏の味方で居る――例え其れで命を落とす事になっても、私は一夏と共に居る……其れだけ
私は一夏を愛してるのよ。」
「成程ね……矢張り愛の力は偉大だな。」
若干意味が分からんけど、取り敢えず一夏と刀奈の愛は本物って事で良いよね。……まぁ、愛に偽りはないか。偽りの愛は愛に非ずだからね。――愛に偽り
はなくとも、恋には偽りがあるってのが恐ろしいな。『偽りの愛』って言葉は聞かないけど、『偽りの恋』ってのは聞くからねぇ……『恋の字の中にある死角の下
心』とは良く歌ったもんさ。
そんな感じでモノレール内での雑談は盛り上がり、あっという間に本土の駅に到着。
此処から更識ワールドカンパニーまでは車移動だ。――団体で会社見学を申し込んだ場合、会社行きのバスが手配されるのだが、今回一夏チームをターミナ
ルで待っていたのは……
「リムジン!?」
「其れも二台も!!」
超高級外車のリムジンだった。しかも二台……娘達の為に奮発した訳ではない、この二台のリムジンは更識ワールドカンパニーの所有物であり、主に海外か
らのVIPに使われるモノなのだが、今日は愛しの娘達が友達を連れて会社見学に来るって事で、更識パパが特別に手配したのだ。……娘馬鹿も程々にしてく
れよ更識パパ。気持ちは分かるけどな。
「まさかリムジンでお出迎えとは思わなかったぜ……」
「其れは私もよ一夏。」
完全に予想外だったが、一夏チームは二つに分かれてリムジンに乗り込み、更識ワールドカンパニー本社に到着するまでの間、リムジンを堪能する事にした。
因みに此のリムジンは外装は兎も角、内装は完全オーダーメイドで、シートにはミンクの毛皮が使われており、肘置きにはシルク製のカバー、床には最高級の
国産絨毯が敷かれてたってんだから、ドンだけ豪華なのか想像も出来ん……値段を付ける事すら出来ないだろう。
でもって移動中は刀奈は一夏の右側を陣取って、一夏に抱きつき、一夏は一夏で右腕で刀奈を抱き寄せていた……そんな事がナチュラルに出来るレベルな
訳ですね一夏と刀奈のカップルは。ラブラブ乙!
暫くすると二台のリムジンは高速道路に入り、都心から離れて行く……更識ワールドカンパニーは、如何やら都心の一等地にあると言う訳ではないようだ。
其のまま高速を走っていると、行き先の案内表示板が現れたのだが――
「ねぇ、私の見間違いじゃなければ、今の表示板、右側に進むと『更識ワールドカンパニー』って書いてなかった?」
「グリフィンの見間違いではないと思うね。私にもそう見えたから……勿論君も見ただろう、ヴィシュヌ。」
「はい、バッチリと。」
なんとその案内表示板には『↗更識ワールドカンパニー』と記されていたのだ。いや、道路の案内表示板に記載されるって、普通の企業じゃ先ず有り得んでしょ
う、そんな事!
って言うか、案内表示板に記載されるとかどんな会社だよマジで!!
「刀奈、貴女の両親が経営してる会社って、可成り大手だとは聞いているけど、一体どれだけの規模の本社を持って居るの?」
「そうねぇ……高速道路のETCを過ぎて100mも進めば、其処から先は更識ワールドカンパニー所有の土地よ。
なんでも、会社の創始者である大御爺様が『どうせやるなら、徹底的にじゃ!』とか言って、当時の更識家の財産の殆どを注ぎ込んで広大な土地を購入した
んですって――一時期はその土地を持て余す事もあったらしいけど、色んな方面に事業を拡大した結果、生産プラントなんかが敷地内に次々と建てられてい
って、更にIS関連に事業を拡大してからは性能テストの為のアリーナを屋内と屋外の両方作ったからね……おまけに社員寮の他に、希望すれば敷地内にマ
イホームを建てる事も出来るし、実際に建てて住んでる人もいるから、ちょっとした町レベルの規模があるんじゃないかしら?」
「そ、それは凄いですね?……刀奈さんと簪さんは、本物のお嬢様だったんですね。」
うわぁお、思った以上に凄い会社だった。って言うかちょっとした町レベルって本気でドンだけの規模だ?個人宅だけじゃなく、下手したらスーパーやコンビニ、
ホームセンターまで在りそうだな?
……いや、実際のあるのかもしれないな?更識ワールドカンパニーが手掛けている事業はスーパーやコンビニチェーンにホームセンター、外食チェーン、家電
や家具の製造販売、ISの開発や関連製品の製造販売と多岐に渡ってるからね。……手掛けてない業種を探した方が早いんでなかろうかマジで。
「お嬢様、ね……確かに大企業の社長令嬢で、一般的に見ればお嬢様なんだろうが、刀奈も簪もお嬢様ってガラじゃねぇっての。」
「あら、其れはどういう事かしら一夏?」
「俺の独断と偏見満載で言わせて貰うなら、お嬢様は自室だからって下着一枚で居たりしないし、野郎の理性をぶっ壊そうとはしないだろ?趣味に関しても芸
術鑑賞やピアノ演奏とかで、簪みたいなオタ趣味では絶対にない筈だ!」
「ベビードールって、セレブな感じの下着だと思うけど?あ、若しかして一夏ってばオーバーニーソックスにガーターベルトの組み合わせの方が好きだった?」
「そう言う話じゃねぇよ。そもそも、男である俺が同室なのに下着一枚で居るのを止めろつってんだよ!俺の理性が毎回毎回悲鳴を上げてんだよ、冗談抜きの
マジで!」
「下着一枚じゃなくて、裸Yシャツなら良い?」
「せめてTシャツ&スパッツにしろ!如何して、俺の理性を破壊しようとするんだよお前は……」
「そんなの決まってるじゃない……私の純潔は一夏に捧げたいからよ♪」
っと、此処で一夏の一言から、刀奈とのやり取りが始まったが、何だか徐々に話の内容がズレて行ってるぞ?って言うか刀奈、女の子がそう言う事を言っちゃ
アカンよ?否、其れだけ一夏の事を愛してるって事なんだろうけどね?
でもまぁ、一夏の言う様に刀奈も簪も『お嬢様』ってガラではないな――世間知らずの箱入り娘って訳でもないし、別に専属のお世話係が居た訳でもないから
大抵の事は自分で出来るし、家事だって普通に熟せるからね……まぁ、家事に関しては刀奈も簪も一夏には敵わないんだけどね。
刀奈も簪も、一夏からしたら『基本スペックが高めの女の子』であり、『お嬢様』ではないんだろうね……一夏のお嬢様像には、本人が言ってるように独断と偏
見に塗れてっけどね。独断と偏見は程々に、ご利用は計画的にな。
この光景に突っ込みを入れない辺り、ロランもヴィシュヌもグリフィンもスッカリ慣れていると言う事なのだろう。オータムは如何かって?とっくの昔に耐性と免疫
を獲得してるに決まってるじゃないか。
耐性も免疫もなかったら、一夏の護衛をしながら何度砂吐いて死に掛けるか分かったモンじゃねぇっての……一夏と刀奈のラブオーラは兵器かも知れないな。
さて、そうこうしてる内に一行を乗せた二台のリムジンは高速を降りて更識ワールドカンパニーの敷地内に突入。
一応高速道路の管理地との境には門が建てられており、その門をくぐれば其処はもう更識ワールドカンパニー本社――そして其処は、刀奈が言った通りのち
ょとした町レベルの場所だった。
開発プラントであろう工場が多く見受けられるも、社員寮と思われるアパートや、個人宅と思われる家があり、コンビニにスーパー、ホームセンターだけじゃなく
て、ユニクロやマックハウスと言った衣料品の店もある……衣料品店に関しては、メーカーが更識ワールドカンパニーに頼んで敷地内に出店したのだろう。
そんな敷地内を走って辿り着いたのは、更識ワールドカンパニーの本社オフィス。
「此処が、本社のオフィス?」
「ドンだけの高層ビルがあるのかと思ったけど、二階建のシンプルな建物ね?」
オニールと乱がそう言ったのも仕方ないだろう……本社オフィスは、決して高層ビルなどではなく、分かりやすく言うならコンビニを縦に重ねた程度の二階建の
建物だったのから。
まぁ、小規模な町レベルの敷地があるのなら、必要な物は施設内に建てる事が出来るから、多目的な高層ビルは必要なかったのだろう。多分だけど。
『高ければいいってモノでもないでしょ?』と刀奈が良い、ロラン達も『其れは確かに』と思ったようだ……って言うか、実際問題として超高層ビルの必要性って
ドンだけあるんだ?何となく、高さの限界に挑戦してる感があって、高くする必要性があんまり感じられんのよな。ま、如何でも良い事かもしれんけど。
「こんにちは。会社見学を申し込んでいた更識刀奈と……」
「更識簪です。」
「こ、此れはお嬢様方!よくぞお出でくださいました。
社員一同、お嬢様と一夏様、円夏様が久しぶりに本社に来ると言うので楽しみにしていたのですよ――社長夫妻も楽しみにしていらっしゃったのですが、タイ
ミングが悪い事に他社との取り引きで出掛けていまして……お嬢様達が見学中に戻って来ましたら、お知らせしますので。」
「あら、そうだったの?……社長と社長夫人は色々忙しいわね相変わらず?
働き過ぎて倒れないように、会ったら『働き過ぎは駄目だ』って釘を刺しておかなきゃ……特にお母さんは、偶に風邪引いたかと思うと、『鬼の霍乱』ってレベ
ルで重症化するからねぇ。」
「其れでも、人と接しない仕事はしようとするんだから困る。
一夏が『病人は大人しく寝てろ!』って言って強制的に布団に叩き込んだのは、ある意味で正しい判断だったと思う。」
「そう言えばそんな事もありましたねぇ……まぁ、あれ以来奥様も体調が優れない時には無理はしないようにしてますから大丈夫でしょう。
其れは其れとして、見学の際の規則となっていますので、申込時のIDを提示して頂けますか?」
「はい、どうぞ。」
「これで良いかな?」
「……はい、確認しました。其れでは、本日は更識ワールドカンパニーをご自由に見学なさってください。」
本社オフィスの受付で刀奈と簪は見学の手続きを行い、此れで本社の見学が可能になった訳だ――因みに、申込時のIDとは、刀奈と簪の『更識ワールドカン
パニー』の社員証に刻印されたIDの事だ。其れと同じ物を一夏と円夏も持ってる……ま、三年間も此処で暮らしてたんだから社員証が発行されてても何もオカ
シクは無いわな。
そんな訳で、更識ワールドカンパニーの本社見学が始まったのだが、ロラン達が真っ先に見学を希望したのは、IS関連の部署だった――ま、各国の国家代表
と代表候補生としては、其処は押さえておきたい所だからな。場合によっては、国に更識ワールドカンパニーとの契約を結ぶ事を提言する事になるかも知れな
い訳だからね。
一夏、刀奈、円夏、簪の機体性能は、既存の第三世代機を圧倒しているのだから、其れを開発した更識ワールドカンパニーと契約するってのは、国にとって可
成りのアドバンテージになるだろうからね。
以上の事から、一行は先ずはISの開発部署に向かったのだが……
「お~~!此れは久しぶりだねいっ君!かたちゃん!!
二人が居なくて寂しかったんだよ~~!!さぁ、久しぶりに会ったからこの吏さんとハグしよう、そうしよう!」
其処に黒髪眼鏡で白衣を纏った女性、『南風野吏』が現れ、一夏と刀奈に所謂『ルパンダイブ』をブチかましたのだが、一夏は冷静に其れをブリッジで受け止め
ると、其処からブレーンバスターの要領で持ち上げて両足をホールドして飛び上がり、其処に刀奈がホールドされた両足を更に膝でホールドして固定し、両腕
をチキンウィングに極める……
「I&K必殺コンビネーション!!」
「NIKU→LAP!!」
これぞ最強ツープラトンのNIKU→LAPが炸裂!!キン肉バスターと、OLAPが融合したツープラトン攻撃は冗談抜きで最強だね――
「いったー!死ぬかと思ったじゃないか!」
其れを喰らった吏はケロッとしてるのが恐ろしい――南風野吏は、篠ノ之束が変装した姿であるから、此れ位の耐久力はあって当然なのかもしれないけどな。
だからと言って、NIKU→LAPを喰らってケロッとしてる時点で大分人間じゃねぇわ。アレを喰らったら、普通の人間は両股関節両肩脱臼、頸椎損傷、脊髄損傷
は免れないから。キン肉バスターとOLAPをリアルでやる時は充分注意しろだね。……OLAPをリアルで極めるのは可成り難易度高いけど。
「アンタ、この程度じゃ死なないだろ?」
「耐久力とHPがバグってるモノね……多分、お義姉さんの本気のアイアンクローと出席簿アタックを喰らっても大したダメージにならないんじゃないかしら?」
「いっ君も、かたちゃんも吏さんの事を何だと思ってるのかな!?」
「「人間の形をした、限りなく人間に近い人間じゃない未知の生命体。」」
「酷い!!
マドちゃん、かんちゃん、君達のお兄さんとお姉さんが吏さんを虐めるよ~~!!吏さんは確かにちょっと規格外だけど、ちゃんと人間なのに~~~!!」
「……スマンな博士、私も兄さんと刀奈が言った事は正しいと思う。」
「同じく私も。」
「うえーん、孤立無援!?吏さんは寂しいと死んじゃうんだぞ~~~!!」
寂しいと死ぬって兎かよ!……あ、兎だったなこの人。正確にはウサミミ型のマシンを頭に付けた天才で天災な変人の変態だけど。今は、篠ノ之束じゃないか
らあのウサミミ型のマシンは付けてないけどね。つか、アレは一体何なのか?原作では『箒ちゃん探知マシーン』とか言ってたけど……謎やね。
さて、吏の行き成りの登場に、一緒に見学に来ていた所謂『アーキタイプ』の面々は完全に置いてけぼりになっていた――目の前でイキナリ登場した謎の博士
に一夏と刀奈が、『万太郎とケビンの必殺技を無理なく融合したキン肉マン屈指のツープラトン』であるNIKU→LAPをブチかました上に、コント染みたアレコレを
展開されたら置いてけぼり状態にもなるわな。
「オラ、話が進まねぇから挨拶しろクソ兎。早くしねぇと千冬に通報した後に兎鍋にすんぞ?」
「オーちゃん、其れは勘弁。ちーちゃんの本気の一撃を喰らったら流石の吏さんも残りのHPが一になっちゃうから。
そんじゃ、改めまして……やぁやぁ、よく来たね君達!私は南風野吏、この更識ワールドカンパニーでIS及びその関連製品の開発を任されてる人間だよ~♪
いっ君達の機体を開発したのもこの私さ。よろぴくね~~♪」
そんな状況の中、オータムが吏を一喝した事で時は動き出した。
身体能力で言うのならば、吏の方がオータムよりも遥かに上なのだから、此処でオータムの言う事を聞くと言うのは不自然とも思うだろうが、如何に身体能力
が高くとも、吏こと束は実戦経験がマッタクないので、元アメリカ軍の兵士であったオータムには経験の差で戦っても勝てないのだ――過去に一度だけオータ
ムと勝負した事があるのだが、如何に身体能力が高くとも素人丸出しの攻撃ではプロだったオータムには全く通じなかった……だから、オータムの言う事には
基本逆らわない――って訳じゃなくて、自分を完封したオータムを気に入っちゃったので、余程の事が無い限り言う事を聞く事にしたのだ。
「貴女が一夏達の機体を開発したのか……あれ程の機体を開発するしてしまうとは驚きだ。貴女は、かの篠ノ之束に匹敵する科学者であると推測するよ。」
「ほうほう、あの大天才と同等とは可成りの高評価だね、オランダの国家代表のロランツィーネ・ローランディフィルネィちゃん。」
「!?」
「驚く事でもないでしょ?国家代表ともなれば情報は幾らでも出てくるからね――そして、其れは代表候補でも同じ。
だから、私は君達の事は全部知ってるよ、ブラジル代表のグリフィンちゃん、タイの代表候補のヴィシュヌちゃん、台湾の代表候補の乱音ちゃん――そんでも
って、カナダの代表候補であると同時に大人気アイドルであるファニールちゃんとオニールちゃん♪」
「「「「「!!!」」」」」
んで、アーキタイプの面々は吏が自分達を知っていると言う事に驚いたようだ……吏はあぁ言っていたけど、世界的に有名な双子アイドルであるコメット姉妹を
除いた三人は世界的な知名度は決して高くないから其れも当然だろう。……尤も、吏の手に掛かれば各国の代表及び代表候補生の情報なんぞ、余裕のよっ
ちゃんイカで入手出来るんだけどな。天災兎マジパネェわ。
「ククク……ちょっと驚かせちゃったかな?
だけど、私は君達の事は評価してるよ……特にロランちゃんと乱ちゃんはいっ君と互角に戦ったらしいからね――君達が望むなら、専用機をより君達の能力
に合ったモノにバージョンアップしたい位だからね。」
おぉっと、此れはまたとんでもない事言いやがりましたねコイツは?
まぁ、国家代表や代表候補生に与えられる専用機ってのは、実の所『試作機』であり、其れを与えられた操縦者の稼働データを基にして、量産機の開発を行う
モノだから、使用者に合ったカスタイマイズが施されてるとは言え、其れは『汎用性を保ちながら、特定の能力に特化させた』モノであり、真に搭乗者の能力を
十全に発揮出来るモノではないのだ。
吏は其れを完全な専用機にしてやると言っているのだ……普通なら、国が開発した機体を第三者に預けるなんてのは言語道断な話なのだが、其れを提案し
て来たのが一夏達の機体を開発した人物と言うのならば話は別だ。
自国の技術を更識ワールドカンパニーに流出するデメリットはあるが、其れ以上に更識ワールドカンパニーの技術を得られるメリットがあるのだから、メリットの
方が大きいのだ。
なので、ロラン達はその提案を受け入れてバージョンアップを頼んだ――その結果、外見が変わる事はなかったが、イメージインターフェースやハイパーセンサ
ーが大幅に強化され、真の専用機になったと言った性能になっていた。……新型機の性能テストで行われるドローン撃破ミッションを、ロラン達は全員が規定
タイムである五分以内でクリアしてしまったのだから――流石はISの生みの親、改装は御手のモンですな。
一行はその後も会社見学を続け、『見学記念』として、最新型のISスーツをプレゼントされたり、敷地内にある娯楽施設でボーリングやゲームを楽しみ、更識夫
妻が戻って来たとの連絡を受けた後は、社長室に出向いて挨拶をしたりした。
……その際、更識パパと更識ママが、刀奈の左手の指輪に気付いて、一夏との仲が進展した事を自分の事の様に喜んでいた……この反応を見る限り、一夏
は完全に更識夫妻に気に入られてるわな。まぁ、そうじゃなかったら中学三年間同じ部屋にはしないか。
そんなこんなで濃い一日を過ごした一行は、結構な時間まで楽しんでしまったせいで学園島に向かうモノレールの最終便を逃す事になり、一夏が学園に連絡
を入れて外泊許可を取り、今夜は更識ワールドカンパニーの宿泊施設でお世話になる事になった。
だが、外泊となれば一夏達のリミッターも解除だ。
敷地内にあるスーパー銭湯で身体をゆっくりと癒した後は、スーパー銭湯の大広間で宴会だ――未成年なのでアルコールこそ入らなかったけれど、全員が浴
衣姿だったので、可成り華があった。一夏の浴衣姿は『漢』の色香に溢れてたし、刀奈達の浴衣姿は、夫々違った魅力があるからね……刀奈とロランの微妙
にはだけた浴衣姿は破壊力がハンパねぇわ。
グリフィンとヴィシュヌの『巨乳過ぎて前が締まり切らない』浴衣姿も破壊力抜群だけどな――カナダの双子と乱は……貧乳好きには堪らないモノなんだろうな
きっと。まぁ、ハルヒの長門にしろ、らき☆すたのこなたにしろ貧乳キャラは人気が出るらしいみたいだから頑張れや。
因みに、此の大広間はカラオケも出来るようになっているのだが、そのカラオケで一夏と刀奈とロランが、ボーカロイド曲の『ACUTE』を振り付け有りで熱唱して
大歓声を浴びていた。因みに一夏がカイト、刀奈がミク、ロランがルカであった……最終的に刀奈は一夏を殺して自分も死ぬ訳か――闇が深いなこの歌。
――――――
そんな濃い一日を過ごし、一行は敷地内にある宿泊施設で一晩を過ごす事になり、大宴会の後は夫々が割り当てられた部屋に戻って行った――其れは一夏
も同じなのだが、途中でトイレに寄っていたため、刀奈の方が先に部屋に戻っていた。
で、一夏は割り当てられた部屋のドアを開けたのだが……
「おかえりなさい。ゴハンにします?お風呂にします?其れとも、私?」
「……」
一夏はそのドアを速攻で閉めた……そりゃ、目の前にISスーツを纏った刀奈が現れたらドアを閉めたくもなるさ。普通に考えれば『お前何してんの?』ってレベ
ルの事だからね。
なので、一夏は息を整え、再びドアを開け――
「ゴハンにします?お風呂にします?其れとも、私?」
「…………」
再び閉めた。
今度はISスーツじゃなくて、ビキニの水着にバージョンアップしてた……ISスーツじゃ分からない胸の谷間が強調されてエロさが大幅にアップしてた訳なんだけ
ど、一夏は又してもドアを閉めてシャットアウト!精神力ハンパないねマジで。
でもって、三度目の正直として三度ドアを開けたのだが……
「私にします?私にします?其れとも、ワ・タ・シ?」
今度は裸エプロンで現れ、遂に選択肢がなくなった――どれを選んでも刀奈だからな。
――ブツン!!
……だが、此れで遂に一夏の中のナニかが切れた。
一夏は無言でドアを閉めて鍵を掛けると刀奈に近付き、其のままお姫様抱っこで持ち上げて、そんでもってベッドに優しく下ろす……此れは、完全に一夏の理
性がぶっ壊れたとみて間違いなさそうだな。
寧ろ、今まで良く耐えたもんですよ本気で。
「一夏?」
「……刀奈が悪いんだぜ?俺は必死に我慢してたのにさ。
だけどこんな事をされたら限界突破だぜ?だから、もう我慢はしねぇ……刀奈をいただきます。悪いけど、俺はもう止まらないからな。」
「一夏?……あん、そんなイキナリ……」
おぉっと、此処から先はR-18のライブになるから描写はカットだ――取り敢えず、一夏と刀奈は深く愛し合い、よりその愛は強固になったとだけ言っておこう。
この日、少年は漢に、少女は女になったのだった。
――――――
でもって、一夏と刀奈が初体験を終えた翌日の朝――
「朝か……おはよ刀奈、朝だぜ?」
「へ?あう……一夏///」
「えっと、如何した?」
「ゴメン、恥ずかしくて顔合わせられない……」
何とも初々しい目覚めだった……まぁ、刀奈は昨晩大分乱れちゃったので、羞恥心から一夏と顔を合わせられないってのは仕方ない事だろう。……まぁ、羞恥
を上回る快楽と幸せを感じてた訳なんだが、其れを言うのは無粋ってもんだろう。
其れでも笑顔で『おはようのキス』を交わしたってんだから、マジで爆発しろお前等。世の非リア充が見たら殺意の波動に目覚めるレベルのラブラブカップルだ
わコイツ等。
そんな甘い朝の光景の中、ニュースを見ようと刀奈はテレビの電源を入れたのだが――
『其れでは速報でお伝えします。先程、国際IS委員会は新たな法案を可決しました。
その法案の名称は『男性操縦者重婚法』――現在世界で二名しか存在しない男性IS操縦者である織斑一夏氏と正義陽彩氏には、『国籍が被らない様に五
人まで選んで結婚しろ』と言う法案が全会一致で可決成立しました。』
入ってきたトップニュースがヤバかった。
『男性操縦者重婚法』とは、国際IS委員会も大分打っ飛んだ法案を可決したモンだ……此れが、冒頭で審議していた新たな法案だったのだろう――此れなら
確かに、貴重な男性操縦者の護衛を強化できるし、男性操縦者が選んだ国籍の被らない五人が互いに監視役となるので一国が抜け駆けする事も略不可能
だからね。
「この法案マジか?俺は刀奈一筋なんだがなぁ……」
「ま、命令じゃ仕方ないから、私以外の四人を真剣に選びなさいよ?」
「おいーっす。って言っても、ハードルが高いぜ此れは。」
束が世界にISを認めさせて以来の大衝撃が世界を揺るがした事だけは間違い無いだろう――果てさて、この法案が一体何を齎すのか、其れは神のみぞ知る
と言った所だろう。
因みにこの報道を見た陽彩は、『此れで合法的にハーレムが出来るぜ、ヒャッハー!』ってな感じになってたらしい……ま、国産掃除用具、イギリス産ドリルヘ
アー、中華風貧乳娘は確定要因だからな――精々、ハーレムを夢見とけばいいさ。――そのハーレムが絶対的に幸福であるとは、誰も言ってないからね。
取り敢えず『男性操縦者重婚法』は、何度目になるか分からない、世界に投下された爆弾であった事だけは間違い無いだろう――果てさて、この世界は此処
から如何進んで行くのか、楽しみではあるね。冗談抜きのマジでね。
To Be Continued 
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