GW中であっても、一夏の日課が変わる事はなく、今日も今日とて早朝のトレーニングを行っている真っ最中――最近は、木刀での素振りだけじゃなく、素手の
格闘を想定したシャドーも行ってるので、トレーニングの内容はより濃くなってると言えるだろう。
でもって、其のシャドーも突きや蹴りの残像が見えるって、ドンだけのスピード何だ此れ?今の一夏なら、割とマジで『多重残像拳』が出来る気がする――って
か、『瞬間移動とは行かないが、私もスピードには自信があってね』ってレベルに達してるじゃないかと思うわ、うん。
「ふ!は!!せいや!!行くぜ……疾風迅雷脚!!」
そんでもって、一夏のシャドーは、只のシャドーじゃなくて其処に実際に相手が居るんじゃないかと思わせる位のレベルであって、一夏が攻撃するだけじゃなく
て、防御や回避の動作も行っているのだ。
更に、時にはダメージモーションになる事もあるので、一夏のシャドーはマジで実戦をイメージしてるのかもだ。――其のシャドーも、本日は必殺技がジャストに
炸裂した事で終わったみたいである。……時に何で疾風迅雷脚?いや、確かに強力な技だけどね?
「相変わらず、朝から精が出るな一夏?今日の相手は誰だ?」
「千冬姉か……今日の相手はムエタイ選手だよ。
身長180cm、体重70㎏のムエタイランキング上位者が相手なら、大体こんな感じになる――カヅさんなら、無傷で勝利するんだろうけど、今の俺じゃ此れが
限界かな……もっと精進しないとな。」
「馬鹿者、お前の歳で其れだけの強さがあれば充分すぎるぞ?……私だって、今のお前と同じ歳の時には其処までの力は持ってなかったからな。と言うかシ
ャドーで実際に怪我をするとか、ドレだけお前の想像力は凄いんだ?」
「……其れは俺にも分からないぜ。」
「自分を追い込むのは良いが程々にしろよ?追い込み過ぎて何かあったら、私と円夏以上に更識姉が悲しむだろうからな――自分の大切な人を泣かせるよう
な事だけはするなよ?
己の大切な人を泣かせると言うのは、男として最低の行為だからな。」
「うん、肝に銘じておくよ千冬姉。」
一夏の朝練は千冬も見ていたらしく、自分を徹底的に鍛える一夏を評価しつつも、『やり過ぎるなよ』と注意する辺り、一夏の事を心から思っているのだろう。
IS学園では教師と生徒と言う立場故に、少々ドライな対応になってしまう事が多いのだが、其れは公私をキッチリと分けているだけの事であり、決して冷たく当
たってる訳じゃないのだ。
「ならば良い。
それと、此れをお前に渡しておくぞ一夏。」
「?……何だ此れ?……って某有名動物園の一日優待券じゃないかよ?」
「雑誌のプレゼント企画に気紛れで応募したらまさかの当選をしてな……私が使う事もないからお前にやろう。其れを使って更識姉とデートでもして来い。」
「千冬姉……今度礼にリクエストの酒の肴を作らせて頂きます!!」
「うむ、苦しゅうないぞ。」
でもって、千冬さんは一夏に良い物をプレゼントしてくれました!――姉として弟の恋路を応援するとかマジで最高のお姉ちゃんですね千冬さんや……ドライ過
ぎず、べったり過ぎない絶妙な姉弟関係ってのは良いもんですねマジで。
夏と刀と無限の空 Episode12
『GW其の参~一夏と刀奈のDateDay』
でもって、朝練を終えた一夏は部屋に戻ると、朝食の準備をしていた刀奈の隣に立つと、朝食の準備を手伝いながら『良かったら今日デートしないか?』と、メ
ッチャナチュラルにデートを申し込んだ!
普通なら、突然デートを申し込まれたら戸惑うモノだろうけど、ところがどっこい刀奈は戸惑うどころか『良いわね、何処に行く?』ってな感じで、これまたメッチャ
ナチュラルな対応をして来たんだから驚きだわ……一夏と刀奈は此れがデフォなのかと考えると、ちょっと自分基準の普通ってモノに自信がなくなってくるね。
だって、この後は朝食を摂りながら、デートプランを相談してたんだからね――そんな一夏と刀奈の本日の朝食メニューは、ご飯、味噌汁、アジの干物、大根葉
とシラスのふりかけ風炒め物、たくあんと言う純和風なモノだった。
さて、朝食を終えた一夏と刀奈はデートの準備に取り掛かったのだが、一夏の方が先に準備を整えて寮の玄関で刀奈を待っていた――まぁ、女性よりも男性
の方が準備には時間が掛からんから、此れは当然の結果ってやつなんだろう多分。
その一夏の服装だが、オフホワイトのチノパンに黒の長袖Tシャツ、その上にベージュのベスト、首にはチェーンのネックレスと言う可成り凝ったモノだ。(イメー
ジはKOF'99のロバート。)
「お待たせ、一夏。」
「いや、そんなに待ってねぇ……」
んで、一夏に遅れる事約五分後に現れた刀奈を見た一夏は思わずフリーズしてしまった……刀奈の姿に!
本日の刀奈の服装は、脛の辺りまでの皮のブーツに白のオーバーニーソックス、デニムの青いホットパンツに黒の首なしノースリーブ(リアルバウト餓狼伝説S
P以降のブルー・マリーのインナーを黒くしたイメージ)、そしてその上から白のボタン付きシャツを羽織って袖元のボタンは全て外して裾を胸の下で縛り、ホット
パンツにはチェーンを付け、首には革製のチョーカーを装着した気合入りまくりの出で立ちなのだ!しかもそれが、めっちゃ似合ってるから、そら一夏だってフリ
ーズするわな。
「久しぶりのデートだから結構気合い入れてみたんだけど、如何かしら?」
「最高だぜ刀奈。ってかそれ以外に言いようがねぇ。
美人は服を選ばないって言うけど、美人が服を選ぶとマジで最強極まりねぇ……この姿の刀奈ならファッション雑誌の表紙だって飾れる――売り上げは全国
で五百万部は堅いな。
いやもう、お世辞抜きでマジ最高だぜ刀奈。改めて、俺は最高の彼女を持った果報者だって実感した。」
「よ、予想以上に高評価だけど、褒められて悪い気はしないわ。……特に、自分の一番好きな人から褒められるってのはね♡」
再起動した一夏が、お世辞とかそんな不純なモノは一切ない感想をぶちまければ、刀奈も嬉しそうな笑顔を浮かべて一夏の腕に抱き付く――偶々この光景を
目にした学園残留組の生徒は口から砂を吐くか、鼻から愛を噴出してKOされていた。取り敢えず耐性が無いって事は四組の生徒ではないだろう絶対。だって
四組の生徒なら耐性出来てるから耐えられるし。
取り敢えず、先ずは学園島から本土へ移動しないとデートも出来ないので一夏と刀奈はモノレールの駅までやって来たのだが……
「げ……アイツ等も出掛けるのかよ?」
「正義だけじゃなく、篠ノ之とオルコットとひんにゅーちゃんまで居るわね。」
其処には、陽彩と掃除用具とイギリス製チョココロネと中華風貧乳娘がいた……刀奈の『ひんにゅーちゃん』ってのは、『貧乳娘』や『まな板』よりもムカつくかも
知れないな、言われた方からすると。
如何やら其の四人で出掛けるようだが、一夏と刀奈からすれば折角のデートだと言うのにイキナリ嫌な奴等を見つけてしまったと言った所だろう……幸いな事
に、陽彩達は一夏達に気付いてないが、気付かれたらどんな因縁を付けられるから分かったモンじゃないのだから。
「如何する一夏?」
「アイツ等はまだ気づいてないみたいだから、今の内にモノレールに乗っちまおうぜ――アイツ等は先頭車輌に乗るみたいだから、俺達は最後尾に乗る事にし
ようぜ。
そうすれば車内で鉢合わせる事もないだろうし、本土の駅でエンカウントする事もないだろうからな。」
「そうね、其れがベターね。」
なので、気付かれる前にモノレールに乗り込む事にしましたとさ。
陽彩達はモノレールの先頭車輌付近に居たので、其のまま先頭車輌に乗り込むだろうから、自分達は最後尾の車輌に乗り込む事でエンカウントを回避すると
か、中々に知恵が回りますな一夏君も。
その策は見事に的中し、モノレール内でも本土の駅でも陽彩達に気付かれる事なく、一夏と刀奈は無事に本土に到着し此処からデート開始だ。
「オレも任務開始だな。」
そして、一夏の護衛であるオータムもまた同じモノレールで本土に来ていた……一夏と刀奈とは違う車輌に乗っていたので気付かれる事はなかったらしい。
一夏の護衛としての役目は果たさねばならないが、だからと言ってデートを邪魔するなんて無粋な事は出来ないので、二人に気付かれない距離を保ちながら
護衛をする事にしたようだ――出来る女ですねぇオータムさんも。
……因みに陽彩は、タイプの違うルックスだけは良い女子を三人も侍らせていた事が原因で、彼女いない歴=年齢の怖そうなお兄さんに因縁を付けられる事
になるのだが、其れは別に如何でも良いだろう。
一夏には勝てずとも、チンピラ風情なら特典のチートで如何にでもなるだろうからな。……如何にかしたら如何にかしたで、コイツにお熱な掃除用具とパツキン
英国ドリルと中華風極貧乳娘は更にコイツに惚れるだけだからね――男見る目ねぇなコイツ等。
――――――
モノレールを降りた一夏と刀奈は、其処から電車を乗り継いで関東有数の規模を誇る一大動物園へとやって来ていた。
この動物園は、動物園だけではなく水族館も施設内に併設されてると言う世界的に見てもとても珍しい動物園であると同時に、動物園エリアで飼育されている
一部の動物は放し飼い状態と言うのが特徴だ。
まぁ、放し飼いにされているのは草食獣とサルの類に限定されてるけどね……肉食獣を放し飼いにしたら問題しかないからな。
トまぁ、そんな感じでより動物と身近に触れ合う事が出来る動物園なのだ。
そんな園内で、一夏と刀奈は――
「まさか、象に乗る事になるとは思わなかったぜ……」
「ホントにね……でも此れも貴重な体験よね。」
象に乗って移動してましたとさ。
いや、一夏と刀奈は所謂恋人繋ぎをして園内を回ってたんだけど、偶々エンカウントしたアジアゾウが二人を見ると、暫く見つめた後に二人纏めて鼻を使って自
分の背中に乗せて園内を回り始めたんだわ……象は地上最大の哺乳類であるだけでなく、地上の哺乳類の中では抜群の頭脳を持ってるらしいから、仲睦ま
じい一夏と刀奈を見てちょっとサービスしたくなったのかもしれないな。象の知能ハンパねぇわ。
そんな訳で、一夏と刀奈は普通じゃ体験できない方法で園内を移動してるのだ。
因みにこの象は、五歳の雌のアジアゾウで、名前は『ナノハ』……鼻の先から桜色のビームとかぶっ放さねぇかちょっと不安な名前だぜ。――まぁ、アジアゾウ
は気性が穏やかだから、一夏と刀奈も園内をゆったりと回る事が出来る訳なんだかな。
『ふぉ!ふぉふぉふぉふぉ!』
「サル?……威嚇って感じじゃないけど、何だコイツ?」
「此れは……如何やら今のはこのサル特有の求愛のサインみたいよ?人間だけじゃなく、お猿さんからも求愛されるとは、モテモテね一夏?」
「サルに求愛された事に喜んでいいのか、悲しんでいいのか分からねぇ……」
「喜んでいいんじゃない?あの福山雅治だって、自然番組でサルに求愛されたんだから――つまり、一夏は福山と同レベルのサルをも惚れさせるイケメンって
事なのよ!」
「其れは凄いと思うけど、同時に何か微妙だそれ。」
一夏がメスのサルから求愛を受けた事以外は極めて平和だった――刀奈の言う様に、メスのサルから求愛されるとかドンだけよ?もしかしなくても、一夏には
種の垣根を超えたオスとしての魅力があるのかもしれないな。
ナノハの背に揺られて動物園エリアを堪能した一夏と刀奈は、今度は水族館エリアに。動物園とは異なる魅力がある水族館もまた大いに楽しめるだろう。
水族館エリアは、入館直後にマッコウクジラの巨大な骨格標本がお出迎えしてインパクトを与えた後に、円柱形の水槽で回遊魚&遠洋の海の魚エリアが展開
され、次いで浅瀬の海エリアが続いて大水槽に繋がっている。
その大水槽には小型のサメやエイにイワシやアジ、ウミガメにウツボにハリセンボンと言った多種多様な海洋生物が飼育されており、見ているだけでも楽しめ
るモノだった。
更にその先には深海コーナーが続いた後に、広いスペースに大きな水槽が幾つも設置されたエリアが現れた――巨大な水槽の半分はサメが飼育されている
と言うのも、此処の特徴と言えるだろう。
「サカタザメ……アレって、絶対に神様が遊んで作ったわよね?」
「其れは否定出来ねぇ……上半部はエイで下半分はサメって……しかもサカタザメって名前なのに分類はエイって、なんかもう色々と詐欺だろコイツは?」
詐欺は言い過ぎじゃね?サカタザメだって好きであの姿に……なったのか。あの姿の方が有利だからあの形に進化した訳だから。あの姿の方が、他のエイよ
りも速く泳げるとか、多分そんな理由なんだろうなぁ、知らんけど。
「と、そろそろイルカショーの時間だな?どうせなら良い席で見たいから、少し早いけどオーシャンステージに行こうぜ。」
「そうね、ずぶ濡れ上等な席で見てこそのイルカショーですものね♪」
様々な海洋生物を見た後は、イルカショーを見に行って、そんでもって最前列に座った事で見事に被弾し、水も滴る良い男と水も滴る良い女になった訳なんだ
が、本人達は其れすらも楽しんでいたみたいだから構わないだろう。
びしょ濡れになったと言っても、本日は雲一つない晴天で気温はソコソコでも湿度は低めだから外歩いてりゃ直ぐに乾くだろうからね。
イルカショーを堪能した一夏と刀奈は園内の土産コーナーで記念メダルを購入して其れをネックレスにし、円夏や簪への土産を買ったりした。そうだね、お土産
ってのは大事だね……一夏が買ってた『イカの塩辛』と『ダチョウのスモーク』は千冬さんの酒の肴だろうなきっと。
「そう言えば、そろそろ良い時間だけど昼飯何処で喰おうか?園内のフードコートじゃ、ちょっと味気ないよな?」
「そうねぇ……グーグルでお店検索してみましょうか?」
「そうするか。何か食べたい物とか有るか?」
「食べたい物は特にないけど、ファミレスやファーストフードよりも、地元で愛されてる食堂って言う感じの店に入りたい気分ね今日は。――母子家庭で育った
高校生位の男の子が手伝ってる店とかなら最高ね。」
「リアルミスター味っ子は難しいと思うけど、要するにレトロな食堂か……OK、検索してみたら一番近い店で駅二つほど先にあるから其処に行ってみようぜ?
レビューの評価も可成り高いし、お客さんのコメントも結構いい感じだしな。」
動物園と水族館を楽しんだ一夏と刀奈は、今度は昼食を何処で食べるかと言う事になったのだが、此処は刀奈のリクエストを聞いて、チェーン店のファミレスと
かファーストフードではなく、長く続いている個人営業の食堂で摂る事に決定!
スマホで検索した結果、二駅先の場所に該当する店が見つかり、レヴュー評価も高く、利用客のコメントも良いモノばかりだったので其処に行ってみる事に。
この店、レビュー評価は平均四つ星と可成り高く、お客さんのコメントも
『店のレトロな雰囲気がハートに響いた。』
『店主の親父さんの頑固一徹一本気な所に、昔懐かしい職人の魂を見た。』
『決してメニューが豊富とは言えないけど、一つ一つのメニューが確りと作り込まれていてファミレスにはない味の深さがあった。あの野菜炒めは最高だぜ!』
『店を手伝ってる赤毛の男の子が中々のイケメン。此の子と店主のオヤッさんのやり取りも軽快で大好き。』
ってな感じで、可成り好意的なモノばかりなのだ。
そんな高評価な食堂は、『五反田食堂』と言う店だった。
――――――
電車で動物園から二駅先の街までやって来た一夏と刀奈は、駅を降りるな否や一路五反田食堂に!!電車で移動中にスマホで駅から五反田食堂までの道
のりを確認していたので迷う事無く目的地に辿り着く事が出来た。……尚、食堂に向かう一夏と刀奈の事をオータムは付かず離れずの距離を維持して、『一夏
の護衛』と言う仕事を熟していた――移動する時の姿が、無敵移動技だったのは如何なモノかと思うけどね?てか、使えるんかい阿修羅閃空!オータムさん
も大概ですな。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「えっと、二人で。」
「お兄ー、お客さん二名入るよ~~!」
「はいよ!!カウンターにご案内してくれ!」
五反田食堂に入店した一夏と刀奈を出迎えてくれたのは、エプロン姿の中学生位の女の子――一瞬呆気にとられた二人だったが、今日は祝日である事を思
い出し、『この店の子で、休日だから店を手伝ってるんだろうな』と考え、突っ込みは入れない方向にしたみたいだ。
いや、彼女だけでなく厨房に立っているのも一夏や刀奈と大差ない年頃の少年なのだから、本気で突っ込みは不要――此れが五反田食堂のカレンダーの赤
い日の営業の当たり前なのだろう。
「って、アンタ等若しかして、織斑一夏と更識刀奈か!?」
「ん?俺達の事知ってんの?」
「其れは光栄ね♪」
「いや、知らねぇ方がモグリだろ!
若干十四歳で姉妹揃って日本の国家代表に上り詰めた双子の国家代表の姉の方の更識刀奈と、世界初の男性IS操縦者にして更識ワールドカンパニーの
企業代表の織斑一夏を知らない奴なんて、日本全国どころか世界全土を探したって両手の指で足りる位しか居ないんじゃないか?」
んで、厨房で鍋を振ってた赤毛の少年は、カウンター席に座った一夏と刀奈を見て大層驚いていた――まぁ、彼の言う様に一夏と刀奈は世界的に可成りの有
名人なのだから、その有名人が自分の家族が経営してる店に来たとなれば驚いて当然か。
「まさか、アンタ等みたいな有名人が来てくれるとは予想外だったが、こりゃ店の良い宣伝になっかもな――っと、一人で勝手に盛り上がっちまった。
俺は五反田弾。日祭日はじっちゃんに任されて厨房に立たせて貰ってんだ。妹の蘭も、接客で手伝ってくれててな。
まぁ、折角来てくれたんだから、腕によりをかけて作るぜ?サクッと、注文決めてくれっと助かるぜ。」
「赤い日限定で店任されるとかスゲェな?次の店長見習いとして修業してるって事なんだろうけど、其れでも店を任されるってのは……如何考えてもスゲェよ。
そんじゃ、注文だけど、俺は上とんかつ定食の飯大盛りで。」
「私は唐揚げ定食で。付け合わせのレモンはなしで。」
「其れと単品で、この店のお勧めを一つ頼むぜ。」
赤毛の少年は五反田弾と言い、カレンダーの赤い日は妹の蘭と共に店を手伝っているようだ――って言うか、赤い日は略弾と蘭で店を切り盛りしているらしか
った……其れで店を回せるのは、若さが成せる技なんでしょうな。って言うか、若くないと無理だ普通に。
「この店のお勧めか……OK、頼まれたぜ!」
オーダーを受けた後の弾の手際は実に見事なモノで、最強クラスの主夫力を誇る一夏が思わず見入ってしまった位だ。
同じ揚げ物と言う事でとんかつと唐揚げは一緒に揚げる事で時間を短縮し、揚げてる間に一夏からの注文である『この店のお勧め』も同時に仕上げて行くのだ
から大したモノだ。
「上とんかつ定食の飯大盛りと唐揚げ定食のレモン無し、でもってこの店お勧めの業火野菜炒めお待ち!」
注文してからおよそ十分後、オーダーしたモノは一夏と刀奈の前に出て来ていた――ほぼ一人で調理した事を考えれば、十分と言うのは驚異的なスピードで
あったと言えよう。てか、普通は十分で上げるとか普通に無理だからな。弾の調理人としての保有スキルは可成り高いのかもしれないな。
「「いただきます。」」
一夏はカツにソースをたっぷり掛け、刀奈は唐揚げに風味付けに七味唐辛子を少し振ってから口に運び――その旨さに二人とも言葉を失って、『箸が止まらな
い状態』になっていた。
サクッとした衣の下の豚肉がジューシーでソースとの相性が良いとんかつと、表面はカリッ!中はジュワーな唐揚げと七味の相性は抜群で、更に単品でオーダ
ーした『業火野菜炒め』は強火で一気に炒められた野菜と豚肉を少し濃いめのタレで味付けされたモノで、此れがまた白飯に合うんだわ。
気が付けば一夏も刀奈もご飯をおかわりしてたからね。(ご飯のおかわりは無料です。)
「はぁ~~……美味かった~~!刀奈のリクエストを検索したらこの店が出て来たんだけど、この店は大当たりだったみたいだぜ……出来る事なら、あの激ウ
マ野菜炒めのレシピを知りたい所だぜ。」
「悪い、アレはじっちゃん考案のレシピで門外不出だから教えられねぇんだ。」
「あぁ、門外不出じゃしょうがねぇか。
使ってる調味料とかは大体分かるんだけど、あの味を出している一番の要因と思われる隠し味的な何かが門外不出のオリジナルレシピって訳か……弁当レ
シピが一つ増やせると思ったのに残念だぜ。」
「え?料理するのか?」
「趣味だけどな。」
「と言いつつも、一夏の料理の腕前は趣味の範囲を通り越してプロ級なんだけれど♪
中学時代なんて、調理実習の度にクラスの女子の心を砕きまくってただけじゃなく、教育実習に来てる先生の卵の心まで完全に粉砕してたのだからね。」
「マジか?……ちょっとバイトとして雇いたくなって来たぜ。」
絶品定食と野菜炒めを完食した一夏と刀奈は、弾と談笑しているのだが、その光景は今日初めて会ったとは思えない程に自然なモノで、知らない人が見たら
長年の友人であるかのように見えるだろう。
まぁ、弾としては自分と同じ年の一夏達が店に来たと言うのがとても新鮮であり、同い年なのでついつい話してしまったと言うのもあるのだろう……人気の店と
は言え、客層はティーンエイジャーよりも、社会人やリタイアした御老人がメインなのは否めないから。
「そう言えば二人はIS学園に通ってるんだよな?……正義陽彩って奴の事は知ってるよな?――アイツ、IS学園ではどんな感じなんだよ?」
「正義って……」
「二人目の彼か……」
そんな中、弾の口から出た陽彩の名前を聞いた途端に、一夏も刀奈もあからさまに嫌そうな顔をする……特に一夏は凄い。言うなればアレだな、ストⅣのリュ
ウが殺意の波動に目覚めたリュウになっちゃった時くらいに凄い顔になってる。問らえずイケメンがして良い顔じゃない状態だね此れ。
一夏からすればしつこく勝負を挑んでくる鬱陶しい輩で、刀奈からすれば愛する彼氏に何かと突っかかって来る目障りな相手でしかないのだから、名前を聞い
ただけでも嫌な顔にもなるわな。
「……その顔で大体分かった。あの野郎、IS学園でも相変わらずって訳か。」
「知り合いなのか?」
「若しかして、中学校が同じだったとか?」
「正解だぜ更識さん。
俺はアイツと同じ中学でさ、最初に見た時は『なんぞこのイケメン!?』としか思わなかったんだよ……既に凰鈴音って彼女が居た事には若干嫉妬したって
のは置いといてな。
しかもイケメンなだけじゃなくで勉強もスポーツも出来るスーパーマンと来たから、当初は『アイツみたいになりたい』って思ったモンだが、あの野郎はトンデモ
ないクズ野郎だってのが時が進むにつれて分かって来てな。
信じられるか?凰の奴が中国に帰国する事になった時、あの野郎は凄く悲しがってたのに、その翌日には別の女子と付き合ってたんだぜ?いんや、付き合
ってたってのは語弊があるな……なんて言えば良いんだ?こう、自分に言い寄って来る女子を手当たり次第につまみ食いしてたってのが一番適当だと思う
んだが……何か違和感がある。そう、根本的な見落としをしているような……って、ヒソカネタは良いとしてだ。
そんな事をしてただけじゃなくて、そう言った事を咎めるような事を言った奴には男女問わず制裁を加えてたんだよ……俺も聞いた話だから事の真相は定か
じゃないんだけど、男子は入院レベルの怪我を負わされたとか、女子は複数の男子に輪姦させたとかヤバい話があったんだよ。自分が気に入らない奴に対
しては徹底的にやったらしいんだ――ま、所詮は噂だし、此れと言った物的証拠もなかったからアイツが処罰される事は無かったんだけどな。」
「「うわぁ……」」
でもって、弾から中学時代の陽彩の事を聞いた一夏と刀奈は思いっ切り引いていた……ドン引きを通り越してのガン引き、いやもう此れはガチ引きって奴だ。
いや、クズ過ぎんだろ陽彩……神様(見習い)のチート特典使ってやりたい放題やってたみたいだなぁ中学時代は……こりゃ若しかすると、既に脱童貞――は
ないか。この野郎、初体験はISヒロインズに決めてるみたいだからな。……となると、最初の相手は掃除用具か?アイツ胸だけは無駄にデカいから陽彩として
は真っ先に手を出したい相手だろう多分。
「少なくともIS学園では、流石に其処までの事はしてないと思うぜ?
って言うかそんな事したら問答無用で千冬姉がぶっ殺すと思うし、即刻退学は間違い無いだろうからな?幾ら貴重な男性IS操縦者だとしてもな。
まぁ、アイツの周りには何時も国産掃除用具と英国産金髪チョココロネと中華風貧乳娘が居るが、っ逆に言うとそれ以外の連中と一緒に居る所を見た事がな
いから、既にボッチ街道進んでるのかもだ……或は、あの三人が他の女子を威嚇して近寄らせない様にしてるのか、其れは分からないけど。」
「ん?凰の奴もIS学園に居るのか?中華風貧乳娘って、絶対凰鈴音だろ?」
「そうね、大正解♪
因みに彼女は、色々と盛大にやらかした挙げ句、一夏とオランダ代表のロランにフルボッコにされてクラスで孤立してるみたいよ?……ま、そんな事は気にし
ないで、二人目の彼と一緒に居る時間を大事にしてるみたいだけどね。相当彼にお熱みたいね、あのまな板ちゃんは。」
「まな板ちゃんって的確過ぎるなオイ?
つか、何をやらかしたのか……まぁ、凰の奴が何をしたかは聞かないでおくけど……正義の野郎、アンタ達に迷惑掛けてないか?」
「掛けてる。刀奈は兎も角、主に俺にな。
クラス対抗戦で俺が圧勝したにも関わらず、俺と刀奈で新設した『古武術部』に、俺が出てる日は必ず道場破りに来るから鬱陶しくて仕方ねぇ……毎回俺に
負けてるのに何で挑んでくるのか疑問だったんだが、お前の話を聞いて納得した……あの野郎は、テメェより強い俺が気に入らねぇから何とか叩きのめそう
としてるって訳か。」
「そう言う事だ……って、アイツに勝ったのか!?」
「おうよ、極めて楽勝。
確かに其れなりに強いのは認めてやるけど、アイツの強さは上辺だけで中身がねぇ……そんな上辺だけの強さじゃ俺には勝てねぇよ。金鍍金をした鉄塊じゃ
本物の金塊には及ばないのと同じでな。」
「一夏は今でもストイックに鍛えまくってるから基礎部分がとっても強いのよ……基礎が強くなければ、その上に真の強さを積む事は出来ないモノ♪」
其処から話は進んで行ったのだが、一夏が陽彩に勝ったと言う事に弾は驚いていたが、一夏と刀奈の言った事を聞いて妙に納得してしまった……上辺の強さ
では真の強さに敵わないのは道理だからだ。ボブ・サップがプロレスの世界で活躍出来ても、ガチンコの総合格闘技の世界では直ぐに鍍金が剥がれたのと同
じだ。
「上辺だけの強さ……確かにそうかもな。……織斑、あの野郎がまた挑んできたら、ぐぅの音も出ねぇ位にフルボッコにしてやってくれ!俺が許可すっから!」
「いやぁ、毎度フルボッコにしてるのに懲りないからなぁ……今度来たら、刀奈との『愛と友情のツープラトン』で仕留めてやるか?冗談抜きのマジで。」
「NIKU→LAPは何時でも行けるわよ♪」
NIKU→LAPはマジヤバいから止めとこうか?
キン肉バスターの弱点を克服した完全無欠のツープラトンはマジヤバい……キン肉バスターの五カ所破壊にOLAPの両腕破壊を加えたツープラトンは正に『必
殺』だからね。掛ける側に、主にOLAP担当の方に物凄いバランス感覚が要求されるけど。
まぁ、陽彩は一夏にちょっかいを掛ければ掛けるだけ痛い目に遭うって事だ……その痛い目ですら経験値になってチートに維持に繋がってるってのは陽彩に
とって喜ぶべきか悲しむべきかは知らんけどね。
そんなこんなで五反田食堂でのランチを楽しんだ一夏と刀奈は、店を後にしてデートの午後の部に――因みに支払いは一夏がしたよ?『デートの時は男の方
が払うもんだろ?』って、マジイケメンですな一夏君や。
店を後にする際に、弾から『今度は仲のいい奴を連れて来いよ?でもって、良い子が居たら俺に紹介してくれ!』と言われて、一夏が苦笑いしたってのも、まぁ
GWならではの一コマって所だろう。
五反田兄妹との絆も繋がった事もプラスすれば、本日の昼食に五反田食堂をチョイスしたのは大正解だったんだろうな。
――――――
デートの午後の部はウィンドウショッピングがメインだ。
大型ショッピングモールに足を運んだ二人は、ユニク○やG○と言ったファッションショップで刀奈がファッションショーを行って一夏から拍手喝采を浴び、調理器
具専門店で一夏が新しい包丁を購入したりしていた――包丁を見る一夏の目は、刀を見る剣客の其れであり、店員がちょっとビビってたとかなんとか。
ま、一夏も刀奈もウィンドウショッピングを楽しんだ訳だが、そのウィンドウショッピングのラストにやって来たのは、一夏がリクエストしたジュエリーショップだ。
其処で、一夏は店員から何かを受け取ったみたいだが、それが何であるのかは刀奈にも分からなかった。
「今日は楽しめたか刀奈?」
「えぇ、とても楽しかったわ一夏……最高のデートだったわよ。」
「そっか、其れなら良かったぜ……でも、どうせなら、最後の最後でサプライズがあった方が面白いと思わないか?」
「其れはそうだけど……サプライズって言ってもねぇ?」
「コイツじゃ、サプライズにはならないか?」
んでもって、ショッピングモールの広場で、一夏は刀奈にジュエリーショップで受け取った箱を差し出す。……成程、此れは確かにサプライズだろうねぇ?中々に
気障な事をするね一夏君も。
「此れは……指輪?」
「気が早いかも知れないけどな。」
その箱の中身は指輪だった。
石が嵌ってる訳でもないし、特別な装飾が施されてる訳でもないが、シンプルな銀の指輪は箱の中で輝いていた……リングの内側には、『For Ichika
To Kata
na』と彫り込まれている凝りようだ。
「一夏、嵌めてくれる?」
「其れが望みなら、喜んで。」
その指輪を、一夏は迷う事無く刀奈の左手の薬指に嵌める……マッジで、夫婦ですなアンタ等は――末永く永続的に爆発してくださいマジで。もうIS学園公認
カップルで良いですよね?世界最強の千冬さんが認めてる訳だからさ。
と言う事で、一夏と刀奈のカップルはIS学園公認って事で良いよねもう。
そんで、刀奈の左手の薬指に指輪を嵌めると、何方からと言う事もなく口付けを交わす……真に愛し合ってる者同士のキスってのは、劣情を抱く事も出来ない
な……純粋な愛の形である口付けには、不純なモノはないって事なんだろうね。
「一夏、大好き。」
「知ってる。そして其れは俺もだよ刀奈。」
口付けを終えた一夏と刀奈は、今度は互いにハグ……あぁ、もうマジでこっ恥ずかしいなコイツ等!見てるこっちの方が恥ずかしくて顔から火が出たわ!熱風
習得したぞマジで!!
ま、此のラブラブカップルのデートは良い感じだったと言う事だろう。重ね重ね言うが、本気で末永く爆発してくださいマジで。
そんな訳でデートを終えて学園島に戻って来た一夏と刀奈なんだが……
「えっと、おかしくないかな一夏?」
「おかしい所か最高だぜ刀奈……我が人生に、一片の悔いなし!……やったぜ、親父ーーー!!」
簪が制作した『エトラちゃん』のコスチュームを纏った刀奈に一夏が完全KOされていた……エトラちゃんの魔改造巫女服の破壊力はハンパないから、其れを着
た刀奈に一夏がKOされるのも仕方ねぇわな。
エトラちゃんのコスは、着る人によっては胸の谷間がバッチリだからね……まぁ、其れだけでKOされた一夏は可成り純情なんだろうなきっと。
因みに再起動した一夏が、刀奈に色んなポーズをお願いして写真を撮りまくったのは、お約束と言えばお約束であり、翌日一夏から話を聞いた簪は、『計画通
り』とか言いながら若干悪い笑みを浮かべていたらしい……簪、恐ろしい子。
To Be Continued 
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