Side:ブランシュ
ミアレの住民や俺達を苦しませてきたデッキ強奪事件にいよいよ終止符を打つ時が来た。
人をゴミのように見ているような、冷徹な炎の女の手引きで黒幕の本拠地までやってくることができた。
そして、俺は自らのデッキを取り戻しつつ黒幕のクセロシキの研究ノートを見ることとなった。
その中にはエスプリが着用している強化戦闘服の仕様や臨床テストのレポートが綴られていた。
それを見た俺はクセロシキの中に僅かに良心がある可能性がある事を知る。
エスプリの正体であるリンと何も接点のない俺ではどうにもならないかもしれない。
しかも、手負いの身だからな…まだまだ全身痛いし。
「ブランくん…よくぞそんな体でここまで無理したものだ、馬鹿野郎。」
「親父さんこそ、本当にやばい奴と裏取引しやがって…馬鹿野郎。」
まぁ、親父さんことハンサムにも俺が明らかに無茶してるのはバレてますよね。
一方の親父さんは炎の女という危険な相手に取引を持ち掛ける無茶をしでかしてるからどっちもどっちだ。
どっちも後で問題になってくるだろう。
ただ…俺の方は単に自業自得だけど、親父さんの方は事が事だから大問題になるかもしれない点で責任重大だ。
親父さんが何を交渉材料に持ち出したのか気になるが、フレア団だった事を世間にばらすとかそういった可能性が高い気がする。
彼女がサイコデュエリストであることを考えると、随分と無茶したものだな。
まぁ、それは兎も角…今は目先の問題を解決しないと。
もっとも、それを解決するのは俺じゃなくてユーゴの役目だ。
彼はエスプリの正体であるリンの幼馴染というのがあり、洗脳された彼女の心を開ける可能性がもっとも高いからだ。
少々アホなところはあるけど、デュエルの腕は中々のものだ。
それに…なんというか、こいつならやってくれる気がする感じがするんだ。
何としても、リンの心を呼び覚ましてクセロシキに一泡吹かせてやるんだ!
頼んだぞ、ユーゴ!
異聞・遊戯王5D's 外伝 −esprit− Turn5
『精神に潜む闇を討て!』
ユーゴ:LP4000
エスプリ:LP4000
「待ってろよ、リン…すぐにお前の目を覚まさせてやるからな!
先攻はもらうぜ、俺のターン!手札からチューナーモンスター『
SR三つ目のダイス:ATK300
「そして、俺の場に風属性モンスターが存在する場合、『
SRタケトンボーグ:ATK600
初っ端からシンクロ召喚の準備をしてくるか。
そして、合計レベルは6…。
「行くぜ、俺はレベル3のタケトンボーグにレベル3の三つ目のダイスをチューニング!
十文字の姿持つ魔剣よ、その力で全ての敵を切り裂け!シンクロ召喚!現れろ『
『フゥゥッ…!!』
HSR魔剣ダーマ:ATK2200
まずは順当にこいつが出てくる。
こいつなら、後で響く一発をいきなり食らわせられるからな。
とはいえ、今のところ相手は何の反応も示してこないようだ。
「タケトンボーグを除外し、魔剣ダーマの効果発動!
1ターンに1度、墓地の機械族1体を除外し、相手の500ダメージを与える!まずは挨拶代りの一発を喰らえ!」
エスプリ:LP4000→3500
そして、バーン効果でまずは先制パンチというわけだ。
だけど、この一発じゃ反応はしてこないか。
「やっぱ、これだけじゃ駄目か…!
俺はカードを1枚伏せてターンエンド…!」
「我ガターン。我ハ魔剣ダーマヲ対象ニ、手札カラ『エスプリ・バット』ノ効果ヲ発動スル。
魔剣ダーマノ攻撃力ヲ300アップシ、コノカードヲ手札カラ特殊召喚スル。」
HSR魔剣ダーマ:ATK2200→2500
エスプリ・バット:DEF900
自らの名であるエスプリの名を冠したモンスターを出してきた。
ユーゴのモンスターの攻撃力を上げたのが気になるところだ。
「わざわざ魔剣ダーマの攻撃力を上げて来ただと…何を考えてやがる。」
「『エスプリ』とはすなわち精神の意味…相手に干渉するモンスターなんだゾ。」
相手の精神に干渉してくるか…嫌な予感がするモンスター群だ。
それをわざわざ俺たちに教えるとは…余裕を見せてるのか、あるいはただのアホか。
「続イテ、手札カラ『エスプリ・カウンセラー』ヲ召喚。」
エスプリ・カウンセラー:ATK1300
「オマエノモンスターノ攻撃力ヲ上ゲタ理由ヲ教エテヤロウ。
カウンセラーノ効果、元々ノ攻撃力ト異ナル相手モンスター1体ヲ対象トシ、ソノ効果ヲ無効ニシタ上デ我ハ1枚ドロースル。」
HSR魔剣ダーマ:ATK2500(効果無効)
「魔剣ダーマの効果が無効にされた上で1枚ドローしてきやがったか…!」
「成程、癖はあるけど厄介なカテゴリというわけか…!」
相手の攻撃力を操作して、元々の数値と変動したのを利用する算段と言うわけか。
味な真似をしてくれるようだ。
「ソシテ我ハレベル4ノカウンセラーニ、レベル2ノバットヲチューニング。
モンスタージャック、スタート…チューニングイクスパンション、レベル6……シンクロ召喚、現レロ『エスプリ・サイキッカー』…」
『ハァァァァ…!!』
エスプリ・サイキッカー:ATK2200
で、相手もシンクロ召喚してきたわけか。
攻撃力は現状の魔剣ダーマより下回ってるけど確実に何かあるな。
「エスプリ・サイキッカーガシンクロ召喚シタ時、元々ノ攻撃力ト異ナル攻撃力ヲ持ツモンスター1体ヲ対象ニスル。
魔剣ダーマヲ対象トシ、ソノ差分ノダメージヲオマエニ与エル『ディファレント・ショック』…」
「ぐあっ…だが、この程度のダメージなら。」
ユーゴ:LP4000→3700
「甘イナ。サイキッカーニハモウ1ツ効果ガアル。
1ターンニ1度、元々ノ攻撃力ト異ナル攻撃力ヲ持ツ相手モンスター1体ヲ破壊デキル。」
「破壊効果もか!?」
「対象ハ魔剣ダーマ…消エロ『メンタル・ブレイカー』…」
――ドガァァァァァ!!
「魔剣ダーマ!」
バーンだけでなく単体除去も兼ね揃えていたか。
「バトルダ、エスプリ・サイキッカーデオマエ自身ヲ攻撃スル…」
「墓地の『
ここで墓地の三つ目のダイスの効果をいきなり…何か考えてのことだろうけど。
さて、いきなり使用した事がどう響くか…!
「…カードヲ2枚伏セ、ターンエンド。」
「いきなりシンクロが破壊されたみたいだが、まだまだこれからだろう?」
「当たり前だろ、俺のターン!俺は『
SRキャッチアーム:ATK400
「キャッチアームが召喚・特殊召喚に成功した時、除外された『スピードロイド』1体を守備表示で特殊召喚できる!
これで前のターンで除外した『
SR三つ目のダイス:DEF1500
「上手いな、早くも三つ目のダイスの効果を使ったのはこのためか!」
「デュエルのプレイがしっかりしてるから安心だ。」
最初から帰還させるつもりで三つ目のダイスを除外したみたいだな。
これでまた墓地へ送れば、また攻撃無効効果が使えるから一石二鳥と言うわけだ。
「俺はレベル1のキャッチアームにレベル3の三つ目のダイスをチューニング!
天体の如く回る心よ、不屈の魂をここに示せ!シンクロ召喚!現れろ『
『ハァァッ…!!』
HSRジャイローグ:ATK1500
ここで出してきたのはコマのような姿の下級のシンクロか。
このままだとシンクロとしては頼りないが…?
「ジャイローグがシンクロ召喚に成功した時、このターン自らの攻撃力を1500アップする!」
HSRジャイローグ:ATK1500→3000
成程、下級シンクロながら一時的に攻撃力は3000の大台に突入できるのか。
シンプルながら中々便利そうだ。
「愚カナ…サイキッカーノ破壊効果ハ相手ターンデモ発動デキル…。
消エルガイイ、ジャイローグ…『メンタル・ブレイカー』…」
「げっ、マジかよ!…なんてな!」
――ビリビリッ!!
HSRジャイローグ:ATK3000(効果耐性付与)
「馬鹿ナ、破壊サレナイダト…?」
「言い忘れたが…このターン、ジャイローグは自身以外のカード効果を受けない!」
成程、1ターンだけ3000打点で強力な耐性のモンスターが顕現するわけか。
もっとも、今回は外れたとはいえサイキッカーの破壊効果…誘発即時というのが厄介だな。
今はいいけど、これからどういなすかが問題になりそうだ。
「バトルだ!ジャイローグでエスプリ・サイキッカーに攻撃!
さっきの魔剣ダーマのダメージより重いぜ、これでどうだ『スピニング・アタック』!!」
――ドガァァァァァァァァッ!!
「ヤルナ…」
エスプリ:LP3500→2700
少しは手ごたえがあるみたいだけど、まだまだリンの目を覚まさせるには程遠いか。
「これでもまだ駄目か…ターンエンド。
この瞬間、ジャイローグの効果が終了し攻撃力が元に戻る。」
HSRジャイローグ:ATK3000→1500
「ワタシが開発したイクスパンションスーツを着た、エスプリの肉体や精神は限界はないのだゾ!
さあ、どんどん行け!エスプリ!!」
「我ノターン…リバースカード発動、速攻魔法『精神転移』。
コノ効果デ、ジャイローグノ攻撃力ヲ500アップスル。
ソノ後、デッキカラレベル4以下ノ『エスプリ』モンスター1体ヲ呼ビダス!来イ『エスプリ・ワーム』。」
HSRジャイローグ:ATK1500→2000
エスプリ・ワーム:DEF1200
「ソシテ…エスプリ・ワームヲリリースシ、『エスプリ・バタフライ』ヲアドバンス召喚スル。」
『キュイィィィ…!!』
エスプリ・バタフライ:ATK2000
HSRジャイローグ:ATK2000→2200
「コレガアドバンス召喚シタ時、元々ノ攻撃力ト異ナルモンスター1体ヲデッキニ戻ス。
コノ効果デオマエノジャイローグニハ消エテモラウ。」
ジャイローグが戻されたか…!
攻撃力が低めだったとはいえ、墓地誘発が潰されたのは痛いか。
それにエスプリ・バタフライが出た瞬間、ジャイローグの攻撃力が上がっていたからいずれにしろ出た時の効果が使われたわけだ。
「ソシテデッキカラ『エスプリ・ストライカー』ヲ手札ニ加エル。」
「デッキバウンスと同時にサーチまでこなすとはやってくれやがるぜ…!
ジャイローグは墓地送りされた時の効果があったが、発動できないか…!」
「バトルダ、バタフライデオマエヲ攻撃……『スケイル・ストーム』ヲ喰ラウガイイ。」
――ビュゥゥゥン!!
「ぐうぅぅぅっ…!!」
ユーゴ:LP3700→1700
この攻撃は素直に受けたみたいだが、見る限り衝撃も実体になっているようだ。
ユーゴ、何とか耐え抜いてくれよ…!
「…ターンエンド。」
「俺のターン!よし、俺は手札から『
SRダブルヨーヨー:ATK1400
ここでダブルヨーヨーか、確かこいつの効果は…!
「ダブルヨーヨーが召喚に成功した時、墓地から『スピードロイド』1体を蘇らせる!
俺が呼び戻すのはチューナーモンスター『
SR三つ目のダイス:DEF1500
これでチューナーとそれ以外のレベルの合計は7…となると!
「待ってろよ、リン!こいつでお前を正気に戻してやる!
俺はレベル4のダブルヨーヨーにレベル3の三つ目のダイスをチューニング!
その美しく煌く翼翻し、光の速さで闇を穿て!シンクロ召喚!現れろ『偏光龍 クリアウィング』!!」
『グオォォォォォォ…!!』
偏光龍 クリアウィング:ATK2500→2700
やっぱり来たか、ユーゴのエースドラゴンが!
さて、こいつの存在で流れを変えられるか…!
「ついに来やがったか…!」
「これが、ユーゴくんのエースモンスターなのか…!」
「グ…グァァァァァァァァァァァ!!」
ここにきて、エスプリが頭を抱えて突然悲鳴を上げた…!
「ナンダ、コノ感ジハ…!?」
「ヌー…リモートコントロールに不調が…?」
あのドラゴンが出た瞬間、エスプリの様子がおかしくなったわけだ。
やはりユーゴの幼馴染だけあって、彼のエースのクリアウィングが攻略のカギのようだ。
開発者のクセロシキも困惑してるようだし、これはいけるんじゃないか?
「聞こえるか、リン!」
「グァァァ、フザケルナ!エスプリ・バタフライノモウ1ツノ効果デエクストラカラ特殊召喚サレタモンスターノ攻撃力ハ200アップシテイル!
ヨッテ攻撃力ガ変化シタ、クリアウィングを対象ニ罠発動『精神解脱』!エクストラデッキニ消エ失セロ、クリアウィング!!」
「手ごたえはあるが、まだ駄目か…だがこの瞬間、自身を対象にクリアウィングの効果発動!
このターン1度だけ、そのモンスターを対象とするカードの効果を無効にするぜ!『スペクトル・シャット』!!」
――シュォォォォォ…!
まだ正気には戻せないようだけど、エスプリの感情が露わになった…手ごたえありだ。
そして、相手の罠カードも自身の効果で上手くいなせた!
「お前が目覚めれば、きっとスーツのコントロールから自由になれる!」
「だから、この一撃で目覚めさせてやる!バトル!クリアウィングでエスプリ・バタフライを攻撃!
頼む…起きてくれ、リン!!『ヘルダイブ・ソニック』!!」
――ズバッシャァァァァア!!
「グッ…グワァァァァァァァァァァァッ!!」
エスプリ:LP2700→2000
偏光龍 クリアウィング:ATK2700→2500
「もう少しだ、がんばれ…リン!」
このまま意識が戻ってスーツのコントロールから解放されれば…!
不器用なりに俺も応援すれば…!
「グヌウウ……何故だ、何故こんな事が…?
こうなれば仕方ない…ええい、こうしてやるゾ!
リモートコントロール機能…制御モード、パワーマックス!!」
「グワアッ!!」
「リン!!?」
ふざけんな、クセロシキ!なんて無茶な事するんだ…!
このまま無理なコントロールを続けたら、リンの体がもたないぞ!!
こうなったら、力ずくで…!
「テメェ、やめろぉぉぉぉぉ!!」
「なっ…ブランくん!?よせ、下がるんだ!!」
「グワァァァッァア…!!」
――ドゴッ…!!
「ぐはぁっ…!!」
「ブラァァァァァァァン!!」
「止められなかったか…!」
「力づくで止めようとしたら、こうなるのがオチだゾ!」
痛てぇ……クセロシキを止めようと無我夢中で飛び出したけど、エスプリに殴り飛ばされてこの始末だ。
また余計な怪我が増えてしまったが、こうなってしまったものは仕方ない…!
ユーゴ…こうなったら、リンの身に限界が来る前になんとしてもデュエルに決着を付けるしかないぞ…!
「っ、しくじったぜ…だけどユーゴ、お前はなんとしてもリンを救え…!」
「だ、だけどよ…その体じゃ…」
「俺の心配をしてる暇があるなら…目の前の事に集中しろ、融合が!!」
「融合じゃねぇ、ユーゴだ!!
ったく…この期に及んで馬鹿な事言ってんじゃねぇよ。」
突っ込む余裕があるなら何も問題はないな。
なんとしても、リンをクセロシキの魔の手から救い出せ!絶対に!!
「だが、お前の想い…しかと受け取った!俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」
「グ…我ガターン!!墓地カラ『エスプリ・ワーム』ノ効果ヲ発動!
クリアウィングヲ対象ニソノ攻撃力ヲ500アップサセ、自己再生スル!!」
エスプリ・ワーム:DEF1200
偏光龍 クリアウィング:ATK2500→3000
無理なリモートコントロールのせいか、エスプリのプレイが力んでる気がする。
一方のユーゴはクリアウィングの効果をここでは使わずスルーか。
「続イテ『エスプリ・ストライカー』ヲ召喚!」
エスプリ・ストライカー:ATK1800
「ストライカーガ召喚ニ成功シタ時、相手ノ元々ノ攻撃力ト変化シテイル攻撃力ノ効果モンスター1体ヲ手札ニ戻ス!!
目障リナンダ!消エ失セロ、クリアウィング!!」
「そいつは通させねぇぜ!クリアウィングの効果発動!
自身を対象に、そのカードを対象とするカード効果を1度だけ無効にする!『スペクトル・シャット』!!」
「ダロウナ…!ダガ、ストライカーノモウ1ツノ効果をクリアウィングヲ対象ニ発動!
クリアウィングノ攻撃力ヲ200アップシ、自身ノレベルヲ2ツ上ゲル!!」
偏光龍 クリアウィング:ATK3000→3200
エスプリ・ストライカー:Lv4→6
クリアウィングの攻撃力を上げてまでレベルを上げてきた…!
となると、ここは恐らく…!
「我ハレベル6トナッタ『エスプリ・ストライカー』ニ、レベル3の『エスプリ・ワーム』ヲチューニング!
モンスタージャック、スタート!チューニングイクスパンション、レベル9!シンクロ召喚!精神ヲ支配スル、業ノ覇者『エスプリ・カルマール』!!」
『カルマァァァァァ…!!』
エスプリ・カルマール:ATK3000
やはり高レベルのシンクロ召喚か…!
出てきたのは烏賊を上下逆さまにしたような醜悪な姿の怪物。
これが恐らく、あのデッキのエースモンスターなのは容易に想像がつく。
「クリアウィングの攻撃力は自分以外のシンクロモンスターの数だけ攻撃力が500アップするぜ!」
偏光龍 クリアウィング:ATK3200→3700
「ダカラ何ダ!ココデ魔法カード『精神再生』を発動!
墓地カラレベル4以下ノ『エスプリ』モンスター『エスプリ・ストライカー』ヲ蘇ラセル!」
エスプリ・ストライカー:ATK1800
「エスプリ・サイキッカーノ効果デ、クリアウィングノ攻撃力ヲ200アップシ、自ラノレベルヲ2ツ上ゲル!」
偏光龍 クリアウィング:ATK3700→3900
エスプリ・ストライカー:Lv4→6
クリアウィングの攻撃力をやたら増大させて何を考えているんだ?
単に自暴自棄になっている可能性も考えられるけど…!
「俺のクリアウィングの攻撃力を上げて何をしようとしてるのかはわからねぇが、受け止めてやる!」
「ホザケ!我ハ、エスプリ・カルマールデクリアウィングニ攻撃!!」
「攻撃力が下なのに攻撃してきた…?確実に何かあるな。」
「……。」
余程、頭おかしくなってなければ何かある。
そういえばカルマールの姿はイカを逆にしたようなもの…予想が正しければ!
「ソシテ、コレガクリアウィングノ攻撃力ヲ上ゲタ理由ダ!
墓地カラバットヲ除外シ、エスプリ・カルマールノ効果ヲ発動!
コノターンノ間、攻守ノアップダウンヲ逆転サセル!!」
「つまり、打点アップがダウンという事になるわけで…それで攻撃力を異常にあげたのか…!」
やはり、何かを逆転させる効果だったか。
それならクリアウィングの攻撃力を上げた事も納得がいく。
どこかの罠と同じ効果だけど、非常に珍しい性質のものだ。
このままだとクリアウィングの攻撃力は1100までダウンし、やられてしまう。
だが、これを前にしてもユーゴは何一つ焦りの表情を見せていなかった。
「コレデオマエノクリアウィングサエモ雑魚ト転ズル!『アプセット・リバース』!!」
「今だっ、この時を待ってたぜ!!
クリアウィングを対象にカウンター罠発動『ダイクロイックミラー』!」
「ナッ…!?ダガ、対象ヲ取ル効果ナラカルマールノモウ一ツノ効果デ…発動デキナイダト!?」
ユーゴはここぞとばかりにカウンター罠を発動させてきたようだ。
エスプリはそれに対し、慌ててカルマールの何らかの効果を使おうとしたが…使えずに困惑しているようだ。
当たり前だけど、カウンター罠には原則としてカウンター罠でしかチェーンはできない。
「このカードはレベル5以上のモンスター効果が発動した時、ドラゴン族で風属性のシンクロモンスター1体を対象として発動できるカウンター罠だ。
そのレベル5以上のモンスター…レベル9のカルマールの効果の発動を無効にし、破壊!」
――ギラァァァァァァァン!!バシュゥゥゥゥゥゥゥゥン!!
偏光龍 クリアウィング:ATK3900→3400
「馬鹿ナ、カルマールガイキナリヤラレタダト!?
ソウカ、正シイ対象ガソイツシカイナイカラ使エナカッタノカ!」
違う、そうじゃない。
色々と突っ込みたいことは多いけど、まずはカルマールを撃破できた!
「色々混乱しているようだが…もうすぐ目を覚まさせてやるから待っていろ、リン!
この効果で破壊したモンスターの元々の攻撃力分だけ、対象のクリアウィングの攻撃力をこのターンのみアップする!」
偏光龍 クリアウィング:ATK3400→6400
そして、もう1つの効果でクリアウィングの攻撃力が一気に上がった…!
これの持続はターン終了時まで…どうする気だ?
「ダガ、ソノ高イ攻撃力モコノターンマデ…!」
「確かにそうだ…だから、このターンで決めてやる!
このタイミングでクリアウィングを対象に罠発動『アトラクター・トルネード』!!」
「ナッ、ソノ罠ハ…!」
その罠は…確か妙に限定的な効果だったような。
「このターン、お前の攻撃可能なモンスターはクリアウィングに攻撃しなければならない!」
「ソウカ、今ハバトルフェイズ中…!!」
「そうだ!これでエスプリ・ストライカーを引き寄せろ、クリアウィング!!」
そう、ドラゴン族・風属性のシンクロモンスターのみ対象としてそれに攻撃を強制するという効果の罠だ。
ダイクロイックミラーで攻撃力を大幅に上げ、バトル中なのを利用して攻撃強要…魅せてくれるじゃないか。
――ビュゥゥゥゥゥゥン!!
そして、クリアウィングが起こす吸引の突風でエスプリ。ストライカーが引き寄せられる。
後はこの一撃でリンの目を覚ませられるかだ…!
「アア…行クナ!?ストライカー!!」
「これが俺の全力の一撃だ!これで悪い夢から覚まさせてやる、リン!!」
「いっけぇぇぇぇぇぇ、ユーゴ!リンとの絆を取り戻せ!!」
これで目を覚まさせるんだ!必ず!!
「これが俺の全力全開!喰らえ『旋風のダイビング・スラッシャー』!!」
――ズバッシャァァァァァァ!!
「グワァァァァァァァァーッ!!」
エスプリ:LP2000→0
相手ターンでの強烈なカウンターが炸裂!
この一撃でエスプリのライフが0になった。
果たして、リンに届いたか…?
「グワワッ…グワァァァァァァァァァァァァァーッ!!!」
「もう限界だ、戦いをやめろ!リン!」
「これ以上は冗談抜きで死んでしまうぞ!」
「……」
だが、聞こえてくるのは叫び声。
ヘルメットの文字が点滅を繰り返しながら、彼女が頭を抱え苦しんでいる。
しかし…俺には見守る事しかできない。
一方、彼女を操っているはずのクセロシキが何やら悲しげな表情をしているのが気になる。
いや、こいつはマッドサイエンティスト…!
「グアアアッ!!グアァァァァア!!!」
「頼む…気をしっかりしてくれ、リン!!」
「くっ、どうすればいいんだ……!!」
残念ながら、俺達にはもう打つ手がないようだ…!
ちくしょう…悔しいことにこれはクセロシキ次第ってことになる。
「………」
「グワァァァアアアアアアッーーーー!!」
奴が動かない限り、このままエスプリことリンの命が尽きるのを待つしかないのか…!
そう思った時…。
「……リモートコントロール機能、制御モードオールストップ。」
「グワアアッ……」
すると、苦しんでいたはずの彼女がピタリと平静になった。
つまり、これは…!
「リン!大丈夫か、しっかりしてくれ!!」
「……ううっ。」
「「!?」」
この声はエスプリのものじゃなく、リン本来のものなのか…!
ということは!
「リモートコントロール機能をオフにしただけだ…何の問題もないゾ。」
「何っ!?」
「クセロシキ、アンタ…!」
これで操り人形から解放されたという事なのか…?
あまりに苦しむ彼女を見かねて、解放してあげたと…!
ここにきてついに、クセロシキ自身の良心が働いたということになるようだ。
「う〜ん…ふああ……うみゅ……クセロシキおじさん……もう今日のテストはお終い?」
「ああ…オシマイだゾ……ご苦労だった、リン。
これでテストは全てオシマイ…オマエのバイトもオシマイだゾ。」
「そっか、ユーゴを支えるためにもまた新しいお仕事を探さないとね…」
つまり、今までのはあのレポートにあるように本当にただの臨床試験だったというのか…?
兎に角、これでリンが解放されたという事で間違いないようだ。
ユーゴを支えるためにバイトを始めたつもりが、本人の知らぬ間にやばいものに加担させられていたと。
「無事なんだよな、リン!!」
「へ…ユーゴ!?それにハンサムさんも!どうしてここにいるの?
ここでバイトしていること内緒にしていたのに?…って『氷海の白い悪魔』さんも!?」
「その二つ名が悲しいことにまかり通ってるのね…俺の事はブランと呼んでいただければ。
あなたが何も言わずに行方知らずになってたみたいだから、二人と共に血眼になって探してたらここにたどり着いた。」
「うっ…何も言わずに心配かけてごめんなさい。」
まったくだ!
それとあなたに悪気はないのはよくわかるけど、随分と酷い目に遭わされたからなぁ。
ううっ…さっきの一撃による傷が痛む。
「ったく、俺がライセンスを取るためにいなくなってる間から心配させやがって…」
「それで、リン…お前、大丈夫だよな…?」
「え、大丈夫だけど…?わたしはずっと寝てただけだよ。
ここの仕事はこのスーツを来て寝るだけのものだから。」
そのスーツを着たらリモートコントロールされて悪事に加担させられていた…というのは今は黙っておくか。
それを今ここにいるリンの前で話すのは心を曇らせてしまうだろうし。
「そっか…何とかお前なりに俺の助けになろうとしてたんだな。
でも、何かやる前に俺やハンサムさんに言ってくれよな…何ともないみたいだからよかったけど、本当に心配したんだぞ!」
「ライセンス取得に集中してもらいたくて内緒にしてたんだけどね。
ハンサムさんにも言うタイミングを逃しちゃってごめんなさい。」
「でも、なんともないなら本当によかった。」
どうも、後遺症がないようで俺としても本当によかった。
さてと、リンを救い出すという当面の目標はこれで果たせたかな。
と、ここで親父さんが話を切り替える。
「では、みんな…食事の買い出しを頼めないか?
わたしはこれからクセロシキさんとややアダルトな話があるんだ。」
「了解よ。それじゃ、先に帰ってるね!」
「んじゃ、リン…久しぶりに一緒にいくか!ブランはどうする?」
いや…ね?
折角の感動の再会だから、あなたたちは二人きりにさせておきたいし…。
「親父さん、実は俺もここに残りたいけどいいかな?」
「ん、どうしてだい…ブランくん?」
「いや、だってねぇ…折角だしユーゴとリンは二人きりにさせておきたいでしょ?
だからといって、俺もこの体たらくだし…だから、お願い。」
とはいっても無論、建前である。
実際の所、クセロシキにまだ用があるというのが本音だ。
まぁ…この怪我の状態だと支えなしで動くのがキツいのは本当だ。
「む、仕方ないな…では、二人は先に行ってくれ。」
「俺達に気を使ってくれてありがとな、ブラン。」
「いいっていいって。
それじゃ、二人とも楽しんでおいでよ。」
渋々ながらも許可はもらえてホッと一息。
これから先、大事になってくる事だ…この機を逃すわけにはいかない。
「んじゃ、早く行こうぜ…リン!」
「そうだね、ユーゴ!」
そうして、二人はこの部屋を後にした。
ここからは楽しい楽しいクセロシキとのお話となる。
例の炎の女からこいつの処分を頼まれた手前、親父さんに任せきりでのこのこ帰るわけにもいかないし。
「では、少し話しをしましょうか…ドクタークセロシキ。」
「悪いけど、俺も話を聞ける権利はあると思う故…同席させていただこうか。」
「ああ、構わないゾ…ハンサムと呼ばれる男。
そして『氷海の白い悪魔』…ブランシュ・ノーチラス。」
そういうわけで、まずはこの事件の顛末をきっちり話してもらおうかな。
そして、それを踏まえたうえでこれからの事を決めておかないとならないからね。
何より、エスプリを使って奪ったデッキもそれぞれの持ち主に返してくれないとね。
To Be Continued…
登場カード補足
シンクロ・効果モンスター
星4/風属性/機械族/攻1500/守1000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「HSRジャイローグ」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。
このターンこのカードの攻撃力は1500アップし、このカード以外のカード効果を受けない。
(2):S召喚したこのカードが墓地へ送られた場合、除外されているレベル3以下の「スピードロイド」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に加える。
効果モンスター
星1/風属性/機械族/攻 400/守 200
「SRキャッチアーム」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、除外されている自分の「スピードロイド」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
エスプリ・カルマール
シンクロ・効果モンスター
星9/風属性/水族/攻3000/守1600
風属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):1ターンに1度、自分の墓地のモンスター1体を除外して発動できる。
このターン、攻撃力・守備力のアップ・ダウンの効果は逆になる。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(2):1ターンに1度、フィールドのカード1枚を対象とするカードの効果が発動した時に発動できる。
その対象をフィールドの正しい対象となる別のカードに移し替える。
(3):墓地のこのカードを除外し、除外されている自分の墓地のレベル4以下の「エスプリ」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に加える。
エスプリ・サイキッカー
シンクロ・効果モンスター
星6/風属性/サイキック族/攻2200/守1400
風属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
「エスプリ・サイキッカー」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードがS召喚に成功した時、相手フィールドの元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力と、その元々の攻撃力の差分のダメージを相手に与える。
(2):相手フィールドの元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊する。
この効果は相手ターンでも発動できる。
エスプリ・バタフライ
効果モンスター
星6/風属性/昆虫族/攻2000/守1200
(1):このカードがアドバンス召喚に成功した時、相手フィールドの元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを持ち主のデッキに戻し、デッキから「エスプリ」モンスター1体を手札に加える。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、エクストラデッキから特殊召喚されたフィールドのモンスターの攻撃力は200アップする。
エスプリ・バット
チューナー・効果モンスター
星2/風属性/鳥獣族/攻 700/守 900
「エスプリ・バット」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードが手札にある場合、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力を300アップし、このカードを手札から特殊召喚する。
エスプリ・ワーム
チューナー・効果モンスター
星3/風属性/昆虫族/攻 300/守1200
「エスプリ・ワーム」の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力を500アップし、このカードを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。
この効果の発動後、ターン終了時まで自分は風属性モンスターしか特殊召喚できない。
エスプリ・カウンセラー
効果モンスター
星4/風属性/サイキック族/攻1300/守1800
「エスプリ・カウンセラー」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できず、相手ターンでも発動できる。
(1):相手フィールドの元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つ効果モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの効果を無効にし、自分はデッキから1枚ドローする。
(2):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
このターン、そのモンスターの攻撃力を100アップする。
エスプリ・ストライカー
効果モンスター
星4/風属性/戦士族/攻1800/守 300
(1):このカードが召喚に成功した時、相手フィールドの元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つ効果モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを持ち主の手札に戻す。
(2):1ターンに1度、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力を200アップし、このカードのレベルを1つまたは2つ上げる。
精神再生
通常魔法
「精神再生」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分の墓地のレベル4以下の「エスプリ」モンスター1体を対象として発動できる。
(2):墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の「エスプリ」モンスター1体を対象として発動できる。
相手フィールドの全ての表側表示モンスターの攻撃力を300アップし、対象のモンスターを手札に加える。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
精神転移
速攻魔法
「精神転移」は1ターンに1枚しか発動できず、
このカードを発動するターン、自分は「エスプリ」モンスターしか特殊召喚できない。
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターの攻撃力を500アップし、デッキからレベル4以下の「エスプリ」モンスター1体を特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターは、エンドフェイズに破壊される。
アトラクター・トルネード
通常罠
「アトラクター・トルネード」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):相手バトルフェイズに自分フィールドのドラゴン族・風属性Sモンスター1体を対象として発動できる。
このターン、攻撃可能な相手モンスターは対象のモンスターに攻撃しなければならない。
(2):自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、相手フィールドの表側表示の魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
そのカードを持ち主のデッキに戻す。
この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
精神解脱
通常罠
「精神解脱」は1ターンに1枚しか発動できない。
(1):相手フィールドの元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを持ち主の手札に戻し、自分の墓地から「エスプリ」モンスター1体を選んで手札に加える。
ダイクロイックミラー
カウンター罠
(1):レベル5以上のモンスターの効果が発動した時、自分フィールドにドラゴン族・風属性Sモンスター1体を対象に発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
その後、対象のモンスターの攻撃力はターン終了時まで、この効果で破壊したモンスターの元々の攻撃力分アップする。