Side:ジャック
ぐ……此処は一体何処だ?
部屋中にモニターが仕掛けられたオレンジ色の空間……明らかに普通の場所ではないが、俺は何故此処に居るのだ――?
『消え去れ雑魚が!!『アブソリュートクリムゾン・フレア』!!』
!!!!……そうだ、俺は俺の名を騙る偽物に負けたのだったな……よもや、我が魂たるレッド・デーモンの亜種にやられるとは、この上ない屈辱だ!
此の屈辱は、万倍にして返してやらねば気が済まんが……クソ、身体が動かん!!
視界は利くのに、身体が動かんとは――もしや、此れも俺の偽物がやった事だと言うのか?
だとしたら、余計に腹立たしい事この上ない――リベンジの際に返す借りは、万倍では済まんかもしれん……億倍にして返してくれるわ!!
俺の名を騙り、姿を真似て悪行を働いた事を後悔させてくれる!!
異聞・遊戯王5D's Turn95
『暴虐の偽王者と復活の絶対王者』
Side:遊里
クロウ、鬼柳、ジャックは見つかった?
「いや、北西地区には居ねぇ……其れこそ、向こうのレーンを走った形跡すら見つからなかったぜ。」
「南東地区も同様だな……てか、セントラルレーンでのデュエルの末に居なくなったってんなら、他のレーンには居ねぇと思うぜ?」
それは、確かに其の通りなんだけど、そのセントラルのレーンに居ない以上は他のレーンを当たってみるってのが捜査の基本でしょ?其れに、普通に考
えて、行き成り人が消えるなんて言う事は『有り得ない』わ。
勿論『神隠し』の可能性も無きにしも非ずかもしれないけど、其れがデュエル後にタイミングよく発生した可能性は極めて低いわ。アインも何も感じなかったって言うしね。
だから、ジャックはデュエル後に何者かによって、何処かに連れて行かれて幽閉された可能性が高いのよ。。
「成程な……だけど、そうだとして、何だって犯人はジャックの偽物を演じたんだ?」
「多分、そうすればいずれジャック本人が出張ると踏んだんだろうな――まぁ、其れからしたら目論見は成功した訳だが……こんな結末じゃ不満足だ。」
つまりそう言う事だと思うだけどさ。
其れに、ジャックが負けたまま行方不明なんていうのは、鬼柳の言うように不満足極まりないからね……絶対にジャックを見つけ出して、偽物にリベンジ
を決めて貰わないと……どうぞ、鬼柳先生。
「ジャックにキッチリリベンジ決めて貰わないと、大凡満足できねぇぜ。」
「やっぱり、本家で元祖が言うと違うわね。」
「あぁ、バッチリ決め台詞が嵌ってるからな。」
だよね♪
それじゃあ、決め台詞がバッチリ決まった所で、ジャックを探す為にもう一頑張り―――
――キィィィィン
って、此れはDホイールのエンジン音?………このタイミングで、一体誰が?――まさか!!!
「負け犬の捜索ご苦労!!だが、其れも此処まで――コソコソ嗅ぎまわるウジ虫は、俺がこの手で駆逐してくれるわ!!!」
「偽ジャック!!!」
このタイミングで現れるとは……本気で、面倒な時に来てくれるわね、偽物の分際で。
悪いけど、アタシ達は本物のジャックを探すので忙しいのよ――アンタの相手をしてる暇はないわ……出直して来なさい、イカサマデュエリストが!!!
「逃げるか?……其れも良いが、俺のデュエルからは逃げられん!!
だが、其れでも受けぬと言うならば、相応の対応をさせて貰うだけの事………出でよ『ストロング・ウィンド・ドラゴン』!!」
『ガァァァァァァァァァァァ!!』
ストロング・ウィンド・ドラゴン:ATK2400
「雑魚共を蹴散らせ!!オレと戦う意思のないデュエリストなど、存在する価値もないわ!!!」
コイツ……傲慢も其処まで来ると表彰モノだわ!!
自分が唯一絶対だなんて、神にでもなった心算?………此れは、可成りヤバい奴が敵に回ったみたいね……この手の輩は一筋縄ではいかないから。
――ドゴォォォン!!バガァァァァァァァァン!!!
「く………」
「この、こっちにターンを回さないで、行き成り攻撃とは、インチキ行為も大概にしろよこの野郎!!!」
鬼柳:LP4000→1600
クロウ:LP4000→1600
「吠えろ雑魚が!!
貴様等如き虫けらに、ルールを護ってやる必要などない!!……貴様も奴等と共朽ち果てろ、上条遊里!!!!」
『ガギャァァァァァァ!!』
――ドゴォォォォォォォォォォン!!!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
遊里:LP4000→1600
と思ったら、本気でトンでもないわねコイツ?
強制デュエルモードを使っておきながら、私達がモンスターを召喚してないのに攻撃して来るなんて――殆どヤクザのやり口じゃない此れって!!!!
「くはははは!消し飛ぶが良い雑魚共!精々、キングの踏み台となれる事を光栄に思うが良い!!」
この、ジャックの顔でふざけたこと抜かしてんじゃないわよ、此のスットコドッコイが!
「吠えろ吠えろ!!貴様等では俺に勝つ事は出来ん!!
俺のDホイールには、フィールの破壊力を数倍に高め、尚且つ相手からのフィールショックを0にする特殊装置が搭載されているのだからな!!!」
「んだとぉ!?やる事がキタねぇぜ!!」
「と言うか、キングの割には意外とやる事がセコイな。」
ホントにね。
でも、此れは正直言って笑えないわ……要は、こっちの攻撃は効かないのに、アイツは攻撃し放題って事でしょ?流石に、其れは笑えないわよ!!
本物のジャックなら『フィール・パニッシュ』で打ち消せるだろうけど、アタシの見様見真似じゃ多分無理………此れは、予想以上に拙い状況かしらね…
――――――
Side:ジャック
な、何だ此れは!!
モニターには、レーン上で遊里達に防御の限りを尽くしている俺の偽物が!!――ルールすら守らずに、更には自分はフィールの衝撃を受けない装置を
搭載するとは、何処までもふざけた奴だなコイツは!!
『く……!!』
『避けたか……だが、余波であっても貴様を倒すには充分だろう!!』
おのれ……調子に乗りおって!!
遊里を倒すのは、絶対王者たる此の俺だ!!!断じて、貴様如きがイカサマ能力を持ってして戦いを挑んでいい相手ではない!良い筈が…無かろう!
――バキィィィィィィィィィィィ!!!!
ふぅ、ふぅ………なんだ、フィールを全開にすれば吹き飛ばせる程度の強度だったか。
序に、今ので壁も崩れて――うむ、シティの何処かに幽閉されていたようだな?……こんな場所が有ったという事に驚きではあるが。
そうだ、ホイール・オブ・フォーチュンは!?――おのれ、鎖で雁字搦めにされていたか。
だが、この程度ならば………ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ………フン!!!
――メキィィィィィィィィィィィィィ!!!
安物の鎖など、やろうと思えば素手で外せるわ!!
まぁ、此れでDホイールは動かせる訳だから、あの偽物の元に向かわねばな?……奴がいるのは此処から1km先のレーンか、其れほど遠くはないな。
フン、ならば早速リベンジマッチと行くか!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
よし、見つけたぞ!!
「やれ、マルチ・ピース・ゴーレム!!上条遊里を血祭りに上げろ!!!!俺の倍化したフィールで吹き飛ぶが良い!!」
「!!!」
そうはさせん!!フィール・パニッシュ!!!
――バァァァァァァァァァァァァァァン!!
「な……ジャック!!無事だったんだ。」
「あぁ、心配をかけたな遊里……それと、お前達にもな、鬼柳、クロウ。」
「俺達はおまけみたいな扱いだなオイ!?」
「無事だった事は喜ばしいが、此の扱いには微妙に納得できない上に、思いっきり満足できねぇぜ。」
「まぁ、其れはこの際置いといて、無事だったのねジャック!!一体何処にいたのよ!?」
シティの何処かの岩場に造られていた謎の部屋だ。
まぁ、其処は明日にでも案内してやるが………先ずは、俺の名を騙ったそいつにリベンジを果たさねばなるまい?……絶対王者を名乗る者としてはな!
「ジャックならそう言うと思ったわ。
でも、アイツの手札は『最高の手札』が揃うように操作されてる可能性が高い……其れでもやる?」
「愚問だな?……イカサマでも何でも使いたくば使うが良い。
奴のモンスターの特性が分かった今、どんな手を使われようとも、俺は絶対に負けん!!」
「だよね。――なら、このカードを使ってジャック!
貴方が出撃した直後に龍亞が持ってきたカードだから渡す事は出来なかったけど、そのカードはジャックのデッキなら使えるでしょう?」
此れは……確かに、俺のデッキならばこのカードは使えるだろうな。有り難く使わせて貰うぞ!!!
さて、早速だがリベンジマッチと行こうか偽物が!!
「まさか、こうも早く戻ってくるとはな……だが、何度やっても結果は同じだ!!俺はキング、全てのデュエリストの頂点に立つ存在なのだからな!!!」
「ほざけ、貴様は偽りの王者に過ぎん――真なる絶対王者は、此の俺ジャック・アトラス只一人だと言う事を、このデュエルで教えてくれる!!」
覚悟は良いな?
「「デュエル!!」」
ジャック:LP4000 SC0
偽ジャック:LP4000 SC0
「きははは!先に走っていた分だけ、差が有ったようだな?――先攻は貰うぞ!!」
テクニックでは埋められない凄まじいまでの性能差か……良かろう、先攻は譲ってやる。精々、己の全力を出し切るがいい!!!
「俺のターン!!『マッド・デーモン』を攻撃表示で召喚!」
マッド・デーモン:ATK1800
「カードを1枚セットしてターンエンドだ。」
マッド・デーモン、攻撃性能に優れ、攻撃対象になった場合には守備表示になってプレイヤーへのダメージを防ぐ効果を持ったモンスターだな。
俺も使っているから、その詳細は分かるが……初手が其れと伏せカード1枚とは、片腹痛いわ!!俺のターン!!
ジャック:SC0→1
偽ジャック:SC0→1
「俺のフィールド上にモンスターが存在しない時、手札の『輝鱗のエメラルド・ドラゴン』は特殊召喚出来る!!」
輝鱗のエメラルド・ドラゴン:ATK2400
尤も、この方法で特殊召喚したこのカードは、このターン攻撃する事は出来ないが、俺はまだこのターンに通常召喚をしていない!!!
此れが、遊里から渡された新たな力だ!!!見るがいい、チューナーモンスター『シェル・リゾネーター』!!
『ギギギギギギギギ』
シェル・リゾネーター:ATK1000
「此処でチューナーだと?……まさか、貴様!!」
そのまさかだ!!!
ただ一度負けた程度で、俺がしり込みするとでも思ったか?――甘いにも程があるわ!!!
俺の魂は、レッド・デーモンと共に在る――その魂が叫ぶのだ、貴様を撃滅しろとな!!……覚悟は決まっているんだろうな、偽物が!!!
本物の絶対王者のデュエルと言うモノを教えてくれる!!
「俺は、レベル5の輝鱗のエメラルド・ドラゴンにレベル3のシェル・リゾネーターをチューニング!
万物を焼き尽くす孤高の絶対王者よ、天地鳴動の力を揮うが良い!シンクロ召喚!降臨せよ『煌魔龍 レッド・デーモン』!!」
『バオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』
煌魔龍 レッド・デーモン:ATK3000
「来たな、レッド・デーモンよ……!」
ふん、その力を存分に味わうが良い!!
煌魔龍 レッド・デーモンで、マッド・デーモンに攻撃!!!『アブソリュート・ヘル・バーン』!!
「マッド・デーモンは攻撃対象になった場合に守備表示となる!此れで、俺へのダメージは0だ!!」
マッド・デーモン:ATK1800→DEF0
「更にトラップ発動『レベル・フォース』!
俺のフィールド上のモンスターが破壊された時、ライフを1000ポイント払い破壊されたモンスターよりもレベルの1つ高いモンスターを特殊召喚する。
俺がこの効果で呼び出すのは、レベル5の『バイスドラゴン』!!」
バイス・ドラゴン:ATK2000
偽ジャック:LP4000→3000
む……転んでは只では起きぬと言う訳か……良いだろう、カードを1枚セットしてターンエンドだ。
「俺のターン!」
ジャック:SC1→2
偽ジャック:SC1→2
「俺はスピードスペル『Sp-オーバーブースト』を2枚発動し、スピードカウンターを8つ増やす!」
偽ジャック:SC2→10
「そして俺は、チューナーモンスター『ダーク・リゾネーター』を召喚!」
ダーク・リゾネーター:ATK1300
ふ、そう来るか!ならば、来るが良い――貴様の全力を、正面から撃ち砕いてやるわ!!
「やれるモノならば、やってみろ負け犬が!!
俺は、レベル5のバイス・ドラゴンに、レベル3のダーク・リゾネーターをチューニング!!
王者の鼓動、今此処に列を成す!天地鳴動の力を見るが良い!シンクロ召喚、我が魂『レッド・デーモンズ・ドラゴン・ダークソウル』!!」
『バオアァァァァァッァァァァァァッァァァァ!!』
レッド・デーモンズ・ドラゴン・ダークソウル:ATK3000
来たか、我が魂たるレッド・デーモンの亜種が!
尤も其れが出て来なくては興醒めだと言うべきだがな?……俺の偽物を騙る雑魚共が、先刻の屈辱を億倍にして返してくれる!覚悟するが良い!!!
To Be Continued… 
登場カード補足
レベル・フォース
通常罠
自分フィールド上のモンスター1体が相手によって破壊された場合に発動できる。
ライフを1000ポイント払い、破壊されたモンスターよりもレベルの1つ高いモンスターを、デッキから1体選択して特殊召喚する。
|