Side:遊里


Dホイールのエンジンプログラムを盗み出したのは、イェーガーで間違いないんだけど、其れをとっ捕まえるってのは実は結構難義な事なのよ、此れが。
曲がりなりにも治安維持局の副長官だから、外出の際のも常にSPが付いてるし、そもそも得た情報を提示したところでセキュリティは動かないしね?

まぁ、深影さんだったら独自に動いてくれるかもしれないけど、その他のセキュリティじゃ権力に逆らうなんて事はしないでしょうからね……こんな事言う
のもなんだけど、深影さんを治安維持局の長官に据えた上で、体制の大幅な見直しと改変をした方が良いんじゃないの此れ?割とマジで。

てか、絶対のそっちの方がシティの治安は護られると思うわ……あの妖怪ピエロが副長官とか、本気で終わってるからね。


とは言え、相手は治安維持局の副長官故に、そう簡単に手は出せない相手だわ――あくまでも、普通だったらね。

悪いけど、生憎とアタシ達は普通じゃないから、例え相手が治安維持局の副長官様でも、バリバリ手を出させていただくわよ?てか、逃がす心算ないし。

そもそも、アイツの小心者で、バックに誰かいないと何も出来ないヘタレな性格を考えれば、大体の行動は予測できるからね――絶対に逃がさないわ!


『遊里、此方A地点のジャックだが……今し方、イェーガーの姿を目視で確認した。
 奴は、気球を使ってシティの南西方向に向かっていた――恐らく、工場地帯に行くのではないか?』



でもって、シティのあちこちに監視の目を配置したから、逃れる事は絶対に不可能よ!現実に、ジャックが発見してくれたわけだしね。

「了解!直ぐにそっちに向かうわ――ジャックは、引き続き其処を監視してて……あのピエロが何をしでかすか、分かったもんじゃないからさ。」

『任せておけ。
 だが遊里、奴を補足したら、絶対に逃がすなよ?――お前の苦労の結晶を盗み出した下衆に、女帝の裁きを喰らわしてやるが良い!!!』


言われなくても、その心算よジャック。
プログラムを盗み出した事と、何よりもアタシのカップ麺を盗み食いした事に関しては、10000倍にしてその借りを返してやらないとだからね!!!

……覚悟を決めときなさいよ、イェーガーー!











異聞・遊戯王5D's Turn93
『Mission:妖怪ピエロを捕まえろ』










ってな訳でやってきました、シティの工場地帯。
大小様々な工場が軒を連ねるこの場所から、イェーガー一人を探し出すってのは、正に『九牛の一毛』かも知れないけど、ある程度絞る事は出来るわ。

先ず、有人の工場に逃げ込む事は絶対に無いわ。人が居るところに行ったら、善し悪しは別として話題になるから、逃亡する身としては有り難くない。
となれば、必然的に逃げ込む先は無人の工場に限定されるわ。

只プログラムされたままの機械が動く無人工場は、身を隠すには持って来いだし、機械のプログラムを弄れば自分の手駒にする事だって可能だしね。


で、この工場地帯にある無人工場は全部で10個!
その何処にイェーガーが居るのかってのは、流石に分からないけど……此れは地道に探していくしかないのかな――って、ん?


――ヒラリ


アレは、あの特徴的なコートの裾は……間違いないイェーガーだ!!あの工場に、逃げ込んだって言う事か……此れは僥倖だわ!!
待ちなさい、イェーガー!!盗み出したプログラムを、返して貰うわよ!!!


「ゲゲッ!?上条遊里!!……此処は逃げるが勝ちですね。」

「逃がすと思ってんの、この妖怪ピエロが!!!」

「ムキー!!誰が、妖怪ピエロです!!」


アンタだアンタ!他に誰も居ないでしょうに!!
つーか、大人しくお縄になりなさい――そんでもって、大人しくDホイールのエンジンプログラム返した上で自分が何をしてしまったのか、牢獄の奥底で考
え抜いて、そしてやってしまった事を後悔しなさい!


「其れは其れは……ですが、貴女では私を捕まえる事は出来ませんよ?――何故ならば……」


――バガァァァァァァァァァァン!!


ん?此処は……妙にだだっ広い部屋に出て来たけれど――此処は一体、なんの部屋なのかしら……?


「キシシシシ……掛かりましたね、上条遊里。
 此処は無人工場特有のデュエルスペース……主に工場に盗み目的で入り込んだ賊を、デュエルで滅っして捕らえる為の部屋なのです!
 そして、この部屋の番人は、シティのあらゆるデュエリストのデータを有している最強のデュエルロボ!貴女に勝ち目など有りませんよ!!」


『シンニュウシャカクニン、コレヨリキョウセイデュエルニテ、ソノミガラヲカクホシマス。』


デュエルで侵入者を捕らえる為の部屋……其れは結構な事だけど、侵入者がこの部屋に入らなかったら如何するんだろ?其れとも、この部屋に誘導す
る為の何かがあるのかしらね?――まぁ、其れは良いわ。

あの妖怪ピエロ、デュエルロボに足止めさせて逃げる心算でしょうけど、受ける必要のないデュエルを受けてる場合じゃないのよね今は!!


『シンニュウシャ、ニガサナイ。』


――ガキィィィィィン!!



「んな!?足が拘束された!?」

「ヒ~ッヒッヒッヒ!デュエルロボとの強制デュエルから逃げる事は出来ません。このデュエルに勝たない限り、貴女が拘束を逃れる事もまた不可能。
 私は、此のままお暇させて頂きます。キシシシシシ、其れではごきげんよう!!」


――ガチャ……


「ん?」


――ガチャ……ガチャガチャ!!


ん?お~い、如何した妖怪ピエロ?逃げるんじゃなかったの?


「ば、馬鹿な!ドアがロックされている!?此れでは逃げる事が出来ないではありませんか!!」

「ドアロック?……あ、考えてみれば当然か。
 侵入者が単独犯とは限らないし、デュエルロボで相手が出来るのは1人な訳だから、他の仲間を逃がさない様に部屋全体がロックされるのは当然ね。
 つーか、アンタは其処まで調べないで、アタシをこの部屋に誘導したんかい!!こう言っちゃなんだけど、自分まで閉じこめられてたら世話無いわ!」

アホか本気で!……まぁ、そのおかげで、デュエル中にアイツに逃げられる事だけは無くなったんだけど――


――警告、警告。当施設は、強制デュエル開始より10分後に爆破されます。当施設は、強制デュエル開始より10分後に爆破されます。


なんか危険極まりない放送が流れてるんだけど、此れもアンタの仕業か妖怪ピエロ!!


「そんな訳ないでしょう!知りませんよこんな事!そもそも、この工場に自爆装置などなかった筈!
 ……ま、まさか!!エンジンプログラムは、既に転送済み故に、私はもう用済みになったとでも言うのですか!?そ、其れは余りにも酷すぎます!!」


うわ~~~……トカゲの尻尾切とか、悲惨だわねアイツも。てか、エンジンプログラムはアイツ以外の誰かが欲しがっていたって事か……許すまじ!!
けど今は、此れから始まるデュエルに10分以内で勝利しないとだわ――そうじゃなかったら、工場吹っ飛んでお陀仏な訳だしね。


『シンニュウシャショウゴウカンリョウ。カミジョウユウリヨウノデッキヲスタンバイ。』

「アタシ用のデッキを用意してくれるとは光栄じゃない?……でも、そんな事で勝てるとは思わない方が良いわよ?」

デッキ相性だけじゃ、デュエルは決まらないからね!!それ以前に、デュエリストの魂のないロボットがアタシに勝てると思ってる?身の程を知りなさい!


「「デュエル!!」」


遊里:LP4000
デュエルロボ:LP4000


『センコウハワタシカラ。ドロー。『孤高の守り人』ヲシュビヒョウジデショウカン。』
孤高の守り人:DEF2500


『カードヲ2マイセットシテ、ターンエンド。』



孤高の守り人……自分のフィールド上に他のモンスターが存在しない場合に破壊されない、レベル4では破格の守備力を持つモンスターね?
自分フィールド上に他のモンスターが居ると、守備力は0になるけど序盤の壁役としては申し分ないわ――けど、アタシは其れを超える!

「アタシのターン!!」

「勝って下さい、上条遊里!私はまだ死にたくありません!!!!」


元はと言えば、全部アンタのせいでしょうが!!!!まぁ、負ける気はないけどね。


『スタンバイフェイズニトラップハツドウ。エイゾクトラップ『不協和音』
 コノカードノコウカニヨリ、タガイニモンスターヲシンクロショウカンスルコトハデキナイ。』


と思った矢先に、シンクロ封じと来たか……まぁ、アタシのデッキはシンクロを封じられると少々キツメだからね。
でも、シンクロを封じられたくらいで何も出来なくなるほど、アタシのデッキは柔じゃないわ!アタシは『磁石の戦士β+』を攻撃表示で召喚!!


磁石の戦士β+:ATK1700


そして、磁石の戦士β+の効果で、デッキから『磁石の戦士α-』を特殊召喚するわ!


磁石の戦士α-:DEF1700


更に、アタシのフィールド上に磁石の戦士β+と磁石の戦士α-が存在する時、手札の『磁石の戦士γ+』を特殊召喚出来る!


磁石の戦士γ+:ATK1500


「アタシは、この3体の磁石の戦士をゲームから除外!
 超電磁の時空より、今此処に最強の磁力戦士が降臨する!!特殊融合!出でよ『磁石の戦士-マグネット・バルキリオン±』!」

『ムオォォォォォォォォォ!』
磁石の戦士-マグネット・バルキリオン±:ATK3500



此れだけじゃないわ!装備魔法『ストライク・バースト』
装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップし、貫通効果を得る!このカードを、マグネット・バルキリオン±に装備!!


磁石の戦士-マグネット・バルキリオン±:ATK3500→4300(ストライク・バースト装備)


貫通能力が有れば、相手が守備表示でも関係ないわ!
バトル!マグネット・バルキリオン±で、孤高の守り人を攻撃!『マグネット・エクスカリバー』!!


『トラップハツドウ。エイゾクトラップ『呪恨の呪印』
 アイテモンスター1タイヲセンタクシ、センタクシタモンスターノコウゲキヲフウジ、タガイノスタンバイフェイズゴトニアイテニ500ポイントノダメージヲ、アイ
 テノライフポイントニアタエル。』



コイツ……此れを読んでいたって言うの!?……此れは面倒な事この上ないかもね。
だけどまぁ、この程度のメタなら如何とでも出来るわ――所詮はプログラムされただけのロボットじゃ、アタシの相手じゃないってね。

アタシはカードを2枚セットしてターンエンド。


『ワタシノターン。』


遊里:LP4000→3500


『テフダカラマホウカード『抹殺命令』ヲハツドウ。
 フィールドジョウノスベテノモンスターヲハカイシ、アイテニハカイシタモンスターノコウゲキリョクノゴウケイチブンノダメージヲアタエル…コレデオワリダ。』


「そうは問屋が卸さないわ!リバースカードオープン!トラップカード『ウィンド・ライト・ロード』
 フィールド上のカードを2枚以上破壊する効果が発動した時に発動!その効果を無効にし、エクストラデッキから『輝天龍 シルバー・ウィンド』を特殊召
 喚する!そしてこの効果での特殊召喚はシンクロ召喚じゃないから、不協和音の制限も受けないわ!」

飛翔せよ、『輝天龍 シルバー・ウィンド』!!

では、やるとするか。
輝天龍 シルバー・ウィンド:DEF2000


『……ターンエンド。』


「アタシのターン!!」


遊里:LP3500→3000


リバースカードオープン!トラップカード『重力解除』
このカードの効果で、フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターの表示形式を入れ替える!よって守備は攻撃に、攻撃は守備となるわ!!


輝天龍 シルバー・ウィンド:DEF2000→ATK2500
磁石の戦士-マグネット・バルキリオン±:ATK4300→DEF3850

孤高の守り人:DEF2500→ATK0


そして、此れがアタシの切り札!魔法カード『シンクロユニオンアタック』!!
自分フィールド上のシンクロモンスター1体を選択して発動!
このターンは選択したモンスターしか攻撃できないけど、選択したモンスターの攻撃力は、アタシのフィールド上に表側表示で存在するモンスターの攻撃
力の合計値分アップする!選択したモンスターは、その範囲外だけどね。

でも、この効果で、シルバー・ウィンドには、マグネット・バルキリオン±の攻撃力4300ポイントが上乗せされるわ!!


輝天龍 シルバー・ウィンド:ATK2500→6800


『コウゲキリョク6800!!』


「アタシに対してメタ張ったみたいだけど、対して効果は無かったみたいね?
 幾らシティのデュエリストのデータを得ているとは言え、デュエルはデータだけじゃ計り知れない物があるんだから――ロボットじゃ理解出来ないけど。」

何れにしても、此れで終わりよ!!
輝天龍 シルバー・ウィンドで、孤高の守り人に攻撃!!『シューティング・ストリーム』!!!


消え去れ!


――バガァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!


『デ……デュエルハイボク。』
デュエルロボ:LP4000→0



アタシの……勝ちだ!!
爆破時限までは、まだまだ余裕だし、此のまま脱出して、脱出した先で妖怪ピエロを確保すれば問題は無いわね。


――デュエルロボの敗北を確認……此れより、強制排除を開始、施設を爆破解体します。


って、ちょっと待てコラーーー!!
デュエルロボが負けた瞬間に爆破解体強行って如何言う事よ!?……確実に、アタシ等に『死ね』って言ってるよね?冗談じゃないわ!!

こんな所で死んで堪るもんですか……全力で離脱するわ!!!



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で、何とか離脱――離脱した直後に、工場が爆散したから、あと30秒遅かったらあの爆発に巻き込まれてお陀仏だったわね……間に合って良かった。
って言うか、離脱できたのは良いとして、何処に行った妖怪ピエロ!!


「キシシシシシシ!今回は助けられましたね上条遊里――ですが、これ以上は深入りしない事です。深入りすれば、碌な事にはなりませんからね。
 私も、暫し身を隠す事にしましょう――トカゲの尻尾切をされた以上、私もまた彼等にとっては邪魔な存在でしょうからね。」

「気球……待ちなさいイェーガー!!」

「と言われて待つバカは居ないでしょう?――さらばです、上条遊里!!」


空を飛ぶ術がない以上、此処は見逃すしかない訳か……だけど、アンタには何れつけを払って貰うからねイェーガー!!!

そして、イェーガーに盗みを教唆した奴等も覚悟しときなさいよ?――正体が判明し次第、一切の手加減を抜きにしてデュエルで制裁してやるからね…!








――――――








Side:プラシド


アレから生き延びるとは、呆れたしぶとさだなどんぐりピエロ――マッタク持って、生きぎたない感じだが、そのお陰で最高のプログラムを手に出来た。

喜べゴースト共、貴様等に最高のプログラムをくれてやる。


ククク……コイツは、実に面白い事になりそうだ――或はコイツ等を利用すればサーキットの完成も難しくないかもしれないからな。

精々貴様等には、手駒となって貰おう……其れが貴様等の本来の役目なのだからな――













 To Be Continued… 






登場カード補足




孤高の守り人
レベル4   地属性
戦士族・効果
自分フィールド上に存在するモンスターが、このカード1枚の場合、このカードは破壊されない。
自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在する場合、このカードの守備力は0になる。
ATK0    DEF2500



シンクロユニオンアタック
通常魔法
自分フィールド上のシンクロモンスター1体を選択して発動する。
このターンは選択したモンスターのみ攻撃出来る。選択したモンスターの攻撃力は自分フィールド上に表側表示で存在する他のモンスターの攻撃力の合
計値分アップする。



抹殺命令
通常魔法
フィールド上のモンスターを全て破壊し、相手に破壊したモンスターの攻撃力の合計値分のダメージを与える。



ストライク・バースト
装備魔法
装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップする。
また装備モンスターが相手の守備表示モンスターを攻撃した場合、攻撃力が守備力を超えて居れば、その数値分の戦闘ダメージを相手に与える。



ウィンド・ライト・ロード
通常罠
フィールド上のカードを2枚以上破壊する効果が発動した時に発動できる。
その効果の発動と効果を無効にし、エクストラデッキから「輝天龍 シルバー・ウィンド」1体を、召喚条件を無視して特殊召喚する。



呪恨の呪印
永続罠
相手モンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターは攻撃できず、このカードが存在する限り互いのスタンバイフェイズ毎に、相手に500ポイントのダメージを与える。