Side:遊里


ん~~~……やっぱり徹夜明けはブラックコーヒーが効くわね~~。


――ガバッ!ガバッ!!ガバァア!!


「今のでちょうど10杯目……身体壊すぞ?」

「大丈夫、ブラックコーヒー10杯程度で壊れるような柔な身体はしてないから。
 其れに、おかげさまでバッチリ目が覚めたしね!まぁ、Dボードの試作機が完成した時点で目は覚めてたんだけど、眠気は如何にも出来なかったの。」

「其れでブラックコーヒー10杯か?……幾ら何でも極端すぎるぞ。
 確かにコーヒーの芳醇な香りと、ほのかな甘み、そして特徴的な苦みは脳を覚醒させるには充分かも知れないが、過ぎたるは何とやらだからな。」


その辺は分かってるから大丈夫よ。
其れにしても、今頃は龍亞と龍可も風を切って、レーンをDボードで疾走してるんでしょうね~~……ライディングデュエルの気分を味わいながらね。

ライディングデュエルは、最高に楽しいから、Dボードを量産すれば、ライセンスの取れない年齢の子もライディングデュエルを楽しめるように成る訳だし。
なら、此処は稼動データを元にして、量産体制を整えないとね!!


――ヒイィィィィィィィン!!!


と思ってた矢先に、痣が反応してる!?しかもこの強い反応は、シグナーに何らかの危機が迫っている証だわ!
ジャックとアタシは此処にいるし、鬼柳とクロウだって仕事中だから、痣が超反応するだけの事に巻き込まれた可能性は低いわよね?

――となると、若しかして龍可!?

冗談じゃないわ……何だって、よりによって龍可に……!!こうなったら仕方ないわ――ジャック!!


「みなまで言うな、俺達もレーンに乗り込むのだろう?
 赤き竜の痣が暴れるほどの力を持ったモンスターを、この目で拝んでくれる……何れ俺が倒す敵の姿と言う物をな!!」


意外とノリノリねジャック。
それじゃあ、速攻で行きましょ!!龍亞と龍可に迫る魔の手を、なんとか吹き飛ばさないと、トンでもない事に成る気がするからね。


因みに、後で知った事なんだけど、この時クロウと鬼柳は、ちょっと荒事の真っ最中だったせいで痣の疼きに気が付かなかったらしいわ。
……鬼柳は兎も角、個人の宅配業務のクロウが荒事に巻き込まれるとか、一体クロウは何をしてたのかしらね……?












異聞・遊戯王5D's Turn90
『蘇る悪夢――機皇帝スキエル』











龍可:LP4000   SC2
精霊龍 エンシャント・フェアリー:ATK2100


龍亞:LP4000   SC2
D・スマホンATK1500


ルチアーノ:LP4000   SC2
機皇帝スキエル:ATK2200




Side:龍亞


激流葬は、龍可のおかげで何とか躱せたけど、まさか自分のモンスターが破壊された瞬間に5体のモンスターを呼び出して来るなんて思わなかった。
しかも、其の5体が合体してまるで1体の巨大ロボットみたいだ――一体何者なんだコイツは?


「ひゃはっは!!此れで僕のエースが召喚出来た!!
 スキエルが現れた以上、もう君達には1%の勝利も有り得ない……精々、足掻くと良いさ。」


馬鹿にするなよルチアーノ?
確かに何か凄そうなモンスターが出て来たけど、まだこのターンは俺のターンだ!!俺は『D・スマホン』の効果を発動!

1ターンに1度、デッキからカード1枚をドローし、其れがレベル4以下の『D』なら特殊召喚出来る!

俺が引き当てたのは――チューナーモンスター『D・シザースン』!!
シザースンはレベル4以下のチューナーモンスターだ……よって、シザースンは俺のフィールド上に呼び出されるぜ!来い、『D・シザースン』!!


D・シザースン:ATK1000


行くぜ!俺は、レベル4のスマホンに、レベル3のシザースンをチューニング!!

「希望の未来を掴みとる為、希望を闘志にトランスフォーム!シンクロ召喚!今こそ起動せよ『鉄鋼龍 パワー・ツール』!!」

『グオォォォォォン!!』
鉄鋼龍 パワー・ツール:ATK2300



パワー・ツールの効果発動!このカードのシンクロ召喚に成功した時、デッキから装備魔法1枚を手札に加える!
ライディングデュエルには装備魔法は存在しないけど、装備魔法となるスピードスペルは存在してる……そのスピードスペルを手札に加えるぜ!!


「な、そんなのアリかよ!!」

「ジャックに聞いたらありみたいだぜ?って事で俺がデッキから手札に加えるのは『Sp-ネオンレーザーブラスター』!
 そして、スピードスペル『Sp-オーバーブースト』を発動!!
 エンドフェイズに俺のスピードカウンターを1にする代わりに、このターン俺のスピードカウンターを4つ増やすぜ!」
龍亞:SC2→6


んでもって、スピードスペル『Sp-ネオンレーザーブラスター』を発動!
このカードは自分のスピードカウンターが4つ以上ある時に発動可能で、発動後は装備カードとなって、フィールド上のモンスターに装備される。
でもって、装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップして、貫通能力を得る!俺は、このカードを、パワーツールに装備!!
更にパワー・ツールは、自身に装備されてる装備カード1枚につき、攻撃力が500ポイントアップする!!

『ゴォォォォォォォォォン!!』
鉄鋼龍 パワー・ツール:ATK2300→2800(Sp-ネオンレーザーブラスター装備)→3300(パワー・ツール効果)



此れだけじゃないぜ!更にスピードスペル『Sp-アーマーブレード』を発動!
俺のスピードカウンターが6個以上ある時に発動可能で、発動後は装備カードとなり、フィールド上のモンスターに装備される!
そして、装備モンスターの攻撃力と守備力は500ポイントアップする!此れを、龍可の『エンシェント・フェアリー』に装備するぜ!!


その力、有り難く受け取りますよ龍亞。
精霊龍 エンシェント・フェアリー:ATK2100→2600【DEF3000→3500】(Sp-アーマーブレード装備)


「攻撃力2600……スキエルを上回った?
 守備力の方が高いエンシェント・フェアリーを、敢えて攻撃表示で出したのは、まさかこの展開を最初から読んでたって言うのか!?」

「私と龍亞は数えきれないくらいデュエルしてるし、アカデミアでもタッグデュエルの授業では一緒に組む事が多いから、此れ位は普通に出来るわ。
 其れに、龍亞のデッキはパワー・ツールの効果を最大限に生かす為に、装備カードが多めに入ってるから、初手に1枚くる確率は高いしね。」


そう言う事だぜルチアーノ!
その巨大ロボットがどんな効果を持ってるかは知らないけど、今のパワー・ツールの敵じゃない!行くぜ、バトルだ!!

鉄鋼龍 パワー・ツールで、機皇帝スキエルに攻撃!『デモリション・ブラスター』!!


「くそぉぉぉぉぉぉぉぉ!!






 な~~~~んてな!スキエルGの効果発動!1ターンに1度、相手モンスターの攻撃を無効に出来る!此れでお前の攻撃は無効だぜ!!」


うわ、メッチャムカつくコイツ。マジでムカつく。その薄ら笑いの顔を殴りたい。割と本気で。
でも暴力は良くないから、デュエルでブッ飛ばしてやる!!

俺はバトルフェイズを終了してカードを2枚セット。んで、スピードスペル『Sp-天よりの宝札』
俺のスピードカウンターが6個以上ある時、全てのプレイヤーは手札が6枚に成るようにカードをドローする!此れで、手札の補充も出来たぜ。

俺は此れでターンエンド!


龍亞:SC6→1


「僕のターン!!」


龍可:SC2→3
龍亞:SC1→2
ルチアーノ:SC2→3



俺と龍可の最強モンスターが強化された状態で存在してるこの布陣は、そう簡単には突破されないぜ!
自慢じゃないけど、初等部でのタッグデュエルの授業で、この布陣が破られた事は今までに一度もないからな!!このまま一気に押し切ってやる!!


――キィィィィィン……


って、ん?隣のレーンから音が……アレは、遊里とジャック!!


「龍可、龍亞、2人とも無事か!?」

「え?うん、大丈夫だけど……2人とも如何したの?」

「竜の痣が疼いたのよ……『幼きシグナーに危機が迫ってるって』ってね。
 其れで来たんだけど………まさか、こんな奴を相手にしてるとは思わなかったわ……!」


え?遊里、このロボットの事知ってるの!?


「ボディの∞マーク……コイツは『機皇帝』、一時期シティを騒がしてた『ゴースト』の使う、最悪のシンクロ、エクシーズキラーだわ!!」


ゴーストって……牛尾のおっちゃんに大怪我させた奴だよね!?
って事は、ルチアーノはゴーストの一員て事!?……コイツ、何食わぬ顔で現れて、思った通りの危険人物じゃん!

其れにシンクロ、エクシーズキラーの機皇帝って……いや、弱気になるな俺!誰が相手だって、俺は全力でデュエルして、そんでもって勝つ!!
ましてや、コイツは龍可に手を出そうとしたんだ、絶対に負けられるか!!








――――――








Side:遊里


まさか、龍亞達が機皇帝を相手にしてるなんて予想外よ。しかも、エンシェント・フェアリーとパワー・ツールが召喚されちゃってるのは、拙いわね?
ライディングデュエルなら、エンシェント・フェアリーはある種無敵モンスターとなるけど、機皇帝の効果が其れを上回る可能性は否定できないからね…


「きしししし……態々コイツ等がやられるところを見に来たのか?物好きなもんだぜ。
 けど、隣のレーンじゃ手出しできないだろ?何も出来ない無力さを感じながら、コイツ等の散り行くさまを拝むと良いぜ!ヒャ~ッハッハッハ!!」


「……ジャック、あの礼儀知らずのお子様に『物理的に』礼儀を叩き込んでも良いかしら?」

「気持ちは分かるがダメだ。危険運転防止法違反と、児童虐待の罪に問われてしまうからな。」


其れじゃあしょうがないか。
だけど、果たして貴方の思うように行くかしらね少年?――龍亞と龍可は強いわよ?


「思った以上にライディングデュエルに慣れてるみたいだけど、それじゃあ僕には勝てないぜ!!
 さぁ、デュエルの続きだ!僕はスキエルTをリリースして『スキエルT4』を、スキエルAをリリースして『スキエルA4』を特殊召喚する!!」
スキエルT4:1000
スキエルA4:1300
機皇帝スキエル:ATK2200→2900



此処でパーツの換装……攻撃力は、パワー・ツールの方が上だけど、問題は機皇帝の効果。パワー・ツールを吸収されたら拙いわ。


「スキエルT4の効果発動!1ターンに1度、フィールド上のモンスター1体を破壊出来る。
 この効果で、エンシェント・フェアリーを破壊するぜ!!」

「其れは無駄だわ!フィールド魔法が存在する限り、エンシェント・フェアリーは、1ターンに1度だけ相手のカード効果を受けない!!」


ん?どうして、エンシェント・フェアリーを破壊しようとしたのかしら?
パワー・ツールを狙えば、パワー・ツール自身の効果による弱体化も狙えたって言うのに……まさか、狙いはエンシェント・フェアリー!?


「其れは知ってるぜ?だけど、このターン、エンシェント・フェアリーはもうその効果を使えないよな?――其れが僕の狙いさ!!
 機皇帝スキエルの効果発動!1ターンに1度、相手フィールド上のシンクロモンスターかエクシーズモンスター1体を選択して吸収する!
 この効果で、エンシェント・フェアリーは貰って行くぜ!!」


やっぱりそうか!!……龍可のフィールドには伏せカードもないし、此のままじゃ……


「そうは行くかよ!!トラップ発動『鉄壁』!そして『イクイップチェンジ』!!
 鉄壁の効果で、機皇帝の効果対象をパワー・ツールに移し替え、イクイップチェンジでパワー・ツールが装備してたネオンレーザーブラスターを、龍可の
 エンシェント・フェアリーに装備させる!!エンシェント・フェアリーは奪わせないぜ!!!!」

「お前……雑魚のクセに生意気な!!」
機皇帝スキエル:ATK2900→5200(鉄鋼龍 パワー・ツール装備)

精霊龍 エンシェント・フェアリー:ATK2600→3100(Sp-ネオンレーザーブラスター装備)



巧い!エンシェント・フェアリーを機皇帝の効果から護っただけじゃなく、更に強化までするとはね。
だけど、その代償として龍亞のフィールドはがら空き……攻撃力5200になった機皇帝の攻撃を喰らったら、一撃で終わっちゃうわ!!


「ムカつくなぁ……お前等纏めてぶっ殺してやる!!僕は手札からスピードスペル『Sp-オーバーチューン』を発動!
 僕のスピードカウンターが4つ以上ある時に発動!エンドフェイズまで、僕のフィールド上の機械族モンスターの攻撃力は600ポイントアップする!」
機皇帝スキエル∞:ATK0→600
スキエルT4:ATK1000→1600
スキエルA4:ATK1300→1900
スキエルG:ATK200→800
スキエルC:ATK400→1000


「そして、機皇帝スキエルの攻撃力は、各パーツの攻撃力の合計値となる!よって攻撃力は、8200!!」
機皇帝スキエル:5200→8200


んな、攻撃力8200ですって!?


「更に、スキエルA4の効果で、機皇帝スキエルはバトルフェイズ中に2回攻撃が出来る!!
 この攻撃で全てを消し去ってやるぜ!!機皇帝スキエルで、精霊龍 エンシェント・フェアリーに攻撃!!『スカイ・グラスパー』!!」


このバトルが成立したら、龍可と龍亞は!!



――ゴォォォォォォォォォォォ!!


え?


『コォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』
???:ATK???


此れは、白銀の龍が機皇帝の前に立ち塞がった!?……此の龍は一体……


「な……何だとぉ!?なんで、如何して、お前がこの世界に居るんだ『スターダスト』!!
 まさかアイツが、『    』が、僕達と同様に時を超えてこの世界に来たって言うのかよ……何処までも、僕達の邪魔をする心算かぁぁぁ!!!
 邪魔なんだよお前!!機皇帝スキエル、スターダストを吹き飛ばせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


――ドォォォォォン!!


『クオォォォォォォォォォォォォ!!』


――シュオォォォォォォォォォォォォォォォォ!!……ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォン!!


く……龍と機皇帝の一撃が交錯して大爆発ってドンだけよ!?
って、龍亞と龍可は無事なの!?パワー・ツールは!?


「び、吃驚したぁ!!」

「ルチアーノ君は……居ない?って言う事は、このデュエルはノーコンテスト?」


良かった、無事だったのね。まぁ、デュエル相手が居なくなった以上は、このデュエルはノーコンテストとするしかないんじゃないかしら?
其れよりも龍亞、パワー・ツールのカードは?


「えっと……大丈夫、ちゃんとある。
 ルチアーノの狙いはエンシェント・フェアリーっぽかったから、パワー・ツールは要らなかったのかも知れないけどさ。」


目的は如何あれ、貴方のエースモンスターが無事なら其れに越した事は無いわ。



其れにしても、あの白銀の龍は一体何者?其れ以前に、誰が召喚してデュエルに介入して来たのかしら?
スターダストって呼ばれたあの龍からは、アタシのシルバー・ウィンドや、ジャックのレッド・デーモンに匹敵する力を感じたって言うのは相当な事よね。

機皇帝に、謎の龍『スターダスト』……如何にも、面倒事が迷い込んできた感じはバリバリだわ。……刺激のない日々は、其れは其れで退屈だけどね。



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そして翌日、龍亞と龍可の案内で、昨日のデュエル相手である『ルチアーノ』の家に来たんだけど……此れって、誰が如何見ても更地よね?


「そんな……確かにここに有ったんだ、物凄く豪華な邸宅が!!居たんだよ、ルチアーノは!!」

「だけど、アカデミアの誰もルチアーノ君の事を覚えてないの『そんな奴居たか?』て感じで。
 でも、昨日のデュエルは嘘でも幻でもない!ルチアーノ君は確かに存在してて、私達とデュエルをしたんだよ、遊里!!」


うん、龍亞も龍可も嘘を吐くような子じゃないって言うのは分かってるから、アタシは2人の言う事を信じるよ。昨日のデュエルの事も覚えてるしね。
でも、アカデミアで覚えてるのが龍亞と龍可だけって言うのは、流石に異常だわ……其れこそ、深層心理での記憶改変が行われてないと有り得ない!


其れとも或は、歴史を改変しない限りは無理よ。
だけど、裏を返すなら、ゴーストの一味は其れに匹敵する力を有してる可能性があるって事よね?……如何にも、面倒事には事欠かないみたいだわ。





――或は、此れもまたシグナーの宿命なのかもしれないわね…














 To Be Continued… 






登場カード補足




Sp-ネオンレーザーブラスター
スピードスペル
自分のスピードカウンターが4個以上ある場合に発動できる。
発動後、このカードは装備カードとなり、フィールド上の機械族モンスターに装備される。
装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップし、守備表示モンスターを攻撃した場合、攻撃力が守備力を超えて居れば、その数値分の戦闘ダメージを
相手のライフポイントに与える。このカードはルール上「装備魔法カード」としても扱う。



Sp-アーマーブレード
スピードスペル
自分のスピードカウンターが6個以上ある時に発動できる
発動後、このカードは装備カードとなり、フィールド上のモンスターに装備される。
装備モンスターの攻撃力と守備力は500ポイントアップする。このカードはルール上「装備魔法カード」としても扱う。



Sp-オーバーチューン
スピードスペル
自分のスピードカウンターが4個以上ある場合に発動できる。
エンドフェイズまで、自分フィールド上に表側表示で存在する機械族モンスターの攻撃力は600ポイントアップする。



鉄壁
通常罠
フィールドのモンスター1体を対象とするモンスターの効果が発動した時に発動できる。
その対象を自分・相手フィールドの正しい対象となる表側表示のモンスター1体に移し替える。



イクイップチェンジ
通常罠
フィールド上に表側表示で存在する装備カード1枚を選択して発動する。
選択したカードを、装備条件を無視して、フィールド上に表側表示で存在する他のモンスターに装備する。