Side:???


な~~んか、僕達の計画って少しばかり停滞状態じゃない?
プラシドが遊里にやられてからは、目立った活動も出来てないし、此のままだと僕達の目的って完遂できないんじゃないの?其れで良いのかよ、ホセ?


「機を見て、機を待ち、気を持って戦うと言うのが、戦いの原則だ……急いては事を仕損じるぞルチアーノ。
 其れに、そろそろ新たなカードが現れる筈だ……」


新たなカードって……其れで現状を如何にか出来るのかは疑問だね。
まぁ、其れが僕のカードだったってんなら、やりたいように暴れさせて貰うけどさ。


「来た。」

「へ?」


――シュイィィィン……!!


何かが光って…此れはデッキ?って言う事は、此れは若しかしなくても――そうだ、此れは僕のデッキだ!
此れが有れば、僕の目的は果たせるし、引いては僕達の目的を成就する事にもつながる!!


覚悟しておくんだね龍可――君のエンシェント・フェアリーは僕が貰い受けるよ――この『機皇帝スキエル』の力を以ってしてね!!












異聞・遊戯王5D's Turn89
『転校生は天才少年…なのか?』











Side:龍亞


あふ……眠いなぁ……昨日はデッキ調整に時間割きすぎて殆ど眠ってないんだよなぁ……ほんの数枚のカードの入れ替えで悩みに悩んで、気が付い
たら、時計がAM3:30を指してたからなぁ……デッキ調整って、簡単じゃないぜやっぱり。

「ふわぁぁぁあ~~~~~~あ……ごめん龍可、1時間目始まったら起こして。」

「『先生が来たら』じゃないんだ?」


だって眠いんだもん……なんで3徹とかしても、遊里は全然平気なのかを知りたいぜ……或は、俺も大人になったら平気になるのかなぁ……


――ガラガラガラ……


なんて事を考えてる内に先生が来ちゃったか……此れは居眠りは出来そうにないぜ。
けど、其れよりも気になるのは、一緒に入って来た生徒――転校生の類なのかな?……何にしても、如何にも嫌な感じがするんだけど…気のせいか?


「今日は皆に新しいお友達を紹介しま~~~す♪
 さ、自己紹介をしてくれるかしら?」

「勿論!!え~と、このたび此の学園にやって来たルチアーノです。
 途中参加って言う事で、迷惑をかける事があるかも知れないけど、僕は僕で一生懸命頑張るから、仲良くしてくれると嬉しいかな。」


――胡散臭い……あからさまに胡散臭い!!


正直に言って、ルチアーノから感じたのは言い様のない『胡散臭さ』だ。……コイツ、顔は笑ってるけど、全然全く持って、俺達の事を見てないよな?
って言うか、あからさまに龍可に視線を向けてたみたいだし……龍可に手を出す様な奴だったら、速攻で撃滅してやるけど……少し様子見るか。



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んでもって昼休みになったんだけど……


「いぃやっほーーー!!最高だぜ!!」


ルチアーノの奴が、何処から持って来たか知らないけど、スケートボードのアクロバットを披露して、一躍クラスの人気者にのし上がってた!!
其れほど難しいアクロバットじゃないから、練習すれば俺でも出来るだろうけど……事あるごとに、龍可に視線向けんじゃねぇ!気持ち悪いぜ、お前!


「そんな言われ方をすると傷つくなぁ?
 僕はあくまでも、僕のアクロバティックを皆に披露しようとしただけなんだけど……何か君の癇に障ったかな?」

「アクロバットの披露はもっと広い場所でやれよな?――こんな所でやっても、二束三文にしかならないだろ?割と本気な感じで。
 って言うか、お前何が目的だ?龍可に何か用かよ?

「……思ったよりも鋭いんだなお前……。」


遊里と一緒に居ると、観察眼は嫌でも鋭くなるんだよ。
って言うか、遊里の手伝いとかする時は『次にどの工具が必要か』くらいは予測してないとダメだしさ。


「へぇ?ソイツは面白いな?龍可とお近づきになる事が目的だったけど、お兄ちゃんの方も中々面白そうじゃないか。
 ……今日の放課後は暇かお前?龍可もだけど。」

「え?別に用はないけど……何だよ行き成り?」

「僕の家に招待してやるよ、元々龍可の事は誘う心算だったけど、お前も面白そうだから一緒に如何だ?……逃げないよな?

上等だこの野郎……それじゃあ、有り難くお呼ばれしようかなルチアーノ。龍可も良いだろ?」

「え?う、うん……龍亞が良いなら別に良いけど……」


なら決まりだな。何を企んでるかは知らないけど『虎穴に入らんずば虎児を得ず』って言うし、コイツの真意を知る為にも此処は誘いに乗ってやるぜ!
だけど、龍可に何かしようとしたら、その時はコイツをブッ飛ばすけどな――何があったって、龍可の事は俺が護るんだ!!








――――――








Side:龍可


と言う訳で、放課後にルチアーノ君のお家にお邪魔したんだけど……


「ま、ゆっくりしてってよ。」

「「でか!!」」


普通に物凄い豪邸だった!
私と龍亞も、トップスの高級マンションで暮らしてるけど、其れよりもずっと大きくて豪華なお家……こんな所で暮らしてるのルチアーノ君て!?


「ん~~~……僕としてはその辺のアパートでも良いんだけど、両親が見栄っ張りな上に過保護でさ、僕の為だけにこんな豪邸を作っちゃったんだよ。
 しかも、僕専属の執事まで付けてくれちゃったって言うんだからドンだけって話だよね~~?正直言って、あんまり気分が落ち着かないかな。
 ま、誰にも気兼ねなく好きな事が出来るって事に関しては、其れは感謝してるけどね。あ、プラシド、なんか飲み物もってきて。」

「畏まりました、ルチアーノ様。」


で、今の人が専属執事……気のせいかな、蟀谷に青筋が浮かんでたように見えたんだけど……


「アイツ仕事は出来るんだけどプライドが高くて、子供の僕に命令されるのとか嫌みたいなんだよねぇ……そんなんで、よく執事が出来ると思うけどさ。
 まぁ其れは其れとして、龍可も龍亞もデュエルは結構強いんだよな?確かアカデミアの初等部では、龍可が一番で龍亞が二番って聞いたけど?」

「え?うん、まぁ其れなりには……」

「遊里やジャックには全然及ばないけどな。」


なんだろう?龍亞とルチアーノ君が互いに牽制し合ってるように見えるんだけど……此れもまた気のせいかな?


「そりゃ、絶対王者と比べちゃダメだろ?……でもまぁ、ライディングデュエルって言うのは憧れるよな?特に僕達子供はさ?」

「まぁな……今直ぐに出もやりたいけど、其処はライセンス取れるようになるまで我慢だろ?今はシミュレーターとかで満足するしかねぇな。」

「……鬼柳さんの真似?似てないよ龍亞。」

「え?結構イケてると思ったんだけどダメ!?」


うん、全然似てない。って言うか、鬼柳さんが見たら『そんなモノ真似じゃ満足できねぇぜ……』って言っちゃうよ?割と本気でね。

けど、確かにライディングデュエルって憧れるかも知れない。Dホイールに乗ってる時の遊里って凄くカッコいいし。
何よりも、風を切って走りながら行うデュエルって、凄く爽快感がありそうだし。


「ライディングデュエル………あ、そうだ!!」

「え?如何したの龍亞?」

「良い事思いついちゃった~~~~♪
 悪いなルチアーノ、来たばっかりでアレだけど、俺も龍可も此処でお暇させて貰うぜ!すっごく良い事思いついちゃったからさ~~~~♪」


え?ちょ、龍亞!?


「それじゃーな~~~~!」

「うわっ!ちょっと龍亞!!
 あ、ごめんねルチアーノ君!!プラシドさんによろしく伝えといて!!」

「え?え?えぇぇぇぇぇぇぇ!?」


なんだか物凄く驚いてるなぁ……でも、行き成り如何したのよ龍亞?幾ら何でも、少し失礼だと思うよ?


「別に良いって、どうせアイツは俺達を『善意』で呼んだんじゃないんだからさ……龍可だって、其れは気付いてただろ?」

「其れは……確かにそうだけど。」

ルチアーノ君は、何処か獲物を狙う肉食獣の様な目で私の事を見てたからね……龍亞と一緒じゃなかったら、絶対に行かなかったかもしれないわ。



それで、何を思いついたの龍亞?


「俺達みたいな子供でも、ライディングデュエルが出来る方法!遊里に頼めば、多分作ってくれると思うんだ!」


私達でもライディングデュエルを?……一体何を思いついたのかなぁ?








――――――








Side:ルチアーノ


「……成り行きとは言え、見事に逃げられたなルチアーノ?」

「五月蠅いよプラシド。」

なんなんだよ、あの龍亞って奴は?……眠り薬入りのジュース飲ませて、エンシェント・フェアリーを貰う心算で居たのに、行き成り帰りやがって。
大体、アカデミアの初等部で二番とは言っても、アイツ全然強いとは思えない……雑魚の癖に、僕の邪魔をするとは良い度胸じゃないか?

元より、何か気に喰わなかったし、デュエルで叩きのめしてやる――僕の『機皇帝スキエル』で、完膚なきまでにな!!


「……餓鬼の喧嘩だな。」


一々突っ込むなよプラシド!

どうせだから、龍可も龍亞も纏めてやっつけてやる!そうすれば、エンシェント・フェアリーのカードを手に入れる事も出来るしな!!








――――――








Side:龍亞


って言う訳でさ、こんなの出来ないかな?此れなら、俺達みたいな子供でもライディングデュエルが出来ると思うんだ。


「エンジン付きのボードに、デュエルディスクを有線接続してか……確かに、此れならばライセンスの取れない子供でも疑似的にライディングデュエルが
 出来るようになるし、スタンディングだけのジュニア大会にも、ライディング部門を設ける事が出来るかも知れんな。」


でしょ?如何にかして作れないかな遊里?


「ん~~~~……OK、やってみましょう!
 構造そのものは単純だし、デュエルディスクとの接続機構とエンジンを付けたボードなら、此処に在るジャンクパーツで充分組む事が出来るしね。
 龍亞と龍可の2人分でも、今夜貫徹すれば明日の朝一には余裕で完成するから、龍可と龍亞はライディング用のデッキでも組んでみると良いわ。
 アタシがデッキを構築する際に出たスピードスペルの余り分は好きに使って良いからさ。」

「良いの?」

「サンキュー遊里!!」

やっぱ言ってみるモンだぜ!
って言うか、ジャンクパーツから2人分を一徹でくみ上げる遊里の技術力って、本気でハンパ無いぜ……此れも『好きこそ物の上手なれ』なのかなぁ?

だけど、遊里のお手製なら性能は既製品を上回るから、安心できるぜ。って、まだこれは一般には出回ってないけどね。


「そう言う訳だから、ジャックは龍亞と龍可にライディング用のデッキの構築の仕方を指導してあげて。」

「フン……良かろう!次世代のDホイーラーを育てるもまた絶対王者の役目だからな。
 だが、俺の指導は甘くはないぞ?疑似的とは言え、ライディングデュエルを行うと言う以上は、ライディングのイロハを骨の髄まで叩き込んでくれる!」


あはは……お手柔らかに。
だけど、シティ最強って言われる絶対王者ジャック・アトラスから直々に指導を受けられるなんて、こんな幸運は滅多にないから自分の物にしないとな!



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あふ……朝か……すっごく厳しかったけど、ライディングの何たるかはジャックから叩き込んでもらったし、ライディング用のデッキも構築出来たぜ!
後は、頼んでた物なんだけど――


「大丈夫、出来てるよ、名付けて『Dボード』が。実働データを取って改良する必要はあると思うけど、必要最低限の性能は此れで満たしてると思うわ。
 グリーンのが龍亞ので、ピンクのが龍可のね。2人のデュエルディスクも、接続用の有線コードを追加しておいたわ。」

「ありがとう遊里!」

「此れで俺達でもライディングデュエルが出来るぜ!!」

早速だから、Dボードの性能テストも兼ねて、デュエルしようぜ龍可!


「私もそう思ってたよ龍亞!……やっぱり、双子だから考える事も似通ってくるのかな?」

「かもな……それじゃあ、行くぜ!!」


――ヴォォォォォォォォン!!


「くれぐれも気を付けてね~~~、あくまでも其れは試作機だから。」


分かってるって!!
だけど、それ以上に疑似的とは言えライディングデュエルが出来る事にワクワクしてるんだ!!此のまま、車両専用レーンに突入だぜ!!













で、あっという間に車両専用レーンに突入!てか、ボードで最高時速100kmって、此れで試作機の性能とか有り得ねぇ…絶対に在り得ないよ遊里!
まぁ、それだけ遊里の技術が凄かったって事なんだろうけどさ。

けどまぁ、始めようぜ龍可!


――キィィィィィィィィィィィン!!


「「!?」」


デュエルを始めようとした矢先に聞こえてきたエンジン音――なんだよ一体?


「そのライディングデュエル、僕も混ぜてくれよ。」


お前は…ルチアーノ!!何処で、Dボードを手に入れたんだコイツ?
って言うか、やっぱりお前は何か企んでたなルチアーノ!態々俺達にデュエルを仕掛けて来る辺り、其れを証明してるぜ!!


「鋭いな……だが、その目的を教える心算は無いけどね。
 でも、こうなった以上はお前達は僕とのデュエルをしなくてはならない……さて、如何する?」


上等だ、受けてやるぜそのデュエル!!良いよな龍可?


「うん!……受けて立つ!!」

「そう来なくちゃな……精々僕を楽しませろよ?フィールド魔法『スピードワールド2』セットオン!!」


――グン!!


スピードワールド2が発動したって言う事は、ファーストコーナーを制した者が先攻を取るって事だ……負けないぜ!!


「先攻は貰うわ!!」


って思ったら、龍可が見事なコーナーリングで先行奪取!?――そう言えば、見た目よりも龍可は運動神経が良いんだったっけ。
けど、取り敢えず、此れで先行は龍可が取ったからな……デュエルを始めようぜ!!


「生意気な……纏めてぶち殺してやる!!」


やってみろよ、出来るならな!


「「「デュエル!!!」」」


龍可:LP4000   SC0
龍亞:LP4000   SC0
ルチアーノ:LP4000   SC0


「私のターン!『森の小悪魔 グレムリン』を攻撃表示で召喚。」
森の小悪魔 グレムリン:ATK1300


「そしてグレムリンの効果発動!自分のターンに1度、手札から『森の』と名の付く攻撃力1500以下のモンスター1体を特殊召喚する。
 私はこの効果で、手札からチューナーモンスター『森の守護者 ロックガーディアン』を守備表示で特殊召喚!」
森の守護者 ロックガーディアン:DEF2000


「一気に行くわ!レベル4のグレムリンに、レベル3のロックガーディアンをチューニング!
 太古より世界を守護せし光の精霊よ、その光で世界に祝福を!シンクロ召喚、降臨せよ『精霊龍 エンシェント・フェアリー』!!」

共に行きましょう龍可。
精霊龍 エンシェント・フェアリー:ATK2100


行き成りエンシェント・フェアリーか…常時フィールド魔法が発動してるライディングデュエルなら、最強クラスのドラゴンと化す龍可のエースが降臨だぜ!
龍可もやる気は充分みたいだな!!


「カードを1枚セットしてターンエンド。」

「僕のターン!」


龍亞:SC0→1
龍可:SC0→1
ルチアーノ:SC0→1



「僕は『スカイ・コア』を守備表示で召喚!」
スカイ・コア:DEF0


「カードを1枚セットしてターンエンドだ。」


んで、ルチアーノが何かしてくるかって思ったけど、守備力0のモンスターを出して、そんでもってリバース1枚でターンエンドって……手札事故でも起こし
たのかな?……其れなら其れでも手加減をする心算は無いけどな!!

行くぜ、俺のターン!!!


龍亞:SC1→2
龍可:SC1→2
ルチアーノ:SC1→2



よし、此の手札なら行けるぜ!!俺は『D・スマホン』を攻撃表示で召喚!


D・スマホン:ATK1500


「モンスターを召喚したか……この瞬間にトラップ発動『激流葬』!此れで、フィールド上のモンスターは全滅だ!!」

「そうはさせないわ!トラップ発動『エンシェント・シールド』!私の場に『精霊龍 エンシェント・フェアリー』が存在する場合に発動できる!
 発動ターンのエンドフェイズまで、私達のモンスターは相手のカード効果によっては破壊されないわ!!」


そう来たか!確かに其れなら、破壊されるのはルチアーノのモンスターだけだからな。


――バガァァァァァァァァン!!


「やるじゃないか……だけどこの瞬間に『スカイ・コア』の効果発動!
 このカードがカード効果で破壊された場合、僕のフィールド上の全てのモンスターを破壊し、デッキ、手札、墓地の何れかから『機皇帝スキエル∞』
 『スキエルT』『スキエルA』『スキエルG』『スキエルC』を1体ずつ特殊召喚する!」


機皇帝 スキエル∞:ATK0
スキエルT:ATK600
スキエルA:ATK1000
スキエルG:DEF300
スキエルC:ATK400


一気に5体のモンスターだってぇ!?……クロウも吃驚の高速展開だぜコイツは……


「驚くのはまだ早い……合体せよ、『機皇帝スキエル』!!」


――ガシィィィィ!ガシ、ガシィィィィン!!


機皇帝 スキエル:ATK2200



でもって、5体のモンスターが合体して1体のモンスターになった……のは良いんだけど、一体何なんだ、この巨大ロボットは――














 To Be Continued… 






登場カード補足






エンシェント・シールド
通常罠
自分フィールド上に「精霊龍 エンシェント・フェアリー」が表側表示で存在する場合に発動できる。
エンドフェイズまで、自分フィールド上のモンスターは相手のカード効果によっては破壊されない。