Side:遊里


 フォーチュンカップの開会式…此処に集まってるのが出場デュエリストって事ね。
 正直、此れだけの手練を良くもまぁ集めたものだわ。


 「遊里、知ってるの?」

 「大体はね。」

 大海原と共に生き、愛する海をデッキに取り入れた荒海のデュエリスト『梶木良哉』。
 アマゾネスとハーピィの混成デッキで相手を魅了するかのようなデュエルを行う『孔雀麗』。
 『無敵の巨人』と恐れられる南米の爆撃デュエリスト『ボマー』。

 特出してるのはこの3人だけど、他にも有名所のデュエリストが出場しているわね。

 「…アタシを嵌めた馬鹿とか、蟲使いの『インゼクター羽賀』とかは別に如何でもいいけど…」

 「遊里を嵌めた人も出場してるんだ…」


 うん、出場してるわ。
 マッタク、優越感と嘲笑の入り混じった目で見てること……大会で当たったら叩きのめしてやるわ。

 アカデミアの時みたいに加減はしない。
 アタシの本気で、デュエリストとしての格の違いを其の身に教え込んでやるわ。


 『レディース&ジェントルメン!!ようこそシティのセントラルスタジアムへ~~!!
  此れより、過去最大級となるデュエルイベント『デュエル・オブ・フォーチュンカップ』の開会式を始めるぞ~~!!!』


 「「「「「「お~~~~~~!!!!!」」」」」」


 やっと始まるのね…てか久々に見たけど、相変わらずテンション高いなぁMCさん。
 まぁ、あの人が居ないとデュエルも盛り上がらないしね。

 さて、一つ気を入れて行きましょうか!!










 異聞・遊戯王5D's Turn9
 『フォーチュンカップ始動!』










 と、思ってたんだけど……ヤバイ、やっぱ無理。
 開会式とかの長い話は、アタシには耐えられない…


 「遊里、確りして!って言うか立ったまま寝ないで!!」

 「ん~~…分ってるんだけど、長ったらしい話やら挨拶その他はアタシには子守唄にしかならない…」

 何で無駄に長いんだろうこの手の挨拶って。
 スパッと『大会開催を宣言します』とかで終らせればいいのに…



 「…おい、アイツマーカー付だよな?」
 「何でマーカー付の奴が大会に?出てくんなよな…」
 「つーか、マーカー付なんぞサテライトに引き篭もってろよ!」
 「帰れマーカー付!!」

 「お前なんかお呼びじゃないぜ!!」
 「「「「帰れ、帰れ!!」」」」



 ん?マーカー付ってアタシの事だよね?
 …ま、予想はしてたけど、マーカー付のサテライト住人への対応なんてこんなモノよね。

 アタシは気にしないけど…ほら、龍可も目を吊り上げないの。


 「でも!!遊里は本当は何も悪くないのに、こんなこと言われて…!」

 「ソレは仕方ない……だからアタシのデュエルを見せて黙らせる。」

 デュエルには文句は付けさせない。
 それに、デュエリストたるものデュエルで相手も観客も納得させて制してこそ本物でしょ?


 「ソレはそうかもしれないけど…」



 「!!…オッサン、ちょっと借りるぞ!!……黙れやお前らぁぁぁあぁぁ!!!』


 梶木良哉?


 『黙って聞いてりゃいい加減にしろ!マーカー付だとか何とかデュエルには関係ないじゃろ!
  此処に集まってるのは相応の実力持ったデュエリストだけじゃ!
  マーカー付きってだけで文句言う輩は、俺が今この場でデュエルで叩きのめしても構わんぞーー!!』

 「私にも貸してくれるかな?…彼の言う通りだ。
  マーカー付だからと言って彼女を卑下するのは人として恥ずべき行為だ。
  まして最強のデュエリストを決める大会で、マーカーの有無でウダウダ言うのは間違いではないかな?』



 ボマーまで……あ、会場が静まり返ってる…自覚はあったんだ。
 まぁ、デュエル中にまで罵声浴びせられるのは、確かに良い気分じゃないけどね。


 『ゴホン…ありがとう、梶木君、ボマー君。
  どうも、治安維持局長官のレクス・ゴドウィンです。
  この大会は力有るデュエリストに等しく参加を呼びかけ、そして実現した真の最強決定戦です。
  その中にあっては、国籍は当然として、マーカーの有無など些細な問題…いえ、問題にすらなりません。
  あらゆる柵に捕らわれないデュエルの一大イベント、それがこの『デュエル・オブ・フォーチュンカップ』なのです。』



 ふ~~ん…まぁ、良い対応だわ長官様。
 アタシを招待した時点で、この程度の事は予想してたんでしょうけどね。
 けど、この微妙になった会場の雰囲気を如何するのやら…


 『そしてこの真の最強決定戦の覇者には絶対王者とのエキシビジョンデュエルが約束されています。
  無敵、無敗の絶対王者と戦うデュエリストに求められるのは真なる強さのみ。
  そう、必要なのはデュエリストとしての質であり、身分や国籍などは一切関係ないのです。
  その真の最強決定戦の開催を、私は今此処に宣言します!!』

 「「「「「「……………」」」」」」


 あ……この沈黙は――龍可、取り敢えず耳塞いだ方がいいわ。


 「え?」

 「良いから。」

 ドカンと来るから、ドカンと。



 「「「「「「「わぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」」
 「最強決定戦か!!」
 「絶対王者とのデュエルだと!?」
 「早くデュエルが見たいぜ~~!!!!」



 「~~~~~!?」

 「ほらね…」

 いやはや、やっぱ数万人の人間が一気に歓声上げると凄まじいわ。
 てか、巧く市民感情を誘導したわね。

 マーカー付きへの反発に梶木とボマーが一喝かました所に大会の目的と見所を説明してそっちに誘導か…流石は長官様と言ったとこね。

 でも、これでデュエルに集中できそう。
 結構な強豪が揃ってるけど、誰にも負けないわ。

 全力で戦って、そして勝って――最強の挑戦者として貴方の前に立つから、楽しみにしていなさいジャック!








 ――――――








 Side:ジャック


 「最強の挑戦者として俺の前に立つか……楽しみにしているぞ遊里!」

 「あの、アトラス様?き、聞こえたのですか?」


 まさか、この特別室と会場では距離が離れているから声など聞こえんし姿の判別だって出来ん。
 だが、あの場で犇いているデュエリストの闘気の中で一際強く純粋で、そして特に俺に対して強烈に向けられている闘気位は分る。

 「あの参加者の中で、俺に対してそれだけの闘気を向ける奴は遊里以外には居ないだろう。
  更に、デュエリストたる者、己に向けられた闘気に内包されたメッセージくらいは理解して然るものだ。」

 「はぁ…?」


 ふ、お前には分らんか?…まぁ良い。


 「あ、アトラス様、どちらへ?」

 「高みの見物では満足できそうに無い。
  矢張りデュエルと言うのは間近で観戦しなくてはその真の面白さは分らぬのでな。」

 「で、ですが、絶対王者が観客席になど居たら混乱が!!」


 ふん、俺が観客席に居たとして、話しかけてくるような度胸のある奴は居ないだろう。
 絶対王者からのサプライズと言う事で納得しろ。
 ゴドウィンの奴にもそう言っておけ!


 「アトラス様~~…うぅ、長官への言い訳考えてくれただけマダ良いとするべきなんでしょうか…


 知らん。まぁ、精々頑張るがいい。
 さて、俺が客席で観戦していたらシティの連中はどんな顔をするだろうな?








 ――――――








 Side:遊里


 『楽しみにしている』か…流石はジャック、アタシの闘気に応えてくれるとはね。
 なら尚の事、この大会での優勝は捥ぎ取らないと!

 あ、レンチ取ってくれる?そっちじゃなくて1サイズ小さい方。そう、ソレ。


 「それにしても遊里も余念が無いよね。アンだけ調整したのにマダするの?」

 「此れだけの強豪が集う大会よ?整備はしてし過ぎる事はないわ。」

 万全の状態で臨みたいしね。


 「あれぇ?な~~んでマーカー付の犯罪者がシティに居るのかしら?」


 龍亞、そっちの潤滑剤も取ってくれる?
 どっち?あぁ、ソフトタイプで。


 「サテライトのクズはサテライトに帰りなさいよ…居るだけで汚らわしいわ。」


 後はディスクとの連動とアクセルの調整をして…よし完璧!
 これで何時でもデュエルできるわ、手伝ってくれてありがとうね龍亞。


 「此れくらい大したことじゃないって。
  俺は大会に出られないけど、俺の分まで頑張ってよ遊里!」

 「勿論!ジャックと再戦するまで、負ける事は出来ないからね♪」


 「……意図的に無視するんじゃないわよ!えぇ、上条遊里!!」

 「だが断る!!!!」

 てか、何でアンタみたいな奴に対応しなきゃならないの?
 アタシに勝てないからって冤罪被せてくれた相手に対応する手段は持ち合わせてないわよ……


 「相変わらずムカつく奴ね…ふん、アンタ如き、パパに頼めば出場取り消せるのよ?」

 「出来るならやってみれば?生憎アタシは長官様から直々招待されるのよ?
  アンタの親父さんに、長官以上の権限は無かったと記憶してるけど?」

 「な!?長官直々って…嘘でしょ?」


 残念ながら本当よ。
 ふぅ、権力には権力で対抗するのが一番効果的だわ…好きじゃないけど。

 って言うか、デュエリストなら己の実力でアタシを超えてみなさいよ?
 ソレもしないでアタシを蹴落とそうだなんて恥を知った方が良いわね。


 「この…!!良いわ、私の実力を見せてあげる…私の方が絶対に強いんだから!!」

 「精々楽しみにしてるわよ。……期待はしないけどね。」

 「!!……必ず潰してやるから!!」


 はいはい、やってみなさい…潰されないから。

 はぁ…予想はしてたけどやっぱ疲れるわ、あの手の単細胞の相手は…
 何時当たるか、そもそも当たるかどうかも分らないけど、当たったらその時は格の違いを教えてあげるわ。


 「遊里…大丈夫だよね?」

 「安心しなさい龍亞。
  貴方が憧れた遊里さんは、あの程度の相手には絶対負けはしないから。」

 「そ、そうだよね!遊里は負けないよね!!」


 えぇ、負けないわ…絶対にね!
 と、そろそろ最初のデュエルが始まるわね?

 入場ゲートから見ましょうか!












 と言う事でゲートから観戦。
 長官様が言うには、1回戦は直前まで相手が分らない『シークレットトーナメント』って事だけど…誰がファーストデュエルを?

 ソレを予想するのも楽しみか…


 『では、デュエル・オブ・フォーチュンカップの幕開けを飾る、栄えあるデュエリスト2名を発表だ~!!
  大会最初のデュエルは、一体どんな組み合わせとなるのか~~~!!!』


 ルーレットが回って………嘘…!此れが最初のデュエル…!!


 『決まった~~!!大会最初のデュエルは、龍可vs梶木良哉!!
  可憐な少女と、荒海を行くワイルドデュエリストの対決は、開始を告げるには充分な組み合わせだ~~!!
  さぁ、このデュエルは一体どんな決着を見るのか!?なんとも楽しみな対決だーーーー!!』



 イキナリ龍可が…!しかも相手は…
 此れは一筋縄では行かない相手よ龍可……でも、緊張しすぎないで、デュエルを楽しむ心を忘れないでね。


 けど、この1回戦、初っ端から嵐が巻き起こるかもしれないわね…








 ――――――








 Side:龍可


 まさか一番目が私になるなんて…でも、選ばれた以上は頑張らないと!
 宜しくお願いします、梶木さん。


 「おぉ、俺の相手は嬢ちゃんか!
  悪いが俺は相手が嬢ちゃんでも手加減は出来ん…全力で行くからな!」

 「勿論そのつもりです!」

 デュエルは全力を尽くすものですから。
 行きますよ、梶木さん?


 「おぉ!楽しいデュエルにしようや!」

 「はい!」


 「「デュエル!!」」


 龍可:LP4000
 梶木:LP4000



 遊里とデュエルする為にも、このデュエルは絶対勝たなくちゃ…!

 其れに私の実力がドレだけ通じるのかも知りたいから。
 出し惜しみしないで、全力で行かなきゃ…!















  To Be Continued… 






 登場カード補足