Side:遊里


 「レクス・ゴドウィン…」

 治安維持局の長官様がサテライトに現れるとは驚きね。
 何か用かしら?


 「用といえば用ですね…尤も、其れよりも先にすべき事があるようですが…」


 すべき事ねぇ?……其処に転がってる雑魚デブ関連?
 …あ〜、良い感じに整形されてるわね。


 「前よりもハンサムでしょうね、此方の方が。
  ……さて、鷹栖君、如何やら君をサテライト方面への配属にしたのは大きな間違いだったようですね?
  サテライトの住民に理不尽な要求を突きつけ、挙句の果てには拷問デュエル…相応の沙汰が有ると思いなさい。」

 「ちょっと待ってくれ!俺はサテライトの連中を…!」

 「問答無用です。アナタはセキュリティ内での一切の権限を失うことになるでしょう。」

 「そんなぁあぁ!?」


 あ、デブ撃沈…流石は長官様かな?
 さてと、此れで本題に入れるわね。

 単刀直入に聞くわよゴドウィン。
 サテライトに現れたのは、一体何の目的が有るっていうの?










 異聞・遊戯王5D's Turn8
 『シティへの招待状』










 「目的ですか…ソレは至極単純なモノです。
  近々、シティでデュエルの大きな大会…フォーチュンカップが開催されます。
  貴女をその大会に招待しようと思いまして――上条遊里さん。」


 フォーチュンカップ…ね。
 デュエルの大会って言うのは魅力的だけど、マーカー付きのサテライト住人を招待とは理解に苦しむわね?

 「態々アタシを招待しなくても、シティの住民から選抜して大会を運営した方が余計な混乱は無いと思うけど?」

 「確かに…ですが、貴女には是非とも大会に出場してもらわなくては困るのですよ。
  貴女のデュエリストとしての実力は、アカデミア時代の記録と今のデュエルで実証済み。
  貴女ほどのデュエリストが出場すれば大会は盛り上がりますのでね。」


 大会がねぇ……要は客寄せパンダ?
 でも、サテライトの住人てだけでシティの人達にはアレルギーがあるでしょ?一部を除いて。
 ちょっと出場する気にはならないわね。


 「優勝者には、賞金とキング…女性の場合はクィーンの栄誉が送られますが?」

 「尚の事興味が無いわよ。」

 「ふむ………噂通りですね、上条遊里。賞金や名誉には一切興味を持たないとは…
  ならば、キングとのデュエルが出来るとなれば如何です?」


 !!
 キングって、ジャックとデュエルが出来るって言うの!?


 「大会の優勝者には、特別にキングとのエキシビジョンデュエルが用意されています。
  そして、正直に言いましょう、貴女を招待する理由――それはキングが貴女を直々に指名されたからです。」

 「何だって!?」
 「キングが遊里を…」
 「遊里スゲー!!」


 ジャックがアタシを………ふぅん、それなら出場する気になるわね?
 不完全燃焼で終ったこの間のデュエル、其れの決着を付けたいとずっと思っていたのよ。

 いいわ、出場するわよフォーチュンカップとやらにね。
 賞金や何やらには興味が無いけど、ジャックとデュエル出来るなら、其れだけで出場理由としては充分だわ。


 「ありがとうございます……では此方が招待状ですので。
  中には招待状が2枚入っていますので無くしませんように…」

 「2枚?」

 1枚じゃないの?アタシ以外にも誰か?


 「其処の少女――龍可さんにも大会に出場していただきたいので……」

 「私も!?」

 「貴女は昔『天才デュエル少女』として脚光を浴びた事がある…病気になって直ぐに表舞台からは消えてしまいましたが。
  ですが、病気も治り、身体の変調もなくなったのなら再び表舞台に上がっても良い頃でしょう。
  ――それに、多くのデュエリストとのデュエルは、アカデミアの授業以上に貴女の身になると思いますが?
  まぁ、貴女の出場は自由です……出場しないのでしたら、その招待状は他の誰かに渡していただいて結構。」


 ……喰えないわねヤッパリ。
 そう言われたら、龍可は絶対断らないわよ……絶対分ってやってるわねコイツ。


 「5日後の午前8時に、招待状に記した場所にお迎えに上がりますので、当日は遅れませんように。
  あぁ、それから数人でしたら参加されない方の同行も可能ですので、考えておいて下さい……それでは…」


 ――シュゥゥン…ガラン…


 人形!違う、遠隔操作の人型ロボット!
 …成程、直接此処に来たわけじゃなくて、此れにソリッドヴィジョンを重ねてアタシ達に招待状を送ってきたのね…直接来た方が楽じゃないの?
 別に良いけど…

 「で、如何する龍可?いっそ龍亞に代わりに出て貰う?」

 「あ、もし龍可が出たくないなら代わりに俺が出る!てか出たい!!」

 「もう!誰も出ないなんて言ってないでしょ?私は…出場するよ。遊里とデュエル出来るかもしれないし♪」


 やっぱりそう来るわよね。
 それじゃあ大会で当たる事になったら宜しく♪……手加減はしないからね?


 「勿論!」

 「ちぇ〜〜〜…良いな龍可〜〜。」


 ハイハイ、龍亞も拗ねないの。
 後で心行くまでデュエルの相手してあげるから。


 「ホント!?約束だよ!」

 「了解♪………でさ、如何しようかこれ?」

 いや、何となく予想はしてたんだけど…


 ――第1回 遊里のデュエル生観戦権争奪バトルロイヤルデュエルinサテライト――



 何時の間に作ったのよ、その横断幕…て、もうデュエルが始まってるし…


 「墓地の光属性・機械族を全部除外して、『サイバー・エルタニン』を特殊召喚!!」
 サイバー・エルタニン:ATK5000


 「喰らえ、マジックカード『セイバー・スラッシュ』!!」

 「ダメージを受けたことで『トラゴエディア』を特殊召喚!」
 トラゴエディア:ATK2400


 「やるぇい、ジュェノスワァイド・キング・ドゥェーモン!『さくるぇつ五臓六腑ぅぃ』!!」

 「墓地の光と闇を1体ずつ除外して『カオス・ソルジャー〜開闢の使者〜』降臨!」
 カオス・ソルジャー〜開闢の使者〜:ATK3000


 「なら私は墓地に4体ずつ存在する光と闇のうち、闇を全て除外して『カオス・ソルジャー〜宵闇の使者〜』を特殊召喚!」
 カオス・ソルジャー〜宵闇の使者〜:ATK3000


 「トリシューラでダイレクトアタック!!」

 「なにぃ、ミラーフォースだとぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 ……なんか凄い事になってるなぁ。
 しかも、なんか混じってなかった?居ちゃいけないのが2名ほど…


 「きっと気のせい♪」

 「宇里亜……そうね、気にしたら負けね。」

 取り敢えず同行者は龍亞と宇里亜は決定で。
 残りは…まぁデュエルで決まるでしょう。

 あ、但しリアルファイトに発展したらその時点で失格だからね!


 「「「「「「「「「「おーーーーーーーー!!」」」」」」」」」」


 本当にノリが良いなぁサテライトは――ソレがまた楽しいんだけどね♪


 さてと、それじゃあDホイールとデッキの調整でもしようかな。
 あ、広場に大会観戦用のパブリックビューの設置の方が先か!








 ――――――








 Side:ジャック


 「何故か今、物凄く腹立たしい気分になった…」

 「はい?」


 いや、なにやら偉く馬鹿にされたような気がしたのだ……
 何処かの馬鹿が無警戒に特攻してミラーフォースの餌食になったような……気のせいか?

 まぁ良い。
 其れよりも『デュエル・オブ・フォーチュンカップ』か……また妙な大会を企画したなゴドウィン?


 「少しばかり余興をと思いましてね。
  キングには大会の優勝者とのエキシビジョンデュエルを用意させていただきます。」

 「エキシビジョン…ふん、大会の優勝者だろうと、腑抜けた相手では俺には及ばんぞ?」

 「ソレについてはご安心を。先程『彼女』に招待状を渡しましたので…」


 『彼女』だと?


 「…サテライトの無敵女帝、上条遊里…」

 「!!」

 遊里が大会に出てくると言うのか!?
 ふふふ…ハッハッハ!それでは優勝は決まったようなものだ!
 奴が俺以外のデュエリストに負けるなど断じて有り得ん!!


 「随分買いますね、彼女の事を?」

 「当然だ。中断されたとは言え、俺に勝っていたデュエリスト……ソレが俺以外の奴に負けるなど許さん!」

 「ほう?ですが、今回の大会は世界中から強豪を選りすぐってあります。
  彼女が優勝するのは簡単では無いと思いますよ?」


 例え誰が立塞がろうともアイツは必ず優勝し、再び俺の前に最強の相手として立つ!
 この大会が俺とアイツとの再戦の場に成ると言うのなら、何人たりともソレを邪魔する事は出来ないと知れ!


 「肝に銘じておきましょう。
  しかし……ソレほどまでに彼女に執着するとは――まさかとは思いますが惚れましたか?」

 「ぶふぅ!!」

 な!?貴様ぁ、何を世迷い事を!!


 「ふむ、新鮮な反応をどうも。成程、キングはあのような女性が好みですか。
  確かに遠隔操作のロボット越しですが、彼女は中々……」

 「勝手に話を進めるな!」

 確かにアイツは魅力的だが、それはデュエリストとしてだ!
 言うなれば最高の好敵手!それ以外の感情などないわ!!


 「ですが、それが高じて恋愛感情に発展すると言うことも無きにしも非ずです。
  彼女が優勝すればクィーンですから……いっそキングとクィーンのタッグで世界を席巻すると言うのも…」

 「黙れ貴様!!」

 其処に直れ!絶対王者のフィールを其の身に叩き込んでくれる!
 その減らず口を二度と叩けぬようにしてやるわ!!


 「ソレはお断りします…と言うか無駄ですよ、此れはソリッドヴィジョンですから。
  治安維持局の長官と言うのも多忙でして、中々外に出るというのも難しいので。」

 「それだけ忙しいならば、俺をからかうよりも仕事をしろ、仕事を!!」

 市民の税金で飯を食っているのだからその分は働かぬか馬鹿者が!!
 ………居ない、ソリッドヴィジョンを消したか…何をしているんだアイツはマッタク…


 だが、再び奴と相見える機会がこれほど早く来るとはな。


 誰が相手だろうと、必ず勝ち上がって来い上条遊里!
 その時は、この絶対王者とレッド・デーモンが、貴様とシルバー・ウィンドを焼き尽くしてくれる!!



 再戦を楽しみにしているぞ、遊里よ…








 ――――――








 ――5日後



 Side:遊里


 お〜〜来た来た!
 てかバートルで来るか普通?…まぁ、滑走路なんてないからヘリで来るのは仕方ないけどさ…

 とは言っても人数運ぶには此れが一番適してはいるわね。


 「イ〜ッヒッヒ、お迎えに上がりましたよ上条遊里と龍可。
  同行される方も、どうぞ御搭乗下さい。ヒッヒッヒ!」

 「…アンタが迎えってのが物凄くテンション下がるわ。」

 「変な人…」


 まぁ、シティまでのヘリ内は我慢するしかなさそうね。

 それじゃあ行ってくるね皆!必ず優勝してくるから!!


 「頑張れよ遊里!!」
 「サテライトの底力、シティの奴等に見せてやれ!!」
 「私等もパブリックビュー見ながら応援してるからね!!」
 「弥生、牛尾の旦那、会場での応援は任せた!!」


 あはは…結局同行の権利勝ち取ったのは牛尾と弥生だったのよね、予想通りだけど。

 でも、ありがとう皆!その期待には必ず応えるよ!



 それじゃあ行きましょうか、シティへ!


 「「「うん!」」」

 「「行くか!!」」



 待ってなさい、ジャック・アトラス。
 必ず優勝して、貴方との再戦を果たすわ。

 私が優勝した時、その時が、前のデュエルの決着を付ける時よ。


 必ず貴方の前にもう一度立つから……待っていなさいジャック――シティの絶対王者!!
















  To Be Continued… 






 登場カード補足