Side:鬼柳


デュエルそのものは遊里が制した……つまりこれで全てのダークシグナーはぶっ倒した事になる。
だが、デュエルに勝ったとはいえ遊里がこの奈落に落ちたとか、冗談じゃねぇ!――ドンだけ深いかは知らないが、此処から落ちたら幾ら何でも…!


「おい、遊里!遊里ーー!!」


クロウ……お前ですら焦るよな流石に。
遊里がくたばるとは思いたくねぇが、この高さから落ちたら、普通は生きてる事なんざ有り得ねぇ……最悪の事態を考えると、満足できねぇぜ……


「……いや、遊里は恐らく生きているぞ?」

「「は?」」


いや、行き成り何を言ってるんだアイン?
遊里が生きてるだと?――其れ自体は、有り難い情報だが、如何してお前に其れが分かる?アイツはこの底に落ちて行ったんだぞ!!


「朧気ではあるが、僅かに奈落の奥底から遊里の反応を感じ取る事が出来る。
 人の持つ生体反応は、一卵性の双子であっても異なるが故に、遊里の反応は遊里以外の者では発しようがないんだ……だから遊里は生きてる。」


その生体反応とやらを感じ取ったってのか?……色々突っ込みどころが多いぜ。――だが、そいつを信じるなら遊里は無事なんだな!?

流石にラスボスを倒して、だけど主人公が死んじまったなんてのは無しだからな?
生きてるなら、さっさと戻って来てくれ遊里――ダークシグナーを全員ぶっ倒したって言っても、お前が居なきゃ真の意味で満足は出来ねぇからな。











異聞・遊戯王5D's Turn61
『奈落での邂逅と動き出す狂気』










Side:遊里


「………?」

此処は何処?
ルドガーとのデュエルには勝ったけど、直後の爆発に巻き込まれてアタシは吊り橋から落ちた筈――普通なら生きてる筈がないんだけど……

「死んじゃったって言う訳じゃないみたいね……」

ちゃんと足は有るし、地面に触れる事も出来る――って言う事は、奇跡的に助かってあの穴の奥底に辿り着いちゃったって事なのかな?
……其れにしては、不思議な光で満たされた不思議な空間なんだけど……本気で此処は何処なんだろう?


何とも現実感がない世界みたいだけど、こんな所でゆっくりしてる暇じゃないから、直ぐにでも戻らないとなんだけど、果たしてどうやって戻ろうかな?
それ以前に、此処が何処か分からない上に、道標も何もないから動きようがないって言うか……ん?




――ウゾウゾウゾウゾウゾ……!!!




!!!な、何この気持ちの悪い巨大な蟲は!!
中型犬サイズのダンゴムシ(?)って言うだけでもアウトなのに、其れに加えて超巨大なムカデやヤスデにゴキブリがあっぁぁぁ!?

生理的嫌悪感が物凄いのは当然だけど、誰が如何見たってコイツ等は人の力が及ぶ存在じゃないのは間違いないわよね?
だったら――お願い『ダーク・マジシャン・ガール』!『プリンセス・ヴァルキリア』!!『輝天龍 シルバー・ウィンド』!!!


此れはまた何とも…遊里『トゲトゲ神の殺虫剤』持ってないの?
ダーク・マジシャン・ガール:ATK2500


持っていたら私達を呼び出したりはしないでしょうに……
プリンセス・ヴァルキリア:ATK2500


取り敢えず殲滅するぞ。
輝天龍 シルバー・ウィンド:ATK2500


お願い!
アタシ自身が如何にか出来ればそれに越した事は無いんだけど、アタシじゃどうにもならないし……正直コイツ等を素手で殴り倒す気にはね……


承知した…消え去れ……


ちょっと待った!!
 折角3人揃ってるんだから、此処は合体攻撃で行こう!世界最強の合体攻撃で行こう!!


ちょっとガール、また何かネタを仕入れて来たわね?――今度は何?


天下無敵の一撃必殺なトリプルブレイカー!プリンセスも、シルバーも『ブレイカー』って名前を付けて一発かましてね?

『『解せぬ。』』


もう意味が分からない……ガールの知識の出どころは本気で一度調べた方が良いのかしら?……調べたところで分からないだろうけどね。
けどまぁ、何でもいいからコイツ等を吹き飛ばしちゃってもらって良い?


お任せ!!全力全壊!スターライトォォォォォォ……

やれやれ…付き合うとしましょうか?では、一等殲滅、ホーリーソード……

まぁ、偶にはいいか……そうだな……アサルトサイクロン……



『『『ブレイカー!!!!!!』』』




――ドッガァァァアァァッァァアッァアァァァァッァァン!!!



……跡形もなく吹き飛んだわねダンゴムシとムカデとゴキブリが。
うん、吹き飛ばせとは言ったけど、まさか3人で『最終戦争』を発動してくれるとは思わなかったけど――其れで此処は一体何処なんだろう?

不思議な空間だけど、僅かに溢れる光……此れはモーメントの光と同じ物よね?
若しかして此処はモーメントの中なのかな?



――ズルリ……



って、今度は何!?
これは……地面から無数の手が生えてる!?――どんなホラーよ此れ!?……しかも、その手がアタシに纏わりついて……く…引き込む心算!?


遊里!!…させんぞ!!!

ゼロリバースで散った者達の負の思念でしょうか?……ですが、遊里を連れては行かせません!

生者を冥界に無理矢理引き込むのはルール違反!大人しく寝てて!!



――バガァァァァアァァァァン!!



……そんな、ガールとプリンセスとシルバー・ウィンドの攻撃を喰らっても怯まないだなんて、其れだけコイツ等の怨念は強いって言うの!?
それとも、彼等の怨念はモーメントが存在してしまったが故に生まれてしまったモノだから、モーメント開発者の娘であるアタシは甘んじて受けるべき?


確かにモーメントが無ければ、ゼロリバースも起きなかったんだから、其れを踏まえたらアタシは――








『去れ、この子はまだ此処で朽ちる人間ではない。』

「え?」

だ、誰?
行き成り現れた誰かの声に圧倒されるように、アタシを拘束してた腕が消え去った――其れこそ跡形もなく。

だけど、そんな事してのけた声の主は間違いなく普通の人間じゃない筈………一体何者なの?



『遊里、お前は此処で朽ちるような人間ではない。
 私が生み出した業を背負わせる形になってしまうのは心苦しいが……お前ならばきっと世界を救える……だから、頼んだぞ遊里……』



え?……待って…貴方はまさか!!
記憶にはないけど本能が覚えてるわ、貴方の事は!!………待って!行かないで!!


待ってよ………話したい事がいっぱいあるんだよ!?……だから待ってよ――お父さん!!!


『其れはまたの機会だな……今は有るべき場所に戻るのが先決だ。
 ルドガーは倒したみたいだが、其れで終わりではない……寧ろ此処からがメインイベントと見て良いだろう……気を引き締めて行けよ、遊里!!』



――!!……確かに今は他にやるべきことはあるんだけどさ。
だけどルドガーを倒しただけでは終わらないって事は、まだまだ何かありそうだね?――まぁ、何が来ても打ち倒すだけどね!!


『その意気だ遊里………お前ならばきっとできる。
 だから、己の力と仲間の事を信じて前だけを見て進め…そうして進んだ先にこそ、真なる未来が開けている筈だからな――さぁ、もう戻る時間だ。』



タイムオーバーか……凄く残念な気分。
まぁ、其れはまたの機会って言う事で―――ありがとう、お父さん……必ずこの戦いは終わらせてみせるから!!


『頑張れ…お前なら出来る――私は、そう信じているからな……さて、そろそろ目覚めの時だ。』



うん……またね、お父さん――









――――――








Side:クロウ


遊里……!幾ら何でもこの奈落に落ちたとあったら生存は絶望的だろうが、遊里に関しては一般的な生存確率なんぞあてにもならねぇ!
アイツはどんな状況に巻き込まれても絶対生きて帰って来たんだ!!!――其れが簡単にくたばる筈がねぇ!!




――ポウ……





あん?なんだこの小さな火の玉は?……いや、コイツは火の玉なんかじゃねぇ!
物凄く強い魂の力を感じるぜ――一体何が……


――ふわり……


「戻って…来た?」


!!…遊里、無事だったのか!!
あのダークシグナーの彼是に巻き込まれて、尚且つ略ノーダメージって有り得ねぇ……若しかしたら、遊里はラスボスの才能も有るのかもしれないな。


「其れが分かっただけでも僥倖だよ……
 だけど此れで全てのダークシグナーを倒した事になる訳だからこれ以上無駄な戦闘が起こる事は無いと思うんだけど……
 けど、だからこそ一度ゴドウィンに会っておく必要があるわ――ダークシグナーを全て倒したにも関わらず、未だ闇の瘴気が消えてないのは――!」


未だ全部が終わった訳じゃないからだろ?
ゴドウィンの奴も、遊里に全てが終わったら自分の所に来るように言ってたからな……で、如何する?


「ゴドウィンが、アタシ達に用があるって言うなら受けるしかないでしょ?
 ダークシグナーは全て倒したけど、だけど此れじゃあ終わらないって、アタシの魂が叫んでるからね――ゴドウィンとの会見で何か分かるのかも…」



一筋縄じゃ行かねぇか。
だが、遊里の言うようにゴドウィンの奴は如何にも怪しすぎるぜ。――若しかしなくても、ゴドウィンは遊里を利用する気でいるのか?

だとしたら容認は出来ねぇ……有無を言わさずに絞りかすにしてやるからな!


先ずはアンタの腹の内を聞かせてもらうぜ、ゴドウィン長官よぉ!!








――――――








Side:ブランシュ


今の感じから察するに、最後のダークシグナーが倒されたか……だからと言って、この胸に宿る不快感が癒された訳ではないのだけれどな。


だが、負け無いぜ俺は……!!
ダークシグナーは全滅したが、未だシグナーの龍は無傷で残ってる筈だ……!となれば、遊里と本気のデュエルが出来るかも知れない。


となるとコイツ等は邪魔だな?
恐らくは遊里達を一度シティに戻す算段なんだろうが――その前に貴様を叩き潰してやるぜ、クソ共が!!!!



相手が相手だけに、本気の力を使う事は出来ないが、其れでも大概の奴が戦闘行為不可能は間違いねぇが――



「考えるまでもないか……俺は此処に居て、そしてデュエリストを狩る力を秘めているんだ……俺は俺の役目を果たすだけだ。
 ダークシグナーは全て倒されちゃったからアレだけど、遊里達シグナーを狩りつくす仕事はまだ残ってるからな……血が滾るぜマッタクなぁ!!」


まぁ、いいや……俺の次なるターゲットは、遊里お前だ!
シグナー最強のデュエリストの力を持ってして、上条遊里を葬り去る――何とも最高の気分だぜマッタクなぁ!!

さっさと来いよシグナー共……こっちは準部万端だぜ?……お前等をぶち殺すための準備は完全に整えさせて貰ったからな!!





ククク……楽しみだぜ此れを見た遊里達がどんな反応をするのかと思うとな!!
来いよシグナー共……お前等の存在全てを綺麗さっぱり否定して更地にしてやるからなぁぁぁ!!!覚悟しとけよ、上条遊里!!!













 To Be Continued… 






登場カード補足