Side:遊里


 「龍可、龍亞!」

 何で此処に…って言うかどうやってサテライトに来たの!?


 「へへ〜〜、粗大ゴミの冷蔵庫に入り込んでね。」

 「本当に来れたから吃驚しちゃった♪」

 「冷蔵庫って…また無茶したわね…」

 でも、龍亞くらいの男の子ならそれくらいのやんちゃはするべきだよ。
 けど、妹まで巻き込んで無茶するのはいただけないかなぁ?


 「う…その、ソレはゴメン…」

 「…なんてね、冗談だよ。」

 「え〜〜!?酷いよ遊里!!」


 ゴメンゴメン。
 けど、何でサテライトに?此処はあんまり安全じゃない所だって知ってるでしょ?


 「遊里に会いに来たの。
  遊里が逮捕されて、ソレでサテライト送りになったって聞いて心配してたの。」

 「でも、元気そうで安心した!」


 アタシの為に?……ソレだけの為にこんな無茶をしてくれたんだ…
 ありがとう、龍亞、龍可――アタシも会えて嬉しいよ。
 …ようこそサテライトへ!サテライトは、彼方達の訪問を歓迎するわ!










 異聞・遊戯王5D's Turn6
 『ソリッドステートサテライト』










 で、アタシの居住地である元地下鉄ホーム。
 照明はあるし、適当に広いからゆっくりしてね?


 「「は〜い♪」」

 「はい、良い返事。」

 で、只アタシに会いに来たって訳じゃ無いでしょう?
 …アタシが逮捕された事云々について聞きに来たってのもあるのかな?


 「う…えっと…」

 「うん、ソレを聞きにきたの。」

 「ちょっと龍可!?」


 まぁ、そうよね。
 あ、予想はしてたから龍亞は落ち着いて…


 「だとしてもストレートすぎるよ!もう少し其の…」

 「オブラートに包んで発言しろって?」

 「そう、それ!!」


 別に構わないけどねアタシはさ……結論でだけ言えば冤罪だし。
 マーカーの刻印はされたけどサテライトで不自由してるわけでも無いからね〜…
 まぁ、アタシを嵌めた奴等には何れキッチリと因果を応報させる予定だけど♪


 「遊里、目が笑ってない…ハイライトが消えてるよ?」

 「な、何かどす黒いオーラが……お、落ち着いてよ遊里!」

 「あ、ゴメンゴメン。」

 思い出すと…てか、アカデミアの生徒のくせにデュエルで挑んでこない事が腹立たしいのよ。


 「確かに…でも如何して遊里に冤罪を吹っかけたのかな?」

 「強いデュエリストってのは時に妬みの対象になっちまうんだよ。」

 「特に遊里ほど強いと、憧れや羨望を持ってた奴と同じくらい、嫉妬の感情持ってた奴が居るんじゃないか?」


 牛尾と弥生!
 あ、デュエルが途中で中断しちゃったから。


 「そう言う事…で、この子達は?」

 「前に話したでしょ?龍可と龍亞、アカデミアの後輩に当たる双子で、アタシの友達。」

 はい、2人ともご挨拶。


 「龍可です。アカデミアの初等部の4年生、宜しくお願いします♪」

 「龍亞で〜〜す!龍亞の双子の兄貴で、同じくアカデミアの4年生!」

 「元気な子だね。遊里のダチのノーマネー弥生だ、宜しくなチビちゃん達。」

 「元セキュリティの牛尾だ、まぁ宜しくな。」

 「「セキュリティ!?」」


 はい、警戒しないの。
 牛尾はアタシの冤罪看破して、更に押収されたデッキを取り戻してくれた恩人よ……警戒は不要の方向でね?


 「おっちゃんが遊里を…」

 「法に背いた冤罪なんぞ有っちゃならねぇ事だからな……聞き入れてもらえなかったけどよ。
  何にせよ、遊里のアレは冤罪以外の何物でもねぇよ。
  遊里の強さに嫉妬したトップスの馬鹿が、親の七光り使って遊里に冤罪吹っかけてアカデミアから消したんだからな。」


 ホント、くだらない事をしてくれたわ。
 初等部や中等部の子達とデュエルするのが楽しかったのに…もうソレは叶わないわね…


 「そんな〜〜!初等部には遊里のファンが多いのに〜〜!」

 「後輩に優しくて強いデュエリストって、アカデミアでは評判だったんだよ?」

 「そうなの!?」

 開けて吃驚火がぼうぼう…アタシって年下に好かれる性質だったんだ…


 「いや、同世代や年上にも好かれてる。
  サテライトには『上条遊里ファン倶楽部』ってのがあるんだけど?」

 「アタシ公認してないからね!?」

 てか、本人の了承なしに作らないでよ……まぁ実害無いから良いけどさ。
 で、アタシに会いに来たのは良いとして、龍可と龍亞はどうやってシティに戻るの?
 流石に今度は粗大ゴミに紛れてとは行かないわよ?


 「「あ。」」

 「考えてなかったのね…」

 しょうがないなぁ、雑賀に頼んでシティへの定期便調べてもらうわね。
 ソレまでは、少し不便かもだけどサテライトに居てね?


 「「は〜〜い。」」

 「よろしい。」

 でさ弥生、要らん所で無粋な横槍が入ってデュエルが中断したから不完全燃焼なのよ。
 スッキリしないから、デュエルの相手してくれない?


 「デュエルなら何時でも受ける!てかソロソロ勝たないとアタシもヤベェ!!」

 「まぁ、弥生もデュエルするたび強くなってるけどね。」

 事実サテライトでアタシの相手になるのってクロウと弥生、後は牛尾以外に居ないし。
 まぁ、なんにしても燃え燻ってるアタシの闘気をぶつけさせてもらうわ。


 「「デュエル!!」」


 遊里:LP4000
 弥生:LP4000



 さて、楽しいデュエルをしましょうか!








 ――――――








 Side:ジャック


 「………………」

 「ご機嫌斜めですねキング?」


 ふん、当然だ。
 久々の心踊り魂が燃えるデュエルに下らん横槍を入れられたのだからな。
 上条遊里…奴のとのデュエルに決着が付けられなかったのは大いに不満だ。


 「申し訳ありません…ですがキングには未だ負けていただくわけにはいきませんので。」

 「ほざけゴドウィン、絶対王者に敗北など許されん。
  遊里は確かに強かったが、だからこそ俺は奴に負ける事は出来ん!
  あの中断が無ければ、シルバー・ウィンドを返り討ちに出来ていたかも知れんのだ!」

 「そうでしょうか?」


 なに?


 「Dホイールの記録映像です…ラストラーンですが…」


 此れが何か?

 …む、ちょっと止めろ!遊里の発動したカードを拡大しろ!


 「此れは…!!」

 スピードスペル『Sp−ノーリミット・ストライク』!!
 自軍のモンスター1体の攻撃力に、己のシンクロモンスターの元々の攻撃力の合計を上乗せする速攻発動可能なカード!
 此れが成立していたら、シルバー・ウィンドの攻撃力は7200……俺が負けていた…だと?

 「くくく…はっはっは!!成程な、貴様等は俺が負けては都合が悪かったわけだ。
  だから土壇場で乱入してデュエルをうやむやにしたという事か。」

 確かにあのバトルが成立していたら俺は負けていた。
 だが、ソレを知って尚俺の心は高鳴っている!

 俺に黒星をつけていたあのデュエル…そして、其の戦術を導き出した遊里……面白い!
 ゴドウィン、俺は何れ奴との決着をつける――その時は邪魔など無粋な真似はするなよ?

 事実上は俺に勝利した遊里……絶対に逃がさん。
 あのデュエルはうやむやになったが、次に戦う時はそうはいかん。

 俺がお前と再びまみえるまで、他の誰にも負けてくれるなよ遊里よ。

 シティの絶対王者と、サテライトの無敵女帝……何れ決着を付けてやる!
 いや…

 「ゴドウィン、奴と――遊里と戦えるデュエルの舞台を用意しろ。
  此れまでお前等の望む『お飾りのキング』を演じてきてやったのだ、此れくらいは聞いてもらうぞ?」

 「承りましょう……尤も彼女が彼方に辿り着けるかが問題ですがね。」


 戯言を言うな、奴は必ず俺の元に再び現れる――最強の挑戦者としてな!


 そしてその時は、今度こそ俺とレッド・デーモンがお前とシルバー・ウィンドを焼き尽くす!!








 ――――――








 Side:遊里


 「装備魔法『メテオ・ストライク』をウリアに装備して貫通効果を付けるね。
  そして、ウリアで龍亞君の『D・ボードン』に攻撃『ハイパー・ブレイズ』!」

 「ちょ、攻撃力1万のウリアに貫通効果だなんて〜〜!!」
 龍亞:LP2300→0



 はい、決着!
 相変わらず宇里亜の一撃の爆発力はハンパ無いわ〜〜。
 龍亞も最後に見たときよりもレベルアップしてるね。


 「龍亞も頑張ってたから…いつか遊里を超えるって意気込んでたよ?」

 「アタシを超えるか…龍亞なら出来ない事じゃないかもね。…勿論龍可もね。」

 「そうかな?うん、頑張るね!」


 其の意気よ。
 デュエリストは常に高みを目指してこそ成長するんだから。

 帰れるようになるまで、サテライトで修行すれば良いよ。


 「うん、そうする。」


 サテライトでの経験は決して無駄にはならないはずだから。



 ん?



 ――ぎゅいぃぃぃん!!



 アレはセキュリティの車輌?
 爆音ドリフトかまして一体何が…


 「だ〜っはは!サテライトのゴミ屑共ぉ!貴様等の自由時間はお終いだ!
  此れよりサテライトの住民を全員逮捕する!!逆らうなら容赦はせんからな!!」

 「「「「「「!!!!」」」」」」


 何横暴な事を言ってるの!?
 憤怒を通り越して呆れるけど……ちょっと待ちなさいよデブヒゲ!
 なんでサテライトの住民が逮捕されるの?理由が無いわ。


 「あぁ?サテライトのゴミクズは存在自体が目障りだ。ソレを排除するだけだ…シティの為にな。」

 「……どっちがゴミクズよこの腐れデブ…」

 「あん?」


 サテライトの住人は此処で日々を必死に生きてるのよ?
 ソレを大した理由も無く、下らない独断でしょっ引くって言うならアタシだって黙ってられないわ。


 「だとしたら如何すんだ、サテライトのメスガキが!」

 「……アタシとデュエルしろよ。」

 ソレでアタシが勝ったら大人しくサテライトから去れよ。
 アンタが勝ったらその時は好きにすれば良い。


 「おぉ!やったれ遊里!!」

 「俺達サテライトの命運はお前に託すぜ!!」

 「つーか、権力の横暴反対!!」

 「其のクソデブにサテライトの意地を叩き込んでやれーーー!!」


 「相変わらずノリが良いわねサテライトは…」

 さて如何するの?
 受けないならデュエル棄権でアタシの勝ちよ?


 「ぐ…小娘が…良いだろう。
  だが、俺にも準備がある…デュエルは明朝だ…構わんな小娘!」

 「構わないわ…ソレとアタシは小娘じゃなくて上条遊里よ…覚えておきなさい。」

 「上条遊里……このセキュリティの一部隊隊長の鷹栖に刃向かった事を後悔させてやる…!」


 やってみなさい、出来るものならね。
 権力を盾にした横暴には屈しないって事を、デュエルで教えてあげるわ…アンタの骨の隋までね!













  To Be Continued… 






 登場カード補足



 Sp−ノーリミット・ストライク
 スピードスペル
 自分のスピードカウンターが6個以上有る時に自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動する。
 選択したモンスターはエンドフェイズまで、選択したモンスター以外の自分フィールド場のシンクロモンスターの元々の攻撃力の合計値分攻撃力がアップする。
 自分のスピードカウンターが7個以上あるとき、このカードは速攻発動できる。