Side:遊里


クロウと、ダークシグナーと化したボマーのデュエルはクロウの勝利で終わった――敗北したボマーの消滅と言う結果を残してね……
覚悟はしていたけど、やっぱりやりきれないわ、目の前で人が消えてしまうと言うのは……ある意味此れもシグナーの運命なのかな……

だけど感傷に浸ってる暇はない。
クロウが勝った言う事は此処にあるモーメントの番人は居なくなったって言う事だから、直ぐにでも停止したいんだけど……

「此れはアタシのシルバーウィンドをセットすべきか、鬼柳のフォルト・スクライドをセットすべきか……」

たった今気付いたんだけど、決闘龍のカードがモーメントの制御を担ってたって言うなら、明らかに数が足りないわよね!?全然足りない!
アタシのシルバー・ウィンドに、ジャックのレッド・デーモン、鬼柳のフォルト・スクライドと龍可のエンシェント・フェアリーで4体。

ブランてのも決闘龍は持ってるだろうから合計で5体だけど、明らかに数が合わないわよね!?

モーメントは全部で7個だから2個足りないじゃないの!!……此処に来てこのピンチ……如何したモンだろうね?


「其れなんだが、モーメントを開発したのがお前の親父さんなら、シルバー・ウィンドは只の制御機構とは思えん。
 若しかしたらシルバー・ウィンドは、全てのモーメントを制御出来るマスターキーみたいな能力が備わってるんじゃないのか?だとしたら…」


シルバー・ウィンドが負けなければ全てのモーメントを停止する事は可能って事か!!
だったら、全てのモーメントを停止する事は最早決定事項よ?――アタシとシルバー・ウィンドと、デッキの仲間達は二度と負けないからね!

此処のモーメントを元に戻したら、次はいよいよアタシの番――この間の借りは億倍にして返してやるわ亜美………!!












異聞・遊戯王5D's Turn50
『暗黒の邪念との再決戦!!』











――シュゥゥン……


物の見事にモーメントは停止して、これならこれ以上の異常動作はないわね。
だけど、此れで漸く2つ目のモーメントを正常に戻しただけなのは否めない――残る5個のモーメントも早い段階で制御しないと危険よ。


まぁ、残る5個の内1つは此れからアタシが叩き潰すんだけどね!


「漲ってんなぁ遊里……」

「デュエリストのオーラがマックス120%オーバーだな……もっとも其れ位はして貰わないと満足できないけどな!」


漲ってる?デュエリストのオーラがマックス120%オーバー?…当然じゃない、前回あれだけの煮え湯を飲ませてくれた奴が相手なのよ?
結果的にはノーコンテスト扱いだったけど、あのデュエルは何方に軍配が上がっていたかは火を見るより明らかだからね。

何よりも、アレで勝者面されるのは何とも気分が悪いわ……其れとも其れ位の安いプライドがアンタにはお似合いかしらね亜美!!


「さぁて、如何だろうね?……何にしても口は減らないわね遊里?
 敗北確定のデュエルをして、身体に深い傷を負って……もう一度私にやられに出て来るなんて、お前相当の弩Mだな――――!!」


気色悪い事言わないでくれる?
生憎とアタシにそっちの趣味はないわ……アタシの此処での目的は、亜美……アンタを完膚なきまでに叩きのめす事よ!!


「へぇ?……出来るモンならやってみなさいよ遊里?
 地縛神の恐怖に捕らわれたアンタがどれ程できるか見物だわ……精々瞬殺だけはされない様に気を付けろってね!!」

「瞬殺……アンタこそ備えておいた方が良いと思うけれどね。」

私のデッキはシンクロを駆使した高速召喚デッキ。気が付いたらライフが尽きてました――何て事にならないようにしなさいよ?
まぁ、アンタの事だけはシグナーとかダークシグナーとか抜きにして徹底的に潰してやらないと、やっぱり気が収まらないわ。

「アンタが冤罪吹っかけてくれたおかげで、私はシティでの全てを失った訳だからね。
 サテライトの生活はアタシの肌に合ってたけど、アンタのせいでアタシの身体には一生消えないモノが2つも残った訳だし――」

「2つ?マーカー以外に何が……」


アンタね……この間のデュエルでアタシがクラッシュした時、お腹に突き刺さったレーゲンの破片を更に蹴り込んでくれたわよねぇ!?
幸い内臓には影響なかったけど、表面の傷が余りにも大きくて縫合の痕はどうやっても隠せない状態なんだけど?


……何か思い出したら無性に腹立って来たわ。
鬼柳、このボケンダラの事はデュエルじゃなくてリアルファイトでブッ飛ばしていい?

弓引きナックルアロー3発から延髄斬りに繋いで、トドメに拷問卍固めで締め落としても問題ないわよね?やっちゃっていいわよね!?


「気持ちは分かるが、取り敢えずはデュエルで叩きのめさないと満足できないんじゃねぇか?
 其れでも満足に足りなかったらその時は、まぁ煮るなり焼くなり揚げるなり好きにすればいい。」

「………確かにそっちの方がやりがいはあるわね……」

「……私よりもお前の方がダークシグナーになってるんじゃないのかある意味……」


そう?……まぁ色々溜まってるのは否定しないわよ?
アンタへのリベンジとか、ルドガーとのデュエルから1ヶ月近く全然デュエルしてないからそのストレスとかその他諸々が………!!


「1ヶ月!?精々数時間じゃない!?」

「感覚的に何故かそんな感じがしたのよ!!」

ホントに何でか分からないんだけど。

ま、無駄話は此れ位にして――そろそろ始めましょうか亜美?
フォーチュンカップではアタシが勝って、この間のデュエルは結果的にはアンタの優勢勝ちだから、完全決着戦と行こうじゃない?異論は?


「無いわ……此処でお前を冥府に叩き落として私は新たな世界の覇者になる!!」

「其れは絶対に無理よ亜美――アンタは今此処でアタシに負けるんだからね!!」

「ふん……精々ほざきなさい遊里ぃぃぃぃぃ!!!」


――ゴォォォォォォォォォ!!


現れたわね『青白い炎の障壁』。
此れでもうこのデュエルから逃げる事は出来なくなったけど、元より逃げるなんて選択肢がある筈もない――やってやるわ亜美!!

「フィールド魔法『スピード・ワールド』セットオン!!」


『デュエルモードスタンバイ。マニュアルモード。』


――ヴォン



此れで世界はスピードが支配する世界へと変わった!さぁ、始めましょうか亜美!!


「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!!」」


――ドォォォン!!!


「!!遊里、お前その加速は……!!」

「大破した後、レーゲンは大幅に強化改修したのよ……いや、治安維持局の長官様のお財布は大きくて助かったわ~~~♪
 ジャックがねじ込んでくれたおかげでもあるんだけど、サテライトじゃ手に入らないようなパーツが全部手に入ったからね?
 おかげで完全にアタシ用にレーゲンをアルティメットカスタマイズできて、ホント大満足だわ~~。」

てなわけで、強化レーゲンでファーストコーナーは貰うわ!!


「させるか!!ハイパーソニックモードオン!!全システムフルスロットルでぶっちぎれ!!」


――ゴォォォオオオォォォォォォォ


速度が上がった!?ってか何その加速力!?流石に有り得なくない!?


「特別に搭載した『超加速装置』を最大パワーで発動したのよ!
 此れを使った際の最大時速は200㎞を超えるわ!最大時速が150㎞そこそこで加速装置もないDホイールじゃ太刀打ち不可能よ!!」


加速装置って……相変わらず、やる事がせこいわねアンタは!
仮にもライディングデュエルするなら、加速装置何て使用しないで自分のライディングテクニックのみでファーストコーナーを取りなさいって…


「勝てばいいのよ!何にしてもファーストコーナーは貰ったわ!!」

「……いいわ、せめて先攻くらいは譲ってあげるわよ。
 だけど亜美、アンタは公式ルールで禁止されてる加速装置まで使って先攻を取ったんだから、詰まらないデュエルはするんじゃないわよ?」

「えぇ、最高のデュエルを見せてあげるわ遊里……アンタを地獄に叩き落とす『死のデュエル』って言うモノをね!!」


何とも三流の悪役が言いそうなセリフだわ――まぁ、アンタにはピッタリだけどね?
来なさい亜美、闇に堕ちた三流未満には此処でご退場願うわ!!


「「デュエル!!」」


遊里:LP4000   SC0
亜美:LP4000   SC0



「私のターン!!『ヴェルズ・サモナー』を守備表示で召喚!
 そしてその効果で、デッキから『ヴェルズ・アクエリアス』を特殊召喚する!!」
ヴェルズ・サモナー:DEF1650
ヴェルズ・アクエリアス:ATK1900



行き成りマイナスレベルのモンスターが2体………てかアクエリアスはヴェルズ化した『憑依装着-エリア』か…半身が蟲って不気味だわ。
じゃなくて、レベル-4のモンスターが2体って事は行き成りダークエクシーズ――初手から何を呼ぶ気かしら?


「私はサモナーとアクエリアス、2体のレベル-4のモンスターでダークオーバーレイ!!
 暗黒の宇宙を舞いし邪悪なる怨念が、生者の魂を狩り尽くす!押しつぶせ闇よ!ダークエクシーズ!『ヴェルズ・コズミック・ドラゴン』!」

『グガァァッァアァァ!!!!』
ヴェルズ・コズミック・ドラゴン:ATK3000


此れは……ヴェルズ化した『銀河眼の光子竜』!?
光輝いてる部分が本来の青白色から、不気味な赤黒い色に変わってる以外は此れと言った変化はないけど、其れだけに不気味だわ……


「此れだけじゃないわ!ヴェルズ・コズミックの効果発動!
 このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除き、ライフを500ポイント払う事で、エクストラデッキから『ヴェルズ』1体を特殊召喚できる!
 私がこの効果で呼び出すのは、『ヴェルズ・ヒュドラー』!!
 そしてこの効果でエクシーズモンスターを呼び出した場合、私の手札2枚を呼び出したモンスターのオーバーレイユニットに出来る!!」
ヴェルズ・ヒュドラー:ATK2750   ORU:0→2
亜美:LP4000→3500



うっわ~~……反則効果も此処まで来ると国宝級だわ。
オーバーレイユニット1つでこの効果は、壊れも良い所でしょうに……本気で、ダークシグナーは勝つためなら手段は選ばない訳か……


「カードを1枚セットしてターンエンド。」

「アタシのターン!!」


遊里:SC0→1
亜美:SC0→1



よし、この手札なら行ける!!
相手フィールド上にのみモンスターが存在する場合、手札の『暗黒のバフォメット』は特殊召喚できる!


暗黒のバフォメット:ATK1400


そして、バフォメットの特殊召喚に成功した時、デッキからチューナーモンスター『光速の幻獣王ガゼル』を特殊召喚できる!


光速の幻獣王ガゼル:ATK1500


「更に手札を1枚捨て、『THE トリッキー』を特殊召喚!!」
THE トリッキー:ATK2000


そして、チューナーモンスター『クイック・スパナイト』を通常召喚!!


クイック・スパナイト:ATK1000


「い、1ターンで4体のモンスターを光速召喚ですって!?」

「言ったでしょ、アタシのデッキはシンクロ特化の超速召喚デッキだって!一度走り出したら止まらないわよ?
 先ずは、レベル5のTHE トリッキーにレベル3のクイック・スパナイトをチューニング!!
 集いし魔法の胎動が、新たな世界を切り開く。光射す道となれ!シンクロ召喚、突き進め『ダーク・マジシャン・ガール』!!」

呼ばれて飛び出て何とやら!全力全壊で頑張ります!!
ダーク・マジシャン・ガール:ATK2500


頼むわねガール♪
クイック・スパナイトの効果で、ヴェルズ・ヒュドラーの攻撃力を500ポイントダウンさせるわ!!


「く……!!」
ヴェルズ・ヒュドラー:ATK2750→2250


そして、此れだけで終わるとは思ってないわよね亜美?アタシのデッキの真骨頂は此処からよ!!
レベル4の暗黒のバフォメットに、レベル4の光速の幻獣王ガゼルをチューニング!
集いし願いが、天空(そら)を駆け抜ける疾風(かぜ)となる。光射す道となれ!シンクロ召喚、飛翔せよ『輝天龍 シルバー・ウィンド』!!


邪悪なる意思を宿したモノよ……今度こそ冥界に帰るが良い……
輝天龍 シルバー・ウィンド:ATK2500


「これは…まさか!!」


そのまさかよ亜美!!このターンでアンタの布陣は壊滅させて貰うわ!!
だけどその前にガゼルの効果発動!
ガゼルがバフォメットと共にレベル8以上のシンクロモンスターのシンクロ召喚の為の素材になった場合、アタシの手札は6枚になるわ!!

「バトル!ダーク・マジシャン・ガールで、ヴェルズ・ヒュドラーに攻撃!!」

ブラック・デアボリックエミッション!!


あ~~~……前となんか技名が違うような気がするんだけど、またどっかでネタを仕入れて来たわねガールは?
まぁ、ガールのネタ振りは何時もの事だからこの際気にしないけどさ…


「ぐぅぅぅ……」
亜美:LP3500→3250


だけど僅かとは言え先手は取らせて貰った!
一気呵成に攻める!シルバー・ウィンドの効果を、シルバー・ウィンド自身に対して発動!
此れにより、シルバー・ウィンドはこのターン破壊されず、攻撃力は500ポイントアップする!!


我が力で、闇を断つ!
輝天龍 シルバー・ウィンド:ATK2500→3000(破壊耐性)


攻撃力はヴェルズ・コズミックと同等だけど、シルバー・ウィンドはこのターンあらゆる破壊を受け付けない――破壊系の罠は無力だわ!!
そして攻撃力は同じだけど、破壊耐性を得てるシルバー・ウィンドなら、ヴェルズ・コズミックを一方的に戦闘破壊できるのよ?

だからシルバー・ウィンドの効果はもっぱら対処しにくいって噂なんだけどね。
でもだからこそ燃えて来るわ!!――シルバー・ウィンドで、ヴェルズ・コズミック・ドラゴンに攻撃!轟け『シューティング・ストリーム』!!



――ドガァァァァァァァァン!!



「うわぁぁぁぁっぁぁあ!!!」


攻撃力は互角だから互いに戦闘ダメージは0だけど、此れでアンタの場はがら空きよ亜美!!
多少の戦略はあるでしょうけど、アンタが出し切って来たそれら全てをアタシは否定する――アンタ達はアタシの敵じゃないわよ亜美!!


「やるわね遊里……だけど、オーバレイユニットを持ったヴェルズ・コズミックが破壊されたとき、フィールド上に置き土産をするのよ?
 ヴェルズ・コズミックが破壊された時、自分フィールド上にレベル-3の『コズミックトークン』を2体で呼び出すわ!!」
コズミックトークン(星-3・闇・悪魔族):ATK500(×2)



やられても只では起きないって?
いいわ、己の最強の戦術で挑んで来なさいよ亜美――アタシのデッキが、其れを真っ向から粉砕してあげるから!!














 To Be Continued… 






登場カード補足



ヴェルズ・コズミック・ドラゴン(ヴェルズ化銀河眼の光子竜)
ランク-4    闇属性
ドラゴン族・ダークエクシーズ/効果
レベル-4モンスター×2
1ターンに1度、このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除き、ライフを500ポイント払って発動できる。
自分のエクストラデッキから「ヴェルズ」と名の付くモンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。
この効果でエクシーズモンスターを特殊召喚した場合、自分の手札2枚を特殊召喚したエクシーズモンスターのオーバーレイユニットにする。
オーバーレイユニットを持ったこのカードが相手によって破壊された場合に発動できる。
自分フィールド上に「コズミックトークン」(星-3・闇・悪魔・攻守500)を2体特殊召喚する。
ATK3000    DEF2500



ヴェルズ・アクエリアス(ヴェルズ化憑依装着-エリア)
レベル-4    闇属性
魔法使い族
モトウロアデコミルキデンシウコトイレイセガレソエトタ。
ムコリトニラカチガワヲテベスハンネャジキナテハ。
ATK1900    DEF1450