Side:遊里


ルドガー……そしてダークシグナー……貴方達の事は絶対に許さない!!
シグナーとダークシグナーの戦いには一切無関係な人を地縛神の生贄に使うなんてのは絶対に認めないわ!!

それ以上に、アタシとデュエルをするふりをしながら、その実は宇里亜にデュエルさせてたなんて……この怒り、欠片も残さず貴方達に届けるわよ!


「クックック……其れ位は吠えて貰わねば張合いもない。
 だが、我等を倒すのは容易ではないぞ?
 我等は夫々が廃棄された旧モーメントで待っている……其処で待つ我等を撃破し、お前達の決闘龍のカードでモーメントを制御すれば或は……
 尤もそれも夢物語に過ぎん!!貴様等が我等ダークシグナーに勝つ事など無理と知れ……そして無駄な足掻きはせずに滅びを大人しく待て。」

「ほざけ雑魚が!
 この世に絶対など有り得ん……絶対など神のまやかしだ!!絶対王者と言われる俺もまた、何時キングの座を次世代に明け渡すとも分からん。
 故に絶対的なモノなどこの世にはないと知れ!!…其れでもまだ挑んでくると言うのならば――その時に叩き潰すまでの事だ!!」


ジャック…!!

確かにその通りね……アタシ等に戦いを挑むなら、せめて一撃で4000ポイントのライフを消し飛ばすくらいのコンボを考えなきゃ無理よ。
だけどルドガー……貴方は絶対に触れてはならない物に触れてしまったわよ?……其れに触れた代償を払う覚悟は勿論あるわよね――!?


「触れてはならないモノだと?」

「貴方はアタシの逆鱗に触れた――デュエルは正々堂々受けるけど……アタシのフィールで吹き飛ばされても文句は言わないわよね……?」

「……良いだろう!本よりそう来なくては楽しむ事も出来ないからなぁ?
 お前のフィールで我等ダークシグナーを吹き飛ばせると思うならばやってみるが良い……そして、その先に待つのは絶望だけだと知るが良い!!」


だから?絶望の中にこそ希望があるのよ?パンドラの箱を読み直して来なさい『顔面ペイント親父』が!!












異聞・遊戯王5D's Turn45
『ダークシグナー大戦始動!』











Side:ブラン


顔面ペイント親父……成程、確かに言い得て妙かもな――マーカー付きの奴が言っても説得力は半減だけれどね。

だけど、そのマーカー付き……上条遊里がシグナーのリーダー格ってのは間違いなさそうだ………近い内に戦う事もあるかも知れないな。

其れに遊里とジャックは、俺がサイコパワーを全開にしても楽に勝てる相手じゃないってのは間違いないだろう。
だとしたら、アイツ等とのデュエルは楽しみで仕方ないな……まぁ、その為にはダークシグナーをぶっ倒さないといけない訳なんだが……まさかな…

「アンタがダークシグナーになってるとは……予想はしてたけど驚いたよ流石にね……」

「ブラン……そう言う貴女がシグナーとは……驚きよ……」


この力に覚醒したせいでアンタの弟――トビーを殺しちまったんだけどな……アンタが俺を怨んでても、其れに文句は言えないよ…


「……そうね……アレは仕方のない事故だったとは思っているわ。
 だけどねブラン、理解すると言う事と納得すると言う事は別問題なのよ……頭では理解していても、私は貴方を許せない……!!
 トビーの仇を取る為に、私は自ら命を捨ててダークシグナーになった……ブラン、貴女を滅する為に!!」


やっぱりそうだったのか……クソ、本気で『忌むべき印』だな此れは!!
だけど……説得力はないだろうけど、トビーは貴女にこんな事をしてほしいとは思ってないと思うんだ俺は……少し考えてみろよミスティ!!!


「考える事などない!!私はダークシグナーで、貴女はシグナー……そもそもが相容れない存在なのよ!!」

「其れを言われたら何も言えないだろ……だけど、貴女達の覚悟は受け取った……俺はダークシグナーもシグナーも纏めてぶっ倒すって決めた。
 例えそれが、子供の頃からの友であっても、敵対するなら容赦はしない……俺と戦う時には覚悟しろよミスティ……!!」

「貴女こそ覚悟なさいブラン……貴女の姿を見た事で、私の中の憎悪は更に燃え上がった……その魂を欠片も残さず焼き尽くすわ……!!
 私は遊園地跡の旧モーメントに居る――覚悟があるなら挑んで来なさい?……命を捨てる覚悟があるのならば…ね。」

「ミスティ……!!」

闇に紛れて……消えたか。
如何にもダークシグナーってのは、俺のサイコパワーとは違う力を持ってるみたいだ……何ともやり辛い相手って事だよな……
恐らく、サイコパワー全開の一撃で意識を刈り取るってのは無理だろうが――だったら、純粋なデュエルでケリを付けるだけだ。

特にミスティ……俺はアンタの憎しみを受け止めた上でアンタを倒さなきゃならない……其れがアンタとトビーに出来る償いだろうからな……








――――――








Side:遊里


「と、言う訳で態々ダークシグナーの方から出向いてくれて、しかも旧モーメントを護っていると言う事まで教えてくれたので、此れより掃討作戦開始!
 ダークシグナーは全部で7人……対してアタシ達シグナーは、龍亞が戦ったブランて子も入れて5人…最低でも2人が2回戦わないとだわ。」

先ずは各モーメント跡地に1人ずつ向かって、相手を撃破し次第次の目的地に向かうって言う感じになるけど、其れで良いわよね?


「是非もない……それ以外には思いつかんしな。
 相手を撃破した後には、俺達の持つ決闘龍のカードを使って、停止している旧モーメントを正常稼働させる…そう言う事だろう?」


その通りよジャック。
全てのモーメントを元に戻せば、少なくともサテライトの異常状態は元に戻るし、シティのモーメントの稼働も今よりさらに安定するからね。


まぁ、其れは其れとして、戦力配分だけど……サテライトの西B地区のモーメントにはアタシが行くわ、其処に亜美が居る訳だし。
流石に負けっぱなしって言うのは性に合わないモノ。


「ならば俺は東C地区へと行こう……如何にも其処はきな臭い……」

「なら私は北のZ地区に行くわ……牛尾さん、運転お願いできますか?」

「任せときな龍可ちゃん!……んで、お前も行くんだろ龍亞?妹だけ行かせるなんて出来ねぇよなぁ?」

「勿論!俺はシグナーじゃないから何が出来るかは分からないけど……龍可1人を戦いに向かわせる事なんで出来ないぜ!!」


良く言ったわ龍亞、其れでこそ男の子よ♪
龍可が簡単に負ける事は無いと思うけど、もしも危ない場合は貴方が助けてあげなさい?其れが『お兄ちゃん』の役目だからね?


「分かってるよ遊里!龍可は俺が絶対に護るから!!」

「うん、その意気やよし!!」

「頼りにしてるよ、お兄ちゃん♪」

「へへ、任せとけって!!!」


頼むわね?……で、鬼柳は如何するの?


「……俺はお前と一緒に行かせてもらう。
 お前が日堂亜美とやらにやられるとは思わないんだが……如何にも妙な感じがしてな……俺1人で旧モーメントにってのは満足できそうにねぇ…」

「?……アタシの行く道に何かあるって事?」

「さぁな……だが、モーメントはお前の親父さんが造ったんだろ?
 だとしたら、ダークシグナーがそいつを利用してお前に何かしないとも限らねぇし……何よりも、ルドガーの事は俺も許せねぇ。
 人の魂を犠牲に……しかも、お前と親しい奴を生贄にしやがった……もしもニコやウェストがって考えると、俺だって黙ってらんねぇんだ!!!」


成程………OK、じゃあ鬼柳はアタシと一緒にね。
ダークシグナーの方から態々出向いて来たって事は、恐らく本格的に活動を開始するって見て間違いないと思う……気を引き締めて行くわよ皆!!

「この世界をダークシグナーの脅威から護る為に……!!」

「俺達に負けは許されん!!己のデュエリストソウルを限界を超えて燃やして奴等を倒さねばならん!!」

「大丈夫……私達が力を合わせればきっと出来る!!」

「みんなが力を合わせれば……シグナー以外のデュエリストだって協力するぜ!!」

「俺達が力を合わせれば勝利は絶対だ!ダークシグナーを全部ぶっ倒して、ハッピーエンドで満足しようぜ!!」


無論目指すはハッピーエンド!!それ以外の結末は絶対不許可の却下よ?
全員生きて帰る事!!此れが絶対だからね?……其れじゃあ行くわ!!皆に決闘王の導きがあらん事を!!



さてと……覚悟は出来てるわね亜美、そしてルドガー……貴方達から受けた大きな借りを万倍にして返してやるわ!!纏めて叩きのめしてやる!!








――――――








Side:龍亞


うっへ~~~………こうやって走ってみると、ホントにサテライトってすっごい所だなぁ……シティ育ちの俺には想像できない場所だぜ。
多分色々大変なんだろうけど、遊里はこんな所で暮らしてるんだよね……ったく、本気で治安維持局ってトンでもないよ。おっちゃんもそう思うだろ?


「だな。
 『アレは冤罪でした』ってだけじゃ済まねぇ……治安維持局は遊里に正式に謝罪して名誉の回復に努めるのが筋ってもんだ。
 だが、実際には冤罪だったと言うだけで正式な謝罪はないし、遊里の名誉も回復されてねぇ……なのに長官様は面倒事を押し付けるって本気か?
 正直な事言うなら、俺としてはこんな事は受ける義理はねぇと思うんだが、遊里の性格的に捨て置くこたぁ出来ねぇってな…
 まぁ、なんにせよ覚えときな龍亞、龍亞ちゃん……世の中ってのは目に見える物だけが真実じゃねぇって事だ…見た目だけに惑わされんなよ?」

「うん……肝に銘じとく……」

「流石は牛尾のおっちゃん、良い事言うぜ!!」

遊里の冤罪を見抜いて、其れをきっかけにセキュリティに見切りを付けて、自分の正義を貫いたってカッコイイじゃん!!
其れに、遊里のデッキも持ち出してくれたんでしょ?……ありがとう牛尾のおっちゃん、遊里を助けてくれてさ。


「礼を言われるほどの事じゃねぇ……人として当然の事をしただけよ。
 尤も、俺も若い頃に遊戯に一発かまされなかったら碌でもない人間になってたかも知れねぇがな……」

「牛尾さん、遊戯さんと面識あるんですか!?」

「おうよ、何を隠そう俺は遊戯と同じ高校に通ってて、まぁアイツの先輩だったって訳だ。
 で、当時俺は風紀委員だったんだが、鉄拳断罪上等の不良風紀委員で、遊戯を脅して金せしめようとしててなぁ……だが、そうはならなかった。
 遊戯から深夜の学校に呼び出されて、度胸試し持ち掛けられた挙げ句にトンでもねえ『罰ゲーム』喰らってな……それからはすっかり真人間よ。
 ただ、一つだけ困ったのは、アレを喰らった後しばらくは金に恐怖を覚えて100円玉すら触れなくなっちまったことだけどな……」

「「うわ~~~……」」


おっちゃんも色々あったんだね……てか初代王者と面識アリとか、俺的にはそっちに驚きだぜ。
其れよりも、そろそろ目的地だ。準備は良いか龍可?


「え?……エンシェントフェアリー?……うん、分かった……今行くね。」


――パァァァァァァァ………


な!?龍可が消えた!?……エンシェントフェアリーって、若しかして精霊世界に行っちゃったのかよ!?
ダークシグナーとの戦いの前だってのに……おっちゃん車止めて!!龍可が精霊世界に行って消えちゃったんだ!!!


「はぁあ!?何言ってんだ龍亞!?精霊世界って……って、本当に居ねぇ!?
 まさか、車の振動で落ちちまったってのかよ!?……だとしたら大事だぜ、探さねぇと!!!」

「だ~か~ら~~、精霊世界に行っちゃったんだってば!!」

「あ~~~……其れも可能性に入れてだ。
 そうかも知れないが、お前さんの見間違いで、実は落っこちたって可能性もゼロじゃないだろ?……取り敢えず探すぞ!!!」


釈然としねぇ……まぁ、一理あるかもだけど龍可は目の前で消えたんだから、車から落ちた訳じゃない。
多分さがしても見つからないとは思うけど……だけど、そうなるとダークシグナーと戦う相手が居なくなっちゃう……だったら俺がやる事は1つ!!

「おっちゃん、龍可は大丈夫だからこのまま目的に向かって!
 俺が龍可の代わりにダークシグナーとデュエルする!!……そうすれば、龍可の方からやって来てくれるはずだから…探すよりも確実だよ!!」

「はぁ!?マジで言ってんのかお前!?
 シグナーでもない奴がダークシグナーとのデュエルなんて、危険極まりないだろうが!!!」


其れでもだよ……龍可が居ない今、俺が龍可の代わりをしなくちゃダメだ。
勿論龍可が来たらデュエルには加わって貰うけど、龍可が居ない今、何もしないで指を咥えてるなんて兄貴として格好付かないじゃん?


「まぁ……そうかも知れないが……本当に良いのかよ?」

「勿論……男に二言はないってね!!」

「……よし!!この牛尾哲、お前の漢気に感動したぜ龍亞!!
 止めろなんざ言わねぇ……お前さんの思う通りに、納得するまでやってみろ!!エンジンフルスロットルで目的地に向かってやるぜ!!!」


ありがとうおっちゃん!


待ってろよダークシグナー……俺が何処までできるかは分からないけど、だけど俺だってデュエリストだ、一泡吹かせてやるぜ!!!








――――――








Side:龍可


………此処は…カードの精霊の世界……随分久しぶりね此処も。
それで、何があったのエンシェントフェアリー?態々私を此処に連れて来るくらいだからよっぽどの事が有ったんだよね?


えぇ……龍可、貴女のデッキには白き一角の獅子――『レグルス』と言うカードがあるでしょう?

「レグルス……うん、私のデッキの先陣を切る獅子だけど……まさか、レグルスに何かあったの!?」

はい……彼は勇猛な獅子故に、現実世界でのダークシグナーの動きに敏感でした。
 そして、ダークシグナーが齎した闇に立ち向かい……そして負けて堕ちてしまったのです……深き闇の道に。
 最早私の力だけではレグルスと闇から救い出す事は出来ません…其れゆえに貴女の力が必要なのです龍可…如何か力を貸して下さい。』


断る理由がないわエンシェントフェアリー。
自分のデッキの精霊が闇に堕ちたなんて絶対に嫌!!……勿論協力するわ。

だけど、目的を果たしたらすぐに現実世界に戻してね?……多分、龍亞がダークシグナーに挑むつもりで居ると思うからね……


勿論その心算です……行きましょう龍可!

「うん!」

私が戻るまでの間、そっちをお願いね龍亞……!!必ず戻るから其れまで持ち堪えて――!!!














 To Be Continued… 






登場カード補足