Side:遊里


「遊里、ジャック!」

「アイン!おかえり、龍亞は見つかった?……って、如何したのよ龍亞、傷だらけで……!!」

「しかも気を失っているだと?……何があったんだ!?」

「スマナイ……少しだけ割って入るのが遅かった。最後の一撃を防ぐ事は出来たんだが……龍亞は『サイコデュエリスト』と戦っていたらしい。
 傷はそのデュエルで付いたものだろうな……何とか耐えて居たみたいだが、私が来た事に安心して緊張が切れたらしい……」


サイコデュエリストって……確かフィールとはまた違う力を使うデュエリストだったわよね?
結構危険な連中だった筈だけど、何でそんな奴と龍亞がデュエルをしてたのかしら?龍亞がそんな奴に態々挑む理由も見当たらないんだけど?


「……龍亞が戦って居た相手はサイコデュエリストであると同時にシグナーだったんだ。其れも龍可と同じ痣を持つ…!!」

「「龍可と同じ痣を持つシグナー!?」」


な……如何言う事よ其れって!?痣の重複発現!?てかシグナーだったら何で龍亞を襲うのよ!?意味分からないわ?


「彼女――ブランシュ・ノーチラスは、シグナーでありながらシグナーに対して敵対の意思を持っているようだった。
 尤も、アイツ自身もダークシグナーを倒す心算ではあるらしいが、ダークシグナーを全て倒した後はシグナーもと言う事らしい。
 『堕ちた赤が魂を狩に行く』と伝えておけと言っていた……」

「言うではないか……狩れるモノならば狩ってみるが良い!
 それ以前に本来ならばターゲットではない筈の龍亞をこんな目に遭わせた時点で、そいつは只の破壊者に過ぎん!
 仮に龍亞からデュエルを挑んだにしても、此処までやる必要などなかった筈だ……!!」

「其れは言えてるわねジャック……ダークシグナーとシグナーの両方を潰して何がしたいか知らないけど、喧嘩売る相手間違えたわよソイツ。」

大体にして、弟分をこんだけやられて黙ってられるほどアタシは気が長くないしね……

アタシ達の前に現れるのはダークシグナー撃破後だろうけど、アタシの前に現れたその時は龍亞がやられた分を3倍にして返してやるわ……!!













異聞・遊戯王5D's Turn41
『進め!撃ち抜け!鉄砲玉!』











Side:クロウ


さてと……ダークシグナー共の情報が少しでも欲しい所だが、早々簡単に手に入る情報じゃねぇよなやっぱり。
そもそも、ダークシグナーの事を知ってる奴はシティとサテライトを合わせてもごくわずかな訳だしな――けど、何もしないってのはガラじゃねえ。

連中はサテライトには居るんだ、だったらどこかにアイツ等に繋がる何かが、痕跡がある筈だからな。
其れで有力なモンが見つかれば、儲けもんだぜ――敵を知り己を知れば、百戦危うからずって言うしな……まぁ、有力物は見つかってねぇが。

「色々嗅ぎまわってる俺にダークシグナーが挑んでくりゃ一番面倒がないんだが……シグナーじゃない俺に仕掛けて来る事はねえか……。
 だったらやっぱり俺が自分で見つけ出すしかねぇが………ん?なんだありゃ?」

気球?……いや、バカデカいバルーンか?
何かが引っ掛かってるてか、ぶら下がってるみたいだが………いぃ、アイツは遊里がこっちに戻って来た時に一緒に居た妖怪ピエロ!!


確か治安維持局の長官の直属って事を遊里が言ってたが……そんな奴がサテライトに何の用だ?
ダークシグナーとの一件を遊里達に任せたんなら、態々サテライトに来る必要もないし、状況視察ならサテライト地区のセキュリティで足りるだろ?

其れなのに態々………へ、コイツは如何にも臭うぜ!
あの妖怪ピエロ、何か重大な目的があってサテライトに来た筈だ――だったら何か有力な情報だって持ってるに違いねぇ!

如何やら鴨がネギ背負って来てくれたみたいだな?お前が知ってる事を教えて貰うぜ妖怪ピエロ!!




着陸したのはあの廃ビルか……よし!








で、廃ビルに来た訳だが……何してやがんだあの妖怪は?
何かを探してるみてぇだが……この廃ビルに特別なモンは無かったよな?精々壊れた重機類と適当な廃材がある位の筈だぜ?


「ふむ……此処はまだダークシグナーの影響はないようですね……果たしてあの掃き溜めの小娘が何処までやれるかですね。」

「掃き溜めの小娘ってのは遊里の事か?ったく良く言うぜ、テメェ等が冤罪でサテライト送りにしたくせによぉ。
 大体にして、その遊里にダークシグナーの事を任せておきながら、掃き溜めの小娘呼ばわりたぁ如何言う了見か聞かせて貰うぜ妖怪ピエロ!」

「!!貴方は…!!!」


鉄砲玉のクロウ・ホーガン様だ。
本当は、じっくりとテメェからダークシグナーの事を聞いてやる心算だったが、ダチ公を扱き下ろされたとなっちゃ黙ってられねぇ!!

遊里はテメェの身を懸けてダークシグナーとの戦いに臨んでんだ……其れを貶すような物言いは、この俺が許さねぇ!!


「此れは此れは失言でしたね……取り消しましょう。
 ですが、貴方は私からダークシグナーの何を聞きたいのです?シグナーでない貴方が出来る事など有りませんよ?」

「ハ!出来る事が有るかどうかなんざやってみなけりゃ分からねぇだろ?
 其れになぁ、碌でもない連中がこのサテライトで好き勝手するってのはどうにも我慢できねぇ……俺もダークシグナーをぶっ倒そうと思ってな!」

「イ~ッヒッヒッヒ!此れは何とも滑稽!
 シグナーでなければダークシグナーに対抗する事は出来ません!更に、彼等を倒せるのは特別な『決闘龍』のカードのみ!
 其れを持たない、所詮はサテライトのドブネズミに過ぎない貴方に一体何が出来ると言うのです?」


ドブネズミねぇ?……言ってくれるじゃねぇか?
だけどな、ドブネズミにゃドブネズミの誇りってもんがあるんだぜ?

何より、ドブネズミってのはテメェの縄張りには敏感でなぁ?其処で好き勝手してくれる奴を黙って見てる事なんざ出来ねぇんだよ!


「ドブネズミである事に誇りを持つとは、サテライトの人間の考えは分かりませんね。
 キシシシシ……良いでしょう、身の程知らずの死にたがりが何処まで足掻けるかを見るのもまた一興!
 お望み通り、私の知る限りのダークシグナーの情報を貴方に教えて差し上げましょう――但し、私にデュエルで勝てたらの話ですがね!」

「デュエルで力を示せってか?……ハッ、薄気味ワリィ妖怪ピエロかと思ったら、デュエリストのルールは弁えてるじゃねぇか!
 良いぜ!!デュエルで片を付けるってのは、デュエリストにとって一番の方法だ――やってやるぜ妖怪ピエロ!!」

だけどな、こう見えて俺はサテライト最強の一柱って言われてるんだぜ?
シティの、其れも治安維持局のお偉いさんが相手にするには、少しばかり乱暴なデュエルになっちまうかもしれねぇが……構わねぇよな?


「ヒッヒッヒ……お好きなように。」

「その気味の悪い薄ら笑いを消してやるぜ!!」



「「デュエル!!」」


クロウ:LP4000
イェーガー:LP4000




先攻は貰うぜ!俺のターン!!!

……おし、コイツは中々良い手札だ――手加減なしで行けって事だな?勿論その心算だぜ!
俺は、『BF-蒼炎のシュラ』を攻撃表示で召喚!


BF-蒼炎のシュラ:ATK1800


「更にコイツ等は、俺のフィールドに自分以外の『BF』が存在する場合に特殊召喚できるモンスターだ!
 一気に行くぜ?『BF-残夜のクリス』『BF-黒槍のブラスト』『BF-疾風のゲイル』!!!」
BF-残夜のクリス:ATK1900
BF-黒槍のブラスト:ATK1700
BF-疾風のゲイル:ATK1300


「ほう?一気に4体のモンスターを……吠えるだけの事はありますね?」

「おぉっと、この程度で驚いてくれるなよ?俺のデッキの真骨頂は此処からだぜ!
 俺は残夜のクリスと、蒼炎のシュラ、2体のレベル4モンスターでオーバーレイ!!
 黒き烈風よ、大地を駆け抜け蒼空を斬り裂け!エクシーズ召喚!吹き荒ぶ風、『BFT-雷鳴のイーグル・レイン』!!」

『オォォォォォォ!!!』
BFT-雷鳴のイーグル・レイン:ATK2200



更に、レベル4の黒槍のブラストに、レベル3の疾風のゲイルをチューニング!
黒き嵐、今翼となりて暴風を巻き起こせ!シンクロ召喚!!穿ち抜け、『BF-極夜のポーラスター』!!!


『ハァァァァァァァァ!!!』
BF-極夜のポーラスター:ATK2400



「極夜のポーラスターが存在する限り、俺のフィールド上の闇属性モンスターの攻撃力は500ポイントアップするぜ!!」
BFT-雷鳴のイーグル・レイン:ATK2200→2700
BF-極夜のポーラスター:ATK2400→2900


「先攻ターンは攻撃できねぇ……カードを1枚セットしてターンエンドだ。」

「私のターン!……行き成りシンクロモンスターをとエクシーズモンスターを並べるとはお見事。
 ですが、その程度の戦術は私には通用しません!私は『道化の祈祷師』を召喚!」
道化の祈祷師:DEF1000


「道化の祈祷師の召喚に成功したとき、手札を1枚捨てる事で、デッキから儀式モンスターと、儀式魔法を1枚ずつ手札に加えます。
 私は手札の『道化の霊媒師』を墓地に捨て、デッキから『道化の究極ステージ』と『道化王-マッド・ジェスター』を手札に加えます!!」


速攻の儀式召喚……儀式デッキか!


「私は手札より儀式魔法『道化の究極ステージ』を発動!そしてこの瞬間に墓地の『道化の霊媒師』の効果!
 『道化』と名の付く儀式モンスターを儀式召喚する場合、墓地のこのカードを除外する事で必要なリリース分として扱う事が出来ます!!」

「なに!?」

「キッヒッヒ…!此れで私の最強モンスターが呼び出せます!
 墓地の道化の霊媒師の魂を生贄として現れなさい!儀式召喚、『道化王-マッド・ジェスター』!!」

『キヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!』
道化王-マッド・ジェスター:ATK0



道化王-マッド・ジェスター!?
レベル8なのに攻守ともに0のモンスター……って事は効果狙い何だろうが――どんな効果を持っていやがるってんだ?


「気になりますか?では道化王の力をお見せしましょう!
 道化王-マッド・ジェスターで、BF-極夜のポーラスターに攻撃!!」

「な、攻撃力0の道化王で、攻撃力2900のポーラスターに攻撃だと!?」

「ヒッヒッヒ!この瞬間にマッド・ジェスターの効果発動!
 マッド・ジェスターがシンクロモンスターまたはエクシーズモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずにそのモンスターを破壊します!
 そして更に、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与えるのです!やりなさい!『ヘル・エンターテイメント』!!!」


――バガァァァァァァン!!!


「どわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
クロウ:LP4000→1600
BFT-雷鳴のイーグル・レイン:ATK2700→2200



俺のモンスターを一方的に破壊して、更にダメージまで……イーグル・レインの攻撃力も元に戻っちまったか…!!


「キッヒッヒ!!
 現在のデュエル界は、シンクロモンスターとエクシーズモンスターが席巻していると言っても過言ではないでしょう。
 実際に殆どのデュエリストが、シンクロかエクシーズを使用し、デュエリストによっては其の双方を採用していますからね?
 ですが逆を言うならば、シンクロとエクシーズを完全に封じてしまえば、大抵のデュエリストのデッキは大きくその力を失います!
 そう、私のデッキはアンチシンクロ&エクシーズ!貴方のデッキでは勝つ事は出来ませんよ!!」

「アンチデッキかよ………せこい事しやがって!!」

「なんですと?」


舐めた事言ってんじゃねぇ!
シンクロとエクシーズにメタ張ったデッキ使って、其れで勝って満足だってのか?……笑わせんな妖怪ピエロ!

確かに今のデュエル界を席巻してるのはシンクロとエクシーズってのは間違いねぇ。
だが、だからこそ俺達デュエリストはその中から自分だけのデッキを作って、そしてデュエルの中で昇華させてるんだぜ?

そうやってデュエリストと共に戦って成長してきたデッキが安易なアンチデッキなんかに負けるかよ!
其れにシンクロもエクシーズも、詰まる所、その力を100%引き出せるかどうかはデュエリストの腕だ……カードの強さだけじゃ決まらねぇ!!


「ドブネズミ風情が……口だけは一人前ですね?
 ならば、このアンチデッキを破って見せなさい!取るに足らないサテライトのゴミ屑デュエリストが!カードを1枚セットしてターンエンド!」

「治安維持局長官の腰巾着の分際で随分と強気じゃねぇか?そんなにアンチデッキが頼りになるのかよ?」

だったらお前は俺の敵じゃねぇぜ?
アンチデッキを使った位で勝てるほどデュエルは甘いモンじゃねぇ……この鉄砲玉のクロウ様が其れを教えてやるぜ!!

「俺のターン!!」

舐めたデッキを使ってくれた事を、たっぷり後悔しやがれ妖怪ピエロ!!













 To Be Continued… 






登場カード補足



道化の究極ステージ
儀式魔法
「道化王-マッド・ジェスター」の降臨に必要。
自分の手札・フィールド上から、レベルの合計が8以上になるように モンスターをリリースしなければならない。
また、自分のメインフェイズ時に墓地のこのカードをゲームから除外し、 自分フィールド上の儀式モンスター1体を選択して発動できる。
このターン選択した自分の儀式モンスターはカードの効果では破壊されない。