Side:遊里


 呼応するアタシのデッキとジャックのデッキ。

 間違いない…あのデッキにはシルバー・ウィンドの仲間が居る。
 圧倒的な力を持った『龍』のカードが…


 「デッキが光っただと?…ふ、面白い事が起きそうだ。」

 「面白いかどうかは別として…退屈だけはさせないわよ?」

 シティの絶対王者、ジャック・アトラス。
 この人は、多分アタシが今まで戦ってきたデュエリストの中でも格段に強い。

 でも、負ける気は毛頭無いわよ?
 デュエルは楽しむものだけど、やる以上は――やっぱり勝ちたいもの。


 「ソレは俺とて同じ!
  己が全力をぶつけ、そして相手を叩きのめして得た勝利でなければ意味はない。
  そしてその相手は俺に匹敵するデュエリストでなければとても満足など出来よう筈も無い!
  だからこそ、上条遊里、俺を楽しませて見せろ!この絶対王者ジャック・アトラスを倒して見せろ!」


 言われなくてもその心算よジャック!

 それに、シルバー・ウィンドが反応したカードの正体も知りたいからね。










 異聞・遊戯王5D's Turn4
 『銀の風が凪ぐ時に…』










 さてと…けど本当に良いの?
 サテライトの道路事情は極めてよくない、ライディングデュエル用のコースなんて無いわよ?


 「逆を言えば全てがレーンである世界…コースなど有ってないようなモノ。
  絶対王者のライディングデュエルに整備されたコースなど不要!
  必要なのは強いデュエリストとDホイール!ソレが揃えば走る場所など選ばぬわ!」

 「そう来ないとね…!」

 その通り、サテライトのライディングデュエルは、サテライトの全てがコースになる。
 瓦礫だらけの道路に朽ちた廃工場、地下鉄の跡地……ありとあらゆる物がね。

 だからこそ障害物だらけで、オートパイロットでも走るのが難しいけど――ソレが面白いのよ。

 此れは楽しめそう。
 弥生、スタート合図頼める?


 「おう…ってもチェッカーフラッグなんて上等な物は無いから此れで代用な。」

 「待て、その巨大な風呂敷を今一体何処から出した!」

 「実に都合よく其処に落ちてた。」

 「本当に都合が良いわね…」

 まぁ、いっか。


 それじゃあ、始めましょうか?
 絶対王者の力を見せてもらうわよ、ジャック・アトラス?


 「ふ、貴様こそ『女帝』の異名を存分に発揮するが良い上条遊里!」

 「退屈はさせないわ。フィールド魔法『スピードワールド』セットオン!」

 『『デュエルモードスタンバイ。オートパイロット。』』


 ――ヴン…


 此処からはスピードが支配する世界、行くわよ?

 弥生!


 「んじゃあまぁ……ライディングデュエル、アクセラレーション!!」


 ――ドォォン!!


 「く…やっぱり速い…!」

 スタートダッシュで引き離す心算だったけど、流石にソレはさせてくれない訳ね?


 「当然だ。だが、このフルチューンされたホイール・オブ・フォーチュンと渡り合うとは、良いマシンだな。」


 此れはサテライトの仲間と協力して作ったDホイールだからね。
 仲間の思いもこの子には詰まっているのよ。

 ファーストコーナーは渡さない!!


 ――グン!


 「むっ!?ほう…そんな強引なドリフトでコーナーを奪うか!
  この俺が相手の背を見るなど一体何時以来の事か……来い遊里!」

 「行くわよ、ジャック!!」


 「「デュエル!!」」


 遊里:LP4000    SC0
 ジャック:LP4000    SC0



 「アタシのターン!『マックス・ウォリアー』を攻撃表示で召喚!」
 マックス・ウォリアー:ATK1800


 カードを2枚伏せてターンエンド。


 「様子見か?だが、この俺にそんな物は必要無いと知れ!俺のターン!」


 遊里:SC0→1
 ジャック:SC0→1



 「相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、チューナーモンスター『暗黒道化師のサギー』を特殊召喚出来る。」
 暗黒道化師のサギー:ATK600


 「更に『奇術王 ムーン・スター』を通常召喚!」
 奇術王 ムーン・スター:ATK900


 「レベル3の奇術王 ムーン・スターに、レベル3の暗黒道化師のサギーをチューニング!
  天を焼くシリウス、孤狼の蒼き瞳よ、地に縛られた牙無き愚者を噛み砕け!シンクロ召喚、蒼き爪牙『天狼王 ブルー・セイリオス』!!」

 『ウオォォォォォ!!』
 天狼王 ブルー・セイリオス:ATK2400



 レベル6のシンクロ召喚!
 流石と言ったところだけど……ソレを待っていたのよ!

 「トラップカード『シンクロ・トランスポーター』
  相手がモンスターをシンクロ召喚したとき、デッキまたは手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。
  アタシはこのカードの効果で、デッキからチューナーモンスター『月夜のシルバー・フォング』を特殊召喚!」
 月夜のシルバー・フォング:DEF800


 「此処でチューナーだと?…成程、俺のシンクロ召喚を読んでいたと言う訳か!
  だが、お前のモンスターではブルー・セイリオスの攻撃には耐えられんだろう!
  チューナーを残しておくのは、些か危険だな……ふ、誇り高き銀狼よ、蒼き天狼の牙の前に散れ!
  ブルー・セイリオスで、シルバー・フォングに攻撃!!」

 「当然そう来るわよね?同じ状況ならアタシだってチューナーを先に処理するわ。
  でも、だからこそソレも読めていた!トラップ発動『緊急同調』
  バトルフェイズ中に、モンスターをシンクロ召喚する!」

 「ソレも伏せて……前言撤回だ、様子見などではない……全力だったか!」


 当然でしょう?
 デュエルは常に全力全開――そうでなければ楽しむ事なんて出来ないわ!

 「レベル4のマックス・ウォリアーに、レベル3の月夜のシルバー・フォングをチューニング!
  集いし力が新たな地平を切り開く。光射す道となれ!シンクロ召喚、導け『冥天使 カイエン』!!」

 『はぁぁぁ!!!』
 冥天使 カイエン:ATK2500



 「攻撃力2500…ふん、此れでは攻撃は出来んな。カードを1枚伏せてターンエンド。」

 「アタシのターン!」


 遊里:SC1→2
 ジャック:SC1→2


 先ずは先手でダメージを奪った方が波に乗れるわね。
 ブルー・セイリオスの効果は厄介だけど、此れがあれば何とかなるし。

 行くわよジャック!冥天使 カイエンで、天狼王 ブルー・セイリオスに攻撃!『冥府の断裂』!!


 ――ズバァァ!!!


 ジャック:LP4000→3900
 「この程度のダメージは蚊に刺されたほども感じんな。
  極微量のダメージは受けたが、冥天使の攻撃力はブルー・セイリオスの呪いで2400ダウンする。」

 「ソレは覚悟の上よ…」
 冥天使 カイエン:ATK2500→100


 「更に、俺のモンスターが戦闘で破壊されたとき、手札の『執念深き復讐のソード・ストーカー』を特殊召喚出来る!
  そして、この効果で特殊召喚したソード・ストーカーの攻撃力は500ポイントアップする!」
 執念深き復讐のソード・ストーカー:ATK2000→2500


 此処で!!
 まさかこんな方法でモンスターを繋いでくるとはね……カードを1枚伏せてターンエンド。


 「俺のターン!」


 遊里:SC2→3
 ジャック:SC2→3


 「チューナーモンスター『富豪王 ヘル・グリード』を召喚!」
 富豪王 ヘル・グリード:DEF0


 「レベル6のブルー・セイリオスに、レベル1のヘル・グリードをチューニング!
  天頂に輝く死の星よ、地上に舞い降り生者を裁け!シンクロ召喚!切り刻め『天刑王 ブラック・ハイランダー』!!」

 『ムオォォォォ…!』
 天刑王 ブラック・ハイランダー:ATK2800


 ブラック・ハイランダー!
 シンクロ召喚封殺効果を持った七つ星のシンクロモンスター…!


 「ヘル・グリードがレベル7以上のシンクロモンスターの素材となった場合、俺はデッキからカードを1枚ドローする。
  今度は此方から行くぞ!ブラック・ハイランダーでカイエンを攻撃!『デス・ポーラ・スレイ』!!」

 「流石にソレを喰らったら拙いわね…トラップ発動『ガード・ブロック』
  戦闘ダメージを0にしてカードを1枚ドローするわ。」

 「だが、戦闘破壊は免れん!カイエンは両断されるのだ!」


 ソレは流石にね…でもカイエンはタダでは死なない!
 カイエンが戦闘で破壊されたとき、自身を破壊したモンスターの効果を無効にし、攻撃力を400ダウンするわ!


 天刑王 ブラック・ハイランダー:ATK2800→2400(効果無効)


 「無駄死にはしないと言うわけか…ターンエンドだ。」

 「アタシのターン!」


 遊里:SC3→4
 ジャック:SC3→4


 「手札の『ボルト・ヘッジホッグ』を墓地に捨て、チューナーモンスター『フェイズシフト・シンクロン』を特殊召喚。」
 フェイズシフト・シンクロン:DEF1400


 『チューニング・サポーター』を通常召喚し、墓地の『ボルト・ヘッジホッグ』を自身の効果で特殊召喚するわ。


 チューニング・サポーター:DEF300
 ボルト・ヘッジホッグ:DEF800


 「レベル1のチューニング・サポーターとレベル2のボルト・ヘッジホッグに、レベル5のフェイズシフト・シンクロンをチューニング!
  集いし星の瞬きが、聖なる力を呼び覚ます。光射す道となれ!シンクロ召喚、切り込め『プリンセス・ヴァルキリア』!!」

 『黒き天刑王…沈んで頂きます!』
 プリンセス・ヴァルキリア:ATK2500



 「レベル8のシンクロ…ソイツがお前のエースか!」

 「さて、如何かしら?先ずはチューニング・サポーターの効果で1枚ドロー。
  攻撃力は同じでもプリンセスの一撃はカイエンよりも重いわよ?
  プリンセス・ヴァルキリアで、天刑王 ブラック・ハイランダーに攻撃!『デュランダル・ブレイザー』!!」


 ――ズバァァァァ!!!


 「むおぉ!?………確かに同じ100ポイントでもフィールの強さが違うようだな…!」
 ジャック:LP3900→3800


 プリンセスの力は実感してくれた?
 カードを1枚伏せてターンを終了するわ。


 「俺のターン!」


 遊里:SC4→5
 ジャック:SC4→5



 「トラップ発動『ロスト・スター・ディセント』
  此れで墓地よりブルー・セイリオスを効果を無効にし、守備力を0の状態でレベルを1つ下げてフィールドに呼び戻す!」
 天狼王 ブルー・セイリオス:DEF1500→0   Lv6→5(効果無効)


 「そして、チューナーモンスター『ダーク・リゾネーター』を召喚!」

 『くけけけけけ。』
 ダーク・リゾネーター:ATK1300


 レベル8…!
 来るのね、シルバー・ウィンドが呼応した存在が…!


 「レベル5となったブルー・セイリオスに、レベル3のダーク・リゾネーターをチューニング!
  万物を焼き尽くす孤高の絶対王者よ、天地鳴動の力を揮うが良い!シンクロ召喚!降臨せよ『煌魔龍 レッド・デーモン』!!」

 『バオォォォォ!!!』
 煌魔龍 レッド・デーモン:ATK3000



 煌魔龍 レッド・デーモン、攻撃力3000!
 これがシルバーが反応した龍…!

 此れはまた、なんとも――楽しくなってきたわ!


 「フェイズシフトを素材にしたシンクロモンスターは効果破壊不可能だったな?
  ならば直接的に戦闘で砕くまで!!レッド・デーモンよ、天上のプリンセスを焼き尽くせ!『アブソリュート・ヘル・バーン』!」

 『バオアァァァァ…!』


 来た…でもプリンセスは破壊させないわ!
 トラップカード『同調障壁−シンクロシールド』
 発動ターンのみ、アタシのシンクロモンスターは戦闘で破壊されない!


 「護ったか…だがダメージは受けてもらうぞ!!」


 ――ゴォォォ!!!


 「きゃぁぁぁぁ!!」
 遊里:LP4000→3500


 高が500ポイントで凄い衝撃…!
 此れが絶対王者のフィール……効いたわ、物凄くね!


 「常に頂点に居てこその王者!
  そしてその王者の中でも唯一絶対の真なる王者、ソレがこの俺ジャック・アトラスだ!!
  カードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 「言うわね、でも実力が伴う奴のそういう物言いは嫌いじゃないわ。アタシのターン!」


 遊里:SC5→6
 ジャック:SC5→6



 プリンセスの効果発動。
 手札を1枚捨て、墓地からモンスターを呼び戻す。
 アタシは『リビング・シンクロン』を捨て、墓地から『冥天使 カイエン』を蘇生させるわ!


 冥天使 カイエン:ATK2500


 更に、今捨てた『リビング・シンクロン』の効果発動。
 リビング・シンクロンは、アタシのフィールド上のレベル5以上のモンスターのレベルを1つ下げて墓地から特殊召喚出来る。
 プリンセスのレベルを1つ下げて、『リビング・シンクロン』を墓地から特殊召喚!


 リビング・シンクロン:DEF0
 プリンセス・ヴァルキリア:Lv8→7


 大迫力の龍を見せてもらった礼よジャック。
 今度はアタシの龍を見せてあげるわ――アタシのデッキのエースをね。


 「ふ、いよいよエースの登場か?拝ませて貰おうでは無いか!」

 「確りとその目に焼き付けなさい?
  レベル7の冥天使 カイエンに、レベル1のリビング・シンクロンをチューニング!
  集いし願いが、天空(そら)を駆け抜ける疾風(かぜ)となる。光射す道となれ!」

 さぁ、出番よ!


 『グルルルル…』


 ふふ、やる気充分ね。

 「シンクロ召喚、飛翔せよ『輝天龍 シルバー・ウィンド』!!」


 ――バサァ…


 『クァァァァァァァァァ!!!』
 輝天龍 シルバー・ウィンド:ATK2500


 「6枚の翼を持った燻銀の龍…此れがお前のエース…!」

 「そう、天空を翔ける誇り高き龍神……此れがアタシのエース。」

 シルバー・ウィンドが巻き起こす銀の風について来れるかしら?
 疾風に吹き飛ばされないように注意しなさい。


 「ふ、相手にとって不足なし!
  その銀の風で、レッド・デーモンの紅蓮の炎を吹き飛ばせるか試してみるが良い!」

 「ソレが望みならそうしてあげる……勝利は絶対に譲らない!」

 いえ、勝利は絶対にもぎ取る!
 このデュエル…絶対に負けないわ!













  To Be Continued… 






 登場カード補足



 シンクロ・トランスポーター
 通常罠
 相手がモンスターのシンクロ召喚に成功した時に発動できる。
 自分のデッキか手札からレベル4以下のモンスター1体を選択して特殊召喚する。



 同調障壁−シンクロシールド
 通常罠
 このカードを発動したターン、自分フィールド上のシンクロモンスターは戦闘では破壊されない。