Side:遊里


「不動遊里だと!?……遊里が『アノ』不動博士の娘だと言うのか!?」

「マジかよ………いや、ジャンクパーツからDホイール組み上げちまう遊里の技術力を考えると、ある意味で納得しちまうけどよぉ…」


アタシの両親の事を知ったのは結構大きくなってから……お母さん――育ての母親で正確には伯母さんから聞いたんだけどね。
ゼロリバースが起きたあの日、アタシは伯母さんの所に預けられてたせいで難を逃れて、両親の死を知った伯母が養子縁組してくれたんだって。
上条って言うのはその伯母の性ね。

そう言えば、アタシが冤罪喰らった時に夫がアタシに離縁迫ってきて伯母さんは其れを止めて大喧嘩になってたけどあの後どうなったんだろ?


「離婚届が出されていますね……如何にも彼は貴女と切れたかったらしく、彼女と別れたそうですよ?」

「マジで?……まぁ、別れて正解だわ伯母さん……アタシが捕まった途端に手の平返したからねアイツ…」

其れは兎も角、何で貴方は私が不動博士の……お父さんの娘だって知ってるの?
戸籍上は『上条遊里』になってるから、『不動遊里』の存在は何処にもない筈でしょう?……其れなのに何で?


「実に簡単な事ですよ――私も当時モーメント開発機構に研究員として勤めていたのですよ。
 ですから、何度か赤ん坊の時の貴女に会っているのです――ゼロリーバースで行方不明になった貴女の兄にもね。」

「!?兄ですって!?そんなの初めて聞いたんだけど!!」

「えぇ、兄です……1歳年上のね。
 2人一緒に連れて来るのはと言う事で、交代で連れて来たようですが、ゼロリバースには兄が巻き込まれ行方不明に……
 まぁ、望みは薄いでしょうが生きている可能性もゼロではないでしょう……私が生きているのですからね。」


なんかもう、色々な事が一気に出て来たなぁ……?
取り敢えず、私の事は置いといて、シグナーとダークシグナーの事についてもっと話進めようか?今はそっちが大事だからね。











異聞・遊戯王5D's Turn32
『Return to Satellite』










「あの、シグナーとダークシグナーでちょっと質問なんですけど……良いですか?」


ん?如何したの龍可?


「うん……さっきの話でちょっと気になったの。
 ゼロリバースって言うのはダークシグナーが起こしたモノなんでしょ?
 世界の破滅を狙ったって思えなくもないけど、結局起きたのはシティとサテライトの分断……地球規模で見たら物凄く小さい事に思えて。
 それに、そもそもどうやてゼロリバースを起こしたのかな?モーメントって凄い機械だから暴走させるにしても一苦労じゃないかなぁ?」

「言われてみりゃ確かにそうだ……只の街の分断が目的ってのは可笑しな事だよなぁ?」

「それもそうね……何でゼロリバースは――モーメントの逆回転は発生したのかしら?」

「ふむ……当時、不動博士はモーメントの制御に、強い力を持った4体のシンクロモンスターのカードを使用していました。」


カードをモーメントの制御に?……まぁ、カードには不思議な力があるから、何かしらのエネルギーを制御する力があっても不思議じゃないけど。
若しかして、そのカードがダークシグナーによってモーメントから外されて暴走したっていうの?


「当たらずとも遠からずですね。
 ダークシグナーは制御装置であるカードを奪い、そしてコントロールを奪取してモーメントを逆回転させたのです……彼も研究員でした。」


成程……研究員がダークシグナーになったって言うなら逆回転させるのも容易よね…


「より正確に言うならば、ゼロリバース後にダークシグナーとなったと言う事ですね。
 ダークシグナーとは、死者が能力に目覚めた者……彼は自らを殺す事でダークシグナーと化したのです…多くの人を道連れにしてね。
 幸いにして制御に使われていたカードは、土壇場で不動博士が奪還し、ダークシグナーの手に落ちる事は有りませんでした。
 あの4枚のカードがダークシグナーの手に落ちていたら、本当に全てが終わっていたでしょう。」

「それ程のカードを制御装置に……一体何なの、そのカードって?」

「……彼方達の持つ『龍』のカードです。」


!!!アタシ達の持つ龍のカードって――シルバー・ウィンド!


「俺のレッド・デーモンが…」

「フォルト・スクライドが…」

「エンシェント・フェアリーが……」


「「「「モーメントの制御装置!?」」」」

「その通りです。
 彼方達の持つ龍のカードは、決闘龍…『デュエルドラゴン』と呼ばれる特別なカード――其れに秘められた強大な力は理解しているでしょう?
 現在のデュエル界を引率している2大勢力であるシンクロとエクシーズの中でもデュエルドラゴンの力は特出していますからね。
 ですが、それ故にデュエルドラゴンは持ち主を選びます――そう、己の力を正しく使ってくれる者を使用者と認めて力を貸すのです。」


強い力であるが故に、其れは使う者の心次第で救いにも滅びにもなりうるって事ね?
確かに、シルバー・ウィンドやレッド・デーモンが悪用されたら、其れはダークシンクロ以上に危険な存在に成りかねないもの。


「ゼロリバースで行方が分からなくなってしまったデュエルドラゴンのカードも、今は正しき使用者のと共に在る。
 しかも、うち一枚はそれらのカードをモーメントの制御に用いた不動博士の娘の手に渡っている……これ以上の運命はないでしょう。
 フォーチュンカップの開催を機に、4人ものシグナーが集まったと言うのは、私としても予想以上の結果です。
 ですが、同時に其れはダークシグナーとの本格的な戦いが近いと言う証でもあります。」

「かも知れないわね……直接的でないとは言え、既にダークシグナーとは接触した訳だし。」

「奴等が本格的に動き出す前に叩き潰したい所だな。
 俺と遊里が見たあの幻影が、過去のシグナーとダークシグナーの戦いだと言うならば、ダークシンクロの先には『究極神』の存在がある。
 其れがどんな物かは知らんが、碌でもない代物だと言う事は容易に想像が付く……絶対に復活させてはならんだろう?」


そうね……あの後で他のシグナーが究極神を倒したんだろうけど、ユウリとジャッキーじゃ敵わない相手だったからね。
もしそんなのが現代に復活したら、其れだけで大都市が吹き飛ばされかねないわ――何が何でも阻止しないとね。


「その通りです……彼等ダークシグナーの最終目的は、究極神を復活させ、この世に死と破滅を齎す事。
 彼方達シグナーは、其れを阻止する為に赤き竜によって選ばれた戦士なのです。」


戦士か……良いわ、どの道ダークシグナーを野放しにしておく心算はなかったし、やるならトコトンやって、その上でアタシ達が勝つ。
それ以前に、貴方は此れだけのメンツが揃ってて負けると思う?
少なくともアタシは、苦戦する事は有っても負ける事だけは絶対に無いと思ってるわ。
それは、もしもシグナー以外の弥生や龍亞がダークシグナーに襲われたとしても自信を持って言える……アタシ達は負けないわよ?


「ダークシグナーだか何だか知らねぇが、世界の破滅何て不満足な事を考えてる奴には俺が真の満足ってもんを教えてやるぜ。
 能力に目覚めた死者だろうと、無限煉獄の死神は其の鎌で刃向う奴の魂を刈り取るからなぁ?」

「私も……頑張る。
 世界の破滅なんて、そんなの絶対にダメ――皆と一緒に居られなくなるなんて絶対に嫌だから。」

「俺だって、シグナーじゃないけど精一杯力を貸すぜ!
 この世界がなくなるのは嫌だし、何より兄貴として龍可だけを危ない目に遭わせる事は出来ないからな。」

「精々闇の力とやらに溺れて挑んで来るが良い――俺達に歯向かったその愚かさを後悔させてやるだけだ!」


アタシだけじゃない、皆同じ気持ちよ?負ける気は更々ない!
今直ぐにでも、ダークシグナーとの戦いに向かっても良い位だわ――てか、貴方もそっちの方向に持って行く心算だったんでしょう?


「ばれていましたか……ならば隠す必要もないでしょう。
 ですが、生憎と大勢を一度に輸送できるヘリは現在出払ってしまっているので、Dホイール1台と人1人を輸送する事が出来ないのです。
 ですから遊里、先ずは先陣として貴女に単身サテライトに向かって貰います。
 恐らくは旧モーメントの跡地が彼等の活動拠点となって居る筈……となれば戦いの場はサテライトになる筈ですからね。」

「サテライトが戦場に……OK、先陣切ってサテライトに戻らせてもらうわ。
 サテライトの皆にもダークシグナーの事を教えてあげないといけないし、何よりもそろそろ皆が帰りを待ってるだろうしね。」

そんな訳で、一足先にサテライトに戻るわね?


「遊里……まぁ、お前なら大丈夫だろうが無理はするなよ?」

「分かってるって……だけど無理はしなくても、向こうから吹っかけてきたら受けて立つから。
 案外、アタシが1人だけで戻ったってのを知ったら襲ってくるかもしれないしね……まぁ、その時は返り討ちにしてやるわ。」

「だろうな……俺達も直ぐに行く!」


了解!んじゃ、お先に!!と…ジャック、鬼柳、龍可!!


――スッ……


「ふ……」

「成程……まぁ、月並みだが此れはアリだな。」

「うん!」


――コツン…!


拳を合わせてね♪で、屋上のヘリポートで良いのよね?Dホイールは?


「既に部下に命じてヘリポートに持って行かせてあります――時に、如何します?」

「へ?如何するって、何を?」

「貴女が望むなら『不動』の姓に戻る事も出来るのですが……」


其れは良いわ……物心ついた時からアタシは『上条遊里』だし、アタシにとっての親は伯母さんだからね。
今はアレだけど、事が済んだら一度挨拶に行く心算――伯母さんの方からサテライトに来るのは無理っぽいし。
てなわけで、アタシは『不動遊里』を名乗る心算は今のところないわ……もし気が変わったらその時はお願いするかもだけど。


「……そう言うと思いました。
 では一足先にサテライトに!ヘリの準備は出来ていますね?」

「勿論ですゴドウィン長官!既に彼女のDホイールの積み込みも完了しています故、何時でも出発できますです…ヒッヒッヒ。」


うおぉ!?何処から出て来たのよ妖怪ピエロ!?
マッタク気配を感じなかったわ……若しかして本物の妖怪!?……まさか、コイツがサテライトまでエスコート?……うわ、テンション下がる。

まぁ、サテライトまでの我慢ね……

ともあれ、久しぶりのサテライト――皆元気にしてるかなぁ?








――――――








Side:???


「ゲート・ブロッカーねぇ?俺のスピードを封じたぐらいで勝てると思ってんのかよ?
 其れに、お前等の戦法なんてお見通しだぜ?どうせガチガチのロックデッキなんだろ?」

ゲート・ブロッカーで俺のスピードカウンターの上昇を無効にし、更にそのリバースで何もかも封じ込めようってか?
甘いんだよ!俺のターン!!


???:SC0
セキュリティ:SC0→1



「チューナーモンスター『BF-極北のブリザード』を召喚!」
BF-極北のブリザード:ATK1300


「更に、極北のブリザードの効果で、墓地の『BF-黒槍のブラスト』を守備表示で特殊召喚!」
BF-黒槍のブラスト:DEF800


「そして、俺のフィールドに『BF』が存在する時、手札の『BF-疾風のゲイル』は特殊召喚できる!」
BF-疾風のゲイル:ATK1300


さぁてと、行くぜ!
レベル4の黒槍のブラストに、レベル2の極北のブリザードをチューニング!
漆黒の力!大いなる翼に宿りて神風を巻きおこせ!シンクロ召喚!吹き荒べ、『BF-アームズ・ウィング』!!


『フオォォォォォォ!!!』
BF-アームズ・ウィング:ATK2300



続いて疾風のゲイルの効果発動!1ターンに1度、相手モンスターの攻守力を半分に出来る!
コイツで、ゲート・ブロッカーの守備力を半分にしてやるぜ!


『な!?』
ゲート・ブロッカー:DEF2000→1000


未だだぜ?今度は暁のシロッコの効果発動!
1ターンに1度、フィールドのBF1体に、他のBFの攻撃力を集約できる!
この効果で、アームズ・ウィングに暁のシロッコと疾風のゲイルの攻撃力を集約させる!!


BF-アームズ・ウィング:ATK2300→5600


「そしてコイツで終いだ!手札からトラップカード『デルタ・クロウ-アンチ・リバース』
 俺のフィールド上のモンスターが『BF』3体のみの場合、コイツは手札から発動できる!
 でもって、コイツの効果は相手フィールド上にセットされた魔法と罠を全て破壊するぜ!!」


――バリィィィン!!!


『し、しまった!!』

「止めだ!BF-アームズ・ウィングで、ゲート・ブロッカーに攻撃!
 そしてこの瞬間にアームズ・ウィングの効果発動!アームズ・ウィングは守備表示モンスターを攻撃する時、攻撃力が500ポイントアップする!
 更にアームズ・ウィングは守備モンスターを攻撃してもダメージを与える貫通能力も持ってるぜ!!」
BF-アームズ・ウィング:ATK5600→6100


喰らいやがれ『ブラック・チャージ』!!!


――ドドドドドドド……ズバァァァァァ!!!


『ぬおわぁぁぁぁぁぁ!!!!』
セキュリティ:LP4000→0


へっ、俺と戦うには全然力不足だぜセキュリティ!
その程度の実力じゃ、どんなに頑張っても俺に勝つ事なんざ出来ねぇよ!!んじゃな~~~、アバヨ!!





ったく、本気で弱いなアイツ等……まぁ、そのおかげで俺も難なくガキ共の為に色々調達できんだけどな。
大体不当に押収しときながら、倉庫で肥やしにしてるんじゃ勿体ないぜ……ちゃんと使ってくれる奴が使った方が物も喜ぶってモンだ。



――バババババババババ……



ん?ありゃ治安維持局のヘリじゃねえか?
何だってサテライトに……あ、そう言えば遊里の奴がシティの大会に出場して優勝したって聞いたが、それと関係あんのか?


へへっ、行ってみるか!如何やら面白い事が起きそうだからな!















 To Be Continued… 






登場カード補足