Side:遊里
サテライトの夜は静かだわ…シティと違って余計な明りも無いから月や星が綺麗に見える。
シティに居たら味わう事の出来ない、此れは絶景ね。
「よう、月見か?良い満月だからな。」
「牛尾…えぇ、こんな時にはね。序でにこれも♪」
サテライトじゃ中々手に入らない高級酒。
一杯如何?
「そりゃ頂くが…お前さん未成年じゃなかったか?」
「サテライトを低く見て、サテライトの住民を卑下するシティの法律に、サテライト住民が従う義理は無い。」
「違いねぇや。」
「お、なんだよお前等いいもん有るじゃねぇか!ずるいぞ2人で!」
あ、弥生!…それから宇里亜や皆も!
ふふ、どうせだから皆でお月見しようか?
「賛成!おい、誰か肴持って来いよ!!」
「どうせだからあの廃ビルの上に行かねぇか!?」
「いいな!!」
ホント、サテライトの人達って仲間意識強いな〜。
ちょっとしたいざこざは起きるけど、大事になる事はあんまりないしね……セキュリティが絡まなければ。
シティと比べれば不便は有るけど、だけどその分皆が工夫して生きてる。
サテライトの皆は強いわね……心が。
異聞・遊戯王5D's Turn2
『サテライトの日常』
Side:???
ち、ケチがついたぜ捕まるたぁな。
おまけにサテライト送りとはついてねぇ……クソッタレが。
この俺様が何でこんなクズだらけの場所に…面白くねぇ!
――ドンッ
「ちぃ…オイこら何処見てほっつき歩いてやがんだコラァ!!あぁ!?」
「なんじゃあ?ぶつかってきたのはそっちじゃろうが!…見ない顔じゃな…新参者じゃろお前?」
あぁ?だったら如何だってんだ?
「サテライトにはサテライトのルールがあるんじゃ…シティから来たからってデカイツラしてると痛い目に遭うからのう?
優しいワシからの忠告じゃあ……まぁ、ワシは争いを好まんから良いがな。
じゃが、サテライトの人間は存外気が粗い奴が多い…わざとぶつかって因縁なんぞつけん方が身のためじゃぞ。」
「んだとコラ?爺みたいな喋りかたしやがって、ムカつくヤロウだな。
俺を誰だと思ってやがる、シティの裏デュエル会で最強と言われていたアウトロー鬼瓦様だぜ?」
「知らんのう、興味も無いわい。」
テメェ…死にてぇのか!!
「はい、其処までだ。」
「おぉ、弥生ちゃんか。」
「あ?何だこのアマ……どかねぇとブッ飛ばすぞ?」
「やってみな…てか、あんまし無意味に喧嘩売るなよ。
何をやってサテライトに来る事になったかは知らないが、そんなんじゃ此処では生きて行けないぞ?」
け、生きてく心算なんざねぇよ。
適当な時にシティに舞い戻ってやるんだからな!!
「止めた方が良いと思うぞ…絶対失敗するから。」
「知るかよボケ!フン、丁度良いテメェからブッ飛ばしてやる!!」
「人の話し聞かない奴だな…」
るせぇ、テメェ等サテライトのクズなんぞ話すに値しねぇんだよ!!
覚悟しやがれ!!
――――――
Side:遊里
「で、結果被弾2発で撃沈して、その後デュエルでもコテンパンにしたと。」
「あぁ、サテライトの厳しさを教えてやった。」
ご苦労様。
けど、ソイツも典型的なシティ至上主義者ね?
サテライトに来たって事は、先ず間違いなくシティで犯罪やったに違いないのに…
「だろうな、マーカー有ったし。」
「なのに何を勘違いしてるのやら……サテライトに来たら、その時点からサテライトの住人なのにね。」
暫くは彼方此方で諍いが起こるかもしれないわね…まぁ、牛尾が居れば大丈夫だと思うけど。
あ、スパナ取ってくれる?
「はいよ、まぁ牛尾の旦那が居れば大概のいざこざなら何とかなると思うけどな。
それにだ、もしもデュエルになればアンタの出番だろ?」
「弥生がやってくれても良いわよ?女王様なんだから。」
「いやいや、女帝様には及ばないって?」
何よそれ?ふふ、面白いわね弥生は。
「あ〜〜〜〜、テメェはさっきのアマ!!」
「あん?あぁ、お前か…何か用か?」
誰?
「今し方話した馬鹿だ…」
「あぁ、…随分派手に整形手術をしたものね?」
「元があんまりにもブス男だったんでつい。」
「成程。良かったわね、美男子に整形してもらって♪」
「て、てめぇらぁあ…!!!…って、なんだ?随分良さそうなDホイール持ってるじゃねぇか?
サテライトじゃあ碌なモンがねぇと思ったが…こりゃ使えそうだなぁ?さて、ドレほどの…」
「触るな!!」
「!!」
アタシのDホイールにその薄汚い手で触れるな。
この機体は皆で組上げた大切なモノ…貴方が触れて良いものじゃないわ。
「あんだぁ、サテライトのメスガキが偉そうに…デュエルでボコボコにしてやろうか?」
「デュエルで?ソレが望みなら良いわよ?…まぁ、リアルファイトでも負けないけどね。」
アカデミア時代にはリアルに男子をボコしてたし。
大体、弥生にフルボッコにされんでしょう?ソレなのに略同じ実力のアタシに挑むなんて良い度胸だわ。
「いや、お前の方がアタシよりずっと強いから…、絶賛アタシの5連敗中だからな?」
「そうだっけ?」
いや、ソレでも弥生は強いと思うわよ?
少なくともアカデミアの生徒よりは数倍強いと思うし。
まぁ、何れにせよ貴方なんかには負けないわ。
シティから来たってだけで偉そうにしている貴方にはね。
「けっ!言ってろボケ!!行くぞオラ!!」
「「デュエル!!」」
遊里:LP4000
鬼瓦:LP4000
「先攻はもらうぜ!『終末の騎士』を攻撃表示で召喚!」
終末の騎士:ATK1400
「終末の騎士の効果発動!召喚時にデッキから闇属性モンスター1体を墓地に送れる。
俺はデッキから『ブラッド・サッカー』を墓地に送るぜ。
カードを1枚セットしてターンエンド。」
闇デッキね…アタシのターン!
相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、手札の『ジャンク・フォアード』を特殊召喚出来る。
ジャンク・フォアード:ATK900
「チューナーモンスター、『月夜のシルバー・フォング』を召喚!」
月夜のシルバー・フォング:ATK1200
「レベル3のジャンク・フォアードに、レベル3の月夜のシルバー・フォングをチューニング!
集いし風に秘めた思いが強固な壁を撃ち砕く。光射す道となれ!シンクロ召喚、突き崩せ『有翼幻獣 キマイラ・ガイスト』!!」
『ウガァァァァァ!!!』
有翼幻獣 キマイラ・ガイスト:ATK2100
手加減はしないわよ?
バトル!キマイラ・ガイストで終末の騎士に攻撃!『キマイラ・インパクト・チャージ』!!
「ぬお!!」
鬼瓦:LP4000→3300
「やるじゃねぇか…だがトラップ発動『魂の綱』!
俺のモンスターが破壊されたとき、ライフを1000払う事でデッキからレベル4以下のモンスターを特殊召喚する!
ライフを1000払い、デッキから2体目の『終末の騎士』を特殊召喚し効果発動!
デッキから『闇の住人シャドウ・キラー』を墓地に送る!」
鬼瓦:LP3300→2300
終末の騎士:ATK1400
此れで墓地には闇属性モンスターが3体…成程、そういう事ね?
なら…
「カードを1枚伏せてターンエンド。」
「俺のターン!!クックック、行くぜ!俺の墓地のモンスターが、闇属性3体のみの場合コイツを特殊召喚出来る!
見せてやるぜ、此れが俺の最強モンスター!!『ダーク・アームド・ドラゴン』!!」
『カハァァァァァ…!!』
ダーク・アームド・ドラゴン:ATK2800
やっぱりダムド…!
確かに闇属性屈指の強力モンスターだけれど…貴方に使いこなせるかしら?
「当然だろ!ダーク・アームドの効果!墓地の闇属性モンスターを除外する事でフィールドのカード1枚を破壊する!
墓地の終末の騎士を除外し、キマイラ・ガイストを破壊する!喰らえ『ダーク・ジェノサイド』!!」
――バガァァン!!
キマイラ……だけどキマイラ・ガイストは死して尚その魂を繋げるわ!
キマイラ・ガイストの効果発動、破壊されたとき墓地からこのカードのレベルと同じになるようにチューナーとチューナー以外のモンスターを特殊召喚する。
墓地より蘇れ、『月夜のシルバー・フォング』、『ジャンク・フォアード』!!
月夜のシルバー・フォング:DEF800
ジャンク・フォアード:DEF1500
「ち、蘇生効果か…だが無駄だぜ!
俺の墓地に残る闇属性2体を除外し、その2体のモンスターを抹殺してやるぜ!!」
「冷静さが足りないわね…此処は2枚の内1枚は伏せカードを狙うべきね…まあ、ソレでも無駄な事だけど。
トラップ発動『チューナーズ・バリア』!此れでアタシのチューナーは次のターンのエンドフェイズまで破壊されない!」
ジャンク・フォアードは護れないけれどね。
「ちぃ…ならダムドに装備魔法『メテオ・ストライク』を装備!貫通能力を与えるぜ!!
覚悟しろよ!ダーク・アームドで、シルバー・フォングに攻撃!『ダーク・アームド・パニッシャー』!!!」
――バガァァァアッァ!!!
「うあぁぁ!!」
遊里:LP4000→2000
貫通効果はちょっと予想して無かったわ…ソレでもアタシのライフはマダ半分有るわよ?
「けっけっけ…慌てんなよ。
速攻魔法発動『痛撃戦闘』!相手に、このターン与えた戦闘ダメージの半分の数値のダメージを与える!
テメェに発生したダメージは2000!よって1000ポイントのダメージを受けてもらうぜ!!」
遊里:LP2000→1000
「此処で効果ダメージ…けどこの瞬間、手札の『慈愛のホーリー・エルフ』を特殊召喚するわ。」
慈愛のホーリー・エルフ:DEF2000
慈愛のホーリー・エルフはアタシが1000ポイント以上の効果ダメージを受けた時に特殊召喚出来る。
そしてこの効果で特殊召喚した場合、受けた効果ダメージの半分の数値のライフを回復するわ。
遊里:LP1000→1500
「小癪な…ターンエンドだ。」
「アタシのターン!『ツノクリボー』を召喚!」
『クリクリ〜〜!!』
ツノクリボー:DEF200
一気に行くわよ?
レベル1のツノクリボーとレベル4の慈愛のホーリー・エルフに、レベル3の月夜のシルバー・フォングをチューニング。
「集いし星の瞬きが、聖なる力を呼び覚ます。光射す道となれ!シンクロ召喚、切り込め『プリンセス・ヴァルキリア』!!」
『悪しき者に聖なる裁きを…』
プリンセス・ヴァルキリア:ATK2500
「レベル8のシンクロ!!だが、攻撃力はこっちが上だ!!」
「慌てないの、プリンセスの効果発動!
手札を1枚捨て墓地のモンスターを特殊召喚する!舞い戻れ『有翼幻獣 キマイラ・ガイスト』!!」
『戻ってきなさい、伝説の幻獣よ…』
『ガァァァァァ!!』
有翼幻獣 キマイラ・ガイスト:ATK2100
更に墓地の『月夜のシルバー・フォング』の効果発動。
墓地のこのカードを除外することで、アタシのフィールドのシンクロモンスターは次のアタシのターンまで攻撃力が800ポイントアップする!
「なんだとぉ!?」
プリンセス・ヴァルキリア:ATK2500→3300
有翼幻獣 キマイラ・ガイスト:ATK2100→2900
此れで、攻撃力はアタシの方が上…覚悟出来てるわよね?
「ひぃっ!!」
「バトル!プリンセス・ヴァルキリアで、ダーク・アームド・ドラゴンに攻撃!『デュランダル・ブレイザー』!!」
『聖なる剣閃…受けてみなさい!』
――ズバァァ!!!!
「うがぁあ!!」
鬼瓦:LP2300→1800
「此れで終り、キマイラ・ガイストでダイレクトアタック!『キマイラ・インパクト・チャージ』!!」
『ガオォォォォォ!!!』
――ドッガァァァアン!!!
「ひでぶぅぅぅ!!!」
鬼瓦:LP1800→0
此れは又派手に吹っ飛んで落っこちたわね…顔面から。
どう、此れで少しは懲りた?
貴方が思っている以上にサテライトの住人は強いのよ?
確かにダムドは強力だけど、それだけじゃダメ。
モンスターだけでは無い、魔法・罠だけでもない。
それら全てを調和し、そして己が魂を吹き込む事でデッキには命が宿る。
カードの表面ばかり見ているだけじゃ、デュエリストとしては未だ二流よ。
「それ以前にサテライトにはサテライトのルールがあるわ。
シティ出身者と言えど、此処に来た以上は周りと同じ……アタシだって元はシティの住人だったんだから。」
「な、お前が!?……なんでサテライトに馴染めたんだ…?」
「サテライト送りになった以上は、此処がアタシの生きる場所。
そこで変なプライドやら意地張ったって一文の得にもならないもの…現実を受け入れたら如何と言う事は無いわ。」
「そうか……そうだな…悪かった、ちと考えてみるぜ。
どうせサテライトでの生活か……こりゃ馴染むしかなさそうだ……」
そうよ?だから、頑張りなさい。
「あぁ……へ、又デュエルしようじゃねぇか…久々だったぜ、此れだけ熱くなったのはよ。
そっちの姉ちゃんも、そのうち又な!」
「何時でも来な、アタシも遊里も逃げないからね!」
「おう……」
「…行っちまった…けど良い顔になったよな?」
「うん、多分アレなら大丈夫だと思う。」
きっとね。
サテライトも住めば都よ?きっとシティには無い良さを見つけられると思うわ。
――――――
Side:???
ふむ…矢張りフルチューンしたこの『ホイール・オブ・フォーチュン』は素晴らしい性能だ。
此れならば誰にも負ける気はせんが……だが、物足りん。
俺に挑戦してくるデュエリストが誰も彼も良くて一流半なのは不満が募る。
弱くは無いが俺を脅かすほどの強さは無い…
恐らくシティは満たされすぎているのだ、それ故に闘争心が湧かないし沸かないのだな。
「本格的に渡ってみるか…サテライトに…」
あそこは酷い場所らしいが、ソレだけにシティよりも優秀な…餓えたデュエリストが居るかも知れん。
そう言う連中達とのデュエルこそが俺の望むモノ……
次のデュエルが終ったら訪れるとしよう…サテライトに!
To Be Continued… 
登場カード補足
戦闘痛撃
速攻魔法
自分が相手に戦闘ダメージを与えた時に発動できる。
相手にこのターン与えた戦闘ダメージの合計値の半分の数値のダメージを与える。
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