Side:遊里


マッタク持って予想外だった兄さんのメール。
件名に、『自宅に戻ってから見てくれ』ってあったから、ポッポハウスに戻って来てから、メールをパソコンに転送した上で開いてみたんだけ
ど……そのメールの内容は――



『遊里、お前のお陰で未来は平和になった。
 その礼として、お前に最強のデュエリストとのデュエルを送ろうと思う――添付されているプログラムをDホイールに組み込んだ上で、起動
 させてくれ。
 其れが『最強』と戦う為の鍵になるからな――最強とのデュエルを楽しんでくれ、遊里。』




とまぁ、こんな所ね。
未来が救われたお礼に、最強のデュエリストとのデュエルをさせてくれるって言うのは兄さんらしいけど、その最強のデュエリストって言うの
は、一体誰なのかしら?
其れに、メールに添付されてたプログラムをDホイールに組み込んだ上でDホイールを起動させる事が、最強とのデュエルの『鍵』になるって
言うのはどういう事なのかしら?

皆目見当がつかないけど、やってみなくちゃ分からないならやるだけ!!
添付ファイルを速攻でDホイールにインストールして準備完了!!――其れじゃあ行きましょうか?最強のデュエリストとのデュエルにね!

誰が相手なのか、楽しみだわ!










異聞・遊戯王5D's Turn194
『邂逅せし解錠覇王と初代決闘王』










んでもって、兄さんから送られてきたプログラムをレーゲンにインストールしてハイウェイを疾走してるんだけど、今のところ何か変化がある
訳じゃないわね?
インストールしたプログラムは起動してるけど、其れだけで何も起こらない――かといって、兄さんが不良品のプログラムファイルをアタシに
送って来るとは思えない。

となると、考えられるのはDホイールの速度。
若しかしたらこのプログラムは、Dホイールが一定の速度に達しないと起動しないのかも知れないわ――でも、だとしたら起動させるのは決
して難しい事じゃない!

クリアマインドを発動したアタシは、光の速さすら凌駕するんだから、プログラムの起動条件に見合った速度を出す事位、お茶の子さいさい
ってやつよ!!

何よりも、アタシが手塩にかけて作り上げた、このレーゲン・デュエルなら、トンデモナイ速度を出す事だって造作もないわ!!
限界まで、飛ばすわよ!!



――ギュオン!!

――ドォォォォォォォォォォォ!!




其のまま一気にアクセルを踏み込んで、エンジンを吹かしたら……読み通り、兄さんが寄越したプログラムが起動したわ―ーつまりは、此処
からが本番って言う事だわ!!



――バシュン!!キキィーーー!



で、一瞬の浮遊感を感じた次の瞬間に、アタシは全く知らない場所に出ていた。てか、咄嗟にブレーキ掛けた自分を褒めたい。
此処はスタジアムみたいだけど、シティはこんな場所は無かったけど、アタシはこの場所を知っている――此処は、嘗て海馬コーポレーショ
ンが建設した、当時の最新のデュエルスタジアムって言う事をね。
シティでは、此処の跡地に、デュエルサーキットが建てられている訳だし――でも、其れを考えると、このスタジアムがあるって言う事は、ア
タシは過去に飛ばされたのかしら、兄さんのプログラムで。

だとしたら、兄さんの言う『最強』のデュエリストは若しかして――!!



「君は……遊里?」

「遊戯さん……!!」

考えるまでもなく、アタシの前にはアタシが想像した最強のデュエリストが、初代決闘王である、武藤遊戯さんが其処に居た。








――――――








――遊里が現れる少し前



Side:遊戯


「まさか貴様が、此の俺に頼みごとがあって此処を訪れるとは、珍しい事もあった物だと思ったが……成程、確かにこのプログラムは、可成
 り容量の大きなコンピューターでなければ起動する事すら出来ぬ程の物だからな。
 容量がテラバイトのプログラムなど、大凡一般家庭のコンピューターで使える物ではない――して、此れは一体何なのだ遊戯よ?」



それが、僕にも良く分からないんだ。
僕宛てに店のポストに封筒に入った状態で入れられてたんだけど、其処には『未来とのデュエルの招待状』って書かれた便箋が1枚と、カ
ード名もイラストもテキストもないカードが1枚と、其れとこのメモリーカードが入っていたんだ。
僕も自分のパソコンで起動しようと思ったんだけど、容量が大きすぎてダメでさ……それで、海馬君の会社の設備なら行けるかもって思っ
て。
って言うか、こんな事を言ったら失礼だけど、良く僕の頼みを聞いてくれたね海馬君?



「本来ならば追い返している所だが、未来とのデュエル、そして白紙のカードに未知のプログラム……此れ等が只の悪戯とは思えん。
 何よりも俺の勘が告げるのだ……このプログラムは、デュエルの新しい世界を切り開く物だとな。
 故に我が社の最新デュエルスタジアムを貸してやったに過ぎん――が、貴様だけならば兎も角、何故凡骨も一緒にいる?」

「テメー海馬ぁ!まぁた凡骨って言いやがったなぁ!!」

「ふん、プロテストに5連続で不合格の貴様など、凡骨で充分だ。悔しければ、さっさとプロテストに合格する事だ。」

「むきーーーー!!!」



海馬君も城之内君も相変わらずだね……って言うか、海馬君最近城之内君の事からかうの楽しんでないかなぁ?

「あはは……城之内君も久しぶりに家に来ててさ、自分も一緒に行くって言うから、別に一緒に行く位は良いかなって思ったんだ。」

「ふん……まぁ、凡骨の1匹や2匹、居ても居なくても変わりはないか。」

「この野郎……見てろよ!今度の6回目のテストで必ず合格して、そんでもってプロデュエリストのチャンピオンになって、そんでテメーをぶ
 っ倒してやるからな、海馬ぁ!!」

「やってみるが良い。
 ……さて、プログラムの解析と起動には、まだ時間が掛かるが、その白紙のカードも面妖だな遊戯よ。
 攻守の欄があるのを見る限りモンスターカードなのだろうが……通常モンスターでも効果モンスターでも、そして融合や儀式とも違う白枠
 のモンスターカードとは……?」



此れは……シンクロモンスターだと思う。



「シンクロモンスターだと?」

「なんだそりゃ?」

「1年半くらい前になるんだけど、僕は未来からやって来たデュエリスト達と共に、同じく未来からやって来たパラドックスって言うデュエリス
 トと戦ったんだ。
 その時に現れた未来のデュエリストの1人、上条遊里って言うデュエリストがシンクロモンスターって言う未知のモンスターを使っていたん
 だよ――彼女は、『彼』が認めるくらいに強かった。」

「未来に、『奴』が認める程のデュエリストが居たと言うのか――俄かには信じがたいが、『奴』の存在や、藍神らの事を考えると、一概に否
 定する事は出来んか……」

「まぁ、色々有ったからなぁ俺達も……今更未来からのデュエリストとか言われても驚かねぇよ。」



……取り敢えず、パラドックスがアルティメットと、ブラック・デーモンズを使ってた事は2人には内緒にしておいた方が良いだろうね。
其れは兎も角、此の白紙のシンクロモンスターが同梱されてたって言う事は、未来のデュエリストって言うのはシンクロモンスターの使い手
だって言う事を示唆してるのかな?
だとしたら、僕には彼女しか思いつかないんだけど――



「瀬人様、プログラムの解析、完了しました。此れより起動します。」

「思ったよりも時間が掛かったようだが……如何した?」

「見た事もないプログラムでしたので、そのせいで時間が……ですが無事解析できましたので――」

「そうか。ならばさっさと起動しろ。」

「承知いたしました。起動します。」

「フン、俺達はデュエル場に降りるぞ遊戯、凡骨。」

「うん、そうだね。」

「……凡骨と言われ続けて、1年以上……いい加減突っ込むのも面倒になって来たぜ……」



……城之内君、頑張って。

さてと、デュエル場に降りて来た訳だけど……


――ヴィィィィィィン


その中央には光が集束して、そしてどんどん大きくなっていく。
更にそれに伴って、何か音が聞こえて来る……此れは、エンジン音かな?其れも聞き覚えのある――此れは若しかして、Dホイールのエン
ジン音?
と言う事はまさか!!


――バシュン!!キキィーーー!!!


光が弾けると共に聞こえたブレーキ音。
そして、光が治まるとそこには見覚えのあるバイクと、其れに乗る長い髪の女性――間違いない、彼女は!!

「君は……遊里?」

「遊戯さん……!!」



嘗て共に戦い、『彼』も認めていた未来からのデュエリスト、上条遊里が、僕の目の前にその姿を現した――未来のデュエリストとのデュエ
ルって言うのは、君とのデュエルの事だったんだね、遊里。








――――――








Side:遊里


アタシの前に現れたのは遊戯さん……だけじゃなくて、遊戯さんのライバルである海馬社長に、遊戯さんの親友である城之内さんも一緒!
何この豪華な競演?アタシの時代に於いて、伝説と化してる3人のデュエリストと一度に邂逅出来るとか、マジでスゲーんですけど……まさ
か夢じゃないよね?

出会って行き成りですけど、遊戯さん、アタシの頬っぺた抓ってくれます?出来るだけ思い切り。



「え?こ、此れで良いのかな?」



――ギュム



「ふしゅうに、いらいれすね。(普通に、痛いですね。)」

でも、痛いって事は夢じゃない!
アタシは、今この瞬間に3人の伝説のデュエリストと邂逅してるんだ!――何て言うかもう大感激この上ないわ!!
若しかして兄さんは、此れも狙ってプログラムと組んだのかしら?だとしたらその粋な計らいに、感謝感激雨霰!福寿草、六畳一間で8000
円よ!何言ってるのか分からないかもしれないけど。

だけど、此れで兄さんの言ってた『最強のデュエリスト』は遊戯さんで決定されたわ!!

恐らく――いえ、間違いなくアタシが此れまで戦って来たデュエリストの誰よりも強い最強のデュエリストである武藤遊戯さん……初代決闘
王とデュエル出来る機会を得る事が出来たアタシは、間違いなく世界で最も幸せなデュエリストだわ。

此れから始まるであろう最強との戦い……ワクワクするなって言うのが無理な話よね――!!













 To Be Continued… 






登場カード補足