Side:遊里
アタシとジャックのデュエルが切っ掛けとなって、クロウも鬼柳も龍可と龍亞も、自分が進むべき道を見つける事が出来たみたいね?アタシ
のデュエルが、誰かの役に立ったって言うのなら、其れは其れで悪い気なしないわね。
だけど、皆が夫々の道を歩むと言う事は、この場所に、ポッポハウスにチーム5D'sのメンバーが全員集う事は多分2度とないって言える。
其れはちょっと寂しいけど、永遠に続く関係なんてないから、ある意味でこのタイミングは良かったのかも知れないわ――其れに、全員集う
事が2度となくても、此処であった思い出がなくなったりはしないからね。
だから、アタシは皆の船出を笑顔で送れる事ができるわ。
それが、皆の戻って来れる場所である事を決めたアタシの役目でもあるからね。
『其れが、主の選んだ道か……何とも主らしい道だ。』
『ですが、その道はとても苦しく、険しい物であるかもしれません――其れでも、貴女は進むのでしょう遊里?』
『こうって決めたら、遊里は絶対に折れないからね~~♪』
……うん、此れがアタシの選んだ道だから、どんなに険しくたって絶対に膝は折らずに真っすぐに前だけを見て進んで行くわ!!
きっとそれが、この街の未来を導いてくれるって、アタシはそう信じてるからね。
異聞・遊戯王5D's Turn193
『夫々の未来に向かって』
Side:鬼柳
「そうかい、プロリーグにか……鬼柳ちゃんは、ウチの店の店長で収まる器じゃないから、何時かはこんな時が来るとは思っていたんだが、
実際にその時が来ると寂しいモンがあるね此れは。」
遊里とジャックのデュエルが、俺の中で眠ってた炎に火を点けちまったんだ……この生活も悪くはないが、俺はデュエリストとして、もっとも
っと満足してぇんだ。
そして其れは、カスリ目当てで恐喝かけて来たチンピラデュエリスト相手じゃ到底出来ねぇ事だ……俺を満足させられる相手が居る世界は
今の所は、プロリーグ以外にはねぇからよ。
「そうかい…なら、頑張って来な鬼柳ちゃん。俺等は、全員鬼柳ちゃんを応援してるからな。」
「ありがとよ組長。
だが、此れで俺とアンタらが切れるって事じゃない――プロになるには、スポンサーってのが必要になるからな。……だから、俺のスポン
サーになってくれねぇか組長?アンタなら、安心して頼めるからよ。」
「スポンサーだって?俺が?……プロの世界ではスポンサーが必要だって言うのは分かるが、其れが俺みたいなヤクザ者で良いのか?
下手したら、鬼柳ちゃんのプロリーグ参加に暗雲を立ち込める事になっちゃうぞ?」
その点については安心しな組長。
義村組その物がスポンサーになるんじゃなくて、義村組が経営してる会社が幾つかスポンサーになってくれりゃいいんだ――尤も、それで
もバックにヤクザ組織が居る事は何れバレるだろうが、そんときゃそれも俺の個性にすればいいだけだ。
遊里やジャックとは違って、俺はヒールの方が性に合ってるだろうしな。
「分かった。プロに行っても頑張ってよ鬼柳ちゃん!」
「任せときな……俺のデュエルで、観客共を満足させてやるぜ。」
そして、俺がプロとして名を上げたらその時は、この街に戻ってきて、今度は俺がお前に挑ませて貰うぜ遊里。
――――――
Side:クロウ
そう言う訳で、俺はプロリーグに行く事にしたから、これ以上はセキュリティの仕事を続ける事は出来ねぇ……折角、働き口を紹介してくれ
たのに、悪いなマーサ。
其れに、深影さんにも迷惑かけちまって……
「良いんだよクロウ。私としては、アンタが真に自分のやりたい事を見つけてくれた事が嬉しいよ。なぁ、深影さん?」
「そうですねマーサさん。
クロウ君の実力はセキュリティの中でもずば抜けているので、失うのは痛いのですけれど、やはり彼はセキュリティの隊員としてよりも『鉄
砲玉』としてデュエルをする方が合っていると思います。」
「マジですんません深影さん……俺の我儘、押し通しちまって。」
「良いんですよクロウ君。貴方ほどのデュエリストが、セキュリティの隊員として燻っている方が、デュエル界には損失になるでしょうから。
でも、1つだけ約束して下さい――プロの世界に行くのならば、個人で挑むにしろチームを結成するにしろ、必ず頂点を取ってくるように。
貴方の上司としての最後の命令です。」
此れは、最後の最後でトンでもねえ命令を受けちまったなオイ?
だが、その命令は必ず遂行して見せるぜ深影さん?――そんでいつの日か、頂点極めて、鉄砲玉のクロウ様の名を世界に轟かせてやろ
うじゃねぇか!
何より、俺がプロで活躍すれば、旧市街地のガキ共に『夢』を与えてやれるからな!!――世界に向けて、俺は飛び出すぜ!!
――――――
Side:龍可
いよいよ明日だね、この街を発つの……数年ぶりになるお父さんとお母さんとの再会――なんかちょっと不思議な気分がするんだけど、龍
亞は如何?何か思う所とかある?
「ん~~~……正直言うと良く分かんないんだよね。
ずっと会ってなかったから実感が無いってのはあるんだけど、俺と龍亞が子供2人で生活してこれたのは、父さんと母さんが其れだけの
事をしてくれてたからで……会ってみないと、ちょっと分からない。」
「何それ?――でも、龍亞の言う事も分かるかも。」
結局の所、私も龍亞も子供だから、出来る事なんて限られてる。其れでも何不自由なく生活出来てたのは、お父さんとお母さんのお陰だか
ら――最近は、遊里の所に入り浸ってばかりだったけど。
だから、会ったらまずは、此れまで生活出来ていた事に対して『ありがとう』って言わなくちゃ。
「だな。それから、俺達の話一杯聞かせてあげようよ!
きっと驚くぜ?俺と龍可が、伝説の赤き竜に選ばれたシグナ―で、トンでもないデュエリストと戦って来た事とか、チーム5D'sの一員として
裏方やってたとかさ!」
「うん、そうだね♪」
ずっと会ってなかった間の事、一杯聞いて貰おう。
きっと話しても話足りない位に話題は有るから――そして、お父さんとお母さんにも知って貰おうよ。私達兄妹が憧れて目標にしてる、最強
のデュエリストの事を!
「もっちろん!俺達の話で、遊里の事は外せないからな!!任せとけよ龍可!!」
「頼りにしてるよ、お兄ちゃん!」
いつの日か、私達も遊里のようなデュエリストになれるように頑張らないと!
付け加えて、私も、遊里みたいな素敵な女性になれるように……ね。
――――――
Side:ジャック
ジャック:LP2800
煌魔龍 レッド・デーモン・ハデス:ATK4300(墓地チューナー4体)
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン:ATK2500 ORU2(エフェクト・ヴェーラーにより効果無効)
伐(ガロメの時の少年):LP1500
ビッグ・シールド・ガードナー:DEF2600
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの効果をエフェクト・ヴェーラーで無効にし、更に攻撃の無力化でバトルを強制終了したか……見事
だと褒めてやろう。
カードを2枚セットしてターンエンド。
「俺のターン!ビッグ・シールド・ガードナーを攻撃表示に変更!」
ビッグ・シールド・ガードナー:DEF2600→ATK100
「そして魔法カード『強制転移』!
この効果で、ビッグ・シールド・ガードナーと、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンのコントロールを入れ替える!!」
ビッグ・シールド・ガードナー:CTL伐→ジャック
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン:CTLジャック→伐
「更に、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの効果発動!
オーバーレイユニットを2つ取り除き、レッド・デーモン・ハデスの攻撃力を半分にし、その数値を己の攻撃力として吸収する!!」
煌魔龍 レッド・デーモン・ハデス:ATK4300→2150
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン:ATK2500→4650 ORU2→0
「此れで終わりだ!
ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンで、ビッグ・シールド・ガードナーに攻撃!『反逆のライトニング・ディスオペイ』!」
見事なコンボだ。
攻撃表示にしたビッグ・シールド・ガードナーを俺に送りつけた上でダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンを己の僕とし、更にはレッド・デー
モン・ハデスの攻撃力を半減させた上で、其の力を吸収しての必殺の攻撃だからな。
だが、甘い!トラップ発動『ブレイク・チューン』!
手札のチューナーを特殊召喚し、相手モンスターの攻撃を無効にする!現れよ『インビジブル・リゾネーター』!
インビジブル・リゾネーター:DEF0
「く……此れでも届かないのか――俺は此れでターンエンド。」
「俺のターン!チューナーモンスター『プロテス・リゾネーター』を召喚!」
プロテス・リゾネーター:DEF0
大盤振る舞いだ!見せてやろう、燃え盛る我が魂『バーニング・ソウル』!!
――轟!!
「な、これは!?」
「レベル10のレッド・デーモン・ハデスに、レベル1のインビジブル・リゾネーターと、レベル1のプロテス・リゾネーターをダブルチューニング!
王者と悪魔、今此処に交わる!天地を統べる絶対王者よ、今こそ降臨せよ!シンクロ召喚『紅蓮魔龍 スカーレッド・デーモン』!!」
『ウガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』
紅蓮魔龍-スカーレッド・デーモン:ATK4000
スカーレッド・デーモンの攻撃力は、俺の墓地のチューナーの数×500ポイントアップする!
俺の墓地のチューナーは6体!よって攻撃力は3000ポイントアップする!!
『バオォォォォォォォォォ!!』
紅蓮魔龍 スカーレッド・デーモン:ATK4000→7000
「こ、攻撃力7000!?」
「此れで終わりだ!
スカーレッド・デーモンで、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンに攻撃!『アルティメット・クリムゾン・フォース』!!」
――ドガァァァァァァァン!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
伐:LP1500→0
ふ、中々に楽しませて貰った――俺に挑んできた実力は決して自惚れではない確かなものだった。
だからこそ残念だ。……もしもこのカードが、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンが最初からお前の手に有ったのならば、デュエルの結
果は違っていたのかも知れん。
だから、俺を楽しませてくれた礼として、このカードをお前に返そう!
納得できないかも知れないが、此れは俺がお前を認めた証だ――納得できないと言うのならば、其のカードを己の手足の様に使いこなせ
る様になってプロに進み、そして俺を打ち負かしてみるが良い!
俺は何時でも待っているぞ、お前が己の相棒と共に、再び挑んでくるその日をな。
「ジャック……分かった!いつの日かまた挑ませて貰うぜ!相棒と共にな!!」
「ふ、其の意気だ!」
とは言え俺も簡単に負ける心算はない――アイツに、遊里に勝つまで、俺には敗北は許されないのだからな。何時の日か、もう一度遊里
の前に立つ……最強の絶対王者としてな!!
――――――
Side:遊里
いよいよ明日か……ガラじゃないけど、少し感傷に浸っちゃうわね。――其れも此れも、この1年が物凄く充実していたからなのかも。
ジャックとの出会い、フォーチュンカップ、ダークシグナーとの死闘に、WRGP……そしてゾーンとの戦いって、食あたりしそうな位に濃密なデ
ュエルをして来たからね……ホント、つい昨日の事みたい。
「不審者発見。此れより、職務質問を開始する!」
「牛尾!……誰が不審者よマッタク。」
「冗談だって。――いよいよ明日だな。
明日の朝一番で、お前とアイン以外の、チーム5D'sのメンバーはこの街を離れちまう訳か……少し、寂しくなるな。」
うん……だけど、人は何時までも今のままじゃいられない――何時の日か、自分の足で新たな道へと踏み出さないといけないんだよ。
其れが明日なんだ。
「成程ねぇ?……だが、其れで良いのかい、お前さん達の『絆』は?」
「絆は絆よ、例え離れていても、一度紡がれた絆は、そう簡単に切れる物じゃない。
此の絆が有るからこそ、アタシは皆が戻って来れる場所でありたい。――アタシ達が護った街は最高の場所だったって、思えるような存
在でありたいのよ!!」
「成程な……仲間達が帰ってくる場所か――お前さんならなれるぜ遊里。
何時かアイツらが帰って来るその時まで、ネオドミノ・シティを最高の街として護り抜かねぇとだからな。――頑張れよ遊里!」
うん!頑張るわ牛尾!
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・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
そして明朝。
今日、此処から皆は旅立つ――だから、此れがチーム5D'sのラストラン!!全力で飛ばして行くわよ!!
「「「「「おーーー!!」」」」」
――ドルゥン!!
全員のDホイール(龍可と龍亞はDボード)のモーメントエンジンがうねりを上げ、いざ出発!!
長いストレートを走り抜け、シティの象徴である『ネオ・ダイダロスブリッジ』を目指して疾走!!――スピードを上げていくわよ!……って。
『コアァァァァァァアァァァァァ!!!』
「赤き竜!?」
「な、痣が!!」
突如赤き竜が現れて、アタシ達のシグナ―の証が、赤き竜に戻って行く……そうか、貴方も5000年の役目を果たして、次の時が来るまで
眠りにつくのね?……お疲れ様、ゆっくり休んでね。
さてと、予想外の赤き竜の登場にはびっくりしたけど、無事にネオ・ダイダロスブリッジを渡り切り、先頭を走っていたアタシは機体を反転して
手を掲げる。
そして――
――パン!
――パァン!
――パシィ!!
――パン!パン!!
その手に皆がハイタッチをして通り過ぎていく――此処から、皆が夫々の道へと進んで行く。
その道は、時には険しい物になるのかも知れないけど、皆ならきっと大丈夫!どんな壁だって、きっと乗り越える事が出来るって、アタシは
信じてるからね。
未来への道、夫々歩んで行こうね。
……見えなくなっちゃった。――其れじゃあ、アタシも帰ろうかな?
モーメントのチーフとしての仕事もあるし、修理やら何やらの依頼もあるからね――
――ピン!メールを受信しました。
って、スマホにメールが来た?
一体誰よ?正直、ダイレクトメールの類にはうんざりしてるんだけどねぇ?……取り敢えず、誰からのメールなのか確認だけはしとこうか。
えっと送り主は――……マジですか此れ?
このメールの送り主は『不動遊星』!
つまりは、未来世界に居る兄さんからのメール!……此れは、只のメールじゃないわね絶対に!
To Be Continued… 
登場カード補足
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