アポリア:LP1000
機皇帝スキエル:ATK2200
ゾーン:LP4000
Side:遊里
ライフだけを見るならアポリアが絶対的に不利だけど、アポリアは3体目の機皇帝であるスキエルを従え、逆にゾーンにはモンスターが居な
いから、リミッター解除が手札に有ればダイレクトアタックで終わりにも出来るんだけど……
「自らデッキのカードを0にするとは……勝負を諦めましたかアポリア?
確かに今の私のフィールドに、私の盾となるモンスターは居ないので、君がスキエルの攻撃力を4000以上にする事が出来ればダイレク
トアタックで勝つ事も出来るでしょうが、其れでもデッキを破壊するとは……」
「確かに君のフィールドにはモンスターが居ないから、スキエルを強化すれば君にダイレクトダメージを与える事が出来るだろうが、君は其
の攻撃を通してはくれないだろう?
だからこそ、私は確実に勝つ為に、私のデッキを破壊するのだ。」
アポリアは、此の土壇場で自分のデッキを破壊するって言う、前代未聞の戦術を展開して来たのよね。
態と負ける為じゃないって言うのは見てれば分かるわ――アポリアの瞳には、必ず勝つって言う、デュエリストならではの闘志が、絶望の番
人では宿す事の出来ない炎が宿ってたからね。
前代未聞のセルフデッキ破壊の先に待つ戦術を、見せて貰うわよアポリア!
異聞・遊戯王5D's Turn180
『希望を得た番人と絶望の支配者』
「勝利の為のデッキ破壊?」
「そうだ、私は勝つ為に、敢えて自分のデッキを0にしたのだ――このカードの為に!
手札から魔法カード『アフター・グロー』を発動!
発動後、このカードをデッキに戻してシャッフルする。そして次の私のターンのドローフェイズでドローしたカードがこのカードだった場合、相
手に4000ポイントのダメージを与える!!」
はぁ!?なんつー博打カードを発動してるのよアポリア!?
でも、此れで納得で来たわ……何で自らデッキを破壊したのか!
このターンで自分のデッキを0にすれば、アフター・グローの効果でデッキは1枚だけ復活し、そしてそのカードは『アフター・グロー』だから次
のターンのドローフェイズで、確実にその効果を発動出来る!
加えて機皇帝は、1種を展開するだけでデッキを5枚も圧縮できるから、このコンボを成立させるためには願ってもないカードだったって言う
事よね。
「そして其れだけではない。
私は、君のフィールド上の魔法・罠カード1枚を墓地に送り、君のフィールド上に『廃機皇神-オメガ・フォルト』を特殊召喚する。」
「此れは……」
廃機皇神-オメガ・フォルト:ATK3000
更にゾーンのフィールド上にモンスターを特殊召喚?
相手の魔法・罠カードをコストにするから、魔法罠カード1枚を破壊出来ると考えれば悪くないわ――例え攻撃力3000でも、この手のモン
ターって言うのは、コントローラーに対してのデメリットがあるのがお約束だしね。
「攻撃力3000を私にですか?」
「君に限っては、フィールド上のモンスターが0の状態でターンを渡す事の方が危険だろう?
君のメタイオンは、自分フィールドにモンスターが存在しない場合に限って、リリースなしで召喚する事が出来るのだからな――だが、逆に
言うのならば、君のフィールド上にモンスターが存在すればメタイオンを速攻召喚する事は出来ない。
加えてオメガ・フォルトが存在する限り、君は機械族以外のモンスターを召喚する事が出来ず、攻撃する際には1000ポイントのライフを払
わなければいけないのだ。
そして、そのモンスターでスキエルが破壊されても、私のライフは200ポイント残るから、次の私のターンでゲームエンドだゾーン。
カードを1枚セットしてターンエンド。」
そして、想像以上のデメリットモンスターだった訳ねオメガ・フォルトは。
存在してれば、他のモンスターの召喚を封じるから、事実上コイツをリリースして新たなモンスターを出す事は出来ないし、そもそも召喚が封
じられているから、シンクロやエクシーズの素材にするのも難しいわ。
普通に考えれば完全に詰んでるわね此れ。
「私のターン。
……実に見事ですアポリア。機皇帝でデッキを圧縮してセルフデッキ破壊を容易にした上で、アフター・グローを発動して確実な勝利を得よ
うとする。
更には、私の時械神を速攻召喚させないための布陣まで組んでいると来ましたからね……素晴らしいと賞賛しましょうアポリア。
ですが、其れでも私を倒す事は出来ません。
ドロー!……此れは、君が描いた希望を握り潰すには最高のカードが来ましたか。」
ゾーン自身も、このコンボは見事と言ってるし。
でも、其れを握り潰す為のカードって、一体何を引いたって言うの?機械族のモンスターが手札に有って、リミッター解除を引いたって言うの
なら、此れを崩せるけど……
「このコンボ、私のデッキの特徴を知り、そして己のデッキの特徴を生かした見事な物であったと言えるでしょう。確かに、此れならば、私は
時械神を召喚する事が出来ないのですから。
ですが、ならば私のフィールド上のモンスターを無くせば良いだけの事。
手札から魔法カード『時械創造』を発動。自分のフィールド上のモンスターをリリースし、デッキから『時械神』を手札に加えます。」
「此れは……!」
「フィールドのモンスターをコストにしたサーチカード!ドローしたのは、このカードだったって訳か!」
此処で其のカードとは、引きの強さは中々の物ね?
此れなら、先ずはメタイオンを出させないように敷いた布陣を崩す事が出来る上に、メタイオンをサーチする事が出来る訳だから。
「私は君がくれたオメガ・フォルトをリリースし、デッキから『時械神ラツィオン』を手札に加えます。」
「へ?『時械神ラツィオン』?」
「馬鹿な、メタイオンをサーチするのではないのか!?」
「アポリア、君とのデュエルではメタイオンをフィニッシャーとして使っていましたが、メタイオンは数ある時械神の1体に過ぎないのですよ。
冥土の土産に見せてあげましょう!
私のフィールド上にモンスターが存在しない時、時械神ラツィオンはリリースなしで召喚する事が出来ます。
出でよ『時械神ラツィオン』!」
時械神ラツィオン:ATK0
あの反則級の効果を持ったメタイオンが数ある時械神の1体に過ぎないって、一体どれだけのモンスター郡だって言うのよ時械神は!?
メタイオンじゃなくて、敢えてコイツをサーチして来たって言う事は、ラツィオンには更なる強力な効果が秘められてるってことを考えるんだけ
ど……一体どんな効果を持ってるのかしら?
「ラツィオンもまた戦闘及びカード効果では破壊されず、このカードが戦闘を行う事によって発生する私へのダメージも0になります。」
其処はメタイオンと同じか。
って言う事は、戦闘を行う事で発動する効果を持ってるのも間違いないわ。そうでなけりゃ、ダメージ無効と不死の効果を併せ持つ意味が
薄いモノ――まぁ、其の2つを兼ね備えてるだけでも厄介極まりないけどさ。
「行きます。時械神ラツィオンで、機皇帝スキエルに攻撃。」
「メタイオンを召喚してこなかったのは予想外だったが、その効果を持っている以上、ラツィオンもまた攻撃をトリガーにした効果を持っている
のだろう?
ならば、其れはこのカードでシャットアウトさせて貰う!トラップ発動『機皇壁』!
私のフィールド上に『機皇』モンスターが存在する時、相手の攻撃を無効にする!!」
だけど、此処はアポリアが巧い一手ね!
機皇モンスターが存在する場合限定とは言え、相手の攻撃を無効にする効果は、シンプルながら汎用性に富んでるからね!遊戯さんが現
役の頃のカードであるにもかかわらず『攻撃の無力化』は、今でも一線級の活躍が出来てる訳だし。
この攻撃を無効に出来れは、99%アポリアの勝利が確定するわ!
「メタイオンの為のカードが此処で……そして、其れは間違いではありませんよアポリア。
ラツィオンもまた、メタイオン同様に戦闘が成立する事で発動する効果を持っています――故に、攻撃を無効にされては其の効果を発動す
る事は出来ないのですが……甘いですよ?
私は手札からトラップカード『時械神の勅命』を発動。
このカードは私のフィールド上に『時械神』モンスターが存在する場合に自分のターンでのみ手札から発動出来ます。
そしてこのカードは、相手のカード効果の発動と効果を無効にして破壊する。――よって、君の『機皇壁』は無効ですアポリア!
故にラツィオンの攻撃は有効となり、効果発動!
ラツィオンが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、相手の墓地のカードを全てデッキに戻します。」
「なに!?」
墓地のカードを全てデッキに戻すって、普通に考えれば使っちゃった切り札をもう一度使う事が出来るって考えるけど、今のアポリアには最
悪の効果でしかないわ!!
アポリアの墓地のカードは24枚……其れが全てデッキに戻ったら、次のターンでアフター・グローをドローする確率は1/24……余りにも確
率が低い――!
「そしてラツィオンは、相手がカードをドローした時に1000ポイントのダメージを与えます。
尤も、君が次のターンでアフター・グローをドローすれば、ラツィオンの効果が発動する前にアフター・グローの効果が確定するので、私の
敗北が確定するのですが――1/24の確立を、果たして引き当てられますかね?
私は此れでターンエンドです。」
「良いだろう……必ずやアフター・グローをドローして見せる!!
私のターン!!!」
此れが運命のドロー!
デュエルの女神よ、如何かアポリアに最高の引きを与えて!絶望を乗り越えて希望を信じた番人の思いに応えて!!
「私がドローしたのは………此処までだったか。私がドローしたのは『機皇帝ワイゼル∞』だ……」
「この瞬間にラツィオンの効果で、君に1000ポイントのダメージですアポリア――精々、安らかに眠って下さい。」
――ドガァァァァァァァァァァァン!!!
「ぐ……ぐあぁぁぁぁあっぁぁぁぁぁぁ!!」
アポリア:LP1000→0
「「「「「「「「アポリア!!」」」」」」」」
最後の最後で……でも、アンタのお陰でゾーンのモンスターを知る事が出来たわアポリア――メタイオンとラツィオンの2体だけとは言え、そ
の2体には共通の効果があったから、恐らくは時械神は共有した効果+独自の効果って言うモンスターなんだって考えられるからね。
でも、其れとは別に、仲間であるアポリアを此処まで容赦なく叩きのめすって……アンタは、人の心を持ってないのかゾーン!!
「そうよ、何でこんな事を!
普通にメタイオンを召喚しても勝ってたのに、どうしてアポリアのコンボを潰すような真似をしたのゾーン!!」
「……彼に希望等ないと言う事を教える為ですよ。
確かにメタイオンを召喚すれば勝つ事は出来たでしょうが、敢えてラツィオンを召喚し、其の効果を使う事で、アポリアが描いた幻想の未来
を砕いたのですよ――希望など、所詮は幻影なのですから。」
テンメェ……徹底的に性根が腐りきってるわね、このドベクソ野郎!!
ジャックと龍亞と龍可と戦って『希望』を信じる事を思い出したアポリアに対して、希望を否定する事をするとは、根性がねじ曲がってるにした
って、余りにも人の道を外れてるわ!!
「このクズ野郎……アタシは怒ったぞ、ゾーン!!!!」
――轟!!
「こ、此れは……何と言うフィールだ!
これ程のフィール、俺のフィール・バニッシュでも相殺する事は難しい――まさか、怒りによって、遊里は己のデュエリストレベルを限界突
破したと言うのか!?」
「びりびり肌に感じるフィール……満足させてくれるじゃねぇか遊里!」
まぁ、可成りブチ切れてるからね今のアタシは!
ゾーンはアタシがぶち倒す!!アイツは、アタシが直接ぶっ飛ばさないと気が済まないし、ユウリの言ってた事の真相を解明する為にも、此
のデュエルは、アタシが出るべきだからね。
「そうだ……ゾーンに勝てるのは君だけだ、上条遊里。
君ならば、ゾーンの時械神を倒す事が出来る――身勝手は承知でお願いさせてくれ。ゾーンを倒せ、そしてゾーンを、未来を救ってくれ。」
「アポリア……その願い、受け取ったわ!
必ずゾーンを倒して、破滅の未来を救ってみせる!!解錠覇王の名に誓うわアポリア!!」
「ふ……頼もしいな。
ならば此れが私の出来る最後の手向けだ――受け取ってくれ。」
――ヒュン
――カシャァァァァッァアァァン
此れは、アポリアの身体に装着されてたリング状の何かが、アタシのレーゲンと融合したって事なのかな?だとしたら、凄い力が出せそうだ
けど――此れですら、限界だったんだねアポリア。身体が消えかけてるからね……
「制限時間か……だが、此れで良いのだ。
私の思いは君達に託したのだからな――頼む、ゾーンを倒して未来を救え。そして、絶望を完全に振り払った希望の未来を作ってくれ。
それが、私の願いだ。」
「アポリア……分かったわ。」
「未来に残っているのは絶望だと思っていたが、過去には希望が残っていたか……其れだけでも、価値があると言う物だ。
未来を……世界を頼むぞ、チーム5D's よ!!」
「「「「「「「アポリア!!」」」」」」」
――シュゥゥゥン……
消えちゃったか――でも、そう言う事なら、今度はアタシがアンタに挑戦するわゾーン!!異論は認めない……って言うか、挑戦を断った時
点で未来は途切れちゃうからね……やってやるわ!!
「お前ならばそう言うと思っていた――ならばこのカードを持っていけ。
解錠覇王のお前ならば、正式な持ち主でなくとも、カードの力を引き出す事が出来るだろうからな。」
「俺のカードも持っていけ。
このカードで、外道に無限煉獄の裁きを喰らわせてやれ!!」
「コイツも持っていてくれ遊里、お前なら託すに値するからな。」
「私達のカードも……」
「持って行ってくれ遊里!!」
って、此れは、ジャックの『煌魔龍 レッド・デーモン』、鬼柳の『煉獄龍 フォルト・スクライド』、クロウの『玄鳳龍 ブラック・フェザー』、龍可の
『精霊龍 エンシェント・フェアリー』に、龍亞の『鉄鋼龍 パワー・ツール』と『守護龍 ライフ・ストリーム』……皆のデッキのエースカード、確か
に貰ったわ!
此れだけの力があればゾーンに負ける事はない!集った決闘龍の力でゾーンを倒す!!
「ふ、其の意気だ遊里。
スターダストを渡す事は出来ないが、代わりに此のカードを持っていけ――このカードなら、時械神に対しても充分に働いてくれる筈だ。」
「兄さん……」
でも、これは――このカードは確かに頼りになるわ――だから、此処でアンタを打っ倒すわゾーン!!
――ギュオン!
――ブロォォォォォォォォォン!!
――ゴォォオォォォォォ!!
って、此れは、Dホイールを起動したら、蒼銀の光の翼が、現れた?――成程、此れがアポリアの置き土産って事ね?おかげで、空でも自
由に動き回る事が出来るわ!!
デュエルよゾーン!
此処で決着を着けて、アタシは未来を救う!!――このデュエルは勝たせて貰うわゾーン!精々、部屋の隅でガタガタ震えながら命乞いを
する準備でもしてると良いわ!!
アンタはここでぶっ倒す!其れだけだ!
「出来ますか、貴女に?」
「出来るかどうかじゃないわ――大事なのは、やるかやらないかよ!!」
だから、アタシは絶対に退かないわ。
このデュエルを制して、必ずアンタを止めてやるわゾーン!!――何よりも、今を生きる人を滅殺する事なんて、絶対に認められないからね。
これが最後の大勝負!
覚悟しておきなさいゾーン――見せてあげるわ、アタシのデュエルって言う物をね!!
To Be Continued… 
登場カード補足
アフター・グロー
通常魔法
このカードをデッキに戻しシャッフルする。
次の自分のドローフェイズにドローしたカードを公開し、それが「アフター・グロー」だった場合、相手ライフに4000ポイントのダメージを与え
る。
時械創造
通常魔法
自分フィールド上のモンスター1体をリリースして発動する。
デッキから「時械神」モンスター1体を選択して手札に加える。
時械神の勅命
通常罠
自分フィールド上に「時械神」モンスターが表側表示で存在する場合、このカードは自分のターンでのみ手札から発動出来る。
相手が発動した魔法・罠・モンスター効果を無効にして破壊する。
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