Side:遊里


兄さんが召喚した、悪役全開の何かによって扉が物理的に粉砕されたおかげで、ラスボスの間に入る事が出来たわ――異次元のデュエリ
ストを呼び寄せるとか、マジで兄さんハンパなかったけどね。

でも、此れでラスボスに挑む事が出来る!その面拝ませて貰うわよゾーン!!



「此れは此れは、まさか全員揃って此処に到着するとは思っても居ませんでした――上条遊里が到達する事は予想していましたが、それ
 以外のデュエリストは途中で脱落すると考えていたのですが、此れは彼方達に対する認識を上方修正する必要がありそうですね。」

「貴様がゾーンか!!」

「如何にも、私こそが、此のアーククレイドルの支配者であるゾーンだ。」



って、出て来たのは機械式の移動装置に身を置いたフルフェイスマスクの人物!?
この人は、私がアクセルシンクロを完成させた時に、不思議な空間で出会った人其の物じゃないのこれ?まさか、貴女がゾーンだったとは、
流石に予想してなかったわ。

加えて、ゾーンからは凄まじいまでのデュエリストオーラを感じる事が出来るから、並のデュエリストじゃない事だけは確かよね。

此れは、思った以上にゾーンとの戦いはハードなデュエルを覚悟しておかないとね――アーククレイドルのラスボスの力、見せて貰おうじゃ
ない!!












異聞・遊戯王5D's Turn178
『ラスボスとの邂逅~Z-one~』











まさか、未来のシティが上空から落ちて来たなんて言う事は予想してなかったけど、其れを止めるには貴女を倒さないとダメなんでしょう?
なら、貴女をぶちのめして、シティの平穏を守るわ!!



「さて、そう巧く行くでしょうか?」

「出来る出来ないは、大して問題にならない――大事なのは、やるかやらないかよ!!」

ユウリの言ってた事や、兄さんが気付いたらしいアンタの正体については、今は横に置いておくわ。どうせ戦えば分かるだろうしね。
だけどゾーン、アンタのやろうとしてる事については、この場で糾弾させて貰うわ!アンタの居た未来の世界が絶望的なモノだったって言う
のは兄さんから聞いたけど、その未来を回避する為に今を壊そうなんて言うのは絶対に間違ってるわ!
いくら過去を変えても、其れで絶望の未来が回避できるとは限らないし、場合によってはさらに悪化する可能性すらあるって言うのが理解
出来ないの!?



「俺も遊里の言う事に賛成だ。
 未来とは、今を生きる人間の歩みが積み重なって作られて行くもの!其れを未来人が干渉し、己の理想の世界を実現させようなど、烏滸
 がましいにも程がある!!」

「ゾーン、俺もあの世界を救いたいと言う思いは同じだ。
 だが、こんな事をしても絶望の未来は回避できない。それどころか、過去を変える事でお前達自身が存在しなくなる可能性だってある。
 其れで良いのか!!」

「流石は未来に名を残す無敵女帝と絶対王者、そして私達の前に幾度となく立ちはだかって来た不動遊星、言葉に説得力がある。
 だが、あらゆる可能性を考え、そして実行し、最後に残った方法が此れだったのです。」



何ですって?



「絶望の未来は、人々の欲望にモーメントが反応し、破滅の逆回転を起こした事が切っ掛けでした。
 なら、モーメントの逆回転、即ち『ゼロ・リバース』をもっと早い段階で引き起こし、モーメントの開発その物が中止されればと思い、過去に
 使者を送り、ルドガー・ゴドウィンに接触する事でゼロ・リバースを引き起こさせましたが、結果としてモーメントの開発は中止にはならずに
 人々はその力を手に入れてしまった。
 モーメントに多大なる影響を与えるデュエルモンスターズを抹殺する為に、パラドックスを過去に送ってペガサス・J・クロフォードの抹殺も
 試みましたが、それすらも、上条遊里、貴女を含む歴戦の、伝説的デュエリスト達によって阻まれてしまった。」

「パラドックス!……アイツもアンタが。
 って事は、アイツにあの奇妙奇天烈な白黒仮面被るように言ったのはアンタか!幾ら素性隠す為とは言え、もっと他のマスクは無かった
 訳!?
 素顔が意外とイケメンだっただけに、あのマスクはないわ!!」

「手元にはアレしかなかったんですよ……私だって他のマスクがあったら、アレは付けさせませんでした。
 と、話が逸れましたね……他にも、大なり小なり、様々な手を使ってあの世界を救おうと画策しましたが、その全てが失敗に終わってしま
 い、残された最後の手段が、この時代のシティにアーククレイドルを落として壊滅させ、全てをゼロから作り直すと言う方法なのです。
 一度全てゼロにした上で新たに作り上げる。そして作り上げる手順を間違わなければ未来は変わると言う訳です。理解頂けましたか?」



えぇ、理解したわ。
よ~~~く分かったわ、此の大馬鹿野郎!!
一度ゼロにして新たに作り上げるですって?確かに理屈としては間違ってないんでしょうね。全くのゼロにリセットしてしまえば、否応なしに
一から作る事になるんだから、作る過程を間違いなければ出来上がる物はリセット前よりよりよい物になるでしょうよ。
だけど、リセットする為に、アンタは一体何人の人間の命を犠牲にする心算なの?
此れだけの物が下降を始めてるんだから、シティの人達は当然避難を始めてるだろうけど、此れが墜落した時の衝撃がドレ位になるか分
かってる?
人どころか、大型トラックだって楽々吹き飛ぶほどの衝撃波が発生するわよ?其れに巻き込まれたら、シティの外に逃げてたって無事じゃ
済まない事位予想できないの?

未来で多くの人の死を見たであろうアンタが、未来を変える為に過去の人間の命を刈り取る心算な訳?
遊戯さんも言ってた事だけど、アタシも、人の命を踏み台にする未来など認めない!認められるはずがない!!



「ならば、如何しますか?」

「未来の為にって言う大義名分を掲げて過去の破壊をしようとする歴史犯罪者は、此処で叩きのめすに決まってるでしょ?デュエルよ!」

此処でアンタを倒して、アンタの計画を止める!そしてアンタを倒せば、アーククレイドルの降下も止まる訳だからね。
此れがラストデュエルよ。ゾーン、決着をつけよう!!



「良いでしょう。計画の最大の障害となる彼方達は、私自らが倒すしかないようですからね。」

「そう簡単に倒せると思ってるなら大間違いね――解錠覇王の力を侮っていると痛い目に遭うわよ?何にしても覚悟は良いわね?」

行くわよゾーン!!






「……待て。」






え?――な、アンタは!!



「「アポリア!!」」

「貴様、あの崩落に巻き込まれて生きていたのか!!」



アポリア!?
WRGPの時に大破して消えたと思ったけど生きてたんだ――てか、龍可と龍亞、ジャックの反応を見る限り、ジャック達の前に立ちはだかっ
たのはアンタだった訳か。

誰がどう見ても満身創痍だけど、何でここに来たの?
まさかとは思うけど、そんな身体でアタシ達の前に立ちはだかる心算じゃないわよね?って言うか、そんな身体で動くなんて無茶にも程が
あるわよ……



「私の目的は君達ではない。私はゾーン、君に用があって来た。」

「ほう?」



ゾーンに?



「ゾーンよ、確かに我々の生きた未来は絶望に染まった悲惨なモノだった……だが、だからと言って過去を破壊して良い物だろうか?
 私は、この時代でこの時代のデュエリスト達と戦って、其れは決して良い物ではないと思った……彼等ならば、希望を託せるのではない
 のかと。
 彼等の活躍は知っているが、私達が知っているのは、あくまでも記録として残っているモノに過ぎず、その本当の力がドレだけのモノであ
 るのかは、実際に戦ってみなくては分からない――私は、実際に戦って其れを知った。
 未来が崩壊する切っ掛けを彼等に伝えれば、彼等ならばきっと何とかしてくれる筈だ……ゾーンよ、今一度希望を信じてみないか?」

「何を言い出すかと思えば……下らない事ですよアポリア。
 過去のデュエリストの力を持ってしても、世界を救う事が出来なかったのは貴方だって知っているでしょうアポリア?ならば、過去を破壊し
 て未来を救う以外の術は残っていないのです。」

「ならば、何故アクセルシンクロを上条遊里に授けた?
 アクセルシンクロが無ければ、機皇帝の力でこの時代を簡単に制圧する事が出来た筈だ。それにも拘らず、アクセルシンクロを授けたの
 は、彼女の可能性を、彼女の力が世界を救うと思っていたからではないのか?」

「ふ、トンでもない思い違いですねアポリア。
 私が上条遊里にアクセルシンクロを授けたのは、其の力を持ってしても未来を救う事は出来ないと証明する為です。」



アポリア、アンタはジャック達とのデュエルで『何か』を掴んだんだね?
ハッキリ言ってWRGPの時とは別人じゃない。――其れに、自ら『絶望の番人』を名乗っていたのに、『希望』なんていう言葉を口にするなん
て、変われば変わるもんだわ。

でも、その言葉を聞いても全く態度を変えないって、ゾーンは相当な石頭か、或は途轍もなく意志の堅い人間なんでしょうね――この手の
輩とは、幾ら話をしたところで平行線で終わるだけよ。



「計画を止める気はないと言う事か……ならば、友として、私が君を止めて見せよう。
 この時代のデュエリスト達の手を煩わせるまでもない――言葉が届かないのならば、デュエルで届ける以外に道はないからな。」

「良いでしょう……先ずは君から葬ってあげましょうアポリア。
 絶望の未来で共に生きた仲間ですが、だからこそ未来の為に、私自身がこの手で君を倒して差し上げましょう――そして、希望等ないと
 言う事を教えてあげます。」


「「デュエル!!」」


アポリア:LP4000
ゾーン:LP4000




なら、デュエルで分からせる以外に道は無いってね!
アタシもその心算だったんだけど、此処はアポリアに譲るわ。――アポリアが勝てれば其れで良いし、若し勝つ事が出来なくても、ゾーンが
どんなカードを使ってくるのかを知る事は出来るからね。
或いは、アポリアも其れを考えてデュエルを挑んだのかも知れないけどね。



「先攻は貰う。私のターン!
 私は『グランド・コア』を守備表示で召喚。」
グランド・コア:DEF0


「そして魔法カード『犠牲の宝札』を発動。自分フィールド上のモンスター1体を選択して破壊し、デッキからカードを2枚ドローする。
 私はこの効果でグランド・コアを破壊して2枚ドロー。そしてこの瞬間に、グランド・コアの効果発動。
 グランド・コアが破壊された時、自分フィールド上のモンスターを全て破壊し、デッキ又は手札から『機皇帝グランエル∞』。」
機皇帝グランエル∞:ATK0


『グランエルA』!」
グランドエル:ATK1300


『グランエルG』!」
グランエルG:DEF1000


『グランエルC』!」
グランエルC:DEF700


『グランエルT』!を特殊召喚する。」
グランエルT:ATK500



巧い!手札を強化しつつコアを破壊する事で、行き成り機皇帝のパーツを揃えた!それも、最強の機皇帝であるグランエルのパーツを!


「合体せよ『機皇帝グランエル』!」
機皇帝グランエル:ATK?


「グランエルの攻守力は、私のライフポイントと等しくなる――よって、グランエルの攻守力は4000!」
機皇帝グランエル:ATK?→4000


初手から攻撃力4000のモンスターとは、此れは可成りのアドバンテージになるわね。
行き成り攻撃力4000のモンスターを呼び出すだなんて、遊戯さんでも簡単じゃないわ――流石アポリア、並の実力じゃないって言う所ね。



「カードを1枚セットしてターンエンド。」

「私のターン。
 機皇帝グランエル……その程度のモンスターで私を倒せると思ったら大間違いですよアポリア。君には絶対的絶望を味わって貰うとしまし
 ょう!己の考えが如何に愚かであったかを知ってもらう為にもね。」



「野郎、グランエルをその程度扱いかよ……ドンだけのモンスターが居やがるんだアイツのデッキは?」

「グランエルをその程度って言うんだから、反則級のカードが入ってるんじゃないのか?……どんな反則カードが出て来るか分からないが、
 そんなカードを使ってたんじゃ満足できないぜ。」



確かに、グランエルを『その程度』扱いするって言う事は、ゾーンのデッキには機皇帝をも上回るモンスターが存在してる事になるんだけど、
其れは一体、どんなモンスターなのかしら?



「私のフィールド上にモンスターが存在しない時、このカードはリリースなしで召喚する事が出来る。出でよ『時械神メタイオン』!!」
時械神メタイオン:ATK0


「来たか、時械神メタイオン……君のエースモンスター!」



攻撃力0のモンスターがゾーンのエースモンスターですって?
でも、ゾーンの盟友のアポリアがそう言うのなら、きっとそうなんでしょうね……其れに、攻撃力が0なら其れを補って有り余る効果が有るっ
て言う事かもしれないからね。


時械神……その力、見せて貰うわ!











 To Be Continued… 






登場カード補足



犠牲の宝札
通常魔法
自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを破壊し、デッキからカードを2枚ドローする。